僕は死んだ。
突然何を言っているのかと思われるかもしれないが実際死んだのだから仕方がない。
生まれてこの方別段とても悪いことをした訳でもなく、かといって良いことをしたという訳でもない極々普通の人間だった僕。
しかし天に見放されたのか単に運が悪かったのかは分からないが餅が喉に詰まって窒息死した。
断っておくが僕はまだ老人ではない。というか成人してすらいない。
だというのに正月に餅の早食いを従妹とやっていたら喉に餅が詰まったのだ。その時僕は初めて呼吸が出来なくて死ぬということはこんなにも苦しいものなのかと薄れゆく意識の中で思ったことを覚えている。
さて、僕の死因のことはこのぐらいにして本題に入ろう。僕は目の前の白いテーブルのむこうに座っているスーツ姿のお姉さんを見る。
そのお姉さんはテーブルに肘を付けながらいかにもだるそうな態度でこちらに話しかけてくる。
「えー……名前は
死んだということは間違いないのでここは死後の世界なはずである。僕は思ったよりも現実感溢れる女性の対応に少し困惑した。
けれどもいつまでもだんまりという訳にはいかないので僕はただ頷く。
「そうか……なら話が早い。お前に拒否権はないが今から異世界にお前を突っ込むから心の準備だけしておけ」
その女性は僕が頷くのを確認するやいなや、そんな突拍子もないことを言う。
異世界に……?僕を……?心の準備……?
さっきまでの現実感から一転、いきなりファンタジーめいた発言に僕は呆然としていた。
だというのに、お姉さんは待ってくれずいつの間にか立ち上がったのか僕の首根っこを掴みこれまたいつの間にか出来上がっていた穴のような場所に僕を突っ込もうとする。
未だに僕は混乱しているというのに彼女はこう捲し立てた。
「与える特典は不死。お前には最近観測された新世界に行ってもらう。……教えられる情報はこんなところか。……では、天界も忙しいのでな、せいぜい頑張ってくれたまえ」
彼女が言うには僕は不死になり、そして僕が生きていた世界とはまた違う世界に飛ばされるらしい。
急な展開でついていけなかった僕がそのことに気が付いたのは黒い穴の奥に投げ出され暫くしてからだった。
――――
長い穴を抜けるとそこは雪国だった。
気付くと意識を失っていた僕はいつの間にか着替えさせられたのか何かの毛皮で出来ているモコモコした服と恐らく骨でできているであろうデカいナイフを持って一面に広がる雪の上に倒れていた。
驚きの連続で僕は状況が把握しきれなかった。とりあえず起き上がる。
ふわふわと舞っている雪や白い光景を見れば分かるようにどうやらよっぽど寒い所に落とされてしまったらしい。見渡す限り雪景色である。
自分の生まれ育った町では全く見かけない雪を見て多少テンションが上がったところでふとあることに気が付く。
雪が降るほどの気温だというのに全く寒くないのだ。
どうやら幸運なことに自分の着ている服の防寒能力が思った以上に高いらしく寒さを遮っているらしい。
覆っていない顔も寒くないことに疑問は抱くもののとりあえず凍死の心配はないことに一安心する。
暫くある程度辺りを散策した後ここはどうやら雪山であるらしいということに気が付く。雪山特有のクレバスに嵌りかけたという情けない理由ではあるが。
それ以外は特に発見と言えることが無かったので、僕はいるとは思えないが大声を出して呼びかける。
「誰かーーー!いらっしゃいませんかーーーー!」
勿論返事はない。
めげずに呼びかける。
「誰かーーーー!いらっしゃいませんかーーーーーーーーー!」
相も変わらず返事は無い。
やけになって少し内容を換えて呼びかける。
「もう何でもいいから返事をくださーーーーーーーい!」
少々涙目になりながらもなりふり構わず声を上げ続ける。暫くはその状態で特に状況に変化は無かったが、一瞬、降雪が止んだ頃に変化があった。何かの声が聴こえてきたのだ。
そのことに嬉しくなった僕はその音が聴こえてきた方に駆け寄った。
……冷静に考えればそれが人の声では無いと簡単に分かったにも関わらず。
駆け出して暫くした後僕は何かがこちらに近寄ってきていることに漸く気が付いた。最初は人の気配だと思いこんで笑みすら浮かべていたが、近づくにつれて見えてきた巨影に気が付くと笑顔から一転顔が凍り付いてしまった。
白銀の景色の中から異物のように現れた
何よりも目を引くのは黒く塗りつぶされたような漆黒の顔から覗くおよそ生物とは思えない病的なほど赤い両目だろうか。
その目にジッと見られているのを感じた僕の脳は二度目の人生を含めての人生上最大の危険信号を発したのですぐさま逃げ出した。
走りづらい雪面を駆けながら僕はあの黒い奴のことを思い描く。
……あれはやばい。昔父さんと一緒にキャンプしに行った時に遭った熊なんか目じゃないほどやばい。
そう感じさせる程の生物だった。餅を食べて死んだ僕には感じた事もないような濃密な死の恐怖にただひたすらに駆け出す。
暫くの間必死の思いで走っていた僕だが身体は正直で運動という運動は体育でしかやったことがなかった僕の身体はすぐに悲鳴を上げ息が上がり一旦足を止める。
あいつがこちらに興味を失って追いかけてこないのを祈りながら。
そんな分の悪い賭けのようなことをするが、もちろんそう上手く事は進まなかった。
突然息苦しくて膝に手をついていた僕の身体を今まで受けたことのないような力が襲った。
「ふぐっ……ぎぃっ!……」
ブチィ!
最初はジャブという生易しいことはどうやらあの黒いモンスターは考えてくれなかったようで、肉の裂けるような音がするとともに想像を絶する痛みが走り僕はふっ飛ばされた。
途中、自分の下半身の断面を眺めるという普通体験できないような経験を積みながら僕はまたしても何処かへと落ちていく。
いきなり死亡ですか……。厳しい世界だ……。
僕の意識は途絶えた。
死んだっ!第三部完ッ!
UNKNOWN
MHFに登場する「僕の考えた最強のモンスター」。リオレイア骨格。
ほとんどすべてのモンスターの技が使える。
最大で第8形態まで強化され最後の方に行くとすべての攻撃が即死級。つよい
主人公
死因 窒息死→真っ二つ