・夜の病室
「さて、そろそろ寝たい訳ですが・・・」
本当は真っ先に自分が寝るべきベットを遠巻きに見ている当麻。
と言うのも、今はこんな状態になっている訳で。
「絹旗ぁ~、なぁ~んで私ら呼ばないでふらふらと当麻と遊んでたのかねぇ~」
「今言ったら許してあげるよ。多分許さないけど」
物凄い形相で最愛を睨み付ける麦野と滝壺。滝壺は笑顔だが、裏には底知れぬ悪魔が存在しているようで・・・当麻はどうにも最愛の救援に向かえない。
その異端審問を聞いている限り、当麻達が病院を後にしてすぐ麦野達は来たのだが、目的の当麻がいないので大人しく今まで待っていた。と、麦野と滝壺とフレンダは主張しているが、果たして”大人しく”していたかは浜面しか分からない。
「フレメアまで連れ出して・・・私、結構心配したって訳よ」
「ううん、お姉ちゃん嘘ついてる。実は自分も行きたかったの隠してる、にゃあ」
「だっはっは、フレンダ言われてやんの~」
あまり言及せず、事の顛末を見守っていた浜面は、フレメアに見透かされているフレンダをからかう。
「浜面、四肢の何処を爆散させてほしい?」
「ひぃぃ、恐ろしい単語聞こえたけど!?」
フレンダは一応、危険物取扱の資格を持っている。
仕事の都合上、そういうのを取り扱うかもと思い取っておいたのだが、
仕事でそのような事は一切しないという事なので無駄に終わった。
ちなみに本人曰く”本当に危険な物(麦野)は取り扱えない”のだそうだ。
「それで、言い訳を聞こうかしら」
「だって・・・私より年上しかいないじゃないですか」
「? 年上だからどうしたよ?」
最愛としては、あのメンツで母親役が出来た訳で、アイテム勢が揃えば一気に妹の座になり下がる。いや、もともと妹なのだけど。
単に邪魔されたくないから呼ばなかったまでの事。
と、そんな問答のすぐ隣ではフレメアと打ち止めが。
「今日も私がここに寝る~ってミサカはミサカはMy枕をパパの枕の横に置いてみたり~」
「昨日もそうだった! 今日は私!!!」
「あーっ、ミサカのゲコタ枕を投げ捨てた~!ってミサカは地面に横たわるゲコタを悲しい目で見つめてみる」
打ち止めが持ってきたゲコタ枕(柄とかでなくゲコタ)、それが今病室の冷えた床とキスしている。
何ともシュールな絵だ。
こっちはこっちでどちらが当麻の横で寝ようかと揉めているようだ。
右に最愛が寝るのは決定事項、と最愛自身が釘を刺していたので当麻の左側の取り合い。
というかこの会話の前後の節々に出てくる単語が色々と不穏過ぎる。
上条当麻はそんな事を飄々と出来るキザな男ではない。断じて。
「ん? 今『パパ』って言わなかった?」
と、最愛に迫まる手を止めて打ち止めに尋ねる麦野。
「うん、言ったよ。パパって」
「そうそう、パパ」
そういいながらフレメアは当麻を純粋な笑顔で見る。
「「「「・・・・」」」」
アイテムメンバー(最愛以外)は黙りこむ。
ここでいち早く気付いた麦野。
「な~るほどねぇ、絹旗が何で呼ばないか分かったわ」
「は?え、何?どういう事か全然分からないって訳よ!」
「ねぇ、どういう事なのか説明して、むぎの」
「ん~? どうしよっかなぁ~」
なんてやっていると医者がやってくる。
「君達、また騒いでるの? 元気なのは良いけど、羽目は外さないでね?」
「あ、すいません」
「上条君、君は明日の朝退院なんだからもう寝ないと駄目だよ?」
「はい、そうします」
いそいそとベットに戻る当麻。
それに続いて最愛・打ち止め・フレメアがベッドに入っていく。
「君達って、そういう関係?」
「多分あなたが思ってるような関係じゃないですから」
当麻は一応、医者に釘を刺しておく。
この人は患者のプライバシーとかあってないような物なので少しでも誤解は誤解と言わなければ当麻は酷い怪我のまま路頭に迷うことになる。
「なんだい、そりゃあ残念だね?」
「残念がる意味が分からない・・・」
「冗談だよ」
「言葉の真意が見えないですから、それ」
「さて、もうそろそろ上条君は寝るようだが・・・君達はどうするの?」
ベッドに入っている当麻達を見ながら、医者は麦野達に問いかける。
「私達も一緒に~って言いたい所なんだけどね~」
「明日の入念な準備があるから」
残念そうな表情をする麦野と滝壺。
「ここで大人しく帰って、大人っぷりをアピールする麦野と滝壷って訳よ」
「もうひとつ用事出来た。フレンダにお仕置きもだ」
「余計な事を言って麦野を怒らしちゃうフレンダと浜面を私は応援する」
「何故そこに俺の名前が・・・」
「ホラ、さっさと帰るわよ。車出しなさい」
パンパンと手をたたき、撤収を促す。
「えーっ、また俺を足扱い?」
「アンタは足でしょ、どう見ても」
「こんな上司は横暴でーす」
「よし、もう一つ用事できた」
「ぎゃーー!!」
いらん事を言う浜面は、こうして今日も死亡フラグを立てる。
「そういう事だから、上条、バイバイ。大人しくしてるんだよ」
「明日を楽しみにしてれば麦野の浴衣姿が・・・」
「フレンダ、そうやってハードル上げないでよ。まぁ、軽々飛び越えてやるけどね」
三人はそう言って病室を後にする。
「おい・・・上条・・・」
と、まだ病室に残っている浜面が口を開く。
「なんだよ、まだいたのか? 早く行かないと麦野に怒られるぞ」
「そうですよ。麦野怒らすと後で怖いんですから超早く出てってください」
「とか言ってるけど実際は邪魔だから早く出ていって欲しいなって、ミサカはミサカは本音を言ってみる」
「浜面邪魔だから早く帰って、にゃあ」
浜面の視線から見える光景は、当麻を囲む少女らが自分に対して邪魔だと言う光景。
邪魔だと言われるのは慣れているので心に傷は負わないが、問題はその状況。
当麻の周りの人口密度 > 浜面の周りの人口密度。
片や石油ヒーターに当たりながらコタツに入っているかの様な暖かさ、
片や北極の海の中で氷を抱きしめているぐらいの寒さ。
温度差はすさまじい。
これが世でいう、勝ち組と負け組の図。
「リア充は爆発しろ畜生!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
と、浜面は捨て台詞を吐いて走って出て行く。
「リア充・・・?」
「まぁ、アナタは気にしなくていいです。あんな超バカ面なんかほっといてください」
「そうそう、もう寝ようよパパ♪」
「私がお父さんの横貰った~!」
「あ~っ、フレメアはミサカに喧嘩を売ったということだな、ってミサカはミサカは・・・」
「はいはい、もう寝よう。明日は朝から忙しいから」
「そうですよ、もう寝ましょう」ギュッ
「むむっ、なんだか夫婦の貫録みたいなのが出てきたね、ってミサカはミサカはさり気なくパパにくっついてるママに嫉妬してミサカもくっつく~」ギュッ
「お母さんだけのお父さんじゃない! 私も、にゃあ!!」ギュッ
「もの凄く暑いんだが・・・」
夏の夜の蒸し暑さ、彼女達の体温。
とても暑く、熱く、篤い。
彼女達の体温だけで熱くなってるのだろうか。
病室の窓に映る姿は、一家族というそれでは無く両手に花状態で顔を真っ赤にする当麻だった。