希がお茶を注ぐ。
時刻は午前5時過ぎ。
外が明るくなり始め、雨が降っていなければとても綺麗な景色が見られそうな時間だが、あいにくの土砂降り。
この様子だと、日の出の美しい景色を味わうことはできなそうだ。
「はい、お茶どうぞ〜」
ニコニコしながらカップを差し出す希。
友達ながら、可愛い顔をしてると思う。
少なくとも、今まで私が見た中では一番可愛く笑う。
「ありがとう、希」
「いいえ〜。あ、テレビ付けよっか」
テレビがパッと付くと、ちょうど朝のニュースを放送していた。
最近のニュースといえば、“天皇陛下がお言葉を〜”とか、“あの芸能人が新たな芸を初披露〜”とかいう、はっきり言ってつまらないものばかり。
かと思えば、“猫の死骸がバラバラの状態で発見され〜”とか、“某男子生徒が自殺し〜”とか、そんな物騒なニュースをやっていたりもするから最近の日本はわからない。
芸能人がどうこうとか、殺人がどうこうとか、それらを同じ番組で放送して良いものなのか。
『続いてのニュースです。昨日未明、また例の連続殺人だと思われる殺人事件が発生し——』
「また起きたの?例の殺人事件」
「そうみたいやねぇ」
画面を見ると、画面右上に“あの妙な連続殺人事件、また”という見出しが表示されていた。
ここ最近、男性だけが被害者となる妙な殺人事件が起きていた。
犯人の手掛かりは一切無し。
名前は疎か、体格や性別、声、身体的特徴など、何もかもわかっていないのだ。
殺人事件の現場は、ほぼ毎回被害者の自宅。
そうでない時はホテル。
ホテルの場合はさすがに防犯カメラなどに証拠が残っていそうなものだが、何故かデータが破損していたとか、ちょうど点検のために外していたとか、そんな偶然とは思えないことが重なり、防犯カメラは一切手掛かりにならない。
被害者宅で殺人が行われていた場合も、被害者宅に人が入った形跡は無し。
そんな訳がわからない滅茶苦茶な事件だ。
「でも、うちらは女の子やん?だから大丈夫やと思うんよ♪」
「あのねぇ……」
『今回は例外的に犯人の手掛かりが現場に残っていたとのことですが、そのことについて——』
ニュースを聞いて衝撃を受けた。
あの完全犯罪の手掛かりが見つかったということは、犯人がようやくボロを出したということになる。
ニュースによると、被害者宅に女性のものと見られる髪の毛が落ちていたらしい。
それに加え、死亡推定時刻頃、被害者宅から出てくる少女が目撃されたという目撃証言があり、更にその少女の服には血が付着しており、声をかけても一切の反応を示さなかったとか、死亡推定時刻頃に被害者宅から“みあ”という人名らしき言葉が聞こえてきたとか、被害者宅に入っていく子供を見たとかいう証言もあると言う。
「随分と油断してたんやね……?」
あまりに情報が揃いすぎているからか、希が疑わしく口を開く。
確かに出来過ぎだとは思うが、情報が揃っているなら別に損では無いだろう。
きっと。
『これまでも多数目撃証言が入っているそうですが、どうして今回だけ——』
「ほら、やっぱり」
疑わしく思ったところで、ニュースからのこの仕打ち。
まぁ、そうだろうと思ってはいたが。
『今回の証言は特に多数入っている上、複数の目撃証言に矛盾が無く——』
つまり、今までとは違って今回は信憑性がある証言が多かった、ということだろう。
ただそれだけ。
別に確実な情報が多かった訳では無かった。
と、少し落胆しかけたところでチャイムが鳴った。
ここは希の家。
μ'sのみんなか、希のご両親、それか宅配ってことになるけど……。
「はぁーい、どなた〜?」
希が扉を開くと、家に駆け込んでくる金髪の女の子。
癖が無いまっすぐなワンレンヘアで、パステルカラーのワンピースを身に纏った可愛らしい少女。
ひとつおかしいとすれば、服に血が付いているということ。
付いていると言うよりも、滲んでいる。
血が付いてから、少し時間が経っている……?
「ちょ、どうしたん?」
少し焦った様子で希が聞くと、女の子はへなっと床に座り込んでしまった。
「お茶……いただけますか……?」
「ちょうど今飲んでたんよ〜。おいで?」
希ニッコリ微笑むと、少女に手を差し出した。
のぞえりのみの登場となりました。
しばらくは、この三人で進んでいきます。