ソードアート・オンライン Desire Of DragonKnight   作:光陽03

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新年最初の投稿です。

今回は私のSAOのヒロインの中では一番好きなリズベットさんの登場です。


六枚目 鍛冶屋と龍剣士

「どこにあるんだろう?」

 

 

第48層リンダース

その街中でそばかすが印象的な童顔、ピンク髪の少女、リズベットは悩んでいた。

年頃の乙女らしい友人関係についてでも、意中の異性についてどうアタックすればいいか恋愛関係でもない。

彼女の悩みは

 

 

「全く情報がないのよね水晶クエストの」

 

 

最近巷で噂になっているクエストについてだ。

リズベットは生産職…鍛冶屋を営んでおりつい2カ月前には自分の店を持ち、客に恵まれ商売も右肩上がりの絶好調だった。

それはすなわち彼女の鍛冶屋としての腕の高さを裏付けているわけだが、そんな彼女にも欠点があった。

-武器の種類の少なさ

開店したばかりというのもあり他店に差をつけられる武器がないのだ。

そこで目をつけたのが今噂になっているクエスト。

何でも報酬が素材の水晶らしいのだがそれ以外何も情報を耳にしないのだ。

マスターメイサーでもあるリズベットとしては絶対に獲得したいところ。

だから街に出て情報収集を行っているのだが、驚く程に成果がない。

今日はひとまず中断して店に戻りかけるも、偶然耳にした会話がその歩みを止めさせる

 

 

「-だからそれが怪しいんじゃないかって睨んでんだけどどう思う?」

 

「キーリューの言ってることが本当なら間違いなく何かあるだろうナ」

 

「だよな!アルゴもそう思うよな。よしもう一度行ってみっか、もしかしたら今噂の水晶クエストかもしれないし」

 

「水晶クエスト…!?」

水晶クエスト、その単語に引き寄せられるようにリズベットは壁に身を潜め聞き耳を立てる。

幸い聞き耳スキルを持っていなくとも会話の内容は聞こえるが、盗み聞きという行為は真面目だけが取り柄だった中学生の自分からすれば罪悪感を感じざるを得ない行為。

しかしこれも水晶クエストのためと心に律しリズベットはそのまま続行した。

 

 

「でモ、 それで何も起きなかったんだロ?また行っても同じ結果になるんじゃないカ?」

 

「そりゃアルゴの言う通り行ったって意味ないかもしれないけどさ、やっぱり何か仕掛けがあるんだよ。例えばこう…ダンスするとかさ!」

 

「…そんなので発動するクエスト、さすがにオレっちでも聞いたことないゾ…大体キーリューが発見したのは剣と槌の絵だロ?それで動くもんカ」

 

「それもそうか…じゃあどうやったらできんだよ」

 

「うーん、2人以上のパーティーで挑むクエストかもしかしたらマスターメイサーが関わるクエストかもナ」

 

「マスターメイサーが?」

 

 

それを聞いた瞬間リズベットは更に彼らの会話に惹き付けられた。

壁越しにいるリズベットに感付いていないのか、彼らはどんどん互いに意見を交えていく。

 

 

「ソ、ちっと前に同じ情報仲間から聞いたんだガ、それまで何もなかったのにマスターメイサーを連れて行ったらたまたま発動するクエストがあってナ。ひょっとしたらそれも似たようなモノかもしれなイ」

 

「…そりゃ気になるけど俺マスターメイサーじゃないし、マスターメイサーの知り合いもいねえんだよな」

 

「言っても本当にそうか決まったわけじゃなイ。無駄かもだけど、気になるならもう一度確かめてみたらどうダ?」

 

 

そう言ってアルゴはリュウキに別れの挨拶代わりに手を振って、建物を横切っていなくなる。

1人残ったリュウキは頭を悩ませ思案していた。

 

 

「マスターメイサーか…どうすっかな~、とりあえず行ってみっか」

 

「あ、あのそこにあたしも連れて行って!」

 

 

堪り兼ねてつい飛び出してしまったリズベット。

ポカンと間抜けそうな目で自分を見るリュウキの姿を目にしてようやく己が無礼な行いを働いてしまったと、軽く後悔するが今更後には引き下がれない。

リズベットは勢いを保ったままリュウキに頼み込む。

 

 

「ごめんなさい。あたしマスターメイサーで鍛冶屋なの、それであたしも水晶クエストに興味があって、だからその、あなたの言うところに連れて行って欲しいの」

 

「本当に、あんたマスターメイサーなのか?」

 

「嘘はつかないわ。もちろん取り分はあなたにもあげるから、だからお願い!」

 

 

前半リズベット自身何と言っていたか、もう既に忘却の彼方へと飛んでしまって覚えていないがそんなことはどうでもいい。

今最も重要なのはリュウキと組むことだ。

なにせこの男しか場所を知らないのだから。

 

 

「いや~助かった。マスターメイサーが必要かもってアルゴに言われた時はどうしようか焦ったけど、あんたが聞いてくれてよかった!あ、俺リュウキな。よろしく!」

 

「は、はあ…」

 

 

リュウキはリズベット以上に興奮し今にも跳び跳ねそうな勢いだ。

よもやこんな反応を間近でされるとは思いもしなかったリズベットは失礼ながら若干引き気味になってしまうが、リュウキはどこ吹く風というように流す。

 

 

「じゃあさっそく行こうぜ!」

 

「ちょっと待って!行くって?」

 

「決まってるだろ、絵があった場所だよ。早くいかねえと他の奴らに出し抜かれちまうからな」

 

「だからその場所はどこなのよ。どこか言ってくれないとどういうポーション準備すればいいかわからないじゃない」

 

「あ、そうか、わりいわりい。えーと、名前は?」

 

「リズベットよ」

 

「よしじゃあリズベット、俺たちがこれから行く場所は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~綺麗~!」

 

 

第58層忘れられし海

階層の7割がサラサラした砂浜と清涼な海で占められており、夏に相応しいテーマとなっている。

 

 

「58層に来たの初めてか?」

 

「マスターメイサーっても、あたしの本業は鍛冶屋よ。そうそうしょっちゅうフィールドに出ないわよ」

 

「そうか。なら気をつけろよ、ここ岩に紛れて隠れてるヤドカリは毒持ちだからな」

 

「ちょ!それ早く言いなさいよ、あたし解毒ポーションそんなに必要ないと思ってあまり持って来てないんだから!」

 

「お、落ち着けって、俺がちゃんと余分に持ってるからさ。な?」

 

 

初対面であることを忘れきっているのか、口喧嘩に近い口調で会話が形成されている。

しかしその一見険悪とさえ取れる雰囲気もモンスターとの戦闘になれば一変。

リュウキとリズベットは綿密な打ち合わせをしていないにもかかわらず、初戦とは思えない見事な立ち回りを披露していた。

イソギンチャクやクラゲなど軟体生物をモチーフとした敵にはリュウキの片手剣『フルードソード』が、エビや亀など甲殻類をモチーフとした硬い甲羅や鱗を持った敵にはリズベットのメイスが唸りを上げモンスターをポリゴン片へと変えていく。

群がる敵を掃除した彼らは砂浜に刻まれた肝心の剣と槌が交差した絵の元に辿り着いた。

 

 

「これね、あんたが言ってた絵ってのは。確かに如何にも何かありそうな感じの絵ね」

 

「だろ?俺もそう思って試しに剣と槌を置いてみたり上に乗ってみたりしたけどなんも反応しねえんだよ」

 

 

「それならたぶん武器を揃えるだけじゃ駄目なのね、もっと他に必要な物があるってこと?」

 

「だろうな、お前と来ても変わってねえし」

 

 

マスターメイサーのリズベットとパーティーを組んで来ても砂に埋められた絵は、何のアクションも起こさない。

他に何らかの必要な要素がある、それか余分な要素がある、それともマスターメイサーは関係がないのか。

余計にわからなくなったとリュウキは頭を抱え、リズベットも黙りこくって神妙な顔つきをする。

その数秒後、何の偶然かリュウキとリズベットの足がほぼ同じタイミングで砂浜の絵を踏む。

すると絵は青色の輝きを放出し、彼らを包み込む。

 

 

「な、何なのこれ!?」

 

「この光、転移か?リズベット、飛ばされるぞ!」

 

 

そして光が収まると周りにはおらず、絵の上には海から押し寄せた波が揺らぐだけとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どこだ?ここ」

 

 

リュウキが目を覚ますとさっきまで頭上を照らしていた肌を突き刺す陽光は一筋も射し込んでこず、ゴツゴツとした岩盤だけが辺りを覆っていた。

見たところ、どうやらここは鍾乳洞のような場所のようだ。

 

 

「まさかあれが転移システムがあるなんてな…そうだ、リズベットは?おーい、リズベットー!いたら返事しろ!」

 

声を上げ左右に首を振り辺りを捜索してみるが、己の声が反響するだけでリズベットは見つからず、尖った岩盤から滴り落ちる水滴が空虚に水溜まりを打つ音が響くだけ。

自分とは別の場所…あるいは別空間に飛ばされたか

どちらにしろ彼女と分断された状況には変わりはない。

 

 

「あの時咄嗟に手を掴んでおけばこんなことにはならなかったかもな…こうしちゃいられない。急いで見つけないとな」

 

 

そう決めたリュウキの行動は速かった。

索敵スキルで視野を強化し敵とのエンカウントを最小限に抑え、遭遇しても4連撃ソードスキル『バーチカル・スクエア』や範囲攻撃スキル『ホリゾンタル』で迅速に撃退していく。

その最中立ちはだかった水牛『バッファウォッカス』が中ボスクラスのモンスターのようで、やたらと手間のかかる強敵だったが、ポーションを消費せずともHPバーをグリーンに保った状態で勝利を収めた。

 

 

「そろそろ見つけないとマズイ。どこだ、リズベットっとうわあ!?」

 

 

踏み出した足元の岩盤が脆かったようで、リュウキの足元を中心にひび割れが生じ崩れていく。

そのまま瓦礫と共にリュウキは頭から真下へ落下してしまい、喉がはち切れんばかりの悲鳴を上げる。

 

 

「ヤバい、これはヤバいって!ああああああああ-」

 

 

15秒程で眼下におぼろげながら地面が見えるが今の体勢では莫大な落下ダメージは免れない。

残り少ない滞空時間で体勢を立て直そうと試みるがてんで効果がなく、いよいよ地面との激突の瞬間が近付きつつあった。

 

 

「え?-きゃあ!?」

 

 

だが寸前で何かがクッションの役目を担ってくれたおかげでリュウキはどうにか致命的な落下ダメージは負わずに済んだ。

ホッと一息安堵すると、脱力感 に襲われリュウキは前のめりに倒れるが…

 

 

「…っかなんだ?このクッションみたいなの」

 

「-なさい」

 

「へ?」

 

「降りなさいよ!」

 

 

おかしい。

クッションが喋り出したのだ。

そんな馬鹿な、リュウキはそう言い聞かせ再び肩の力を脱ぐがその際、自らがのしかかっているものの正体をにようやく知る。

 

 

「り、り、リズベット…!?」

 

「あんたねえ-」

 

「悪い!本当にごめん!すぐ降りる。わざとじゃないんだ!」

 

「……本当に?」

 

「ああ本当だ!いえ本当です!信じてください!」

 

 

リズベットの体から降りたリュウキは己の仕出かした行為に羞恥で顔が染まり、リズベットを直視することができない。

だが断じて故意があったつもりではないと、土下座をし強くリズベットに訴えかける。

 

 

「顔上げなさいよ、まあいいわ。嘘じゃなさそうだし信じてあげる」

 

「…アザっす!」

 

 

 

 

 

 

 

改めて2人合流した彼らは鍾乳洞を探索し外に繋がる出口を探す。

けれども鍾乳洞の半分近くのマッピングを頼りにしても、一向に出口はおろか外界からの光すらが見当たらず、段々と方向感覚が掴めなくなっていた。

 

 

「さっきここ通ったか?」

 

「少し違うみたい、あの捻れた岩なかったもの」

 

「全然どこにいるかわかんねえな、こりゃ。ちょっと休もうぜ」

 

「そうね、あたしも久々に戦闘なんてしたから疲れたわ」

 

 

歩けど歩けど代わり映えのしない景色。

飽き飽きだとリュウキとリズベットは一旦小休止を取り、気休めでしかないが疲れが溜まった体を休める。

するとリュウキがメニュー画面を操作してバケットを出すと、リズベットに手渡す。

 

 

「そうだ、リズベット。これ食べるか?」

 

「いきなり何よ。これ…サンドイッチ?」

 

 

木製のバケットの中にはぎっしりと、肉と野菜をふんだんに使ったサンドイッチが詰められ、焼けた肉の香ばしい匂いがリズベットの鼻を刺激する。

とても

 

 

「もしかして、これ全部あんたが作ったの?」

 

「そう、一応料理スキル上げてるからな。それに現実(リアル)でも家族の飯毎日作ってたの俺だから、これぐらいはできる」

 

 

-何か女子として絶大な敗北感を味わった気がする。

リズベットは複雑そうに苦笑いを浮かべていたが、バケットからサンドイッチを手に取りそっと口に運ぶ。

口内に充満するさっぱりとした野菜の食感、素材の良さが伝わる濃厚な肉汁、ふんわり柔らかなパン生地が程よく肉を引き立てている。

しかし最もインパクトが強いのは温かさだ。

売店の食材、食物では絶対に味わえないであろう温かさがある。もちろんSAOにそんなNPCとプレイヤーの作った料理を仕分けるシステムなど搭載されていない。

リズベットの単なる思い込み。想像の産物から来るものだ。

だがそれがあるからこそ…どれひとつとして欠いていないからこそこの味が出せるのだろう。

久方ぶりに食する他人の手で作られた真心籠ったじっくり食したリズベットは自分の味覚に素直に従い、作り手に感想を述べる。

 

 

「美味しい。こんな美味いの久々に食べたわよ、アスナとも張り合える料理の腕じゃない」

 

「アスナ?それ血盟騎士団のアスナのことか?」

 

「アスナを知ってるの?」

 

「第1層のボスとの戦いで一緒に戦ったんだ。最近は顔会わせてないけど前はちょくちょく会ってた」

 

「へ~、あんたアスナと知り合いだったんだ」

 

 

よもや今日初めて出会った他人に共通の友人がいるとは思いも寄らず、彼らは料理の話題から一転。

これまで以上に会話が盛り上がり彼らの間に無自覚に生じていた溝も急速に埋まっていく。

そして切りのいいところで中断させ出口の捜索を再開する。

 

 

「よし、そろそろ行くか」

 

「ねえ、あの絵であたしたち、この鍾乳洞に転移させられたのよね?」

 

「ああ。転移が作動したきっかけが何だったのかははっきりしてないけどな」

 

「もしあの絵が水晶クエストに関係があるならここにその水晶があるってことはない?」

 

「そりゃ……ん?何だあれ…」

 

「あんた人の話し聞いてる?急に止まってどうしたのよ」

 

 

ドームのように円形で広い空間に出るとリュウキは岩肌のある一点を見据え足を止める。

後ろから訊ねるリズベットの言葉が耳に入っていないのかリュウキは己の視線上に位置する岩肌に分け目も振らず歩み、リズベットも訝しげながら付いていく。

 

 

「リズベット。鑑定スキル持ってるよな」

 

「当たり前よ。さっきも言ったでしょあたし鍛冶屋もやってるって」

 

「ならこの青く光ってるのを鑑定してみてくれ…俺の予想が間違ってなかったらたぶん」

 

「どれどれ-」

 

 

そうリズベットがリュウキの真横から顔を出して見てみると岩と岩の隙間から、おぼろげではあるがキラリと輝く青い光が覗いている。

丁度指一本分入る程度の穴でありリズベットがそこから指を突っ込んで、光をタップし展開された画面に目を凝らす。

 

 

「えーっと…『アインスサファイア』。それがこの鉱石の名前みたい」

 

「俺たちが狙ってた水晶アイテムか?」

 

「間違いないわ。危ないから下がってて、邪魔な岩を壊すから」

 

 

指示通りリュウキはリズベットに任せ何歩か後退して万が一の場合に備えて待機する。

下がったのを確認したリズベットはリュウキに軽く頷くと、メイスを振りかざしてソードスキルを岩に叩きつけた。

 

 

「-はあああああ!!」

 

 

一撃一撃が岩を打つ度に鍾乳洞全体が震撼する。

パラパラと頭上から石粒が大量に降り注ぎ、轟音の反響も凄まじくリュウキは段々不安になっていく。

 

 

「うおおい!?ちょ、これ!これで大丈夫なのか!?うおわっ!?」

 

「根性ないわね、これぐらい我慢しなさい!」

 

 

-下手な男より男してんな

今もメイスを岩に打ち付けこちらを叱咤するリズベットの立ち姿に尊敬の意を向けつつ、反面おっかないとさえ思えてくるリュウキは、上級モンスターとやり合うよりも恐ろしさに両足ががたつく。

そうして10数回に及ぶ連打でやっと岩が粉砕され青い光の奔流が空間内に伸び、輝きを強くする。

 

 

「っしゃあ!」

 

「やった!」

 

 

その煌めく表面を完全にさらけ出した水晶をリズベットはアイテムストレージに収納し、両手を上げて歓喜の心情を露にする。

またそれとほぼ同時に水晶の埋め込まれていた岩が消え、その後ろに大扉が出現した。

 

 

「クエストクリアでいいんだよね?」

 

「水晶を手に入れたんだからクリアだろ。後は戻るだけだ。さっさと出ようぜ、あんまり長居はしたくない」

 

「そうね。こんな薄暗い洞窟、さっさと出ましょ」

 

 

リュウキの言葉にリズベットが同意すると、出現したばかりの扉を2人で開き何重にも螺旋構造になっている階段を下った。

 

 

 

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