上条with絹旗   作:たけんちゅ

35 / 37
上条当麻と白井黒子が接点を持ったお話。


histoire.? Cas.kuroko 【白黒ハッキリつける】
Cas.kuroko


 

Cas.kuroko

 

 

 

 

 

 

 

 

 

trancher le vrai du faux <白黒ハッキリつける>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・高校寮 男子生徒の部屋

 

 

 

 

 「超ただいま帰りました!」

 

 

ニコニコと満面の笑みで帰ってくる最愛。

もちろん、少しでも当麻と過ごす為に学校から直帰である。

 

 

 「ってあれ、まだお兄ちゃん帰って無いじゃないですか」

 

 

玄関で靴を脱ぎ揃えているときに当麻の靴が無い事に気付く。

この部屋の本来の持ち主である当麻はいない。

居ない理由は明白で大方、小萌先生のラブ補習か不良との追いかけっこだろう。

しかし、

 

 

 「補習だったら遅れる旨のメールがくるはずなんですが…」

 

 

確認の為に携帯を開き、メールフォルダを確認する。

 

 

メールボックス

 

↓

 

家族フォルダ

 

↓

 

お兄ちゃん

 

↓

 

『新着メールはありません』

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうやら無いみたいなので…」

 

 

という事は後者、

 

 

 「女の子を助けたついでに不良と追いかけっこでしょうね」

 

 

最愛は早速野暮ったい制服を脱いで、いつもの丈の短いワンピースを着る。

 

 

 「まったく、しょうがないお兄ちゃんですね…」

 

 

と言う少女は、どこか子供の悪戯を許す母親にも見える。

 

 

 

 

 

 

・街

 

 

 「まったく…流石に撒いたろ…」

 

 

走ってきた道の遥か後方を見張る当麻。

その右手には勿論、助けた女の子の手が繋がれている。

そういう事を通常運転で出来る男、それが上条当麻なのだ。

 

 

 「もし、類人猿さん?」

 

 

そういう女の子は赤いツインテールを揺らしながら、

 

 

 「そろそろ手、離していただけません?」

 

 

さぞかし面倒くさそうな顔で当麻を見る。

 

 

 「怪我無いか、大丈夫か白井?」

 「あのですね、貴方が私に触れさえしなければあんな不良なんてボッコボコですのよ」

 「いやだから、怪我は…」

 「それなのに横からいきなり飛び出したかと思えば…」

 

 

街で不良に絡まれた黒子。

容姿は胸を除けば(しかしその趣味の人は除かない)美人の部類に属する黒子。

寄ってくる男は多い。(寧ろ当麻は何かと寄ってくるが)

もちろんさっきまでの男達を能力で応戦してジャッジメントの権限で拘束、

ついでに豚は豚らしくブタ箱に送ってやろうと思ったのだが…。

そんな最中、当麻が横から黒子をお嬢様抱っこして掻っ攫った。

その光景を見たギャラリーは、

『熱いわね~』『青春だね~』『私もされた~い』

とそれぞれの感想を述べていたのだが。

そんな微笑ましい光景が不良達の気に障ったのか、

 

 

 「「待てやコラ、ウニ頭ぁぁぁ!!!!」」

 

 

そうして不良とのマラソン大会が始まった。

そんなこんなで逃走中の路地裏。

やっとの事で自分がどうなっているかを理解した黒子は、当麻の腕の中で暴れる。

 

 

 「離しなさい類人猿! ってちょっと、どこ触ってるんですの!!」

 「だぁーっ、お前が暴れるからだろって、あ……」

 

 

当麻の手には柔らかい感触が。

慎ましやかなお尻を比較的しっかりと掴んでしまった。

そして額からは物凄い大量の汗が…。

 

 

 「えーっと白井さん…あのーこれは不慮の事故でございまして…」

 

 

ワナワナと、自慢のツインテールを僅かながらに揺らす黒子。

 

 

 「そもそも、白井さんが暴れた事がキッカケでありましてですね…」

 「…………」

 「というかそもそもそんな薄い下着なんて…ってあ…」

 

 

ブチッと、人間の大切な何かが切れる音がしたのち、

 

 

 「ぶっ殺してさしあげますわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

淑女白井黒子の化けの皮が剥がれた。

 

 

 

 

 

 

 「つ…疲れた…」

 

 

本来の目的である不良との追いかけっことは別に、

赤い触手を無数に持った怪物(瞬間移動能力を駆使)との逃走劇があった。

 

 

 「はぁ…はぁ…貴方、本当にその変な能力だけですの?

  私から逃げる輩は今まで片っ端から捕まえてきましたのに…」

 

 

追いかける側の意味でも形相という意味でも鬼の黒子の能力、"空間転移"。

それを使い幾度となく当麻の頭上やら背後から攻撃を浴びせようとするのだが、

何故だかそれらを全て避ける。"予備動作も無しに瞬間的に"。

本人は避けた直後『うお、危ねぇ』などと言っているが、

その動作を見てる側からしてみれば、余裕をもって避けているように見える。

 

 

 「っていうか、本来の目的は…」

 「おうお嬢ちゃんとウニ頭、やっと見つけたぞコラ!!」

 「ほらぁーもー!!!」

 

 

そう言って当麻はまた黒子の手を取り全力疾走する。

 

 

 

 

 

 

 「気付けば目の前には俺の寮が…」

 

 

そんなこんなで結局、黒子の手を牽いたままここまで来た。

そもそも、当麻が手を離してくれれば黒子だけ逃げられたのだが、

当麻は気付かなかった…というよりも黒子の話を聞いていなかった。

 

 

 「ふんっ…流石類人猿ですわね」

 

 

と、何故だか独りでに物事を理解したような黒子は、

 

 

 「あなたはこうして、助けた女の子一人一人を自分の寮に誘い込み襲うという史上最低お下劣下等類人猿だということですわね。あっいや、それはお猿さんに失礼ですわね」

 「は?」

 「ここはジャッジメントの権限で貴方を現行犯で…」

 

 

カシャっと、当麻の右腕に違和感が…

 

 

 「拘束させていただきますわ」

 

 

当麻には無意味なのだが、能力を発現させないような仕組みになっている手錠を掛ける。

 

 

 「ちょっと待て、それは誤解で…」

 「今こうして貴方の寮の前まで来た、それが十分すぎる証拠ですわ」

 

 

まあ、と続ける。

 

 

 「これで貴方がブタ箱なり何処かに消え失せてくれれば、お姉さまもうつつを抜かさずに黒子だけを見ていただけるでしょうし」

 

 

トンデモな私情を挟んだ拘束…それは果たして許されるのだろうか。

と、そんな話をしていると…。

 

 

 「あれ、お兄ちゃんじゃないですか」

 

 

寮の階段を下りてきた最愛とはち合わせる。

 

 

 「というよりも、何こんなところで白井と拘束プレイしてるんですか…」

 

 

その兄と学友の異様な光景に、思わず引く。

 

 

 「違う、これは冤罪で…」

 「この類人猿は、不良に絡まれ心が弱った女の子を拉致し自分の寮に連れ込むという…」

 「白井はそんなことをお兄ちゃんがすると…というか出来る度量があると思ってるんですか?」

 

 

黒子は数秒考えたのち、

 

 

 「それもそうですわね」

 「でしょう?あったら今頃私は襲われてますよ」

 

 

そんな会話をしながら手錠が外される。

何というか、度胸が無いと散々バカにされた揚句に義妹を襲うかもしれないという、

変態レッテルを張られた当麻は心の中で『理不尽だ…』と叫び泣く。

 

 

 「あら、結局このお猿さんと一緒に住んでいるんですの?」

 「ええ。私に家はありませんから」

 「だったら常盤台の寮にでも…」

 「お金ありませんし」

 「多くはありませんが、お貸しできる程のお金は持っていますわよ?」

 「いいえ、お金は借りるなと兄に言われてるんで」

 

 

そういって、少し離れた所でorzの体勢で泣いている当麻を見る最愛。

それにつられて一緒にみる黒子。

その光景から微塵も当麻の良さが分からない黒子は小さな声で最愛に問う。

 

 

 「…こんな類人猿の何処が良いんですの?」

 

 

お姉さまも、もちろん貴方も…とは流石に言えなかった。

 

 

 「まあ、黒子には分からないでしょうね」

 「はぁ…」

 「本当にピンチになったら颯爽と助けてくれるんです。それも結構不器用に。そこがまた格好いいんですけどね」

 「・・・よく分かりませんわね」

 

どうやら黒子に、当麻(というより男全般)の格好よさ談義は一生縁の無い話の様だ。

 

 「というかそもそも、ただでさえ御坂だの御坂妹だの吹寄だので敵は多いんです。白井は絶対こっち側に来ないで下さいよ」

 「頼まれても行きませんわよ」

 「そう。ならいいんですけど。ってそうだ、お兄ちゃーん」

 

 

相変わらず両手両膝を地面についている態勢の当麻に呼びかけ近づく。

 

 

 「なんだ…最愛…ぐすっ…」

 「おっと、これは結構な攻撃食らいましたね」

 

 

与えたのは私達ですわ、と心でツッコむ黒子。

 

 

 「そろそろ晩ご飯の時間です」

 「おぉ、そっか。今日は何が食いたい?」

 「お兄ちゃんの選んだのでいいですよ」

 「……じゃあ、オムライスとかでいいか?簡単だし」

 「はい。じゃあ早速材料買いに行きましょう」

 

 

当麻の腕を引っ張り立たせる最愛。

 

 

 「さっき冷蔵庫確認したら調味料だけありました」

 「どんだけ貧乏なんですの」

 

 

思わずツッコミを口に出してしまう黒子。

 

 

 「白井は知らないだろうがな、最愛は食うぞ」

 「だって美味しいんですもん、お兄ちゃんの作る料理」

 「それは嬉しいんだけどな、限度ってもんをだな…」

 「だからお米は2合でいつも我慢してるじゃないですか!」

 「なんで逆ギレだ、それでも多いって言ってんの!」

 「だって仕方ないじゃないですか、全部美味しいんですもん」

 「そんなに美味しいんですの?」

 「ええ。そうだ、だったら白井にも味の判定していただきましょう!」

 「は?」

 

 

と思わず口をぽっかりと開ける黒子と当麻。

 

 

 「白井も美味しいって言えば、お兄ちゃんは諦めて私にお米を3合食べさせてください!」

 「いやいや、趣旨とかなんか色々ズレてるけど。というか白井は強制参加かよ」

 「それでいいですよね、白井!」

 「何故こうなったのか良く分かりませんが、まあ別段と今日は非番で用事も無いですし、

  殿方とだけならお断りですが絹旗さんがいるのなら大丈夫なようですし…」

 

 

というのは口実にただ、ここまで美味しいというなら確かめてみたいなと思った黒子。

 

 

 「いやいや、その"上条さんは心の葛藤にすぐ負けて手を出す"みたいなイメージはなんですか」

 「違うんですの?」

 「こうやってどんどん白井から見た俺の好感度メーターは下がっていくと…」

 「もともとゼロですけどね」

 「って言う事はマイナスじゃねえか!」

 「そうですわね」

 「分かった…!」

 

 

そう言ってギュッと右手を握りしめる当麻は、

 

 

 「だったらそれがプラスに行くような美味い料理を白井に作ってやる」

 

 

その拳を黒子に向けて、

 

 

 「あっと驚かしてやっからな、覚悟しとけよ」

 

 

と言い放つ。

 

 

 「どこぞの典型的なチンピラですの…、『覚悟しとけよ』って」

 

 

少し口元がゆるむ黒子。

 

 

 「まあいいですわ、では早急に作ってくださいな、丁度お腹が空いてきた頃合いですし」

 「よーっし、んじゃまずはスーパーに」

 「超レッツゴーです」

 

 

 

 

 

 

 「えーっと、卵も無いんだっけ?」

 「ええ、丁度一昨日無くなりました」

 「んじゃあここの安売りの卵を…」

 

 

そんな光景を数歩離れた所から見る黒子。

横に並んで…というのも変だし、だからといって離れすぎるのも変だし…。

 

 

 「しかし何ですの、このモヤモヤは…?」

 「ん?なんか言ったか、白井?」

 「え、いいえ特には…」

 「あ、そうか、白井は常盤台の美味い料理食ってるんだもんな、安売りされてる卵は駄目か」

 「いえ、そういう訳で言ったのではなくて…」

 「でもお兄ちゃんの料理は、安い材料で美味しく作るってのが売りですから」

 「なんか悲しいな」

 「事実です」

 「とにかく、材料はいつも使ってる物でいいですの」

 「すまないな」

 「いえいえ、お食事が頂けるだけでも十分ですし」

 

 

と、心からの気持ちを言うと、

 

 

 「なんか白井、可愛くなったな」 

 「「は!?」」

 

 

予想だにしないコースからの変化球は、容赦なく黒子のミットに収まる。

僅かに身体に籠る熱さと、早くなっていく鼓動。

顔が真っ赤になる。

 

 

 「な…何を言ってるんですのぉ!」

 「あぁ、変な意味じゃ無くて、俺に対してトゲトゲしなくなってるっていうか」

 「…」

 

 

それを無言で見ている最愛。

 

 

 「まあなんだ、白井もちゃんと女の子してるっていうか、

  ずっとそうしてりゃぁ可愛いんだからすぐ男出来るんじゃねえか?」

 「か…可愛い…? 男が出来る…?」

 「…」

 

 

脳のキャパシティよりも膨大な情報を詰め込まれた黒子のHDDは煙をあげる。

 

 

 「おい白井、大丈夫か?」

 

 

そう言って顔を覗き込む当麻に、白井は目を回し倒れる。

 

 

 「おい、しっかりしろ白井、おい、大丈夫か?」

 

 

必死に白井の頬を叩き意識の有無を確認する当麻。

 

 

 「うぅん…」

 「どうやらただの気絶か…とはいえこのままじゃあ寝せられないし…そうだ、最愛!」

 「…」

 

 

無言無表情で近づく最愛。

 

 

 「ちょっとこれ持っててくれ」

 

 

と買い物カゴを渡されて受けとる。

 

 

 「俺が白井を背負ってくから先に行っててくれ」

 「お兄ちゃん」

 「ん、どうした?」

 

 

黒子を背負いながら最愛の方を見る当麻。

 

 

 「…もういいです…」

 

 

そう言ってスーパーの奥へと駆けて行った。

黒子を静かに背負った後、最愛を追う。

 

 

 「おい、最愛!」

 「…」

 「最愛ってば!」

 

 

話しかけるも、一向に当麻に向かない最愛。

その間もスーパーを歩いていく。

 

 

 「…なんですか?」

 

 

ヒヤリと突き放す。

 

 

 「なんだじゃねぇよ、いきなり走って…」

 「さっさと材料を買って"可愛い"白井に料理を作ってあげるんでしょう?」

 「え?」

 「で、私はどうやらお邪魔のようなので…」

 

 

米のコーナーにあるお米5kgを無造作にカゴに押し込み、

 

 

 「こうしてさっさと食材買っておこうと思ってたんですが?それすらも超迷惑ですか?」

 

 

そうして当麻を見る最愛の頬は濡れていて

 

 

 「迷惑な訳ねぇだろ…」

 

 

そっと胸に抱き寄せる。

 

 

 「どうした、最愛らしくねぇぞ」

 

 

黒子を左腕で支え、右腕で最愛を優しく抱き寄せる。

最愛は当麻のYシャツに顔をうずめ、当麻の顔を見ないようにする。

 

 

 「だって…お兄ちゃんが白井を可愛いとか言うから…」

 「それはほら、それほど可愛かったら彼氏の一人ぐらいいるだろって言う意味で」

 「(お兄ちゃんは自分の発言力の大きさを分かって無いんです…)」

 

 

それに、と当麻は言う。

 

 

 「白井が可愛ければ最愛だって可愛いぞ」

 

 

ギュッと、当麻のシャツを掴む力を強くする。

 

 

 「……白井と同じですか?」

 「いや、それとは別。最愛が俺といる時、話してる時、食事してる時、買い物してる時、寝てる時、それの全部が可愛い。って気持ち悪いな」

 「気持ち悪く無いです」

 「そっか。まあなんだ、俺にしか分からない最愛の可愛さは、他の誰とも違うよ」

 

 

これが当麻なんだ、と噛みしめる最愛。

その頬は濡れていず、代わりに赤みが増す。

シャツに顔をうずめた理由に、涙を拭うというのもあったのだろう。

 

 

 

 

それから少しして。

 

 

 「お米と…卵と…野菜と鶏肉…飲み物…あとは明日以降の弁当用のおかず…」

 

 

すっかり機嫌を直した最愛と当麻(と背負われている黒子)は並んで歩く。

その光景は物凄く異様で、若いカップルの男が女の子を背負って買い物という、

ハタから見ればよく分からない絵になっていた。

 

 

 「それで全部だろ。んじゃあレジ行って会計済ましておいてくれ」

 

 

そう言って右手だけで制服のズボンの尻ポケットから財布を出す。

 

 

 「分かりました。ではスーパーの前で待っててください」

 「おう」

 

 

レジでの会計を最愛に任せて、スーパーから出る当麻。

すれ違う客はそれを見ては「何だコイツうらやましい」という視線を浴びせる。

出入り口のすぐ近くにあるベンチに黒子を寝かせる。

と思ったのだが、何故か黒子の腕はがっちりと当麻の首をホールドしていて離せない。

 

 

 「ちょ、白井、首…」

 

 

とは言っているが、黒子には聞こえていない。

 

 

 「はぁ、不幸……だよな?」

 

 

一瞬当麻は女の子とこんな密着出来るウフフイベントは幸運だと思ったのだが、

それを口にすると、最愛の一週間無視(30分で最愛が耐えきれずに喋り出す)や黒子の瞬間移動後頭部ドロップキックという痛い罰を受けるので言わずにおいた。

 

 

 「それは流石に白井に悪いと思いませんか?」

 

 

会計も済ませ、品物もビニール袋に入れて持つ最愛が出口からやってくる。

 

 

 「ああ、今のは失言でした。超聞き逃してください」

 「?」

 「さて、では超早急に帰りましょう。もうお腹がペコペコです」

 「そうだな、帰ろう。っとその前に…」

 

 

スッと手を差し出し、最愛が持つ一番重い袋を持つ。

 

 

 「それ、お米が…」

 「女の子に重い物は持たせられないだろ」

 「でも白井も背負ってますし…」

 「重く無いさ。さ、行こう」

 「…はい!」

 

 

 

 

 

 「…ん……うぅん」

 

 

当麻の寮へ帰る途中、意識を取り戻す黒子。

 

 

 「(私は一体…)」

 

 

うっすらと目を開けるとそこには、ツンツンに尖った黒髪が…。

 

 

 「(な…なんで私はこの殿方の背中に負われているんですの…?)」

 

 

意識を失うまでの記憶を思い起こす黒子は…また顔を赤くするのだった。

今までの黒子ならばここでまた大暴れ…なのだが…、

 

 

 「(どうしてでしょうか、この暖かさはどうも…抗えませんわね)」

 

 

最愛に話しかける声が聞こえ、

背中に耳を当てれば当麻の声と息遣いが振動で伝わる。

 

 

 「(少しくすぐったい…)」

 

 

そういう黒子はほほ笑む。

 

 

 「(たまには怒らない日があってもいいのかも知れませんね)」

 

 

そのもたれ掛かる背中は私よりも大きく、

 

 

 「(最近は仕事も忙しかったですし・・・)」

 

 

黒子は体重を全て当麻の背に預け、

 

 

 「(多少の休息でしたら、固法先輩も初春も許してくれるでしょう)」

 

 

また、瞼をそっと閉じる。

 

 

 「(果たして…お姉さまはどうでしょうか…)」

 

 

 

 

 

 

 「おーい、白井、出来たぞ~」

 

 

空腹を刺激するトマトケチャップの香りと、先ほどまで近かった声が黒子に届く。

 

 

 「これが、お兄ちゃん特製の超美味しいオムライスです」

 

 

コトッと黒子の目の前のテーブルに置かれる。

 

 

 「これはまた見事な出来映えですわね」

 「出来栄えだけじゃありませんよ、食べてみてください」

 「白井、寝起きで食えなかったら無理するなよ」

 

 

黄色く艶やかに光るふっくらとした卵。

その黄色を映えるように、赤いケチャップが

 

 

 「中身だってもちろん超最高です」

 

 

木で出来たスプーンを渡される。

 

 

 「いただきます」

 

 

そのスプーンをオムライスに刺すと、

 

 

 「完全に固まりきっていない卵が溶け出し、それがお米へと…」

 「それも全部計算でやってるんだから凄いですよね。食欲を超そそるんですから」

 「上条さんちのオムライスはこうだと決まってるんだ」

 「お母様の直伝ですの?」

 「いや、実家で母さんが作ってる所を見た」

 「とんだ主婦…主夫スキルですこと」

 「女の子としては色々超複雑です・・・」

 

 

見ただけでその味を再現するとは…もしかしたら料理の腕負けてる?

と思う最愛と黒子だった。

 

 

 「それで、白井の口に俺の料理は合ったか?」

 「そうですわね~」

 

 

少しドキドキしながら次の発言を待つ当麻と最愛。

 

 

 「もしかしたら、常盤台の専属シェフ並みに美味しいかもしれません」

 「やった!」

 「へ~そうなんですか」

 「何で最愛が知らねぇんだよ…」

 「だって、いつもお兄ちゃんの弁当ですもん」

 「俺が起きれない時とかは?」

 「食べてませんよ、我慢して夕食に超期待してます!」

 「それじゃあ身体に悪いだろうよ」

 

 

そんなイチャイチャを目の前で見せられた黒子は、

 

 

 「…毎日食べたいですわね」

 

 

と、爆弾を投下する。

 

 

 「お、そんなにか?」

 「いやいやいや、駄目ですよお兄ちゃん、お弁当は私のだけです!」

 「いやいや、一人分も二人分も変わらんし」

 「それでも駄目ですっ!」

 

 

そんな自分の爆弾で荒れた二人を見ながら、

美味しそうに、ゆっくり噛みしめる黒子。

 

 

 「(そうですわね、将来私の旦那様は料理の上手な方が良いですわね)」

 

 

 

 

 

 

 

それから食卓を囲む時間はとても楽しく、

 

上条さんが作った料理は美味しくて、

 

上条さんと絹旗が仲良く話すのに何故かイライラして、

 

少し食事のマナーが悪い上条さんを注意するのが面白くて、

 

女の子同士の話ではしないような会話もしたり、

 

上条さんの会話の節々に女性の名前が出ては絹旗と一緒に怒ったり、

 

常盤台の食堂では味わえない時間を味わった。

 

そこはすごく暖かく居心地が良い。

 

まるで人肌程の温度のぬるま湯。ずっと浸かりたい。

 

この日常を過ごしている絹旗が羨ましく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「ごちそうさました!」」

 「ごちそうさまですの」

 「んじゃあ洗うから食器を重ねて。持ってくから」

 「そこはお任せくださいな」

 

 

テーブルに置いてある食器を順に手を触れて行く。

 

 

 「おお、一瞬にして食器が…」

 

 

カシャカシャと、キッチンの方から食器が流しに置かれる音がする。

 

 

 「こういう時に便利ですが…それじゃあ超脂肪つきますよ」

 「あら絹旗、そういう貴女だっていつも昼食は満腹になるまで食べて。太りますわよ」

 「なんですか~!」

 「やりますの!?」

 「程々にしろよ。さてと、食器を水に浸けておくかな・・・」

 

 

当麻はキッチンへと歩いていく。

 

 

 「はぁ・・・まったく」

 「何が全くですの。貴方は食べすぎなんですよ・・・少しは自重なされては?」

 「とか言いつつも、白井だってお兄ちゃんの弁当を超要求してるじゃないんですか!!」

 「まぁ…しましたが・・・」

 「絶対白井も美味しいからと食べ過ぎて・・・ふっ、太り・・・ますよ・・・」

 「何で自分から言っておいて、自分の状況を再確認してますの・・・」

 「だってお兄ちゃんスリムな子好きですし」

 「なんでそんな事・・・」

 「大体の男の子というのはスリムな子を好み・・・というか私の場合はお兄ちゃんの秘蔵コレクションから分かったんですけど」

 「はぁ、秘蔵コレクション?」

 「白井は知らなくていいです!」

 「はぁ…?」

 「なんだ二人とも、何を話してるんだ?」

 

 

作業が終わったのか、二人の会話の中に入ってくる当麻。

 

 

 「ええ、なんでも秘蔵コレ「いいえ、なんでも無いですよ、ええ微塵も」」

 

 

思いっきり暴露しようとした黒子に割って入る。

 

 

 「ん? まあ何でも無いならそれでいいけど・・・それより白井」

 「は、はい、なんでしょう」

 「いいのか、そろそろ門限だけど・・・」

 

 

門限まで残り10分。

 

 

 「あ、本当ですわ! そろそろお暇させていただきますの」

 

 

 

 

 

 「忘れ物は無いか?」

 「ええ。特に持ち物はありませんでしたし」

 「もしあったら後で届けに行く」

 「いえ、それは同じ学校の私が届けに行くので!」

 「ん、そうか・・・」

 「ふふっ」

 

 

自然に笑みがこぼれてしまう。

その行為を、当麻を"類人猿"と呼んでいた頃の黒子は決して出来ないだろう。

それは確かな心境の変化。黒子本人も分からないほどにじわじわと。

 

 

 「どうした白井?」

 「いえ、その心配性は私のお父様みたいで・・・少し面白くて」

 「俺は白井の親父さんに似てるのか…」

 

 

男子高校生としては、そのような"老けてる"というニュアンスを含む言葉は凶器だ。

 

 

 「あ、いえ! そのような意味で言ったわけでは・・・」

 

 

と、あたふたする黒子。

 

 

 「あーこれでも最近若者チックにおしゃれしてるつもりだったんだが・・・」

 「ふっ、これが白井の本音ですか」

 「だから! あーもう、少なくとも私が知るどの殿方よりも格好いいですわ!」

 「えっ」

 

 

勢いで言った事を後悔し、顔を真っ赤にする黒子。

 

 

 「・・・あっ、いえ、その・・・別に・・・変な意味は含んで無くてですね・・・」

 「・・・」

 「ちょっとお兄ちゃん、何で黙ってるんですか!」

 「いや・・・なんかこう、白井からそんな言葉聞くとは思わなかったから」

 「それはその場のノリのようなアレで・・・!」

 「っていうか白井、お兄ちゃんに何言ってくれてるんですか!!」

 

 

見送りも黙って出来ない、そんな桃色空間が発動される。

 

 

 「まあ、とりあえずは・・・お弁当、期待しておりますわ」

 「おう。毎日美味いもん食わせてやる」

 「えぇー!! あの話は超本当だったんですか!?」

 「「もちろん」」

 「なんでハモるんですかぁー!!!!」

 

 

 

 

 

そんな光景を寮の3階から眺めている女の子が一人。

 

 

 「ほほう、上条当麻。とうとう白井を仕留めたかー」

 

 

そう言っている彼女は座っているドラム型掃除機を叩き、

 

 

 「これは絹旗も大変だなー。でもそれが面白い」

 

 

これで当分は話のネタに困らないぞー、と呟いた後、

 

 

 「おーい兄貴、また上条当麻が女の子引っかけたぞー」

 

 

と自分が同居している部屋、土御門元春がいる玄関を叩く。

するとそれを聞いた土御門が勢いよく玄関を開けて部屋から出てくる。

 

 

 「なんだと、カミやん!! 世界の宝である義妹が居るにも関わらず、常盤台の赤髪ツインテールの子に手を出すのか!!! それは義妹を愛する俺に喧嘩を売っているという事でいいんだにゃぁぁぁぁぁ!!!!」 

 「こらバカ兄貴、私の前で義妹を愛するなんて言うな、気持ち悪いぞー」

 「これは早速青髪ピアスに連絡し、明日学校でどのような罰を下すか作戦会議だにゃー!!」

 「おお、凄い速さでメールを打ってる・・・」

 「・・・くそう、カミやんばっかり・・・いいなぁ・・・」

 「それが兄貴の本音だろー」

 

 

当麻の預かり知らないところで、また一つ自分を怨む人間を作ってしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

と、その頃、常盤台中学の学生寮、208号室。

 

 

 「おい、御坂」

 「は、はい!」

 「今時計は何時を指している?」

 「えっと・・・も・・・門限をオーバーしてます」

 「どうなるかわかるな?」

 「れ・・・連帯責任です」

 「お前らは常盤台の看板だからな。規律はしっかり守らなければな」

 「はい・・・」

 「ふんっ」

 

 

どさっと、御坂の身体がベッドに沈む。

 

 

 「さてと、白井は一体どこで油を売っているんだろうな」

 

 

眼鏡をかけなおし、腕時計をはめなおす。

 

 

 「まさか・・・男か? だとしたら相当厳しい罰を与えなければな」

 

 

フラれ続けてばかりの寮監はその類の事例は許さない。

ただの逆恨み。というか嫉妬。

罰を受ける側としてはたまったものではない。

 

 

 「私より先に男が出来るなど・・・羨まs・・・ではなく勉強が本業である学生にとって許されない事態だ!」

 

 

つかつかと、いつにも増したハイヒールが床を叩く音は寮生を脅かす。

その日、いつもよりも大きい黒子の悲鳴が常盤台寮から聞こえたとか。

 

 

 

 




各ヒロインと当麻の接点を書こうと思って書いた黒子編です。
編とか括り付けてますが、他のヒロイン達との交流(惚れた話)は未だ製作しておりません。

こんな純情に、そしてまだ未熟ながらに当麻を思い始める黒子ですが、本人の性格上、御坂に向かっているアブナさが当麻にも向かい始めて、そして彩花月祭当日へ。


余談ですが、本来ならハーレム物(いわゆる主人公が女性にモテまくっている状態)は余った女子達の将来を考えてしまったりなんだりで、とても苦手な部類ではあるんですが、[とある魔術の禁書目録]を見てるとそうも言ってられなくなり、そしてこの上条with絹旗(通称kwk)が出来ました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。