UNKNOWNに愛され過ぎて夜も眠れない   作:眠魚

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UNKNOWN「出番はまだかな」


第五話 カルナという女

僕は少し眠って休み今後の活動方針を決めにかかっていた。すなわち、普通に村人Aとして農業かなんかをやらして貰ってこの村に留まるか、ハンターとしてこの村に留まるか、である。

 

普通なら村人Aでファイナルアンサーなのだが、僕はある一つの心配事があったためそれ一択とすることができなかった。

 

あの黒いモンスター。たった数日で二度も僕を殺したあのモンスターが気がかりだったのである。

 

偶然かどうかは分からないが短いスパンの間で襲撃に遭ったのだ。もし村人Aという戦闘力皆無の状態では無いとは言い切れない三度目の襲撃に成すすべなく殺されてしまうだろう。

 

不死にされた僕とて自分ではまだ一人の人間であると考えているため何もしないまま殺されるのは勘弁したいところだ。不死とはいえ無残に殺されると軽く精神崩壊しそうなほど痛いのである。

 

そんな訳で僕の方針は消去法ではあるがハンターを続けるということになった。

 

そして現在、僕の状況はというと

 

……この世界のハンターと僕の認識が想像以上にかけ離れているということに打ちひしがれながら、死んだようにうつ伏せで倒れていた。

 

薄れゆく意識の中で僕が教えを乞うた女性の声が聴こえるが病的なほどに乱れている呼吸の息苦しさや想像を絶する訓練の数々のせいで全く動かなくなった筋肉のせいで立ち上がることもできない。

 

嘔吐をし過ぎてもう出すものもなくなったのか吐き出しても胃液しか出てこず、体中から拭いても拭いても流れ出る汗は止まることを知らない。

 

ほぼ死体のような状況なのに火を巻き起こし復活しないあたりこの女性、カルナさんは生かさず殺さずを文字通りやってきているらしい。

 

何故、こんな状況になっているのかは少し時を遡る。

 

 

ハンターになる決心をした僕はまず初めにおじさんを尋ね立派なハンターになるための訓練がしたいと申し出た。何に先立つにしてもせめて雪山を登るぐらいには体力を付けようと思ったのだ。

 

とりあえず僕はおじさんに直接修業を付けて貰おうとしたが、おじさん曰く、「私より現役のハンターであるカルナくんに師事した方がよいだろう」との事らしくやんわりと断られた。

 

本当は僕の修業でハンター稼業に支障が出るのではないかと思い気が進まないのだが、おじさんに断られた今他に手もないので今度はカルナさんに頼み込む。

 

今度も断られるかな? と一度は思ったが杞憂であったらしくすぐに了承してくれた。

 

「貴方の手腕が在れば私の指導など必要とは思いませんが……私でよろしければ協力しましょう」

 

……今思えばこの時から何故か嫌な予感がしていたような気がする。

 

最初は女性に教えて貰える、ヤッター! みたいな気持ちで挑んでいたのだが、その内容は開けてビックリ地獄の鬼も逃げ出す鬼畜な内容な訓練だった。

 

重装備を着込んで山での走り込みから始まり、この世界では割とポピュラーだという想像を絶する重りでの筋力トレーニング、そしてそれらをこなし身体がボロボロになったところでモンスター相手に実践。

 

これを延々と繰り返すのである。もちろん運動不足気味の僕がそれに耐えきれるはずが無く最初の走り込みの時点でグロッキーになり、その後はほぼ引きずられるようにこれをこなしていた。

 

 

 

そういう訳で時は戻って現在、僕は死にかけているという訳である。

 

……正直ギアノスに襲われて死にかけたときより辛いです。

 

もう泣きだしたくなって仕方がないが、泣こうと思っても水分が汗として出てってしまったのでそれも出来ない。

 

仕方がないので暫く死んだように横になる。

 

すると、訓練用のモンスターを倒したのか誰かがこちらを覗きこむ気配がした。

 

僕と同じかそれ以上の運動をしているにも関わらず、汗一つかいてない女性。カルナさんだった。

 

「うーん、加減を間違えたかな?……アラタ君、大丈夫ですか?」

 

息一つ乱れていないその様子から僕はハンターと僕との間に隔絶した差があることを感じ取っていた。

 

後で知った話だが彼女は僕のことを腕の立つハンターだと何故か思っていたらしくいつも彼女がやっているメニューを課したそうだ。

 

一応このままでは死んでしまうと考えた僕はこの後、僕がなんの変哲もない一般人であることを伝えた。

 

それならあの時のギアノスは何なのかと疑問を抱かれても仕方がなさそうだが、カルナさんを特にこちらに何も聞かずにそれを受け入れてくれた。

 

……だからといって訓練が軽くなるということはついぞ無かったが。

 

村人Aの方が良かったかもしれない。

 

 

◆◆◆

 

 

 

二か月後

 

貧弱極まりない僕だったが日々の修業を越え、いつしかカルナさんに呼び出されるとこんな課題を出された。

 

「ふむ……。そろそろアラタ君もクエストを受けに行ってみましょうか」

 

バトルシリーズから防具を新調したのか、滑らかな何かのモンスターの皮でできた白い装備を着込んでいるカルナさんは何やら「緊急クエスト」という依頼を受けなければならなくなったらしく今日の訓練は付き合えないと告げた後こう言った。

 

「……マジですか?」

 

もちろん訓練を受けてある程度身体能力が上がったとはいえ、一人で村の外に出ることに抵抗感を感じる僕はその課題に思いっきり渋い顔をしてしまう。

 

「一応聞きますけど……どんなクエストですか?」

 

かといって今までカルナさんの言うことには何故か逆らえなかった僕はとりあえず依頼内容だけ聞いておく。

 

今の僕ならギアノスぐらいなら難なく倒せる気がするので採取クエストならワンチャンあると一縷の希望を持たせたのだ。

 

「安心してください。アラタ君の力量に合わせた簡単な……」

 

おっ! 採取クエストの気配が濃厚である。

 

簡単なというワードに反応する僕。しかし、そうは問屋が卸さないとカルナさんは続きを言う。

 

「大型モンスターの狩猟をお願いします。初心者ハンターの最初の壁と名高いイャンクックの討伐になりますが今のアラタ君なら全力で挑めば勝てる相手なので頑張って下さいね」

 

……ですよね。何か分かってました、僕。

 

今までで僕の身体能力のことは把握してるであろうカルナさんが訓練を緩めてくれたことがないことを思い出す。

 

しかし、イャンクックか……。

 

死んだとき(・・・・・)以来だな……。

 

僕は前カルナさんと見たあの鳥型のモンスターを頭に思い描き、そんなことを考えていた。

 

 

◆◆◆

 

 

 

最初はあの子の力量をみるためにも私と同じ量のトレーニングをやらせてみた。

 

あれだけのギアノスを無傷でキレイに真っ二つにしたのだから、さぞ素晴らしい身体能力に恵まれているのだろうと思ったからだ。

 

しかし、結果としてはあの子、アラタ君は年相応のハンター、さらに言ってしまえば一般人並みの身体能力しか持ち合わせていなかった。

 

いつものメニューを一セットこなしたあたりで倒れてしまっていたのだ。

 

死にそうな表情で彼はハンターではなくただの一般人だと言い張っていたがどうやら本当のことらしい。

 

ここに来て出てきたあの子がやったと思われるドスギアノス討伐との矛盾に私はどうしたものかと悩んでしまった。……数秒だけ。

 

どうしてギアノス達がああなったのかなどの難しいことは村長たちに丸投げにして、私はこの一般人程度の身体能力しかない初めての弟子を鍛え上げることにしたのだ。

 

だって、その方が面白そう。柄にも無くそう思ってしまった私は自分で思っている以上に弟子ができたことに舞い上がっていたのだろう。

 

……まあ、それは良い。些細な事だ。

 

そんな訳でアラタ君を一から鍛え上げることにした私だったが、ある日彼が何処か普通でないことに気付く。

 

それは実践演習を兼て彼を連れてイャンクックのクエストを受けたときのことだった。

 

イャンクックは体内に火炎袋という器官を持ち、戦闘となるとそこから半液体状の炎ブレスを吐いてくるのだが、私でも当たれば少々やけどしてしまう(・・・・・・・・)そのブレスを度重なる訓練の疲労が溜まっていたのかアラタ君は直撃してしまったのだ。

 

その時の私は慌ててイャンクックの首を斬り落とすと鞄の中から体力を全快にする薬を手に持ち、彼を燃え盛る炎から引っ張りだそうとしていた。

 

が、結果としてそれは徒労に終わった。……気づくと炎は自然消滅し、中からは無傷の彼が出てきたからだ。

 

そう、気づいたこととはこれである。

 

 

 

つまり、彼はなんの変哲もない防具を装備していても、とてつもない火耐性を持っている。

 

 

少々無理が過ぎるかもしれないが、人間が再生する訳も無いので私はこう結論を出した。

 

今回一人でイャンクックに行かせたのもそれが理由である。あれほどの火耐性があるのなら彼でも何とかなるだろうと踏んだのだ。

 

「ふふっ。 報告が聞けるのが楽しみね」

 

私は村長から受けたドドブランゴの狩猟に向かう荷車の中で、帰った時に彼からイャンクックの討伐完了の知らせを聞けることを楽しみにしながら自然と笑みを浮かべた。




カルナさん伝説

明らかにデカすぎる獲物を釣り竿一本で釣り上げる。
骨まで溶かすという火竜の火球を剣の腹でガードできる。
ビル一個分ある高さから落ちても少しバランスを崩すだけ。調子のいい時にはそれすら無いことも。
どんな即死級攻撃でも二回までなら耐えられる。装備によっては三回耐えられる。
今は装備がしけているのでそうでもないが近い将来、ポッケ村に伝わる黒き神と白き神を屠るだけの能力を持つ。
偶に息抜きでインナーだけでクエストに出かける。
さらに偶にだが、石ころとブーメランでクエストに出ることもある。

そんな化け物じみた能力を持つせいか、体の頑丈さを自分基準にして考えてしまうため、教師役には実のところ致命的に向いていない。
幸か不幸か最初の弟子が彼で良かったという訳である。

主人公

圧死→焼死
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