IS×PSO2   作:クレマ

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元旦に間に合わなかった俺が通りますよ。

お気に入り数が4……順調に増えてゆく……


3

ざざーん。

漂流していた。

というか沈没しかけていた。

 

「つーわけで、カナギよろしく!」

「はいはい、お任せなさい」

 

軟、とは言いがたい盛大な着水を遂げた宇宙船の、中ではなく上に、ヤシロ•カナギ•アイレンの三人は立っていた。

そう、海に落ちたのだ。ということはつまり、ジョーの献身は正しく、功を奏したというわけだ。

――犠牲を出した、という点は気に入らないが。

 

そして、無事落ちれたらそれで解決というわけではない。

そもそもこれは宇宙船であり、水に浮かべる為の物ではないのだ。

別に浮かばないわけではないだろうが……どうやら着水の際に気密が破れたらしく、徐々に内部への浸水が始まっていた。沈没しかけているのである。

木っ端微塵のスクラップになってない——というか原型が残っている辺り、その強度の凄まじさが見て取れるが……ともかく、何とかしなければならない。

 

そこで、アークスの出番である。

 

「まあ、水で間違いないでしょ。ちょっと塩っぱいみたいだけど……じゃあアイレンもヤシロも、船の上から降りてちょうだい」

「海に飛び込めってか」

「これからする事に巻き込まれてもいいのなら、好きにすれば? でもほら、アイレンはもうあんな遠くに」

「あばよ!」

 

ばっしゃーん、と飛び込むヤシロ。

着衣での水泳はそれなりの難易度のはずなのだが、やはりそこはアークス。水しぶきを上げながらものすごい勢いで船から離れて行った。

 

「いつも通りの失礼さね。じゃあ――ふッ」

 

カナギがアイテムパックから身の丈程もある長杖を取り出し、祈るように構える。

彼女はフォトンのエネルギーを自然現象に変換する、テクニックと呼ばれる技術に長けていた。

しだいに長杖へと光が集まって行く。集まった光が長杖によって増幅され、さらにその輝きが強まって行き――。

 

「――ほりゃっ!」

 

臨界を迎える。

 

破壊的なまでの光の、そのすべてが冷気に変換され、宇宙船を包んで周囲の海水ごと氷漬けにする。

 

水は氷結すると体積を膨張させる。つまり、密度が小さくなって水よりも軽くなる。

要するに水に浮くようになる。

船を沈ませない為の作戦だった。

丸ごと氷で包むことによりこれ以上の浸水も防げるので、気密を保持する事が出来る。二重の意味でも沈没を防ぐ事になっていた。

 

氷結の侵蝕は海に飛び込んだヤシロやアイレンのそばまで迫っていたが、ギリギリの所で巻き込まれずに済んでいたのは果たして彼女の力のコントロール能力故か、あるいは巻き添えを予想して二人が退避したからか。

 

氷結範囲は半径二十メートル前後。氷河が出来ていた。

 

「……まあ、こんなもんでしょ」

「こんなもんで済むか! もっと手加減しやがれ!」

 

戻ってきたヤシロが叫ぶ。

 

「したわよ! そっちまで氷漬けになってないのがいい証拠でしょ、文句ある?」

「……ねえけど……ああ分かった俺の負けだよ。――じゃあ、こっからどうするよ、リーダー?」

「そうですね、まあとにかく陸へ……いえ、装備を整えてください」

 

アイレンがいいながら遠くに見える孤島に目を向け、すぐにその口調を険しくした。

 

 

 

―――

 

 

 

「ゆーふぉー、ですか?」

 

そんな、英語分からないのにアメリカ人に道聞かれちゃった、みたいな口調で聞き返すのは山田真耶という女性教員だった。

成人している割には童顔で背が低く、年齢を低く見られがちで、またその割に豊満なバストでいろいろと苦労してそうな彼女はこのとき、これまでにない超ド級の苦労を予感していたのだった。

 

「ああ。現在の人類の技術から見て明らかに異質な飛行物。それが宇宙から、よりによってここIS学園の近くに来たとなれば、確認しないわけにもいかん」

 

この星においてISとは、ぽっと出の強大な軍事力である。

歳若い兵器であるが故に、強力でありながら習熟している者が居ない。

本来長い時間を掛けて熟成されるはずの技術的なステップをとある一人の天才がいくつも飛び越して作り出してしまったのだ。それだけのオーバーテクノロジーであると同時にそれだけの不安定さがある。

 

IS学園とは、そんなISを扱える者を増やす為の、言わば軍学校であった。

誰もが等しくISについて無知であるが故に、誰もがチャンスを持つべきである。

そういう理由で、試験さえパスすればあらゆる国家の人間も入学できる。

また、このIS学園はあらゆる国家の干渉をはね除ける権限を有しており――同時に、この学園の被るあらゆる被害も他の国家に伝わる事は無い。

こちらの意思の介在できる余地は無いのだから、責任を追及される謂れも無い、という事だ。

 

「……すまないな、山田先生。あなたには軍手のような役割を負わせる事になる」

「いえ、大丈夫ですよ、織斑先生。あの隕せ――UFO、市街地を避けるように軌道を変えたんでしょう? 向こうだってきっと、平和を望んでいるはずですから!」

「ああ、だから山田先生一人で行くようにと、委員会からの通達だ」

 

そうして、告げられたのは事実上の“使い捨て”だった。

価値観の異なる、自分以上の文明を相手にするのだ。

当然だ、誰も火中の栗を拾いたくはない。痛みを負わない為には、誰かに押っ被せるしかなかった。

 

「でも先生、それって教員“は”一人でってことですよね?」

 

と、そこに明るい声が混ざる。

果たしてどこから現れたのか、あるいは最初から居たが隠れていたのか。

突如として会話に参入した水色の髪の少女は、人を食った様な笑みを浮かべていた。

 

「……生徒は全員、寮の自室内で待機しているようにと放送を流したはずだが」

「もちろん聞こえていましたとも。しかし私は生徒会長ですから、他の生徒を守る責務があります。――生徒会長の特権、ご存知ですよね?」

 

生徒会長。

IS学園において、生徒会長とは最強を意味する。

通常であれば投票選挙によって決められてしかるべき役職だが、ここではそういうわけにはいかない。学園内におけるISでの頂点だけがそこに君臨できる。いわゆる政治的措置。大人の事情というやつだ。

 

そして、だからこそ。そこには大きな責務が発生する。

そもそも、IS学園とはその構造からして脆弱だ。

性質上多数のISを保有しており、だというのにそこに居る人間の大多数を未熟に過ぎる学生が占めている。鴨が葱をしょって突っ立っている様な物だ。

守るためには一人でも多くの、少しでも強い戦力が要る。

だからこその生徒会長である。学園内における明らかに一生徒の範囲を超えた自由や、教職員ですら下手に指図出来ない程の特権と引き換えに、非常時には学園を守る戦力となる義務。

それが少しでも強くあるように、頂点であれと定める。

頂を奪い合う戦いによって、よりそれが強くなるように。

 

「更識、お前は――」

「もちろんこれは学園の決めた法ですから。私はあくまで仕事をしているだけ、ケチをつけられる謂れはございませんよ」

 

言葉を遮る。

自分の理屈を押し通し、やりたいようにする為には相手の言など待ってはいられないのだ。

 

「ところで織斑先生、先生は今回の件ではオペレーター……というか、司令役でしたよね。一人で行かせるか二人で行かせるか、どちらが安全だと思います?」

 

 

 

―――

 

 

 

「――見えるか?」

 

横に立つアイレンが長銃を構え、上に付いたスコープを覗き込む。

別に、撃とうというわけじゃない。望遠鏡の代わりだ。

 

アイレン曰く、何か来る。

さて、自分にはさっぱりだが、銃手としての高い能力を持つ彼女の視力は仲間の内でも随一だ。

本人が言うにはだが、物理的に遮られてさえいなければ何でも見える……らしい。

種族的な恩恵ではなさそうだ。

 

「――数は二、飛行してます。……なんでしょう、人と機械の合いの子みたいな……空気で歪んではっきりしませんが、キャストのように見えます」

 

その割にはゴテゴテしてますが、と言い足すアイレン。

 

「ともかく、高度な技術力を持っているのは間違いないようです。なので――」

「ああ、了解だ。バッチリ仲良くなってやるぜ」

「あの、ファーストコンタクトなので……出来ればやんわりと、控えめにお願いします」

 

アイレンはそう言うが、大体においてコミュニケーションとはぶつかり合いだ。

そもそもがこの状況、言って見れば他所様の庭に無断で入り込んでいる様な物なので、今更礼儀なんか気にしたって仕様がないのだ。

だからむしろ全力で懐に飛び込んで行って必要以上に馴れ馴れしくし、一刻も早くになんとなく殴りにくい雰囲気を醸し出さねばならない。と、個人的にはそう思う。

 

「どうしましょうカナギさん、この人話聞いてくれません。カナギさんからもなんとか……」

「……うん、まあ大丈夫でしょ。弟程の人たらしじゃないけど、こいつもなかなかうっとおし――才能あるし」

 

おい姦しいぞ二人とも。聞こえてるんですけど?

――というような視線を向けていると。

 

「ほら、来たわよ。――バッチリ仲良くなってくれるんでしょ?」

「分かってるっての。まあ見てな」

 

そう言って、間近にまで迫っていた二つ――おそらくは二人に向き直る。

 

「~~、~~~~~~~、~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

「……~~~~~~~、~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~?」

 

やべえ。言葉分かんねえ。

というわけで、コイツの出番だ。

 

 

 

―――

 

 

 

山田先生――山田真耶と、水色の髪の生徒――更識盾無が空を飛ぶ。

片方は武者鎧のようなISを、もう片方は水のヴェールを纏うISを、それぞれ身につけていた。

 

「――彼ら、でしょうか。本当に?」

 

真耶が呟く。もちろんこれは独り言ではない。

オペレーターを務める事となった織斑先生――織斑千冬への通信だった。

 

『ああ、そうだ。私としても“人間にしか見えない”が、確かに彼らはこの星の外から来た、宇宙人だ』

「お言葉ですが、何かの陰謀とかを感じちゃいますね。ここまで私たちに似ていると」

 

盾無が軽口を叩く。

無理も無い事だ。あまりにもこの星の人類に酷似している。

少年が一人に少女が二人。それぞれが鞘に入った刀の様な棒状の物、あからさまに分かりやすい大型の小銃、巨大なメイスにも見える機械的な長杖を手に、おそらくは宇宙船であろう近未来的な機体を包む“巨大な流氷”の上に立っている。

正直なところ、立っている場所にさえ目を瞑れば、どこにでもいる子供にしか見えなかった。三人ともアジア系の顔つきではないため、日本では目立つかもしれないが、西洋であればすぐに溶け込めるだろう。また、少女の一人は額から小さな黒い角が生えているが、それもまあ、ファッションで済ませられる程度の異常である。

 

だが、何よりも服装がおかしい。

角の少女の黒いスーツのような姿や、もう一人のキャスケットのような帽子を被る少女の赤いつなぎのような服を大胆に着崩した姿はともかく、ヘッドギアをつけた少年の、水色の日本の神職のような姿。

意味が分からない。神道と宇宙人に何の関係があるというのだ。

 

――知ってはいけない情報を知ってしまった子供達を、宇宙人という事にして抹殺する。なんて、B級映画みたいなストーリーを空想してしまってもある意味では仕方ないかもしれない。

 

『――私語は慎め。二人とも武装は手に持っているな? 手筈通りにしろ』

「は、はい……」

 

そしてついに、宇宙人達の目の前にまでやって来た。千冬の指示に従い、作戦――というか、ジェスチャーが始まった。

二人は目線――というか高度を下げ、流氷の上に立つ三人に合わせる。ISを装着している以上脚部のアーマーが厚底靴のようになって彼らよりも頭が少し上になってしまうが、そこまで気を遣うつもりは無かった。

真耶はアサルトライフルを、盾無は大型のランスを、それぞれ強調するように掲げ――そして消す。

 

量子化と呼ばれる、物質をデータに変換して機体に収納する機能だった。

 

ともかく、そうして武器を消して、他に何も持っていないと両手を緩やかに広げる。

己の持つ武器をあえて相手の目の前でしまう事で敵対心の無い事をアピールしつつ、同時に目の前で物を消してみせる事で自らの技術力を見せつける示威行為とする、二つの意味を伝えたつもりであった。

例え言葉が通じなくとも、行動の意味ならばあるいはと、せめても理解しやすいようにこちらでの近代的な武器である銃と、対照的に原始的な一面を持つ武器である槍をセレクトし、手に持っている物は武器であるという事を強調したわけだが――。

 

「あの、できれば何か、反応してくれるとうれしいんですが……」

「……もしかしてこれ、彼らの文化ではすごい失礼な行為だったとか?」

 

しかし彼らは反応を示さない。

和装の少年は口元に刀を持っていない方の手を当てて考え込んでいるようだし、キャスケットの少女は手に持つメイスのような杖をだらりと下げている。

角の少女は小銃を腰につけて手ぶらになった。武装を解除したと見ていいのかはともかく、こちらに敵対する意思が無い事は伝わったと見てはず――。

 

(どう、でしょうか。一応、この場で戦いになる事は避けられたと見て間違いなさそうですが――)

 

内心冷や汗をかく真耶であったが、ひとまずはほっと一安心、といったところか。

と、その時和装の少年がキャスケットの少女に向き直り、ポンと肩を叩く。

真耶にはその仕草が、何か励ましているようにも見えたが――。

 

(な、なに? もしかして今のはこいつらの始末は任せたぞ的なニュアンスだったり!?)

 

半ば暴走する真耶を尻目に、肩を叩かれた少女が見る間に顔を赤くし、手に持つメイスのような杖で和装の少年を殴り飛ばす。

 

「え、あ、あの……あの?」

「落ち着いてください山田先生。今あの子、貧乳を馬鹿にされましたね。乙女の勘というか、間違いありません」

 

こういう場に勘で話をするのはどうかと思う真耶であったが、たしかに二人はどちらかと言えば――というか知り合いと比べてもスタイルのいい、言わばグラマラスな体つきをしている。

一方キャスケットの少女は小柄、というか華奢というかスレンダーというか。

割と露出度高いタイプの服の着崩し方をしているので、幼児体型がよくわかるというか。

というかやっぱりこういう価値観は宇宙でも共通なのだろうか。

 

「えっと、どうしましょう織斑先生」

『……こういう場であんな茶番をやっているんだ、向こうにも攻撃の意志はないと考えても――』

「いえ、待ってください」

 

盾無の言葉に通信を中止する。

見れば、先ほど突然の暴力を受けていた和装の少年の持ち物が、鞘入りの刀からナックルガードのように盾の付いた大型の、迷彩柄の片刃剣へと変わっていた。

少年は肉厚の、刃というには切れ味に期待出来なさそうなそれの切っ先を下に向け、逆手に持って目を閉じ、集中しているような様子であった。

そして、その剣が淡い光を纏い始め――。

 

『――届いているか、この声が』

 

声が聞こえた。

否、それは声というにはあまりにも直接的過ぎて、脳裏に響く。

IS同士の個人間秘匿通信(プライベートチャネル)にも似たそれは、言葉というよりも、より本質的な意味そのものを伝えて来ていた。

 

「え、あ、言葉、通じ……?」

『――悪いが、この声は一方通行だ。そちらの言語を理解出来ているわけでもない。……伝えることしか出来ない』

「へえ……テレパシーかしら?」

 

要するに、理解させられるが理解する事はできない、という事か。

同じ能力の持ち主であれば相互理解も出来たのだろうが、無い物ねだりをしても仕方ない事だ。

 

『そちらの身振りから察するに敵対意思は無さそうだが、その点ではこちらも同様だ。俺たちがこの星に来たのは事故のせいであって、こちらの意思ではない。可能な限り速やかに出て行くつもりだ。……ただ』

 

そこで少年は一度区切ると、足でトントンと足場の氷塊を叩く。

氷に包まれた宇宙船と思しき機体は見るからにひび割れ、打ち欠け、ボロボロで――端的に言って、動くようには見えなかった。

 

『……まあ、こういうわけだ。足が無ければどうにもならない。つまり……なんだ、助けてほしい』




なんか今回終わりかたアレじゃない?
いい感じのが思いつかなかったからぶつ切りにしただけだよ……

PSO2勢が使用するアイテムパックはISの量子化と似たようなものだと思ってます。
基本的に身体能力とかはムービーとかOPと操作時のいいとこ取りを想定してます。
武装やPAに関しては全てゲーム内のものを引用してます。
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