上条with絹旗   作:たけんちゅ

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Act.5

 

 

 

 「上条さーん、朝ですよー。起きてください」

 

もう顔見知りの看護婦が病室のカーテンを開けて朝の陽差しを部屋に招き入れる。

看護婦よりお付きのパートナー的に彼は思ってくれていると想像する看護婦だったりする彼女は、満面の笑みで当麻を起こす。

 

 「ふぁーーっ、あ、おはようございます」

 「もう知ってると思いますけど、あと少しで朝食ですからねー」

 

看護婦が病室を後にする。

 

 「…」

 

横を見ると最愛が無言で俺を睨んでる。

その目は悉く当麻に、母親の詩菜が脳裏に浮かばさせる。

 

 「え~っと…どうした最愛」

 「今看護婦さん見て鼻の下超伸ばしてました」

 「伸ばしてない…けど…その…ごめん!」

 「…」

 

最愛が当麻を見ないで外の景色を眺め始める。

 

 「さ、最愛さん…?」

 「わぁーすっかり雨が晴れましたー」

 「ちょっと…無視しないで~! …うう」

 「…」

 「…」

 「超反省しましたか?」

 「それはもう超反省してます! だから無視だけは!!」

 「じゃあ…いつもの…」

 「…わかった」

 

最愛は当麻の胸をぎゅーっと強く抱きしめる。『胸』を。

当麻は忘れていた。

 

 「いっ―――」

 「~~~~♪」

 「たっ…」

 「~~~~♪ ……ってあれ? いつもなら『そんなに強くはやめて』って言うのに…。今日は超積極的なんですね」

 「…」

 「反応が超全くない…ってあれ、心無しかお兄ちゃんが私に体を超あずけているような…///」

 「…さ」

 「?」

 「最愛さん…」

 「どうしたんですか?」

 「き…キ…」

 「えっ、ちょ…そんないきなり…///」

 

次に来るであろう単語を想像して顔を真っ赤にさせる。

 

 「き…キズがっ…」

 「はいっ/// ってあれ?」

 「やばい…血ぃ出てきた…、あれ…? 景色が霞んで…」

 「ああ! 傷だったんですね~、アハハ~、超勘違い~」

 「…」

 

それ以降、当麻が喋らなくなる。

 

 「あれ、お兄ちゃん!? ちょっと…冗談ですよね!?」イヤァァァ!

 

 

 

 

上条当麻と書かれたプレートの部屋の前で《冥土帰し》と看護婦。

医者は首に聴診器をぶら下げ、看護婦は何層も食事が収められてる台車を押している。

医師は呆れ顔、看護婦は…

 

 「…これはもう帰ってもらう方がいいのかね?」

 「いいなぁ…」

 「…ゴホン」

 「・・・すみません」

 「なんだかんだで妹さん、怪我悪化させてるしね?」

 「たしかあの妹さんって…」

 

あの時の、あの記憶。

看護婦と医者の脳裏に浮かぶ、“初めてこの病院を訪れた当麻と最愛”の光景。

看護婦としては若干トラウマな部分があるので、都合のいいところのみ再生されるのだが。

 

 「そう。しかし、兄の事となると一直線になるっていうか…固執っていうのかね?」

 「あれじゃあ妹さん、どこにも嫁げないんじゃないですか? 兄離れ出来ない妹は」

 「まあ、本人的には一人にしか嫁ぐ気はなさそうだけど?」

 「…」

 「ま、今はそれより患者さんを手当てしようか?」

 「あ、お医者さん! 超早く!! お兄ちゃんが!!!」

 「ああ、今見るよ?」

 

 

 

 

 

 

―10時過ぎの病室―

 

 

 

真っ白な天井。上条当麻としては見飽きたくないその天井。

 

 「は~、教室の天井見るより病院の天井見る方が多いんじゃねえか、俺」

 

今更どうしようもない事実を、溜息混じりに確認する。

 

 「不幸…ねぇ」

 

不幸の象徴である右手の平を顔の前に出す。

座右の銘が『不幸』、ぐらいの勢いで自分の身の回りにのみ降ってくる不幸。

 

 「でもまあ、その『不幸』があったから『幸せ』があるんだけどな」

 

横で昼寝をしている最愛を見る。

 

 「せめて最愛にはもう不幸な目にあってもらいたくは無いんだけど」

 

自分だけ、自分だけ不幸だったらそれに越したことは無い。

 

 「何言っても『お兄ちゃんの傍からは離れません』だもんな」

 

未だ甘えてくる妹が嫌という訳ではなく、当麻に降りかかるであろう不幸が妹に移らないか、それが心配なのだ。

 

 「あー、しっかし腹減った~。どうやら寝てるうちに飯下げられたようだ…。不幸だ…」

 

と、ここで、

 

 

 

 コンコン

 

 

 

当麻の病室のドアを控え目にノックする音が。

 

 

 

 

 

 

 

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