アラレ、ハゲマントと戦う   作:GGアライグマ

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怒らせちったの巻き

 アラレの攻撃を受けたサイタマは、すさまじい勢いで急降下していた。床を何層も突き破り、分厚い外壁もあっさり突き抜ける。

 その様子は、地上のS級ヒーロー達にも見えた。

 

「なんだ? 爆発した?」

「効いてるぞ! タツマキちゃん」

 

 大半のヒーローは、S級2位のタツマキの攻撃の影響で爆破したように受け取った。

 しかし当のタツマキと、サイタマの実力を知るジェノス、バングは別の考えもあった。

 

「何か落ちてる?」

 

 タツマキは爆発の先に超スピードで落ちる物体を見つける。圧縮熱で赤く光るほど速く、影しか見えないが、人の形をしているように思えた。敵の可能性が高いが、爆弾の可能性もある。一応超能力で空中に静止させることにする。

 

「うっ、重っ」

 

 しかし、予想外なことに人型の物体は信じられないほど重かった。ビル1つ、いや山1つよりさらに重い。

 結局、物体はほぼスピードを緩めぬままに地上に到達した。

 

 隕石が激突したような衝撃だった。

 大地は抉れ、地を揺らし、風は瓦礫を掘り起こしながら荒れ狂う。

 

「くっ。何よあれっ」

 

 タツマキにとってこの程度の衝撃波は平気だが、自身の超能力を撥ね退けた存在が気になった。眉間を寄せながら急いで現場に向かう。

 

「はっ! 先生が!」

 

 ジェノスはサイタマが敵の大将か幹部あたりをやっつけたのだと思った。彼にしかできないようなデタラメな破壊力だった。ジェノスはサイタマの戦果を誇るようなつもりで現場に向かう。

 底が見えないほどに深い穴が空いていた。

 タツマキは改めて先ほどの物体を掘り起こそうとする。しかしその前に、穴から何かが飛び出てきた。

 

「くぅー。あんにゃろめー」

 

 サイタマだった。全身泥だらけで、マントがいくらか千切れている。

 

「何でB級のあんたが出てくんのよ!」

「せ、先生! ご無事ですか!」

 

 タツマキも驚いたが、それ以上に驚いたのはジェノスだった。最強無敵、飛びぬけた存在であるはずのサイタマが、誰かによって船から落とされた。戦闘で不自由している。それ自体が信じられないことだった。

 

「ああ、ジェノスか。俺は全然平気だけどよ。話の通じねえガキと赤ん坊がいるんだ」

「赤ん坊? 人間ですか!? まさか人質!?」

「ああー、まあー、なんつっかなあ」

 

 サイタマは泥を払いながら眉を寄せる。

 

「まあ、そんな感じだ。とりあえず心配だから行ってくる」

「は、はい! 先生! ご無事で!」

「おう!」

 

 サイタマはジェノスに親指を立てる。しかしすぐに真面目な顔になり、両膝を曲げ、力強く跳び上がった。

 

「ちょ、ちょっとお! 何私のこと無視してんのよ! B級のクセに! あんたには無理! 私がやるから引っ込んでなさい!」

 

 タツマキは空中のサイタマに念力を使い、引きずり降ろそうとした。しかし何故か効果が薄く、サイタマはそのまま宇宙船に到達した。

 

「な、なんで効かないのよ! あったまくるわね!」

 

 タツマキは怒鳴りながら宇宙船へ飛んで行った。

 

 少し時間をさかのぼる。

 

「うっほほーっい! がおおおお!」

 

 サイタマを落としたアラレは大喜びだった。怪獣のように叫び、ついでにんちゃ砲を放つ。んちゃ砲は宇宙船をわけもなく貫通し、斜線上とその付近を無茶苦茶に破壊していく。

 

 ボロスはサイタマに破壊された己の右腕を見て固まっていた。巨大化したことで、以前より遥かにパワーが増した。体積の分頑丈にもなっていた。なのに、粉々になった。頭脳明晰な彼は計算してしまう。元の自分では、裏の裏の技を使わなければこのようなことはできない。それをあっさりやってのけたサイタマ。元の姿で戦ったら、自分の方が分が悪いのではないだろうか。

 

「アラレキィイイーック!」

「グピポー! ピピポピピー!」

「ほよよーーーーん!」

 

 ボロスが考え込んでいる間、アラレとガッちゃんは勝手にプロレスごっこを始めていた。宇宙船の崩壊が加速していく。不意に、巨大な瓦礫がボロスの脳天を捉えた。

 

「はっ」

 

 我に返ったボロス。歯を食いしばり、決意する。ひとまずアラレから巨大化の道具を奪う。それからのことはそれからだ。

 ドカン。地面を強く蹴ると床が抜けた。巨大化の影響で力加減がよく分からない。

 少し加減しつつ、ボロスはアラレの真後ろへ移動する。

 

「ほよ?」

「敵を前に油断するからだ」

 

 ボロスは残った左腕で手刀を作り、無警戒なアラレの後ろ首へ一線する。

 

「ほよー!」

 

 狙い通り、アラレの首をもぎ取った。生首は回転しながら宙を舞う。

 ボロスはアラレに不気味なものを感じていたので、内心拍子抜けしてしまった。しかし、自分の強さを再認識しただけだ、などと言い聞かせて次に移る。

 ボロスは、首がもげた胴体の食道に手を突っ込み、胃から謎の道具を取り出すつもりだった。そのつもりでアラレに接近し、手を伸ばした。しかしその手は、首が吹き飛んだはずのアラレの両手によって掴まれてしまった。

 

「なっ!? この状態で生命活動が可能だったのか!?」

 

 ボロスが驚愕している間にも、アラレは両腕を回してボロスを投げ飛ばす。アラレは前方に投げるつもりだったが、力があまりにも強すぎて途中でボロスの腕が千切れてしまったので、ボロスはほぼ真上に飛ばされてしまった。

 

「おりょ? 千切れちった」

 

 生首のアラレは、千切れたボロスの腕を見ながらとぼけたように言った。

 

「ぐぴぽー」

 

 ガッちゃんはアラレの首を回収し、アラレの胴体に渡す。

 

「ありがとうガッちゃん」

「ぴぽー!」

 

 アラレが首をくっつけると、それだけで元通りだ。

 

 ボロスは先のサイタマのようなすさまじい勢いで飛んでいた。圧縮熱で赤く燃えるのも同じ。

 

「ぬおおおおお!」

 

 サイタマとの違いは、ボロスは激しく回転させられたこと。血がめちゃくちゃに巡り、思考が鈍る。

 空気があっという間に薄くなっていき、光と熱が収まる。推進と回転の勢いは止まらない。このままでは重力を突き抜け、永遠に宇宙をさ迷うことになるだろう。

 

「メテオリック・バースト!」

 

 しかしボロスには、身体エネルギーの放出を推進力にし生物の限界を超えた挙動を可能にする技があった。無呼吸運動のように身体に負荷がかかるので、決着を早めたい戦闘にのみ使う奥の手だったが、贅沢は言っていられない。

 ボロスは放出を上手く調整して、まず回転を止める。次に推進を止めようとして、背中と後頭部に強烈な打撃を受けた。

 

「ぐっ」

 

 何が起こった!?

 ボロスは息を吐かぬよう注意しつつ(真空なので)、状況を確認する。

 原因はすぐに分かった。地球の周囲を回る天体、現地の言葉で月、に激突したのだ。

 

 もう手加減はしない。

 

 ダメージは損傷部にエネルギーを集めることで一瞬で治癒される。ボロスは険しい顔で立ち上がり、自身の宇宙船目掛けて飛び立つ。

 

「くそったれええええ!」

 

 その頃、サイタマは二度目の落下をしていた。決まり手はガッちゃんのヒップドロップだった。サイタマは遊びに付き合ってやるつもりで軽く受け止めたのだが、床が抜けて落ちてしまったのだ。ガッちゃんは飛べるのですぐに船に戻った。

 

「あっ! あんた! ぐ、ぐぬぬぬぬぬっ!」

 

 と、落下しているサイタマを見つけたタツマキ。今までの失敗のお返しにと、初めから全力でサイタマを浮かせにかかる。

 

「お、おおっ?」

 

 結果、徐々に勢いは収まり、サイタマは浮いた。

 

「これお前がやったのか? すげえなエスパー。なんか知らんがサンキュー」

 

 サイタマはそう言うと空気を蹴って船に戻っていく。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 タツマキも後を追った。

 タツマキはサイタマを追い抜き先に船に着地した。遅れてきたサイタマに「ふんっ」と得意げな笑みを見せる。

 

「ほよ? 1人増えたよ。ガッちゃん」

「ぐぴぽー!」

 

 アラレはタツマキを指差して笑う。

 タツマキは浮きながら腰に手を当て、眉を寄せる。

 

「何あれ? 巨人? 宇宙人ってこんなんだったの?」

「ああ、あれは違うんだ。何というか」

 

 サイタマがタツマキに説明しようとしたとき、船を激しい衝撃が襲った。

 皆の体が浮き上がり、巨大なガレキが降り注ぐ。

 上方から爆音も聞こえた。天井を粉砕しながら、強烈なオーラを纏う巨大な足が降りてきた。

 

「おお。ボロスか」

「ちょっ、何よあれ!」

 

 第二ラウンドが始まる。

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