思わず発砲してしまったことを陽炎は悔やんでいた
もし彼もしくは彼女がこちらに味方する勢力であるならば
幸い命中はしなかったものの、この1発の弾丸はこれからの関係に多大な悪影響を与えるだろう
駆逐艦ではあるが陽炎は一番艦としての自負を持っている
そして年長として後ろにいる3人を守らねばという責任感が彼女に引き金を引かせた
しかし、クマにはその複雑な陽炎の心情など知るよしもなかった
いや、前のめりに倒れ目の前に海面の青が迫ってくる状況にあわてたクマは、陽炎が撃ったことにさえ気付かなかった
何か大きな音がしたなくらいであった
「クマ―!」
倒れる、足に限界を迎えた俺はとっさに手を前に出した
とっさに目をつぶる
それにしても変な声が出た
「ク、クマ?」
両腕に重力を感じる
目を開くと眼前には水があり、かすかに塩の香りがする
穏やかな海面に自分の姿が映し出される
熊と目が合った
おばあちゃんが言っていた
熊に遭遇したら絶対に目を合わせてはいけない
このままでは襲われる
そう感じた俺はとっさに走り出す
「グマァァァー!」
見事な四足歩行を実現していた
10メートルほど走ったところで
身を守るため、両手で頭を抱えうずくまる
死んだふりである
陽炎はその姿を見て、目の前のクマのような何かは逃げ出したのだと思った
やはり味方だったのだろうか
まがりなりにも、それはドロップの光の円柱から現れたのだ
その時点で、最初は友好的に接するべきだった
そんなことを考えていると
横を何かが通り過ぎた
「陽炎さん!クマさんカッコカリをいじめてはかわいそうなのです!」
電は陽炎とクマの間に割り込み、背でクマをかばう
予想外の事態が起きた
私が悪いのだろうか
まあ発砲したのは確かだけれど
「そうよ、怖がっているじゃない」
雷はクマにかけよる
しばらくして俺は周囲を見渡す
あの熊はいなくなっていた
助かった
顔を上げると茶色のボブカットの少女が私の頭を撫でてきた
先ほどまでの怯えた様子はもはやない
こんな年端もいかない少女に
見苦しいところを見せてしまったようだ
俺は全てを理解した
少女たちが怯えていたのは俺に対してではなく、熊に対してだったのだ
「私は駆逐艦 雷、よろしくね」
なんだろう
この母に包まれているような感覚は
俺は恐怖から解放されたことも含め涙腺を刺激されたのか、涙が出てくるのを止められなかった
「ク、クマァ↓グス、クマクマァ↓グズッ」
「うんうんそうね。辛かったのね。もーっと私を頼っていいのよ」
陽炎は放心していた
頭の回転数は10秒当たりにつき1回転まで落ち込んでいた
不知火に助けを求める視線を投げる
すると不知火の視線は雷のほうへ向いていて、うんうんと首を縦に振り、微笑んでいる
陽炎は思った
長年の付き合いではあったが
不知火のこんな自然な笑顔
初めて見たわ
俺はひとしきり涙を出し切り、目をぬぐうと雷を見上げた
「よしよし、ねえ、あなたの名前を教えて」
「クマ―↑」
「クマさんね。私たちの鎮守府へ案内するわ、さ、立って。帰りましょう」
平和な海に夕日が沈んでいく
(続く)
クマだらけで文字変換するとき、良く分からなくなります
次回、「クマ着任の日」