ターゲット
深紅の液が飛び散り、豪華な花を咲かせる。
薔薇の花畑のようなこの景色を、今まで何度見てきただろう。
『続いて、東條希に移ってください』
耳元から電子音が鳴る。
機械を通したような声で伝えられる、次の“ターゲット”に移る合図。
東條希。
資料で見た限りでは、単純そうな人だという印象を受けた。
実際に会ってみないとわからないとはいえ、ボロボロになった小学生が「助けて」と言ってくれば放っておくことはできないだろう。
疑うまでもなく、部屋に入れてくれるはずだ。
私はゆっくりと窓を開き外に出るとすぐに窓を閉め、外から窓を割って腕を入れ、鍵を閉めた。
これは初めての試みだ。
上手くいけば、“被害者が部屋で寝ていたところを犯人が窓から侵入して殺害した”というありがちな事件として、警察は容疑者を探すはず。
そうでないとしても、逮捕されることはまず無いだろうから、今回のこの試みにリスクは無いと言える。
それにしても、犯人というのはどうして衣服を変えようとするのだろう。
その服装を上手く使えば、人を騙して自宅に入り込み、そこの住人から金品を奪うことだってできるのに。
まぁ、そこまでできるのは私だからであって、一般の素人がこの方法を使ったところですぐに疑われて通報されるだろうし、それすらしない単純な人を上手く捕まえられたとしても、一時的に逮捕を免れるだけで見つかるのは時間の問題。
見つかれば直ぐに逮捕されてしまうだろうけど。
私は目撃者がいた場合の対策のために髪を緩くポニーテールに結ってからベランダから飛び降りた。
上手く着地しすぎると、もし目撃者がいた場合の言い訳が効かない。
一瞬足をつくと、すぐに横に転がる。
遠目から見れば、ベランダから小学生が落ちてきたとしか思わないはず。
少し遠くのマンションの下の方の部屋の窓から、こちらを覗き込んでいる女性を見つけた。
面倒事は避けたい。
ゆっくり立ち上がり、髪型が少し見えるようにする。
これであの女性が得たこちらの情報は、小柄な小学生であることとポニーテールであること、辛うじて髪色がバレたかどうか。
仮に警察に伝えられたとしても、まずこの辺りの小学生を探すだろうからその間に逃げられるし、ポニーテールという情報がある限りしばらくは見つからないはずだ。
女性は私にまだ息があるのを確認したからか、慌てて家の中に入っていった。
このままここに助けに来るつもりだろう。
逃げ出すのなら今のうち。
スッと立ち上がると、直ぐに東條希の家の方向に向かった。
μ'sの登場は次回からとなります。
※次回登場しないキャラクターもいます。