UNKNOWNに愛され過ぎて夜も眠れない   作:眠魚

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閑話


第三話 始まる勘違い

その日、私は村長からの最初の緊急クエストとしてギアノスのリーダー「ドスギアノス」を狩るために雪山にやってきていた。

 

緊急クエストといっても村に来て日の浅い私の力を示すためのものみたいなクエストなので、特に緊張することも無く私はずんずんと山を登っていた。

 

最初に来たときはあの憎いアイツにふっ飛ばされて崖から落ちたものだが今となってはこの雪山にも慣れたもので特に疲れるということも無くドスギアノスがいるであろう場所までやってきていた。

 

地図でいうところのエリア6。雪山にしては開けた場所で私は奇妙な光景を見ることになる。

 

……そこには既に誰がやったのか身体を切り裂かれ物言わぬ屍となっていたドスギアノスが子分のギアノスと一緒に横たわっていたのだ。

 

なんだこれは……。周りからよく肝が据わっていると言われる私もこの光景には少し驚いてしまった。もう一度じっくりとドスギアノスの死体を眺めてみる。

 

「別のモンスターの仕業かしら……?」

 

相当鋭利な刃物状のものにやられたのかキレイに胴体から真っ二つになっている。それを見るに口に出したはいいがとてもモンスターがやったとは思えず、私の疑問はますます深まるのだった。

 

ふとドスギアノスの前方にギアノスとは別の何かが横たわっていた。毛皮のような服を着て黒い毛髪の生き物だった。というより人間だった。

 

「おい、君! 大丈夫か!」

 

意外な生存者を見つけた私は慌てて横たわる人に近付いていった。見た感じ死んではいないようだが怪我をしていないとは考えられない。

近付いて気づいたがその人はまだ子供と言える年齢の男の子だった。一瞬線の細さからどちらの性別か判断しかねたが恐らくは少年であろうその子を抱き起す。

 

しかしここで私はまた驚くことになる。……周りのギアノスとは打って変わって全くと言っていいほどその少年に傷が見当たらなかったのだ。

 

「まさか……この子がこの状況を……?」

 

近くに落ちていたこの子のものであろうボーンナイフを拾い上げ私はそう呟いた。

 

とてもこの子の細腕でこれができたとは思えないが、状況はそのことを物語っている。

 

最近特に大型モンスターがこの辺りに現れたという情報もなく、この子は武器を持っていてしかも無傷。周りのギアノスは刃物で切られたような傷跡を残して全滅。

 

あまり切れ味が良いとは言えないボーンナイフでこれをやったかどうかは疑問だが……。

 

結論は出せなかったがとりあえず私は抜け目なくドスギアノスの素材を剥ぎ取るとその少年を抱えて下山することにした。

 

「……この状況、どうやって村長に報告しようかな……」

 

村付きのハンターになって早速問題にぶち当たった私である。

 

 

◆◆◆

 

 

「ふむ……まさかこの少年がドスギアノスを単身で倒してくるとはね……」

 

相当年を取っているのか背丈が私の腰下あたりしかない竜人族の女性である村長はベッドで寝かせている少年を見るとそう切り出した。

 

「はい、私がそこに辿り着いた時は既に事が起こった後であったので真相は分かりませんが……」

 

私が答えると村長はそうか、と言ったきりものを考えているのか押し黙ってしまった。それとは逆に私の前任者であるハンターさんが苦虫を噛み殺したような面持ちで呟く。

 

「まさか雪山草を取りに行ってる間に襲撃にあるとはな……。生きてるから良いものをオレは何てことを……」

 

どうやらこの少年はこの人に言いつけられて採取クエストをしに行っていたらしい。

 

まだ短い付き合いなのであまり心情を察しきれてはいないが、少なくともこの人は自分が原因でこうなってしまったと心を痛めているみたいだ。

 

その様子を見かねたのか村長は声を掛ける。

 

「そう自分を責めないでくだされ。幸運なことに、この少年はこうして生きているしドスギアノスも討伐されました。今はこの子が目を覚ますのを待ちましょう」

 

村長が言い終えた後、皆が一様にその少年を見つめる。何処から来たのかは分からないがちゃんとした防具を着て武器を持っていることから恐らくハンターであることは間違いないその少年。

 

前任ハンターさん曰く、この子は私と同じように雪山で倒れている所を拾われてきたらしい。

 

そこから既にその年で一人雪山にいたということに違和感を覚えるものの本人が起きない事には何も始まらないので私はただ椅子に座ってその子が起きるのを待つことにした。

 

……雪山で倒れていた、か。もしかしたらこの子もあの飛龍に襲われたのだろうか?

 

私と似たような状況で見つかったその子にそんな憶測を立てる。もちろん答えは返ってくることはなく暫く誰も離さない時間がしずしずと過ぎていった。

 

 

◆◆◆

 

 

夢を見ていた。僕は少年が一面に広がる雪景色の中にいてギアノスたちに囲まれているのを見た。奇しくもあの時の状況と同じだという訳だ。

 

あの時と同じようにその少年…僕は左肩の骨を砕かれ、息も絶え絶えといった感じで蹲っている。

 

……何とも情けないものだ。どう見ても弱肉強食と言わんばかりのその光景に僕は目をそむけたくなるのを感じるが、夢の中とは不便なもので目を逸らす事すら許してくれなかった。

 

暫くするとギアノスたちの凶刃が僕を殺めようとする。

 

僕が知っていたのはここまでだったが何故か夢は終わることはなく続きを映し出す。あと少しでギアノスの牙が僕に届くといったところで何かが上空から襲撃してきたのだ。

 

全身からオーラが出ていると幻視してしまうような黒く塗りたくられた体に眼から覗く怪しい輝きをもつモンスター。

 

どうやら、あの時感じた黒い影は最初に僕を殺したモンスターだったようだ。僕はまたしても今回そいつに踏みつぶされ死んだということをそこで知った。

 

そこから先はもう僕の意識が及ばない領域のはずだが依然、映画のようにシーンは続く。

 

僕を踏み殺したあとそのモンスターは自身の持つ鋭爪を持って周りのギアノスを切り裂いていった。ギアノスたちは攻撃行動をとることもできずに無残に真っ二つになっていく。

一際大きい体のドスギアノスでさえそのモンスターにとっては雑魚であったらしくいつの間にか絶命している。

 

時間にして数秒も持たずあれだけいたギアノスたちは一匹の例外もなく殺されていた。周りにいた生き物を全滅させたそいつが現れた時と同じように一瞬にしてそこから飛び去った後は不気味なほど無音な時間が続く。

 

不思議な視点からそれを眺めていた僕だが、暫くすると夢の中の自分に変化が見られた。

 

あの巨大なモンスターに踏みつけられたことによって辺りに血が飛び散っている僕。その血のあたりから煙が上がり始めたのだ。最初はその程度の変化だったがその煙は次第に大きな炎を上げて僕の身体を包み込む。

 

僕は呆気にとられながらその様を眺めていたがすぐに燃え上がる炎は収まり、倒れていた僕は燃えることなくただ倒れていた。……いつの間にかどう見ても死体だった僕の身体はキレイに再生されている。

 

僕は自分の不死がどういうものなのか見届けた後漸く僕の意識が遠くなり夢から帰還した。

 

 

………

 

「知ってる天井だ……」

 

もう、一度見たことのある古ぼけた天井が目に入ってくる。ふとこちらを見つめる視線に気づき周りを見渡すとこの村の村長と元ハンターさんと見知らぬ女性がこちらをじっと見つめていた。

 

寝起きからたくさんの人に見つめられて僕は何だか混乱してしまった。

 

……これはどんな状況ですか?

 




主人公死んでないやんけ!

一話に一回殺すのは無理だと悟りました。

感想、質問等あると筆者は喜びます。何卒よろしくお願いします。
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