この洞窟を住処にしてからは早くも一週間たった。
相変わらず誰からかわからない魚の差し入れなどがある。
それに時折視線も感じるが妹は気づいてないし不安がらせるわけにもいかないから内緒にしている。
そして、妹は何も言わずにいるがきっとおおよそ村やみながどうなったのかわかってるだろう。
それでも自分を信じてついて来てくれてるこの子のためにも弱音を見せるわけにはいかなかった。
そんな、ある日・・・。
カツ、カツ、カツ、カツ・・・。
誰かが近づいて来る足音が聞こえてきた。
「あれ、誰か来たのかな…?」
「ミルム。あそこの岩陰に隠れて」
「うん」
ミルムを湖そばの大きめの岩に隠れさせると自分は出口に向かう穴に面した壁に隠れて短剣をてにとり相手が出てくるのを待った。
カツ、カツ、カツ・・・。
足音は段々大きくなっていく。そして、一人の男が姿を現した、それと同時に剣を振りかぶって襲いかかる。
ガキィィン!!
金属がぶつかり合う鈍い音が響き自分は壁にまで吹き飛ばされた。
「ったく、いきなり危ねえだろ。…ま、気配でわかってたんだがな」
「ぅ・・・くっ・・・・」
吹き飛ばされた時の衝撃が重く体が痺れて動かない。
「こんなとこに居るんだ。訳ありなんだろうがいきなり切りつけるはよくねーぞ、ははは」
そう言って目の男は愉快そうに笑う。
「なにせ、このままトドメ刺されても文句は言えないだろ?」
そう言って剣先を尻餅をついてるこちらに向けてくる。
その間に小さい影が入ってくる。
「お・・・お兄ちゃん・・・を、い・・・いじめ・・・ないで!!!」
両手を広げて足を震えさせながらも大男を見据えてそこから一歩も動かなかった。
「・・・お嬢ちゃん、エルフか?」
「・・・(こくり」
「そうか・・・」
そう言って男は剣を納めてその場に座って自己紹介をしてきた。
「俺はティマイオス国の騎士、ベオルフって言うんだ。ここの近くのエルフの村から救援を求められて来たんだ。だが、村は完全に燃え尽きた後でな、だから今こうやって生きてるやつを探してた。お前たちはもしかして村の生き残りか?」
「・・・」
「いや、すまん。聞かなくても考えればすぐ分かることだったな。お前たちがよければ俺はお前たち二人を保護をしたいと考えてる」
「お前が信用できるやつかまだ判断ができない」
「そうか、俺はしばらく村の跡地に滞在しているから。考え直したりしたら訪ねてきてくれ」
そう言って立ち上がり洞窟から去っていった。
「ふぇぇ…。怖かったよぅ…」
そう言って、ぺたりとミルムはその場に座り込んでしまった。
「ごめんな、怖い思いさせて。けど、俺を守ろうとしてくれてありがとな」
「うん…。だって、お兄ちゃんまで居なくなったら私、ひとりぼちになっちゃう…」
「…大丈夫だ、ミリムはひとりぼっとになったりしない」
そう言ってミルムを抱きしめる。
小さく震えていたミリムは抱きしめられて落ち着いてきたのかしばらくると小さく寝息を立て始めた。
「…。ここに居ても、なんにもならない。あの男の申し出を受けたほうがいいかもしれないな。それに、ミルムを守れるくらいに強くならないといけない」
その日の夜だった。
「…じゃ…。…きる…の…」ぺちぺち
誰かがほを叩いて起こそうとしてる。
「…むぅ。…に…水…」
何やら不穏なワードが聞こえたから目を開ける。
「やっと、起きたようじゃの。あまり、女性を待たせるものじゃないぞ?」
目の前に碧い瞳を開けてこちらを覗き込むぺたーんな幼女がいた。
「お主、いま妾の身体で失礼な事を考えただろう」
「い、いや!?・・・ってか誰もごもご」
大きな声を出してしまったところを片手で口を塞がれた。人の体温にしてはとてもひんやりとしている。
「これ、大きな声を出すではない。横に眠っておるぬしの妹が目を覚ますじゃろう」
「・・・(こくこく」
「分かればいいのじゃ。おぬし、強くなりたいのであろう?ならば妾についてくるといいのじゃ」
「ぇーっと」
「なんじゃ、何か問題でもあるというのか?」
「だから、誰…」
「小さいことを気にする男じゃのう。ついてくればわかる」
そう言って湖の方に歩いていく。
「そっちは湖…」
「見ればわかる。早くついてくるのじゃ」
そう言って、湖に足を乗せる。
すると、その場から湖が凍っていく…。
「これでぬしも歩いていけるじゃろう」
意地でも自分を連れて行きたいようだ素直に従ったほうがいいのかもしれない。
氷の道を歩いてるところでどうしても我慢できなくなり何者なのか聞いてみた。
「まぁ、そうじゃのう。妾はこの洞窟の奥にある。氷剣とでも言っておくかのう。いやなに、ここ数百年あまり妾を使うに値するものが現れなくて暇しておってのそしてそこにお主が現れた。妾は剣として振るわれることを望んでおる。そしてお主は今より強き力を求めておるのじゃろう?ならば、お互い利にかなった関係を保てると思ってこうして直々に会いに来たのじゃ。…ふむ、童には難しい話じゃったかのう?」
「いや、理解している」
「ふむ、一週間お主を眺めておったのじゃがやはりお主は見た目不相応の落ち着きと思考を持っておるのう。何者なのじゃ?」
「…まぁ、口外しないっていうなら話してもいいけど」
「うむ、話せ。妾は口が案外硬いほうでの」
「さっきから結構お喋りな気がするけどね」
「…野暮な茶々は無用じゃぞ」
「はいはい、俺は前世の記憶があるんだ」
嘘はついてない。流石に転生者とかは言えないからなぁ。
「なるほど、納得したのじゃ」
「案外、あっさり信じるんだな」
「なに、【嘘】はついてないからのう」
「…」
「今話したことが真実の全てじゃないのじゃろう。まぁよい、あまり詮索するのもあれじゃからな。っと、ついたようじゃな」
そう言うと隙間から氷が這って出てるような扉についた。
「中は少々冷えるから、覚悟して入るのじゃぞ」
扉から今の場所はまだ数メートル離れてるがすでに肌に痛みを与えるかのような冷気を感じる。
「覚悟ができてから開けると良い。剣は逃げたりなどしないからのう」
「離れてるのに寒いんだけど…」
「幾分楽な方法で力を得るのじゃ。多少の苦痛は覚悟の上じゃぞ」
「それもそうだよな…。すぅーはぁー、よし!」
覚悟を決め扉に走りより思いっきりドアを開けた。
中から吹雪のような冷風が押し寄せて全身を極寒が包み込む。
「…!」
「奥の剣を手に取るのじゃ、そして吹き荒れる極寒をも抑え込んでみせよ。妾を振るうのならばそれくらいしてみせるのじゃ」
「無茶…言いやがって!」
片手で顔を抑えながらゆっくりと一歩づつ足を進めていき。
そして、氷に突き刺さる碧い剣の柄に手をかけた。
「うむ、やはり妾の目に狂いはなかった。常人なら扉を開けた時点で凍死しておるのじゃ」
「はぁ!?」
「ははは、そう怒るでないお主はどうも頑丈に感じたから問題ないと思ったからな。さて、そのまま妾の名前を呼び剣を抜いてみせよ」
「ちょっと…名前とか知らない!」
「問題ない、思うがまま叫んでみせよ」
頭の中に名前が浮かんでくる。
「本当だ…。………【クリュスタロス】」
気がついくと自分の体には不釣り合いの大きな剣を掲げていた。
「うーむ、抜かせてみて改めてわかったのじゃがお主ちと小さくないか」
「自分でもそれ思ったよ。考えてみればこの体10歳だしな」
「まぁ、問題なく持ち上げれてるからよいじゃろう。小童のちからじゃと本来は引きずることになるのじゃがやはりお主は天性の肉体のようじゃな」
「ま、まぁ肩に担げるからいいけど・・・。これ、鞘とかないの」
「ない」
「危ないなおい」
「じゃが鞘の代わりならできるぞ、ほれ」
彼女がそう言うと刃全体を水晶のようなもので包まれた。
「この状態なら鈍器としても扱える。どうじゃ、便利じゃぞ(どや」
なんで得意げな顔してるんだろう。
「ま、まぁいいか…。とりあえず、いったん妹のとこに戻ろうか」
「よかろう。すでに妾はぬしの所有物、妾の事など気にせず自由に持ち運びすると良いのじゃ」
「移動くらい自分で…ぁ、はい。わかったので冷気飛ばさないでください」
「ところで君はなんて呼べばいい?クリュスタロスって長いし呼びづらいんだけど」
道を戻ってる途中ふと思ったことを聞いてみた。
「む?妾の呼び名じゃと。考えたこともなかったのじゃが…ぬしの好きに呼ぶといい」
「んじゃタロちゃんね」
「待つのじゃ。事おいてなぜタロちゃんなのじゃ!?」
「クリュスタロスなんて省略するところないじゃん」
「そ、そこはえーっと…………思いつかないのじゃ」
「じゃぁタロちゃんで決まりだね。タロちゃん」
「ぐぬぬぬ、何とも言えないぬ屈辱感じゃ…」
「そういえばさ、時折俺らに魚とかくれたのってタロちゃんだよな」
「はて、なんのことかのう」
「…ぇー、まぁありがとな」
その次の日の朝、兄の側にでっかい剣があってミルムが驚いたのは言うまでもない。
クリュスタロス(タロちゃん)
地底湖の奥深くに置かれていた氷剣。
碧く透き通った刀身の大きな剣。
周囲を氷結させるほどの冷気を刀身から放つ。
鞘はなく刀身に水晶を覆わせることで鞘の代用をしている。
タロちゃん
碧い瞳に碧い長髪をもったぺたーん幼女。
子供扱いすると氷像にされるよ!
(見た目のイメージはさらにぺったんぺったんなレヴィアたん)