ソードアート・オンライン Desire Of DragonKnight 作:光陽03
その代わりに1話まるごと戦闘回ですので、どうかよろしくお願いいたします!
世界初のVRMMORPG
-茅場晶彦
VRMMORPG
数多のメディアに顔出ししており世間から多大な人気を得ている。
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公にはその名は知られていないが裏で茅場晶彦を支えた人物であり、SAOのモンスターデザイナーである。
彼が描いたモンスターたちはどれもSAOの世界を盛り上げ、βテスターらには大変好評であった。
また茅場晶彦の数少ない友人の1人でもある。
そんな彼らの手によって作られたゲームが、今では世間を巻き込んだデスゲームへと変化していた。
★
SAO正式サービス開始から約1ヶ月、脱落者は2000人にその数を増やしていった。
しかしそれだけの犠牲を出しているにも関わらず未だに第1層すら攻略されておらず、ボス部屋の発見も成されていない。
そして第1層迷宮区に最も近い街『トールバーナ』
その広場で前線で戦っているプレイヤーたちが一同に集い、第1層ボス攻略会議が行われる
「ここでいいんだよな?」
「ああ、丁度いいタイミングだな。もうすぐ始まるみたいだ」
攻略会議の予定場所には既に40人程度の人間が出揃い、その中にリュウキとライアも混ざり攻略メンバーに加わろうとしている。
リュウキのレベルは8、ライアは9とこの会議に参加しているメンバーの水準程度のレベルだろう。
そして武器も負けてはいない。
来る途中のある村のクエストで入手した片手用直剣アニールブレードと短剣ショートダガーを装備している。
レベル・武装共にボス攻略メンバーと同格のはずだと判断した。
「それじゃそろそろ始めさせてもらいます!今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル、気持ち的に
劇場ホールのような広場に集結したプレイヤーたち全員の前に歩を進めた男がそう高々に名乗りを上げ、デスゲームに不釣り合いな朗らかな笑いで和ます。
その男、ディアベルの名乗りに顔見知りと思われる3,4人の男性プレイヤーが冗談混じりに冷やかしを飛ばした。
「明るい人だなぁ」
「どうやら彼がリーダーのようだな」
「何かマズイことでもあるのか?」
「いやその逆だ。優秀なリーダーだ」
「まだ一言も会話してないのにそんなはっきりわかんのか?」
「今日の俺は今後に関わる新たな出会いをする…そう占いで出た」
「占いなぁ…ゲームの中で当てになんのかよ」
「安心しろ、ゲーム内でも可能なコイン占いだからな」
そういう問題なのか、リュウキはそう突っ込みたい欲求に駆られそうになったがディアベルの口から出た言葉にその気はすっかり失せた。
「今日、俺たちのパーティーがボスの部屋を発見した」
リュウキだけではない。ライアもディアベルのパーティー以外の全てのプレイヤーが息を飲んだ。
どのパーティーもプレイヤーも、第1層の迷宮区のボス部屋への扉どころかマッピングすらも完了していなかった。
それだけにこのディアベルの報告には衝撃を受けざるを得なかった。
「ここまで1ヶ月もかかったけど、それでも俺たちは示さなきゃならない。ボスを倒しはじまりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。このデスゲームもいつかきっとクリアできるって、そうだろみんな!」
「ちょっと待ってんか、ナイトはん」
ディアベルの名演説に盛大に巻き起こった拍車喝采を打ち消すように低い声が広場に流れる。
サボテンに似た形の茶髪で、お世辞にもディアベルと同じ美形の部類には含まれないだろう顔立ちの男がその声の主であった。
彼は出てくるなり前置きもなくこんなことを言い始めたのだ。
「わいはキバオウってもんや。こん中に5人か10人、詫び入れなああかん奴らがおるはずや」
「キバオウさん君の言う奴らとは、元βテスターたちのことかな?」
ディアベルが問い詰めるとキバオウはまくし立てるかのように喋り出す。
βテスターが我先にと他のプレイヤーを置き去りにしたせいで多大な犠牲が出たのだと
彼らが情報やクエスト、狩場を独占したせいで他のプレイヤーが次々に死んでいったのだと
その責任を認め武器や防具を差し出し、今まで死んでいった2000人に謝罪しろ…でなければパーティーメンバーとして背中を預けられないと
「あのサボテン野郎!言わせておけば」
「いくな!」
今にもキバオウの顔面に一発殴りにいき兼ねないリュウキの腕をライアが掴み制す。
「あいつお前を馬鹿にしたんだぞ。お前だけじゃない全く関係ないβテスターだっているのに」
「手を挙げればお前が疑われることになるんだぞ。ましてや大事になれば攻略メンバーから外される可能性だってある。茅場晶彦に一発お見舞いするんじゃなかったのか?」
「くっ…!」
やむなくリュウキは挙げようとした拳を納め、悔しげに顔を歪ませる。
事を荒立てればまず真っ先に当て馬になるのはリュウキだ。
攻略メンバーから外されてしまったらこの先ずっとボス攻略に加わることさえできなくなってしまうかも知れない。
そうなればライアの言うように自らの力でデスゲームを終わらせ、茅場晶彦を殴れなくなる。
ここは黙って成り行きを見守るのが良策、リュウキが諦めた時、色黒の斧使いがキバオウに言う。
「発言いいか?俺の名前はエギルっだ。キバオウさん、あんたはそう言うが金やアイテムはともかく情報はあったと思うぞ…このガイドブックあんただって貰っただろ
?」
「もろたで、それがなんや!」
「道具屋で無料配布してるんだからな。これを配布していたのは元βテスターたちだ」
エギルが取り出したのは表紙に鼠マークのポイントが印された本。
彼の言葉が示す通り街の道具屋で無料で配られているものだ。
「あのマーク…アルゴのか」
「アルゴ?そいつもβテスターなのか?」
「β時代に少し話した程度だがな」
鼠なる人物に関してそれだけ言うとライアは再び広場の中央へと目を向け、キバオウとエギルの会話に注目する。
気付くといつの間にかキバオウは嫌々ながらも引き下がり、エギルも言うべき点は伝えたとばかりに自らが座っていた位置へと戻る。
そして本題へと戻すべくディアベルが軽く手を打ち合わせ仕切り直す。
「それじゃ色々あったけど、まずは6人のパーティーを組んでレイドを作ってくれ。普通のパーティーじゃボスは倒せない」
「レイド?」
「一口に言うなら大人数パーティーのことでSAOのボス戦は基本レイドで戦うことになる」
「俺たちが2人で、後4人必要なのか」
周りを見ればもう大半が最初から馴染みのある集まりだったりで組んでしまい、残ったメンバーが限られてしまっている。
残っているのは黒髪の少年とその隣で赤ローブで顔を隠している性別のわからない人物、そしてもう1人黒髪をした少年の3人のみとなった。
しかしどの道ボス戦においては誰もが頼りになる味方であるのは変わらない。
組めなかった者同士でパーティーを作ったって特に支障は出ないはず、そこでリュウキとライアは余った者たちにパーティーを組むように声をかけにいく。
「ならあの2人には俺が声をかける。リュウキは残った1人を頼んだ」
「おう。任せとけ」
ライアから任されたリュウキは意気込んで1人でいる彼をパーティーに加入するために近付き、頼み込む。
「なあそこのあんた、まだパーティー組めてないんだろ?俺らと組まないか?」
そうリュウキは申し出るが男からの反応はない。
聞こえてない筈はないだろうに何故何も反応がないのかと疑念を持ちながらもリュウキはもう一度試みる。
「俺らとパーティー組まないか?」
「…」
「おーい聞いてんのかー?」
「……」
「…言い方が悪かったのか?俺らとパーティー組みませんか?」
「………」
「……僕たちとパーティーを組んで下さいますでしょうか?」
「…………」
「………貴方の力を見込んでのことです。お願いですからどうか何とぞお力をお貸し下さいませんでしょうか?」
何度繰り返し言い方を変えて見ても素振りすらなくリュウキも段々腹が立ったのか、口調こそ丁寧ながらも顔がひきつっている。
だがそれでも男は侮蔑の視線を移しただけでまともに会話すらできていない。
「あんた絶対聞こえてんな!おい!」
終いには感情に委ねた結果、しゃがんで男を睨むリュウキ。
もはや端から見たそれはメンチを切るヤクザ以外は到底連想できない。
しかしそれでも男からの反応はなくリュウキはお手上げと言いたげな様子で引き下がる。
「無視かよ…わかった。そんなにパーティー組むのが嫌なら1人でやれよ。どうなったって俺は知らないからな」
引き際にそのようにリュウキは男に告げ戻ろうてした瞬間、目前にパーティー招待通知が出現した。
突然で多少動転したもののリュウキは通知を確認すると送り主の名は『Knight』となっていた。
おそらくはあの無口な男からだろうと察したリュウキは名前の読みを呟く。
「けないと?違うな…こないと…どうもしっくりこないな。くないと?…うん、クナイトか、変わった名前だな」
悲しいかな、それを耳にして訂正する者は誰1人としていなかった。
★
あの後聞いたところライアも残った2人と無事パーティーを組むことに成功したようで、そちらの人柄は良く連携が上手くいきそうだと語っていた。
その夜、リュウキとライアは数日前から寝泊まりしている部屋で、攻略会議の成果を踏まえて明日のボス戦の段取りを確かめていた。
「改めて確認するぞ、攻略会議で言っていた通りボスの名は『イルファング・ザ・コボルトロード』。斧とバックラーを武器にしているが、体力バーが赤になると曲刀カテゴリの『タルワール』に武器を変える。こいつの相手は基本ディアベルを中心とするパーティーがするから俺たちがやり合う機会は少ないが、油断はするな。情報は叩き込んでおけ」
「おう」
「次は取り巻きの『ルイン・コボルト・センチネル』、複数ポップして防御力の高い侮れない敵だ」
「そいつらの相手を俺たちのパーティーがするんだよな」
「そうだ。センチネルへの攻撃は鎧のせいでなかなかダメージが通りにくい、唯一空いている喉元に狙いを集中させスイッチでの連携を上手くやれれば難しい敵じゃない。とまあ、大体こんなところか」
おおよそボス戦のアドバイスを教えたライアと彼の有難い教授を受けたリュウキは、ほぼ同じタイミングでホッと一息つきはりつめていた肩を撫で下ろす。
「βテストじゃいつもあんな感じで会議やってたのか?」
「やってることは余り変わらないな。ただ今回は情報が十分出揃っているからか偵察戦を行わない分助かる。あれはボスの攻撃パターンが初見でわからないだけに多くの犠牲が伴うからな」
「へーそれじゃガイドブックに救われたな。これを作ったアルゴってβテスターに感謝しないとな」
「イヤだなぁ~誉めても何も出ないゾ」
リュウキに続いて響く第3者の声。
耳元で囁かれたその声にリュウキは下ろしていた肩をすくみあげ、驚きのあまり絶叫。ゴキブリ顔負けの無駄のない華麗な動きで尻込み仰け反る。
頬に三対の猫の髭を模したような線のペイント、鮮やかな金色よりかは黄色に近い髪の少女。
そんな来訪者にライアはあわてふためくリュウキを尻目に、さほど驚いた様子もなく来訪者に声をかけた。
「うおわああああああ!!?」
「お久しだなライライ」
「久しぶりだなアルゴ。どこから入って来た」
「あんたがアルゴ…って女だったのか!?」
「そういえば言ってなかったか…彼女がアルゴ、俺と同じ元βテスターだ。アルゴ、こっちはパーティーを組んでいるリュウキだ」
面識の無い二者をライアがそれぞれに軽く紹介すると、リュウキとアルゴはお互いに気負うところなしに気さくな微笑みで握手を交わす。
「ボス戦の情報ありがとな、それとこれからよろしくなアルゴ」
「こっちもよろしくナ。ライライの相棒か…リュウキだからキーリューでいいカ?」
「キ、キーリュー?」
「アルゴは他人を独自の名前で呼ぶ癖があるんだ」
「おいおいライライ、オレっちが誰彼構わず呼んでるみたいに言うなヨ。さすがに全員にライライみたいな呼び方しないゾ」
「とりあえずその話は置いといて、ここに何の用だ?アルゴ」
拗れた話を本題に戻してライアはアルゴにこの場を訪ねた用件を聞く。
そうすると彼女は腕を組み、そんなことかと何とも無さげに答える。
「特に用って用はなイ。たまたまキー坊に話があったついでにライライに会おうと寄っただけダ」
「そのキー坊はもしかしてキリトというプレイヤーのことか?」
「お察しの通リ。明日のボス戦でライライとキーリューのパーティー組むことになってるキリトだ。っともうこんな時間カ、オレっちはもう帰るな。ライライ、キーリュー、ボス戦頑張れヨ」
「もちろんだ」
「第2層でもよろしくな!」
アルゴの応援にライアは頷き返しリュウキはサムズアップを送る。
異なる反応ではあるが仕草に秘めた思いは変わりはない、それを認めたアルゴはそそくさと窓から外へ飛び出し建物の影へとその姿を消す。
そしてまた二人きりとなった部屋の中でリュウキはあることを思い出し無意識に口にする。
「どこから入って来たんだ?」
「さあ?それにしても情報屋としての腕は確かなようだな、まさか俺たちの居場所を特定するとは」
トールバーナには5日前から寝泊まりして、部屋の場所はリュウキもライアも他言していない。
だとというのに、アルゴは僅かそれだけの期間の内にここを特定しその上ガイドブックを製作、プレイヤーたちに配布していたのだ。
どこにも非の打ち所がない情報屋として強力なバックアップになっていた。
「俺たちもアルゴに負けてられないな」
「ライア、絶対に明日第1層クリアしようぜ」
「もちろん言われなくてもそのつもりだ」
★
そしてその翌日第1層迷宮区
「皆今から俺が言うことは一つだ…勝とうぜ!」
ディアベルを筆頭とする大パーティーによるボス攻略戦が始まりを告げた。
キバオウさんは、あのサボテン頭は強烈だった…