クマ型軽巡洋艦クマだクマ!   作:秋津洲かも

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ガールミーツベアー

俺は紅葉を見に大学のサークルの友人たちと山に来ていた

 

この時期になると北海道は肌寒い

 

だが本州ではお目にかかれないような景色に出会える

 

皆は慣れない山歩きに少しくたびれたのか休憩中、俺は写真を撮ろうと茂みに入る

 

枝を踏み、枯れて小麦色になった草を分け入る

 

いいポジションが見つかった

 

カメラを覗き、手動でピントを合わせる

 

後ろからがさがさと草をかき分ける音がする

 

誰か俺に続いてこちらにきたのだろうか

 

その誰かに肩を叩かれた

 

登山用のポールだろうか

 

ちょっと痛い

 

次の瞬間、意識が途切れた

 

 

 

が、

 

一瞬のうちに意識が戻る、視界が光に包まれている

 

目をつぶるほどのまぶしさではないが

 

何かおかしい

 

脳が自分の体を認識できていない

 

光の外から声が聞こえる

 

何かが爆発したような音も

 

「沈め、沈めええええええ!」

 

「不知火さん、やったのです!」

 

少女の声だ

 

いや、一緒に来た友人に少女は含まれていない

 

体の感覚が少しずつ戻ってくる

 

二つの足で立っているのが分かる

 

しかし、手元にあったはずのカメラの感触がない

 

光も薄まってきた

 

右手を持ち上げ、自分の手を見やる

 

そこには毛むくじゃらの何かと鋭く伸びた爪があった

 

 

 

 

 

「みんな!ソナーにまだ反応はある?」

 

「ありません」

 

「無いわ」

 

「無いのです」

 

敵の脅威が過ぎ去ったことを確認し、集合を指示する

 

メンバーは私、陽炎型駆逐艦一番艦こと陽炎と、同じく駆逐艦の不知火・雷・電の4人

 

良し、全員無事、怪我をしている子はいないみたい

 

「よし、任務完了、鎮守府に戻るわよ。雷、鎮守府に連絡してもらえる?」

 

「はーい、私に任せておいて!」

 

「陽炎さん!ドロップした娘がいるみたいなのです」

 

「ん、電、どこ?」

 

「あっちなのです。不知火さんが最後に倒した深海棲艦がドロップしたのです」

 

電が指をさす方向を見ると、20メートルほど先に高さ3メートルくらいだろうか、光の円柱が立っているのが見えた

 

「あらほんと、お手柄ね、不知火」

 

不知火は言葉こそ返さないが誇らしそうにしている

 

「みんな、ドロップ艦よ、行くわよ」

 

さらに近づいていくと同時に光の濃さが薄まっていく

 

「誰が来るのかしらね?」

 

「楽しみなのです」

 

フッと光が完全に消えた

 

 

 

 

するとそこから現れたのはクマだった

 

『 球磨 』ではない

 

クマである

 

漢字に変換すると『 熊 』である

 

二つの足で立っている

 

「え・・・?」

 

四人は予測不能の事態に戸惑う

 

一番はじめに正気?に戻ったのは旗艦たる陽炎だった

 

少なくとも艦娘ではなさそうね

 

いや、決めつけてはだめよ

 

海上、水中とも深海棲艦の反応は周囲に無い

 

熊の着ぐるみを着たまま、ドロップしたかわいそうな娘なのかもしれない

 

でも身長は少なくとも2メートル以上ある

 

大和さんや武蔵さんよりはるかに高く、なんというか全体的に超でかい

 

可能性として、超弩級戦艦以上の何かと言われても思いつかない

 

でもでも、もしかしたら、でもでもの堂々巡りの思考の結果

 

最悪の場合を考えて、単装砲を向ける

 

新種の深海棲艦かもしれない

 

こちらにはまだ気付いていない

 

次の瞬間、クマらしき何かがこちらに振り向いた

 

「っ電!離れてっ!」

 

トリガーにかけた指に力をこめる

 

 

 

 

 

視界が戻ると、そこは一面の青だった

 

上も青、下は少し緑ががった濃い青

 

視線が高い

 

周期的に体が上下するのを感じる

 

右から気配がした

 

振り向くと、少女が4人いた、皆何かに怯えている

 

「ッイナズマ!ハナレテッ!」

 

今、なんて言ったんですか?

 

聞き逃した、そう思い、視線を交差させると、気付いた

 

彼女たちは俺を見て怯えている

 

俺、何かしたっけ?自分に非がないか考えてみる

 

「動かないでっ!!」

 

右手をこちらにかざした、中学生くらいの女の子が叫ぶ

 

びくっとした

 

なぜかは分からないが、彼女の意思は本気だ

 

それは分かった

 

左手を横に水平に上げ、後ろの少女3人をかばうようにしている

 

俺はたまらずその気迫に押され、動くなと言われたのにも関わらず、ゆっくりと両手を上げ、降参の意思を示した

 

 

 

十数秒間の静寂

 

 

 

むむ、それにしてもさっきからこの体勢は辛い、足が震えてきた

 

でも、動くなって言われたし、状況がつかめない今、大人しく従っておいたほうがいいだろう

 

もし、警察を呼ばれても、うん、そのほうが良い、俺は無実だから

 

しかし足の震えがけいれんに変わる

 

筋肉が悲鳴をあげている、限界が近い

 

あ、もうだめだ

 

たまらず下に手をつき、よつんばいになろうとする

 

その瞬間、爆発音

 

同時に背中の上を超高速の何かがかすめていった

 

 

 

 

(続く)

 




ちなみにクマはヒグマです

北海道で何度か、見たことがあります

次回、「和解」
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