何の偏見も無しに見てみると、芽依はとてもか弱かった。
華奢な体、幼い顔立ち。
身体を小刻みに震わせ、瞳から涙を零す少女。
ただの、子供。
さっきまでは、どう頑張ってもそんな風に見られそうになかったのに、どうしてか今は芽依が普通の女の子にしか見えなかった。
さっきまで私たちを殺そうとしていたはずの、狂気に塗れた少女が、今はか弱い華奢な子供に見えるという不思議。
不思議なはずなのに、それを不思議と捉えられない。
それが不思議だった。
「ま、まさかとは思うんだけど……。この怪我、あんたたちがやったんじゃないでしょうね……?」
恐る恐るにこが聞いてくる。
……別に、私たちだって殺されるかもしれないから仕方なくやっただけ。
何も隠す必要なんて無いし、むしろ本当のことを全て話した方がいろいろと有利に進むとも思う。
それなのに、口は勝手に「違う」と叫んでいた。
「そうよね……」
自分に言い聞かせているのか、安心しているのか、それとも納得した風を装っているだけなのか。
とにかく、にこは胸をなで下ろしていた。
「う、嘘だよ……っ」
と、芽依がずっと閉ざしていた口を開いた。
顔を起こし、怯えるように希の方を見ながら。
「なっ……嘘ってどういうこと……?」
初めから嘘なんてつかなければ良かった。
嘘なんてついたら怪しいことこの上ないし、嘘をついたって芽依が結局は本当のことを全て言ってしまうんだから。
無意識のうちについてしまったとはいえ、嘘をついたことを本当に後悔した。
にことの絆は薄れる……とまではいかなくても、一時的ににこから疑いをかけられることはほぼ間違いないだろう。
「私は
「なっ……!?それは違うでしょう!?」
気付いたら叫んでいた。
いや、それはちょっと違う。
さっきのように、本当に無意識の間に叫んでしまったわけではない。
心の中では叫んでやろうと思っていた。
というよりは、カチンときた。
「ぅ……ご、ごめんなさっ……」
芽依は怯えるように縮こまった。
さっきよりも身体を震わせて。
別に、それを見てイライラしたとか、策略だと思ったとか、そういうわけじゃない。
むしろ、申し訳なさが込み上げてきた。
きっと、それは芽依が子供だから。
か弱い女の子だから。
もしこれが大人なら、きっとこんな風に申し訳なくなったりもしないし、こんな演技に騙されたりもしないだろう。
いや、こんな風に考えてる時点で完全に騙されてるわけではないけど。
でも、少しでも申し訳なく感じているんだから、惑わされてしまっているんだから、それは騙されているということなんだと思う。
「何があったのか知らないけど、今のは謝りなさいよ」
にこが睨むように言う。
にこは、私たち当事者と違ってこの状況を客観的に見ることができる。
だからこそ、こんなアドバイスをしてくれたんだと思う。
わかってるのに、どうして。
「何も知らないにこに言われたくないわ!事情を知らないからそんなこと言えるのよ……!演技に決まってるでしょ!?」
こんな風にしか、言えないんだろう。
「はぁ!?いくらなんでも怒るわよ……!?」
どんどん拗れていく。
きっと、芽依を信じるべきなのかわからない自分にイライラして、それをにこにぶつけてしまっているんだと思う。
だから、なおさら自分が嫌いになる。
「……ごめんなさい。ちょっと頭を冷やさせて」
なんでこんなに冷たい言い方をしてしまうんだろう。
突き放すように、言ってしまうんだろう。
にこは、私のことを思って言葉をかけてくれたのに。
恩を仇で返すって、きっとこういうことを言うんだと思う。
「私はね、今のはさすがに言い過ぎだと思ったから言ったの……!この子の気持ち、考えようとしてる……!?」
希は相変わらず黙りこくっている。
芽依はにこの胸の中。
にこは芽依を抱えながら私を睨みつけている。
どうして、拗れさせてしまうんだろう。
なんで、もっと良い言い方ができないんだろう。
どんどん自己嫌悪に陥っていく。
「ねぇ、聞いてるの!?」
……私のせい。
そんな言葉が、脳裏を横切った。
こうなってしまったのは、私のせいなんだって。
自分でも嫌なほど、自分が嫌いになった。
予想外の更新となりました。
二日間更新できなかったことと、明日の更新ができないことをまとめてお詫びいたします。
第1章は毎回このくらいの文字数で進んでいきますが、第2章以降は1話ごとの文字数は伸びる予定ですので、しばらくは細切れの更新でお待ちください。