突如、現れたゲームマスターから告げられた、デスゲーム開始の合図。広場に集まっていたプレイヤー達の表情が1人の少女の悲鳴と共に一斉に変わりだす。周りが動揺する中、八雲は1人冷静だった。仮想空間での死が現実になる、ログアウトでの脱出も不可能。簡単に言えばこの世界で生き抜いて見せろという事だ。これだけ大がかりなハッタリをかます意味もないだろう、ならばこれは真実と捉えておくべきだ。大半の者はここら一帯を狩場として力をつけることを考えるハズ。中には攻略には赴かず他者から略奪する事でこの世界で生きながらえる道を取る者も現れるハズだ、人間の歴史がそうであるように
それもまたいいのかもしれないが充実感に欠けた毎日を、送るのは現実となんら変わりがない。それなら、命をかけたデスゲームの方がスリルに満ちていて面白いに決まっている、中にはレベルを底上げして攻略に乗り込んでくる者もいるだろう。特にベータテストにいた黒髪の青年アバターのプレイヤーが気になるところだ。なら、それらの連中より上を行くためには必然的に効率のいいレベリングをしなければならない。ベーターの時の情報は全て頭に入っているため序盤のレベリング自体は難しくないだろう
その事に気づくベータテスターは少なくないハズ。なら一刻も早くこの街を出なくてはならない、そこでふと他のプレイヤーが慌てふためき行き交う中、他とは違う表情を浮かべている少女を見つけた。肩にかかるくらいの黒髪で、きっと笑えば向日葵のような暖かい笑顔を咲かせそうな、そんな印象を受ける少女。少女は確かに困惑しているが、恐怖というより、ボカンとしている感じだ
「お前・・・こんなとこで突っ立って何してるんだ?」
思わず声をかけた。自分から声をかけたのはいつぶりだろう。いつからか人を避けてきた自分にとってはこの行動がとても奇妙に思える
少女はゆっくりと顔をこちらに向けて、数コンマの間を置きハッと我にかえる
「えっとね・・・ボクにもわからないんだ〜」
困ったように笑う。正直に言おう、その解答がこちらにとっては最もよくわからないものだと
ますます謎の少女が気になった八雲は少女の手を取り広場から少し離れた場所まで連れて行く
「お前、今の聞いてなかったのか?」
半ば呆れながらたずねる。よっぽどのバカでない限りはゲームマスターから告げられた内容くらい理解できるだろうと
少女はうーんと少し考えた素振りを見せた後に真剣な表情でこちらを見てこう答えた
「ごめん、全然聞いてなかったや」
こめかみを抑えて思わず溜息をこぼすと、一通りの内容を少女に告げる。一瞬酷く驚いた様子を見せた後は真剣に話を聞いていた
話を終えた後。泣き出したり、悲鳴をあげる事もなく。ただ、じっと何かを考えてから口を開いた
「そうなんだ・・・じゃあ、1人だと危ないかな・・」
まあ、それは当然だろう。ベーターテスターならともかく初心者ならパーティでも組まなければ恐ろしくて出られないだろうなと八雲は思う
「そういう事だ。俺はもう次の街へ向かうからお前もとっととパーティなり組んで移動した方がいいだろうな」
じゃあなと立ち去ろうとする八雲の袖が何かに引っ張られ、溜息を一つついてから振り返る。案の定、引っ張っていたのは黒髪の少女だ
「あっ、そのー・・・ボクも一緒に行っていいかなーなんて」
困ったように笑いながら、落ち着きなさそうに立っている
「はー・・・なんで、俺がお前の面倒まで見なきゃならねーんだよ」
自慢じゃないが目つきの悪さには定評のある八雲だ。こうして話せば逃げていくかと思ったが少女は立っていた。目には怯えた色が見えるが、それでも少女は逃げたりしなかった
「お願い・・・今はまだ・・こんな所で・・」
さっきまでとはうって変わり、暗い表情を見せる少女。もしかしたら、少女はこの世界ではない、また別のところで何かを恐れているのかもしれない
少し間を置いて、さらに溜息をつくと。八雲はウィンドウを開いて答える
「・・・わかった」
ウィンドウを操作して、少女にパーティ申請を送り、それが受諾された事で自分の名前の下に少女の名前が現れる
「ユウキ・・か」
「え!なんでボクの名前知ってるの?!」
「自分の名前の近く見てみろよ・・」
「こんな所にあったんだね。クラウド・・・さんでいいのかな、よろしくお願いします!」
「クラウドでいい」
八雲こと、クラウドは思う。このユウキという少女は何故だか妙に気にかかる。まさか自分が誰かとパーティを組むことになるとは思ってなかったがなったものは仕方がない。一つ小さな溜息をつき、何もわからないらしいユウキに一通りこの世界でのレクチャーをした後、ユウキを連れて街を出た
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