「お兄ちゃん…」
「ん?」
病室の入り口から聞こえる声に振り向く。
そこには、淡い月の光を浴びて煌びやかに灯る、白が基調で青い水玉柄の浴衣を着る最愛がいた。
「どう…ですか?」
凄く恥ずかしいのか自信が無いのか、下を向き、手をもじもじしている最愛。
「スッゲー似合ってる」
当麻自身もなぜか恥ずかしくなる。
「こ…子供っぽくないですか?」
普段から子供っぽいと御坂や黒子に言われてる為か、気にしている。
御坂や黒子の方がよっぽど子供っぽいのだけれど・・・。
「まぁ、最愛は少し子供っぽいトコあるからな、今さら変わんねぇよ」
「むぅ…そこは普通子供っぽく無いよっていうのが…」
女心を分からない兄だなと思う。
「冗談だよ、冗談。綺麗だよ」
「へっ…」
キレイ…? きれい…って…私が?
「あれ、最愛?」
「ほ、ほ、ほ、本当に、き、き、き、綺麗ですか?」
出たよ、お兄ちゃんの無意識女の子落とすテク…と思いながらも素直に受け止めてしまう最愛。
「自信持てよ。大丈夫、綺麗だよ」
「……っ!」
様々な葛藤に耐えきれなくなった最愛は当麻にガバッと抱きつく。
「だぁーちょっと最愛? 何を抱きついて…」
「怖かったんです、もし…変って言われたら…」
「なーにを言ってんのかねぇ、最愛が着て似合わないのは無いよ」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
そんな光景を慎ましく部屋の隅から見守る刀夜と詩菜。
「なんだ母さん、最愛ちゃんの浴衣を着付けてたのか」
「ええ、これを着て当麻さんにアピールしたかったんですって」
ふふふと微笑む詩菜。
「最愛ちゃんもまだ分かって無いねぇ」
「そうですね。当麻さんは最愛さんにメロメロなのに…」
二人とも鈍感なのを、刀夜と詩菜は優しく見守る。
「まあ、我が子達を見てるのも良いけど、明日は朝早い。そろそろ帰らなきゃ」
「そうですね、では御暇しましょうか」
「ということで、最愛ちゃん、これからも仲良くな」
「最愛さん、頑張ってくださいね」
「はっ…はいっ!ありがとうございますっ!」
抱き着いていた手を放し、少し乱れた着物を直して深々とお辞儀をする。
「「それと…」」
と両親は当麻を見て、
「じゃあな当麻、あんまり羽目外すなよ」
「当麻さん、もしもの事があったとしたらちゃんと責任はとるんですよ」
「…」
「もう…お父様もお母様も……///」
「おい……おい!」
鈍感な当麻でも流石に今の会話が何を指しているのか分かってしまい後悔した。
刀夜と詩菜が帰ってから数十分後。
二人はまた就寝しようとベッドに入るのだが…
「ん、まだ着物着てるのか?」
「大丈夫です。お母様に着方も脱ぎ方も教わりましたから」
「いやいやそうじゃなくて…着物着たまま寝るわけ?」
そんなんで寝たら寝相の悪い最愛の事だ、破きかねない。
「お兄ちゃんがそうして欲しいって超懇願するならそうしますけど?」
「超却下」
「え~」
頬をぷくーっと膨らます最愛。
どうにもそれを自ら願っているのだが、当麻には届かない。
「あのな、ここで皺くちゃにしたら彩月花祭に何着て行くんだ?」
寝相が悪いことには触れず、いい感じに回避できたと我ながら感心する当麻。
「うっ…そうですね、じゃあ着替えます」
そう言ったものの、一向に部屋から出て行こうとしない最愛。
むしろ帯に手を掛けようとしている最愛に当麻は堪らず声を掛ける。
「…部屋変えろよ」
「え~」
なんでそんな事を言うんだ、という顔で最愛が見てくる。
「え~じゃない。なんだ、言わなかったらここで着替えてたのか?」
「はい」
「こらこら…」
…………
………
……
…
「寝巻に着替えたな?」
「はい、ばっちりです」
最愛のパジャマは、学園都市外製品。
中肉素材の為一年中使用できる優れもので、全体的な配色チャコールグレー、
裾には白であしらったハートのチェーン模様があり、それと同色のボタンがついて可愛らしいTタイプのネグリジェ。
裾の丈は結構きわどい。
他にもいくつか候補があったのだが、最愛はこれだと揺らがず購入。
理由はもちろん当麻を誘惑したいからだが、当麻は日常生活だと風呂場に籠って就寝という暴挙に出ているので、それほど意味が無い。
「よし、んじゃ寝るか」
「りょーかいです」
ちなみに最愛が寮のベッドで寝る際は、一人分の空白の確保と枕が二個常備されている。
いつでも一緒に寝ますよ、という意思表示をしている(口でも言っている)のだが、当麻は頑なに拒む。
と当麻は寮では強気なのだが、病院に入院する事態になると流石に最愛を寮に一人で居させたくないのか"一緒のベッド"で寝る。
結局は当麻は最愛に超甘いのだ。
ちなみに。
当麻曰く『睡眠だけでも贅沢にしてやらなきゃ』という志の下、最愛に寮のベッドの提供、質のいい布団・パジャマのプレゼントをしたのだが、土御門舞夏を始め、この事実を知っている者曰く、『本人は気付いてないけど相当な無自覚なシスコン(しかも重度)』と有名。
「んじゃ、電気消すからな」
「はーい」
こうして夜は明けていった。
コソコソ……