UNKNOWNに愛され過ぎて夜も眠れない   作:眠魚

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第二話 油断は禁物…⁉

目が覚めるとまず最初に趣のある、もっと言えば古ぼけた天井が目に飛び込んできた。

 

 

「知らない天井だ……」

 

某アニメのセリフを口走り僕は寝た状態であたりを見まわす。

 

するとすぐ横に部屋の中だというのに鎖帷子を着ているおじさんがこちらを見ながら仁王立ちをしていた。

 

「…お、目が覚めたか」

 

目が覚めた僕に気が付いたのかおじさんはこちらに笑いかけてくる。…人の良さそうな笑みだ。

 

「あの……僕は一体……?」

 

「おっと、まだ起き上がらない方が良い。暫く安静にしているんだ」

 

 

話すために起き上がろうとした僕をおじさんは手で制し僕の状況を説明し始めた。

 

「立て続けに二度目(・・・)になるが、お前さんは崖から落っこちてそのままぶっ倒れてたんだ。下が雪で良かったな。おかげで軽い擦り傷と凍傷だけ、まあ軽く見積もって全治数日ですんでいるんだからな」

 

どうやら僕はあのモンスターに襲われた後、そのまま崖に落ちていったらしい。今まで散々だったがここに来て無傷で済むという幸運に感謝である。

 

しかし、なぜか僕はここで違和感を覚えた。

 

……どうして僕は無傷なんだ?

 

そう自分が無傷だということが言いようもなく変だということに気が付いたのだ。

 

自分の記憶が正しければ僕はあのモンスターに襲われた後、確かに……胴体を……。

 

「うっ!」

 

そこまで考えて僕は口元を抑える。吐き気を催したのだ。あと少しでリバースしそうになったところでおじさんが察してくれたのか都合よく近くにあった容器を差し出してくれた。

 

「どうした? もしや体調でも崩したのか?」

 

心配そうな顔でこちらを伺うおじさんに僕は小さく大丈夫ですと返した。吐き出すものを吐き出して落ち着いてきたので僕は千切られたはずの胴体を見る。

 

そこには千切れてるどころか何か怪我している様子もないただのへそが覗いている。

最初はただ困惑するだけだったがこれを確認して僕はやっと何が起きているのか把握することにが出来た。

 

 

……特典は不死ってこういうことまでできるのか。

 

僕は漸くこの世界に落とされる前の女の人のセリフを思い出していた。……与える特典は不死。

 

不死、それはそのままの意味で死なない事。死を避けるということは人類の夢でもあったらしく世界の古典でもしばしばそれに関連する話が出てくる。

 

臣下に命じて不死になる仙丹を探させた王。月から来た姫から受け取った不死になる薬。その肉を食すと不死になるという人魚。

 

話を挙げたらきりがないが僕はやっと自分で体験してその有名な不死とやらになったということを明確に悟った。不思議と凄い力を手に入れたという高揚感は無かった。

 

……少し疲れた気がしたので横になる。気を使ってくれたのかおじさんが声を掛けてきてくれた。

 

「やはりまだ疲れているようだな。こちらは気にせずにゆっくりと休んでいてくれたまえ」

 

僕はその声を聴き終わる前にはふっと眠りにまた落ちていった。

 

 

―――――

 

 

長い睡眠を取ったあと紆余曲折を経て僕は今、雪山の麓に舞い戻っていた。

 

何を言っているのか分からねえと思うが僕も何をされたのか分からなかった。

 

話をすると長くなるのだが、どうやらおじさんは僕の着ていた服から僕がこの世界での有名な職業「ハンター」であると判断しリハビリついでに雪山である植物を採取して来いと宣ったのだ。

 

ハンター、それはこの世界を跋扈する「モンスター」——僕を襲った黒いワイバーンも含めたこの世界特有の生き物——を狩ることで生計を立たせている職業である。

 

かくいうおじさんも昔はハンターであり、あるモンスターに怪我を負わされるまではそれなりの実績を重ねていたようだ。

 

そのおじさんにハンターが着る防具、モフモフした服、と武器、骨でできたナイフ、を装備していた僕はハンターであると勘違いされたようなのだ。

 

全く持って見当違いなその考えに異論を唱えたかったが、助けられた手前強く反論することができなかった。

結果として僕は流されるように身体を引き千切られて死んだ場所へとやってきたのである。

 

我ながら流されやすさに少し嫌気がさした瞬間である。

 

早くも帰りたくなっていた僕だったが、何もせずに帰って働けない奴と判断された挙句、あの村——ポッケ村というらしい——を追い出されても困ると何とか気持ちを振るい立たせる。

 

そうだよ、ただ雪山草っていう植物を取りに行くっていう簡単なお使いみたいなものじゃないか。なんてことはないじゃないか。

 

そう自分に言い聞かせて足を動かした……あの恐ろしいモンスターが出現した山へと。

 

 

 

歩き始めて数時間後、地図で言う所のエリア6で僕は登山の疲れから息絶え絶えになりながらも雪山草の収集を終えていた。

 

どうやら本当にお使い程度の難易度であったらしい。

 

疲れこそすれど特にモンスターというモンスターもおらずおじさんに教えて貰った採取ポイントを回っていたらいつの間にか雪山草は必要数集まっていたのである。先人の知恵は偉大であった。

 

何はともあれ僕はやっとこれで帰れると深い安堵のため息を吐き村に戻るため後ろを振り返った。

 

 

……いつからいたのか白銀の鱗を持つトカゲのような生物と目が合う。暫しの邂逅の後、僕は考えるまでもなく脱兎の如く走り出していた。

 

あれが……、おじさんの言っていたモンスター……、ギアノスか……!

 

登山の疲れも相まってすでにグロッキー気味ではあったが、構わず僕は駆けていく。死にはしないと分かっていても死ぬのは御免なのだ。

 

ちらりと後ろを見る。が、僕は見たことを後悔した。

 

いつの間にか集まっていたギアノスの群れが一様にこちらに向かってきていたのだ。しかもよく見ると一際身体が大きく青いトサカを持つ個体のようなのもいる。恐らくあれがリーダーなのであろう。

 

その個体が鳴き声を上げると共に何処からともなくまた別のギアノスが出現していた。

 

僕はここに来て既に二度目となる命の危機に泣きそうになっていた。というか泣いていた。涙が外気に触れてすぐさま凍っていく。

 

どうも最近の僕はついていなさすぎる気がする。そんなことをふと考えるが状況は刻一刻を悪くなっていくばかりでいっこうに回復する兆しを見せない。

 

ついには必死の逃走も虚しく身体能力の面でかなり劣っている僕はギアノスに追いつかれてしまっていた。

そもそも防具を付けて動きづらい生き物と雪山に特化した生き物では最初から同じ土俵に立てていなかったのだ。

 

嘲笑うかのように今まで僕に並走していた近くのギアノスがついに僕の肩のあたりに噛みついてきた。

 

「あっ……ぐぅぅ!」

 

ボキンッ。左肩の骨が砕ける音が聴こえる。

 

小型モンスターとはいえ肉食のギアノスの牙は驚くほど簡単に僕の骨まで到達したかと思うとそのまま噛み千切ってしまったのだ。

 

たまらず僕は狙いも定めずに右手に持ったボーンナイフを振り回す。もちろん動く動物に当たることはなかったが肩に組み付くギアノスは振り払うことができた。

 

が、振り払うことができただけである。相手は無傷なのに対しこっちは左肩の激痛に耐えることができず唯一の攻撃手段であるボーンナイフを取り落としてしまう。

 

依然として相手は複数でこちらを囲んでいる。一方僕は左半身はほとんど使い物にならず武器も取り落とした。僕はもう打つ手がなくなりどうしようもなくなるが相手はそれでも加減ということをしてくれなかった。

 

ギアノスたちのリーダー格が鳴き声を上げると同時に全てのギアノスが襲い掛かってくる。僕はただギュッと目を瞑ることしかできなかった。

 

一瞬視界に黒い影が差したような気がする。

 

が、どうせ死ぬだろうと諦めていた僕は痛みと恐怖から逃避するためにもう考えるのを止めた。

 

「ヴァオォオ――――――ッ!」

 

そして間をおかず何かの咆哮とともに巻き起こされた暴力とともに僕はまた死んだ。……あたりにギアノスの群れの惨殺死体を残して。

 

 




分かりにくいですが最後のはアイツです。

UNKNOWN「イヤ―――――ッ!」

ギアノス、アラタ「「グワ―――――ッ!」」

しめやかにギアノスと主人公は爆発四散。マッポーめいた光景であった。

主人公

真っ二つ→圧死

注釈ですが、主人公は攻撃を食らってすぐに回復するような便利な不死ではなく一回死んで初めてリザレクションするタイプの不死です。
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