~始まり~
高校生の少年は、もう一人の少年と森の中を歩いていた。
周りに灯りなどなく、日も沈んでいるため見えるのは深々な緑を縁った葉とそれを支える枝だけである。
「なあ、悠二俺達どこまであるけばいいんだ?軽く3時間は歩いてるぞ。」
「そんなこと僕にもわからないよ……」
不安に満ちて掠れかけている声で悠二と呼ばれている少年は答えた。
雨が降っているせいか、土壌がゆるんで足場が悪い。
今にも崩れてしまいそうなほど歩く度に足が沈んでいく。
「あと少しの辛抱だ。きっと助けがくるから」
少年は不安に満ちている悠二を励まそうと確信はないが「助け」がくるよといった。
その時だった――
瞬間、大地を揺るがすような轟音があたりを包んだ。
土斜崩れだ。
後ろからものすごい速さで土砂が迫ってくる。
「悠二逃げるぞ!!」
まだ逃げれると思った少年は悠二の手を引き逃げようとする。
「だめだ!僕の手を放せ!放さないと百輝まで!!」
掠れながらも力を振り絞り悠二は大声を出した。
「そんなことできるかよ!悠二もいくんだ!!」
百輝は悠二のいうことなど聞かずにそのまま逃げようとする。
だが、思ったように足が動かない。
雨でぐちゃぐちゃとなった土壌に足をとられているからである。
「くそッ!くそッ!」
必死に動こうとしやっと足が動くようになった。
「よし!これで――」
その時、百輝が強く握っていた手が悠二によって離された。
「百輝逃げ……」
瞬間、土砂は大地を揺るがす轟音とともに無情にも2人を飲み込んだ……
「ん…んん」
目を覚ますと綺麗な夏の大三角形が目に入る。
「どこだここは?」
5秒ほど漠然としていた百輝だったがすぐに――
「悠二!!悠二ー!」
静かな夜に響き渡る大声でガラガラになるまで百輝は叫びつづける。
しかし悠二からの返事はない。
「悠二どこだよ!どこいったんだよ!返事してくれよおおおお」
さっきの大声とはかけ離れた泣きそうな声で百輝は再度叫ぶ。
声がでなくなるほど叫んだ後、百輝はふと後ろを見た。
そこには1本の大木。まるで電柱を何本も集めたような大きな木。
おそらく、この大木に守られて百輝は土砂に飲まれ続けなかったのだろう。
下を見ると道路まで崩れた土砂が扇状に広がっている。
「悠二!悠二!!」
声にならぬ声を出しつつ、我を忘れたように走り出す。
道路にでるやいなや、土砂をかき分け始める。
瞬間、真っ暗な夜に一縷の光が土砂の中から溢れ出す。
百輝にはまるで、絶望を照らし出す希望の光にもみえた。
「あなたの願いを叶えましょう」
ふと天の声のような囁きが聞こえてきた。
すべてを抱擁するような優しい声。
「だ、だれだ!?」
困惑しながら狼狽した声を出す百輝。
「私は別世界の神 ユース・アルフェリア。あなたを救うため、そしてあなたに助けてもらうために『異世界』から来ました」
その優しい声の持ち主は信じ難いことをいっていると百輝は感じた。しかし、もはや何も出来ない百輝にとってはこれに賭けるしかなかった。
「俺は、何をすればいいんだ……」
「私のいる『異世界』に来て無くした記憶を集めてください。もし記憶が揃った暁には、あなたと友人を再びこの世界に還すことを約束します。」
「ほ、ほ、ほんとなのか!!」
「はい。すべて記憶を集めることができれば私の能力を使えば可能です。」
「分かった。なら俺をその『異世界』へ連れていってくれ。」
「では、またあちらで会いましょう。」
その声を聞いた後、百輝の意識が朦朧とし、ついに意識がなくなった……
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