上条with絹旗   作:たけんちゅ

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Act.30

 

 

 

・朝

 

 

 

 

 

 

 「もう驚きませんよ、私だって・・・私だってこんな立場じゃなかったら!!!!」

 

 

明るさを得た当麻の病室。

それはカーテンに遮られた朝日が、遮りが無くなった事を良い事にベットで寝ている当麻達に直接当たる。

そんな吸血鬼なら蒸発でもしそうな日差しを受けながら起きて早々、看護婦に叫ばれる当麻。

 

 

 「なんですかいきなり・・・」

 「ここまで言っても分からないの!?」

 

 

うぅ・・・と涙目になる看護師。

ここまで言っても・・・というより、こんな感じでは鈍感な当麻は気付くはずもない。

気付いていたら今当麻の周りにはガールフレンドで溢れかえっている事だろう。

というかそんな男がいてはいけないと思う。

 

 

 「ふぁぁぁ・・・おはようございます」

 

 

大きな欠伸と共に、いつもと同じく起きてくる最愛。

一緒に寝るのも今日でしばらくは終わり。病室でしか当麻は最愛と一緒に寝ないから。

そう思うと少し残念に、そしてもっと寝ていたかったと心から思う最愛。

 

 

 「うぅー、まだ寝てたいかも~、ってミサカはミサカは枕に顔を埋めてさっき見た夢の続きを見れるのを楽しみにしたり・・・」

 

 

朝日が眩しすぎなのか、瞼は閉じたままモゾモゾと枕に顔を埋めようとするのだが、

 

 

 「打ち止め・・・それは俺だぞ?」

 「ん~? あれ~本当に夢の続き?ってミサカはミサカは~・・・」

 「完全に寝ぼけてるな」

 

 

ぎゅーっと打ち止めに腰をがっつりホールドされつつ頬ずりされている当麻。

それを最愛が見て、

 

 

 「ん~まあ、いつもは私がお兄ちゃんを超占有してますし、今ぐらい許可しましょう。今だけ」

 「俺は最愛の占有物かよ」

 

 

いつもだったら『私も!』なんて言うのに珍しい・・・と思う当麻。思うだけ。

 

 

 「え、そうですよ? 知らなかったんですか?」

 「寧ろ何処で知るんだよ」

 「今までの生活でまったく実感してなかったんですか?」

 「なんだかなぁ・・・」

 

 

ポリポリと頭を掻く当麻。

何かいつもとは違う・・・そんな雰囲気を僅かながらに感じていた。

そんな当麻を尻目に打ち止めは夢の中へと入って行く。

 

 

 「それにしてもフレメアは爆睡ですね」

 「本当だ・・・って、腹出して寝ると体調悪くするってのに」

 

 

フレメアが黄色地のパジャマの腹部を肌蹴させている。

 

 

 「んにゃ・・・ぁぁ・・・」

 「ったく・・・」

 

 

それを見た当麻は、その肌蹴たパジャマを直す。

そんなホンワカとした光景を、ハンカチを食い千切らんと噛んでいる人が。

 

 

 「なんでこんなにも私の居場所は無いの・・・?」

 

 

一人愚痴をこぼす看護婦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うおーっ、顔を洗って目がぱっちりぃ~って、ミサカはミサカは腕を伸ばして朝の美味しい空気を吸ってみる!」

 

 

ぐぃーっと病室に届かんばかりに腕を伸ばす打ち止め。

青地に白玉模様のパジャマから、いつもの服装"上条Yシャツ"に袖を通す。

 

 

 「お腹が少し痛い・・・にゃあ」

 

 

時折ぐぅーと鳴るお腹を擦っているフレメア。

多分その音は半分空腹からなのだろうが。

 

 

 「だからあれほど腹に掛けてやったというのに・・・」

 

 

掛けられた毛布を速攻で蹴り落としていくフレメアに、なんともどうにも毛布を掛けてやりたい当麻は何度も試みた・・・が。

 

 

 「お兄ちゃんの好意を全て蹴ってましたからね」

 「ごめんなさい・・・」

 

 

シュンと項垂れてしまうフレメア。

 

 

 「ん~まあ分かってくれれば、な」

 「そうそう、お兄ちゃんは言ったって分かりませんし」

 

 

横から思いもよらぬ精神攻撃がくる。

 

 

 「わぁ・・・上条のお兄ちゃん、全然説得力が無かった・・・にゃあ」

 「うーん、そんな貴方がいいんだけどって、ミサカはミサカはフォローしてみる」

 

 

そんな話をしていると、もう恒例の看護婦登場。

 

 

 「はーい朝ごはんですよー」

 

 

気怠そうに、そして凄く投げやりに、でも丁寧に食事を机に置いていく。

そんな看護婦に当麻は気の利いた(?)言葉を投げかける。

 

 

 「なんでそんな棒読みなんですか、看護婦さん」

 「今お兄ちゃんがそれ言います?」

 「うわぁ・・・女心分かって無い・・・にゃあ」

 「うーん・・・流石にこれはフォローできないよ」

 

 

こうして、これからしばらく食べないであろう病院食を堪能する。

"あろう"と言ってしまうあたり、また入院しに来ると言っているようなものなのだが、実際にそうなのでこの言い方で合っているのだろう。

 

 

昼までには退院の準備、夕方から彩月花祭だ。

 

 

 

 

 

 

 「とっても静か。にゃあ」

 

 

鳥のさえずりが聞こえる、欠伸が出るほど穏やかな病室。

朝食も終わり、退院の支度をしているこの時間。

隣ではベットで二人抱き合って寝ている最愛と打ち止め、そして荷物をまとめるのを手伝ってくれるフレメア。

 

 

 「いやスマナイね、本当は一人でやるべきなんだろうけど」

 「ううん、大丈夫。いつもお姉ちゃんのお仕事のお手伝いしてるから」

 

 

自分の横ですやすやと寝ている二人を見て微笑むフレメア。

 

 

 「こうしてフレメアが手伝ってくれてるって言うのに二人は・・・」

 「昨日の夜は楽しかったからね。疲れちゃったんだよ」

 

 

えへへ~、と照れながらその光景を思い出すフレメア。

 

夜、それはそれは大騒ぎ。

病室の電気が消されてからというものの、いわゆる修学旅行のテンションになった女の子三人は好きな人がどうの、気になる人がどうのとその話題の中心人物を横に話し始める。

その話は加熱していき、誰が一番当麻を大好きか、誰が一番当麻を知っているかという話題で盛り上がる。

もちろんその話全般を当麻は聞いている訳もなく、さっさと寝てしまっていたので微塵も耳に入っていなかったのだが。

 

 

 「そういうフレメアは?」

 「いつも麦野のお姉ちゃんに『綺麗になりたかったらちゃんと寝なさい』って言われてるから、実は夜遅くまでは起きてないんだ。にゃあ」

 「おお、その美容法を是非、ウチの最愛とフレメアにも教えてやってくれ」

 「教えなくても十分綺麗だよ?」

 「そう言うんじゃなくて、夜遅くまで起きる事自体が肌に良くないだろ」

 

 

フレメアは自分のもちっとした肌を触り、

 

 

 「まあ、確かに。にゃあ」

 「だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 「さて・・・これでいいかな」

 

 

あらかたの持ち物をキャリーケースに詰め終わり、一息つく当麻とフレメア。

 

 

 「お疲れ様、にゃあ」

 「フレメアもありがとうな。喉乾いたろ、ちょっと飲み物買ってくる」

 「ありがとう」

 「手伝ってくれたお礼だ」

 

 

そう言って病室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「と、言ったはいいものの・・・」

 

 

自販機の前でもうかれこれ5分悩んでいる。

フレメア程の歳の女の子の好む飲み物が分からない。

と、

 

 

 「どうしたカミやん、病室居なくていいのか?」

 

 

アロハシャツ・金髪・サングラスという、どう見ても関わりたくない方の恰好をしている男が話しかけてくる。

 

 

 「ん? ああ土御門か。いやね、人の好みってわかんねーなって悩んでたんだよ」

 「はぁ、自販機の前でか?」

 「うん、その子が何好きなのか分かんないんだよ」

 

 

ぴくっと土御門の眉が動く。

 

 

 「今、”その子”って言ったか・・・?」

 「ああ、まだ小学生の女の子なんだけど、サイダー飲めるかな~とか・・・ってあれ、何で俯いてんだ?」

 

 

当麻の口から出たとある単語に、土御門がざわざわとかえ仇を震わす。

 

 

 「ふ・・・ふふふふふ」

 「おいどうした?」

 「またカミやんはそういう感じで女の子とイチャイチャ!! 義妹はどうした! 最愛ちゃんは!! あの天使のような笑みを浮かべる最愛ちゃんをカミやん、お前は泣かせるのかぁっ!!!」

 

 

ガァーっと捲し立てる土御門だが、内容が内容である。

 

 

 「なんでそんな一人暴走してんのか分かんねえけど、とりあえずここは病院だ。大人しくしろ」

 「義妹同盟は何処に行った! 同胞の誓いはっ・・・義妹への愛情は何処に行った~!!」

 「土御門、最愛が俺の義妹になってからなんかリミッター外れるの多いよな」

 「義妹こそ宝、世界遺産!! それはあの時に誓っただろう!」

 

 

あの時、それは最愛が当麻の部屋に住む事になってお隣の土御門宅へ挨拶をしに行った時。

それはもう土御門元春は『ようこそ我が同志!! 義妹の世界へ!』と熱烈歓迎、舞夏は舞夏で『上条当麻に捨てられないように一からみっちり花嫁修業の特訓してやるぞー』と訳の分からない気を回す。

そういえばあの流れで誓いみたいな事を口にしてしまった気がしなくも無いが・・・。

 

 

 「っていうかなんで土御門がここに居るんだ?」

 「さり気なく話を逸らすか・・・まあいい、この話は後でみっちりしてやる。あー、ここに居る理由? それはもちろん・・・」

 

 

待った!と、喋ろうとする土御門を一旦制止し、

 

 

 「お前がそもそも俺の見舞いに来るなんて優しい考えはもう捨ててるからな」

 

 

とだけ告げておく。まあ、土御門はなんだかんだで友達思いな奴だという事を当麻はちゃんと知っているのだが。

 

 

 「また女の子が毒牙にかかってると思ってたらカミやんを殴りたくなってな」

 「またそれ? 俺は別に女の子に毒牙になんか掛けて無いっての」

 「それはカミやんの病室に行けば分かる事ですたい。ほら、飲み物買うなりしてさっさと行こう」

 「うーん、その買うモノをどうしようか迷ってるんだが?」

 「じゃあこれで良いか?」

 

 

土御門が肩から掛けていた大きい水筒を、身体の前に滑らせる。

 

 

 「これは?」

 「うちの舞夏の特性ジュースですたい」

 「おお、以前作ってくれた果汁100%の!」

 

 

以前、土御門舞夏が「余ったからお裾わけだぞー」と持ってきたことがある特性ジュース。

受け取ったのが最愛であり、当麻が帰ってくるまでに飲み干したのも最愛なので、当麻は一切このジュースの味を知らない。

 

 

 「それに今回はアレンジを加えてさらに美味しくなってる。まあ飲めば分かるな」

 

 

俺は知らないけどな、と当麻は心の中だけで思った。

 

 

 「そりゃ楽しみだ。んじゃあそれ持っていけばいいか」

 

 

そうして二人は自販機から病室へと歩みを進める。

 

 

 

 




今、にじファン掲載時の内容以降をモリモリ書いてます。

限られた時間の中でどうにかこうにか書いているんですが、絶望的に倫理や辻褄が破綻している箇所が多くて笑ってます。ええ、手は進まずに大笑いです。

そんな作品がいつここに載せることが出来るのか・・・見守っていただけると。
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