チェインバー「いつエタるか分からないような作品なんだから投稿の遅さについては諦めろと言っている」
「つまり、何だ? お前達には四人目の仲間が居て、そいつが行方不明だと?」
「ああ、その通りだ。ええと、確かそっちの言葉で……ああ、人型ロボットみたいな姿をしてるぞ」
「そうかそうか――で、なんだってそんな大変な事を今まで黙ってた?」
「……あー、ニホンゴむつかしくてナ!」
「だったらテレパシー使えばいいし片言がわざとらしすぎるしそもそもお前もう普通にしゃべれるだろうが貴様ァ!」
「お、おう、ひとつひとつ丁寧な反論――いやこの場合はツッコミか? うん、ゴメンな」
―――
「休暇、か。こんな時に……いや、こんな時だからか」
宇宙船騒ぎは波乱を起こした。
空から降って来た異邦人達の船。初めは隕石だと思われていたそれを写した動画は大量にあって、画像解析によって真相は直ぐに明らかになった。
連日連夜テレビ局では特番が組まれ、インターネットは大騒ぎ。
だからといって圧力をかけて邪魔したりすれば、それはもうなにかありますよと白状するようなもので。
――隠し通せるわけが無い。
斯くして、日本政府はメディアの力の前に敗れ、宇宙人達は世界中の注目の的となり、他所から隠れながら地球外の技術という名の甘い蜜を独り占めする事に失敗した。
とは言え、それはお国の事情。
IS学園には国家からの干渉なんて知ったこっちゃ無いのだ。
どうぞご自由に、好きなだけ騒げば良い。こちらは耳を貸さないが。
――なんて、
お前らの指図は受けないぜ的な一匹狼スタンスを
「――一夏のやつは元気にしているだろうか」
そんな時勢の中。善良なる学園の職員、織斑千冬は暗い夜空の下、街灯に照らされながら自宅への帰路についていた。
本人の意思を半ば無視してほぼ強制的に休暇を取らされた彼女だが、それは決して彼女が役に立たないからではない。
実際にはむしろその反対で、下手な男性よりも男らしいというか、凛とした性格の彼女が醸し出す有無を言わせぬ説得力は、なにかと突っかかってくる有象無象の輩を簡単にあしらってくれる。
加えて、ISという分野において地球最強の座に君臨しているということもあって、政府の高官などの応対には慣れており――要するに、今回の件では非常に有能であるという事だ。
さて、そんな彼女がなんだって休暇なんて取らされたのかと言うと、偏に切り札を温存しておこうというか、これから更に忙しくなりそうなので今のうちに休んでおいてほしい、という声によってだ。
「明日から一日いっぱい休み。……休みなんぞ貰った所で趣味も無いしなぁ……」
せいぜい一夏のやつをいびるくらいか。と凄まじく不穏なことを言う千冬。
まだ二十代の前半という若い身空で趣味の一つも無しに仕事が恋人という有様なのは如何なものかと思われる。
なお、一夏とは彼女の弟であり、当の本人は千冬の言う“いびり”を鍛錬か何かかと勘違いしているのであった。
「親切な少年の家に居候させてもらっている。人型のロボット。名前はジョー•ラックランド……」
なんだそれは。と呟き、今言った事が何気に機密事項だという事を思い出して足を早める。
ヤシロ•トグサという何となく日本人っぽい名前の宇宙人からの情報だった。
どうやら文章形式に限られるそうだが、互いに情報交換ができるのだとか。メール機能しか付いてない携帯電話のようだが、機器を持っているわけではないらしい。アークスの基本技能だとかチャットだとか、千冬にはよくわからない事を言っていた。
オーバーテクノロジーの結晶たるISで最強になった彼女だが、割とアナログなのだ。
まあ、今の地位を築けたのはあくまで戦士としての実力に依るところが大きいので、当然といえば当然か。
「…………ちっ」
思わず舌打ちをする。無意識と言うか、不随意的と言うか、一瞬自分が舌打ちをした事に気付かなかった。
数を隠していたのはおそらく、ヤシロ個人の独断ではない。彼らの行動はそのまま自分達――地球人への、不信感の表れにほかならない。
状況を考えて、彼らへの対応の善し悪しによって、もしも彼らの技術を目当てに問答無用で襲いかかったりしていたならばおそらくはそのジョーとやらが行動を開始していたのだろう。
まあ見知らぬ星の未知なる文化に生きる者にいきなり信をおけというのも無茶であるとは思うが。
というか、見た目人型ロボットの不審物を家に引き込むなんてどこのクソガキだ。
ほんの少しでも危険じゃないかとは考えなかったのだろうか。それに親も親だ、まさか大の大人が許可を与えるとも思えないが、人間大のロボットが家に上がり込んでいてそれに気付けないのでは家主、ひいては保護者として無能と言わざるを得まい。
と、普段より多方面から頼られ、信頼されることに慣れっこだった織斑千冬は。
同僚達や上司から意に添わない休暇を押し付けられて割とやりがいを感じていた職場から放り出された上、異星人達にはえげつないレベルで警戒されていたことに若干機嫌を悪くしており、それ故に親切な少年とその保護者へ内心で毒突いていたのだが。
帰宅後、彼女はその毒突きが盛大なブーメランだったことに気付くことになる。
―――
「はあ、うちゅうじんをみつけた、ですか?」
そんな、友達が妙な妄言を力説してきた、みたいな口調で聞き返すのは山田真耶という女性教員だった。
なんか前にもこんな感じの返事をしたような、と軽い既視感を覚えながらも冷静に務めていた。
「見つけたって一体どこで……ええと、彼らに代われば良いんですね?」
『ん、ああ。話が速いな、頼む』
「まあ、向こうの言葉も分からないはずですし……何より携帯の方に掛けてくるんですから、それくらいは分かりますよ。ちょっと待っててください」
そう言って席を立ち、近くの同僚に声を掛けてから職場である職員室を出て、宇宙人達の居る部屋に向かう。
なお、この学園には侵入者を拘束する為の牢屋のような部屋があり、そこを割り当てようという声もあったが、下手なことをして関係を悪くするわけにもいかなかった。なので彼らには職員寮の一室を提供している。
電話の向こうから「ああもうなんだよ私だよ無能は。ヤドカリか蝉になりたい……」とか「千冬姉えが崩れ落ちたぁ!?」とか聞こえてくるが向こうは大丈夫なのだろうか。
少しして部屋の前に着くと、その扉をノックして――反応が返って来ない。
「……あ、もしかしてノックの意味が分からないのかも」
価値観が割と似通ってたりやたらと箸の使い方が上手かったり教えてすぐに日本語を覚えた事もあって、宇宙人っぽくない――というか、ほとんど日本語が上手いだけの外国人のように認識していたが、それでもやっぱり宇宙人なのだ。文明も文化も違うのだから、こちらの常識が通じる方がそもそもおかしい。
「あのー、皆さんにお電話で……」
と、いうわけで。そっと開いた扉の隙間から顔を出し、中の様子を探ってみると。
「へぇー。で、それが危険なのは分かったけど……そのダーカーってそもそも何なの?」
「んにゃ、それがちょっと難しくてな。ええと、あー、ウィルスっつーか寄生虫っつーか、なんて言えば良いか……そうだな、属性かな」
あ、違った。ただ話し込んでるだけだった。
―――
「属性?」
目の前の宇宙人の妙な物言いに、私こと更識盾無は眉を顰める。
前二つの具体的な例とは違って、なんだか抽象的だ。
普通は抽象的な例から具体的な例に移行するものではないだろうか。逆じゃない?
「ああ。赤と青とか有機物と無機物とか、生き物と生きてない物みたいな。そういう、ダーカーっていう属性があって、そいつは他の物を無理矢理自分に染め上げて、力尽くで自分を広げていくんだ。あと基本的に黒い」
分かるような、分からないような。
何やら哲学的というか、感覚的な表現ばかりが出てくるが、やはり実際に見た者からするとそういうものになってしまうのだろうか。精神感応能力なんていかにもスピリチュアルな力を持っていれば尚更に。
――とも思ったが。
「……つまり、よくわかってないのね?」
ぶっちゃけ、よくわからないものだからそれとなくそれっぽい事言ってごまかしてるんじゃないの、と。
「まあな。下っ端だから教えてもらえないだけかもだけど……とにかく、そういうダーカーの汚染を受けたやつを助けたり、ダーカーになっちまったやつを倒すのが俺達アークスの使命だな」
「まるで正義の味方みたいね」
正義の味方、と言うと陳腐だが。
まあ、エクソシストのようなものか。ダーカーとやらをカトリックでいう悪魔に対応させて考えればかなりしっくり来る。違う所といえば、アークスは悪魔の殲滅を目的としているという事くらいか。
ふと特撮系の勧善懲悪モノを好む妹の事を思い出しながら、それなりな返事を返していた。
「じゃあ、それで――」
と、更に話しを進めるために新たな話題を切り出そうとしたところで。
「あの! お電話で、す……」
語尾を尻窄まらせながら山田真耶が入ってくる。
途中から気配を感じていたが、電話だというのならなぜ待機していたのだろう。
ヤシロの話が気になったからだろうか。
――まあいいや、茶化そう。
「あれー? 山田先生ったら盗み聞きー? 先生ったらやーらーしーいー!」
「やらしくないです! ちょっと入るタイミング逃しただけで……とにかく、織斑先生からヤシロ君にお電話です」
「お、ラブコールかな? モテる男はつらいね」
「はっ」
鼻で笑いやがったなこの水色ヘッド……とか言いながらヤシロが携帯電話を受け取る。
「……ええと、これどうやって使うんです? あと更識お前もしかしてその髪染めてんの?」
「素の色よ!」
「片方がマイクでもう片方がスピーカーになってるんで……はい、そういう風に耳に当ててください。向こうとはつながったままなので、そのまま話して大丈夫ですよ」
と、そうやって使い方を教えた真耶にヤシロが軽く礼を言ってから電話で話し出すのを見て、部屋の外に出る事にする。
「じゃ、またねヤシロ君。あと山田先生、ちょっといいですか?」
「……? ええ、いいですよ。じゃあ、私は扉の横で待ってますから、電話が終わったら声をかけてくださいね」
真耶の言葉にヤシロはわかったー、と気の抜けた返事をし、次には自分達にはわからない言葉を使い始めてしまった。内容はおそらく、「ああいや、こっちの話」とかそういったものだろう。
それを聞いて部屋から出て、口を開く。
「――どう思います?」
「どう、と言うと?」
「ISと、彼ら宇宙人の技術を」
―――
山田真耶から電話を受け取る。
それにしてもここの人間の立ち位置というか立場というか、階級がいまいち分かりづらいな。
先生ならともかく、特にあの生徒会長というのが厄介だ。
ただの生徒よりは階級が上のようだが、それで先生と肩を並べられるとは流石に考えにくい。
この地球と呼ばれる惑星に来て初めて遭遇した兵器、ISはこの星では非常に特殊なものらしく、この学園は地球で唯一IS専門の学校なんだそうだが。特殊な階級構造はそれが原因か。
アークスなら基本上層部なんかと出くわさないし、箒型の階級構造だから部下も上司も無くて楽なんだが。……いや、奇人変人が多過ぎて取り締まりきれないだけかもしれん。
「ええと確か電話の時は、あー……そうだ、もしもしだ。もしもしー?」
『……ああ、もしもし』
スピーカーから返ってきたのはなんとも聞き覚えのある――疲れた声。
「あれ、織斑……先生か? 何だ、元気が無さそうだな。休み貰ったんじゃなかったのか?」
それとも、普段から気を張っているから家に帰って溜まっていた疲れが急に出て来た、とかそういうのだろうか。
割とこの職場ブラックそうだし、その上で俺達(宇宙人)なんてのに関わってたらまあ、仕方ないのか?
『休暇は貰ったがそれどころじゃなくなった。……お前達の所為でな。もう面倒だから代わるぞ』
「うん? それは一体どういう……おい? おーい、もしもしー?」
代わるって誰とだ? というかそもそも、一体何で電話してきたのかまだ説明されてないんだけどどういう事なんだ……?
そのまま呼び掛け続けていると。
『……ヤシロか?』
「――ジョっ」
慣れた言語の慣れた声に、変な声が出た。
「爺さん!? 嘘だろおい今どこだ!」
『ジョーさんと呼べと言っているだろうが何で言い直した! いい加減学べ小僧!』
電話の向こうから「そこが耳なのか……」とか「なあひょっとして千冬姉ぇ宇宙人と知り合いなのか? それとも千冬姉ぇも宇宙人なのか? ターミネーターなの――」「誰がメイトリクスだ!」とか轟音が聞こえてくるが何なんだ向こうで何が起こってんの?
「――まあ、無事そうで良かったよ」
『うむ。チャットでも意思疎通は出来るが、やはり音声でなければ伝わらないものもあるからな。――それで、合流の方法についてだが』
「ああ、それな。ここの奴らに任せようと思うんだ」
『……何?』
「いやな。どうやら俺達の事がこの星で騒ぎになってるみたいでな。下手に露出したら囲まれて身動きとれなくなるかもしれないんだ。ここにはここのやり方があるだろうし、それに任せた方がスムーズに話が進むと思うんだよ」
『ふむ。……ものぐさを妥協した、というわけでは無さそうだな。確かに、無用の騒動はこちらとしても望む所ではない』
というより、任せられる物は任せておきたい、というのが本当の所だ。
情報収集とか……まあ大した事が出来るわけでもないが。
しかしだとしても、宇宙船の修復のためにも、出来る事は何でもやっておきたかった。
「……まあ、ここの言葉は大体分かるようになって来たから、通訳に俺もそっちに行くかもしれないけどさ」
『そうか。……ところで、アイレンは元気か? 様子は――』
「ああ元気だよ、問題ないさ。爺さんが無事なのはとっくに分かってる事だしな」
やっぱり親だな、と思わず笑ってしまう。いや、笑みがこぼれると言った方が正しいか。
アイレンは孤児だ。
かつてダーカーとアークスとの一大決戦が起こり、辛くもアークスが勝利出来たわけだが、その時に親を失っている。
ジョーはそうして身寄りを失ったアイレンを引き取り、養子としたのだと言う。
普段はそっけない態度であり、こうして心配する様子を見せているのはかなり珍しいことであった。
シンジ「(日本語)上達しすぎだろ!!!!」
なんか今回あれだ、難産ってやつだわ。
終らせかた思いつかなかったのでそれっぽい所でぶった切りました。オラ批判しろよ。
でも心理描写とかちょっと上手くなった気がする。褒めて良いぜ!(自惚れ)