ポッケ村
大陸の極地にあるフラヒヤ山脈近くの雪山の懐に開かれた村で、そんな辺境の地にあるためか家々には一年中雪が覆いかぶさっており人が住むには少々厳しそうな印象を受ける。
しかし、この村は各地に沸いている源泉のおかげで寒冷期に入っても一定の気温を保てることと雪山草などのこの地特有の特産品を目当てとしたハンターを取り纏めるハンターズギルドの支援もあって比較的平和な環境下にあるようだ。
最近はあまり見かけない飛龍が現れたとの情報はあるものの村人たちは今日ものんびりと日々を過ごしていた。
そんな村のある一角の家に僕を中心として3人の大人が集まっていた。ご高齢の女性と三、四十ぐらいの男性、そして二十代前半の女性といった面子である。
そこで僕は村長から何故今ここに僕が寝ているのかのあらましを聞いていた。今度はこのお姉さんに救出されたようだ。ベットから身体を起こしてお礼を言う。
するとお姉さんが口を開く。
「いえいえ、お気になさらずに。一応私とは初対面でしたっけ? 私は最近この村付きのハンターになったカルナと言います。よろしくお願いしますね」
そういってカルナさんは丁寧にお辞儀をする。彼女もハンターということで僕とは違い金属でできた防具を着ており——後で聞いたところによると「バトルシリーズ」というらしい——、身の丈ほどある刀のようなものを背中に差していた。
本物の現役ハンターの凛とした声に少し気後れしそうになるが一応僕も自己紹介をすることにした。
「……ご丁寧にどうもです。僕はアラタと言います」
本当はツキイアラタだけど、どうもこの世界はファーストネームを名乗りあうのが普通なようなので僕も名前だけ伝える。……そういえば、おじさんと村長にも自己紹介してなかったな。
そんな訳で自己紹介も終えたことでちらりとおじさんを見る。おじさんは何故かすごく申し訳なさそうな顔をしている。
「とりあえず私は君に謝罪しないといけないな……。雪山の状況をよく調べもせず送り出すような真似をして本当にすまなかった……」
頭を下げるおじさん。僕が雪山に倒れていたのは自分のせいだと思いこんでしまっているらしい。流石に年上の人に頭を下げられるのは居心地が悪いので頭をあげてもらう。
「……僕は大丈夫ですから頭を上げて下さい。見たところ僕は何も怪我をしていないようですし、何も気に病むことはありませんよ」
……それに何があっても僕は死ぬことができないみたいですし。
あまりに落ち込んだおじさんの様子に僕は不死だから大丈夫ですと伝えたかったが、寸でのところで思いとどまり当たり障りのない無難なフォローを入れる。
彼らの人柄を疑う訳では無いがもし言ってしまったらここを追い出されてしまうのではないかと思ったのだ。
たとえ追い出されないにしても、どうして不死になったのかの説明まで要求されると考えるととてもじゃないが言う気にはなれない。
異世界から来たんです! と本当の事だとしてもそれを声を大にして叫べるほど僕は精神が強くない。要するに恥ずかしいのだ。
「怪我が無かったから良いという訳では無いのだが……そう言ってくれると助かるよアラタ」
お礼に私に分かる範囲なら何でも聞いてくれと付け加えるおじさん。まだ、この世界について知識が浅い僕はこの申し出を快く受けることにする。
ある程度僕とおじさんの話がひと段落すると今度は村長が話しかけてきた。
「ふむ、そろそろ本題に入って良いかね。アラタ殿?」
何やら改まった雰囲気で村長は次のことを尋ねる。
「雪山に無傷で倒れてたそうだが、あのドスギアノス達を悉く倒したのはお主かの?」
……これには少し返答に困った。村長はあれがモンスターの仕業か僕の仕業かどうかともし僕の仕業なら無傷で倒せるほどの腕前があるのかということを聞いているようだ。
もちろんあれは僕の仕業ではないし僕の腕前は普通のハンターどころか一般人にも劣っている。だから一言あれはある黒いモンスターの仕業ですと答えるべきなのだろう。
しかし、それを言おうと思った僕はある問題に思い当る。もし仮にモンスターに襲われたのだとしたらなぜ僕が無傷なのかの説明が難しいということに気が付いたのだ。
ギアノスたちが仲間割れをした? 明らかに大きな裂傷を見るに無理があるだろう。
あのモンスターは僕を守るようにギアノスを襲ったと説明するか? 曲りなりにも僕を二度も殺した危険度を持つモンスターを人を守るモンスターだと説明したくない。
正直に僕も死んだと言う? もちろん却下である。
あれやこれやと言い訳を考えるが良い言い回しが思いつかずどうしたもんかと悩んでしまう。
しばし僕があわあわと腕を振り挙動不審を極めている様子をみて何を思ったのか意外にも呆気なく村長は話を切り上げた。
「……今は言いたくないかの? できれば教えて欲しいところであったが、まあそれも良い。とりあえず人柄だけは信用にたるようだしの」
そういうと村長は今は少し休むと良いと言っておじさんとカルナさんを連れ家の外へと出ていく。
ごまかせた気はしないが、とりあえず僕はほっとした。
◆◆◆
私たちはあの子のいた家を出るといつも村長がいる大マカライト鉱の前に集まるとあの子について話し始めた。
「さて、ヌシらはあの子を直接見てどう思ったか聞かせて貰おうかの」
唐突に始まった会議の議題はこうだ。すなわち、あの子のこの村での処遇である。まずは前任ハンターさんが自分の意見を述べる。
「そもそも私が彼を雪山に送り込んだのが原因なのだから偉そうなことは言えないが、彼は悪い奴だとは思えんな。別段ここに置いても問題はないだろう」
前任ハンターさんは概ね好意的なイメージを彼に抱いているようだ。
「ええ、新参者の私が言うのもなんですが、あの子はただの子どものように思えました。何故あの年齢の子がハンターをやっているのかは疑問ではありますが……」
少しの疑問は残るものの私は彼に同意する。特にこの村に仇なす存在にはなりえないだろう。
村長もそのことには同意みたいで頷いて聞いていたが、しかしと言葉をつなげる。
「確かにあの子自身何か問題があるような人格だとは私も思わんよ。ただ、何かを隠しているようなあの態度が気になってね。あのドスギアノスの件にしても少々怪しく感じるのだよ」
やはり、といった感じで私と彼は村長の話を聞く。
此処まで彼の人格については皆同意見だったが、何といっても問題なのはあの子に謎が多すぎることだった。
この村近くの山にあの年齢で一人いたこと
ハンターの恰好をしている割には身体は年相応の子よりも線が細いということ
前任ハンターさん曰くこの世界の人なら知っていて当たり前の一般常識も知らない事
そしてなりより確証はないがあれだけの数のギアノスの群れを全て一刀両断ししかも無傷でいたこと。
例を挙げるとこんなところだろうか。さっき村長が質問した時沈黙を貫いたのも見るとあの子に何かがあるのは間違いないだろう。それを確認した村長はある結論を出す。
「ふむ、今は様子を見るしか無いようだね。すまないが、同じハンターのよしみであの子のことを頼めるかい?」
そう言って私と彼に頼み込む。要するにポッケ村にてあの子の世話をするということだ。
もちろん断る理由のない私たちはそれを受けた。村長は満足気に頷き今日のところはここまでと締めの挨拶をする。
「ありがとう。これで暫くは大丈夫だろう。それでは明日から宜しく頼むよ」
村長がそう言って小会議のようなものを終えると私は既にあの子のことを考えていた。
まだここに来て日が浅いけど弟子ができたと考えると結構嬉しいかもしれない。
自然と軽くなる足取りで私は支給された家へと帰っていった。
カルナ
名前の由来は不死つながりのあの英雄。決して目からビームは出ない。
気付かれている人もいるかもしれませんがMH2Gにおけるプレイヤーポジション。
当然のように主人公補正を持っている。どことは言わないがデカい。
元ハンターの男
MH2Gで家の前にいつもいる前任者の男。名前は特に決めていない。おじさん。
村長
竜人族の女性。ポッケ村を作ったときから生きている。弟に世界中のトレジャーを探し求めるトレジィがいる。