The Duelist Force of Fate 作:Anacletus
ずっと更新が滞っていたのですが、別に熱が冷めたわけではなったので。
諸々、放置していたので後三節で終了の運びにしたいと思います。
最後は派手にぶちあげられればいいなぁ。
では、最終話で再び報告する時まで。
第四十四話「Duelist」
円蔵山の地下。
数百年前より起動し続ける巨大な術式が一つ存在する。
【大聖杯】
時の魔法使いが己を掛けて創生し、織り成した根源に辿り着く一方式。
その表層は万能の願望器と謳われて久しいが、今や其処に屯するのは腐り切った蟲の群れと操主たる間桐ゾヴォルケンのみ―――のはずだった。
「ば、かな……こ、の……聖杯が破れ、ごほぉッッ?!!?」
ベチャリとどす黒い血を吐きながら、数百年を生きた妖老が己の本体たる蟲に奔ったダメージに倒れ込む。
蟲と成り果てて今や人ですらない化物。
その自分が人や化物ですらない“何か”に倒されるという理不尽に思わず唇の端が歪むのはようやく来た死への感慨からか。
肉体を構成していた腐肉と蟲がブスブスと焼け焦げていく最中も老人は万能たる聖杯。
否、大聖杯すら超えていた巨大な力の塊を真上に見上げる。
その力で生きながらえようにも全ては遅過ぎた。
フィールドには一体のモンスターがいる。
全ての魔力を停止させる魔術師殺しの巨竜。
その羽ばたきは炎を吐き散らし、今や轟々と老人を焼滅させつつあった。
「く、く、くく、くくく……わか、ったぞ……き…まのしょ……しゅ……つの……は……て……この………」
風が消し炭になった老人を舞い上げ、聖杯の光の中に消していった。
「どうします? これで邪魔者は消えました」
「………」
浮遊する巨大な物体。
白銀の塊の中から覗く瞳が訊ね、頷く。
「そうですか。では、我らは傍で見ていましょう。“今回の結果”が反映されれば、次の【鏡面界】に対するアクセスが可能になります。これまで繰り返してきた影響でしょうか。我々の影響力そのものが時空に対して優位になりつつある。この世界もようやく相似状態に近付いています。この聖杯があれば、現在進行中である我々による救済の領域は大幅に増すでしょう」
皺枯れながらも響く機械音声。
まるで卵のように生命維持装置に埋もれた男が目尻を下げる。
周辺は聖杯の輝きに明るいが、大空洞全体を照らす程ではない。
先程まで不の力が渦巻いていた影響もあってか。
薄暗い洞窟全体が脈動しているような錯覚すら引き起こす。
「それにしてもあの老人。間桐と言いましたか。今までよりも真実に近付いていた……これ程の力があれば、確かに貴方にすら勝てると錯覚するのでしょうが……」
「………」
「ふ、変わりませんね。分かりました。では、もう行きます。客人達が来るまでは其処で仮眠を。後の作業は我らイリアステル……いえ、アースクレイドルの者達が引き受けましょう」
その男。
ZONEがその場から消えると彼は、赤い帽子に赤いジャケットの彼は、【決闘者(Duelist)】の英霊は、彼の友人にも見えていなかった存在に目を向ける。
「貴方が落としたのはこの不幸なさっちん? それともこちらの死徒の王さっちん? さぁ、どちらでしょうか?」
聖杯の下。
キラキラと輝く白き荘厳なドレスを身に纏う女が独り。
同じ顔をした普通に不幸な自分と真っ黒に違いない吸血鬼な自分を両手に握って問い掛けている。
「え? どっちも要らない? まぁ!? 何て凄く謙虚な方でしょう!! では、両方プレゼントという事で」
ノシッと明らかに貰っても困る二人のさっちんを押し付けられてゲンナリした顔の彼に冗談ですと、この世界にもいるはずの弓塚さつきの顔をしたソレが笑った。
フッと二人のさっちんが消えて独りだけが残る。
「どうですか? 今回の世界は」
訊ねられて彼はポツリポツリと言葉を漏らした。
「そうですか。それは良かった。随分と今回の世界は“当たり”だったようですね。この聖杯を超えた力があれば、貴方の願いは無料大数分の一くらい叶うかもしれませんね。ふふ」
痛いところをズバリと付く偶像(アイドル)。
それは人が辿り着いた一つの理想(セイハイ)。
四月一日にしか現われないとされる完璧(パーフェクト)なるさっちん。
個別ルートすら完備していると噂される何処かの世界の女神である。
同じ聖杯(モノ)であるという事は相似化した形而上の同一固体であるという事でもある。
今、逆月にある塔のソレは結局のところ彼女自身なのだ。
「にゃにゃ~そうだにゃ~人間諦めが肝心という話もあるが、ん~熱い……」
カパリとまた別の聖杯(モノ)が現われる。
虚空に浮遊するのは給湯ポットから現われた猫型生物。
何処の神様(セイハイ)かは知らないが、明らかに猫的アルク。
否、アルク猫型給湯ポットだった。
ザプンとお湯に浸かりながら、話す様子は普通のノーマルに似ているが、その能力は似て非なるもの。
エネ○ープを出してくれそうでもあるが、基本的には適当にどうでもいいものを人々に齎す毒にも薬にもならない存在である。
今日は珍しく語り掛けてくる聖杯達(ソレら)に彼は何となく。
時が迫っているのだと知る。
「今回の貴方は救世主? それとも破壊者ですか?」
また現われたソレ。
今度は短い黒髪の魔法少女にしか見えない小○生(セイハイ)が訊ねる。
「………」
「そう、ですか。貴方は強いんですね……無限回繰り返したって、報われない。そう知っているはずなのに……」
「にゃにゃ~それがこのザ・ラスト・ワンなのだからして~」
「だよね~~。というか、何回滅ぼせば気が済むんだか~~まるで諦めないブロンズみたい」
暢気に笑う聖杯達に魔法少女型の聖杯がジロリと睨む。
「さすが魔法少女型の気配は違うにゃ~~ゾゾゾッと来るぅ~~。そう言えば、オニーチャンとやらは英霊の座から見付かったのかにゃ?」
「………」
「え? 人の込み入った事情は置いておいてデュエルしないか? いや~~【決闘者】とDuelなんぞしたら、ダンディーな我輩とおーばーれい!!! とか、りみっとおーばーあくせるかに!!! とかになりかねないからにゃ~遠慮します(ペコリ)」
「だよね~~アイドルが座ってカードとか。DuelDisc無かったら地味だし、中の人がガチデッキじゃないとちょっと」
「………」
「にゃににゃに? 髪型でアイドル性能が格段にアップするかも? さすがにそれはどうかにゃー(棒)」
「え? 本当に!? 何て食い付くのは基本的にノーマルさっちんだけだよ~あはは」
「いやぁ~~聖杯ですら幸せにするのは不可能だからにゃ~~~いや、冗談じゃなく。にゃはははは」
「あ、貴方達!! もう少し真面目に聖杯出来ないの!?」
思わず完璧なるさっちんとアルク猫型給湯ポットに突っ込んだ魔法少女であるが、適当に清らかな笑みと適当に温い笑みで返された。
「くくく、奴は四天王の中で最弱。というのが、最後に出てきた聖杯の悲哀かにゃ~~~」
「し、四天王って、他に誰もいないじゃない!!」
「それは此処には、という意味でにゃ~~。実際、聖杯なんて腐る程あるからにゃ~世の中」
「プラスシチュエーションとか。クリスマスパックとか。曲芸商法並みだよね~実際」
「その内、聖杯なんて世界別で言ったものがちになったりしてにゃ~~にゃははは」
「うわ~~在り得そうでドン引き~~~でも、普通にやりそう……」
「………」
「とりあえず、誰か来たら起こして? にゃ~に。この聖杯(ポット)に任せておけば、朝には何でもかんでも解決してますよ。奥さん♪」
「………」
即座に彼が横になり、瞳が閉じられた
「あ、本当に寝てる……ちょっと、デッキを拝借」
コソコソと彼の横にあったカードホルダーから紙束を取り出した一匹と独りの聖杯が会話を始める。
「え? ええぇ!? どうしたら、こんな使えない紙束になっちゃうんだろう!?」
「本当に千円しないんじゃにゃいかと……それにしてもピーキー通り越して特定デッキに対してのメメタァ的なもんしか積んでにゃいんじゃね?」
「だから、貴方達もう少し真面目に聖杯して!?」
ぜぇぜぇと疲れた様子で黒髪の魔法少女型の聖杯が言うも効果無し。
もういいとばかりにソレが眠っている彼の傍に座った。
「……………」
「惚れたかね? 汝」
ボソッと後ろから言われて思わずガタッと慌てて後ろに下がった魔法少女型の聖杯が猫を睨む。
「ちょ、ちょっとおにーちゃんに似てると思っただけです」
「ほぉ~解るとは中々」
「解る……?」
「この男が巷で何て言われてるか知ってるかにゃ?」
「え? それは凄いデュエリストとか。その……」
聖杯なのによく知らないとは言えず。
もにょもにょと言葉が濁される。
「曰く。何処かの誰かに似た誰か。曰く。誰かに間違われる男。曰く。伝説のデュエリスト。曰く。伝説のタッグデュエリスト。曰く。全てを統べる闇。曰く。精霊みたいな奴。曰く。一日中寝ていられる男。曰く。ギャルゲーの主人公。曰く。全てのカードに守られた男。曰く。デュエル馬鹿。曰く。赤い帽子の男。曰く。何者でもあり、何者でも無い、何者か。とかかにゃー」
「それって……」
「そう、この男に実態なんてないんだよにゃ~。デュエルの神。いや、デュエルという現象そのものと然程変わらないかもしれにゃい。人類が遊戯に生きて死ぬような世界からはみ出した時空や次元すら超越するもの。実際に名前なんて記号がこの男にとって必要かどうか疑問だにゃ……デュエルをした者達は全てこの男に行き着き、収斂される。なら、この男を呼ぶ時はただ現象としての相手【決闘者】が相応しいと思わないかね? “おにーちゃん”と呼んでも別に構わなくはあるが」
「―――」
「やってにゃかったかね? この男みたいにおにーちゃんとやらはDue――」
ゴウン。
そんな音と共に地下が揺れた。
「にゃにゃ? “今回の相手”がようやく来たかにゃ?」
「わ~~外が凄い有様になってる……アレ? のーまるなさっちんや魔法少女や白猫や、あ///」
完璧なるさっちんが外の様子を覗いたらしく。
途中から少し頬を染めた。
「ん~~ああ、久しぶりに想い人と一戦やってくかにゃ?」
ポットに入った湯で猫が訊ねる。
「ガ、ガチデッキでいいかな?!」
「い、いゃ、普通のデッキじゃにゃいと相手が全滅する気配が」
「そ、そぅ!? やっぱりそぅ!? じゃあ、ノーマルな私(さっちん)を消去して、私が成り代わる案で良い!!?」
「わぁ~お……ぶ、物騒だにゃ~~これだから、√の無い派生キャラは」
やれやれと溜息が吐かれる。
「全盛期征竜デッキなら今でも現役だよ!!」
「せめて、禁止制限(リミット・レギュレーション)は守るべきかと思うがニャ~友達失くすデッキはちょっと……」
「確か他には……普通の初手エグゾディア揃うデッキか。手札で罠(トラップ)カードを発動して、連続ドローでエグゾディアを揃えるデッキか。これくらいしかないんだけど、ダメかな!?」
「もう少しグレードを下げにゃいと物語が破綻する気配が……これを……」
「これって?」
「ああ、とってもお高い超特殊勝利デッキだから、事故率を鑑みても聖杯が使用者なら、これで十分かと」
「行って来ます!! ブロンズを消去して、独り占めしなきゃ♪」
ダダダダダッと掛けていく完璧なるさっちんにハンカチをフリフリ、ポット入り白猫が額の汗を拭った。
「さすがににゃ~万単位するだけの見て愉しむ用だから、勝利は無いと信じたいがにゃ~~……」
初手からドローに至るまで全て幸運ランクEXでガン回りの未来が見えたような気がして、猫は視線を逸らした。
「それで、これから貴方はどうするの?」
魔法少女型に訊ねられて緩々と首が横に振られる。
「まぁ、見物して行くかにゃ~~今回で近場の世界が一辺に全部消滅するかしれないしにゃ」
「そう……」
聖杯達は巨大な輝きの下。
今も安らかに眠る彼を見た。
最後の決闘が始まるまで。
その安らかな寝顔が乱される事は無いだろう。
世界の中心でDuelを叫ぶ英霊は未だ目覚めず。
新たなる敵が全ての者達に襲い掛かるのはそれから数分後の事だった。