季節は冬、場所は黒い花が無数に咲く花畑の中央。そこに白いロングコートを羽織った黒髪の少年が立っていた。
少年の名は《和修吉亜_ワシュウ ヨシア》
学生の身分ではあるが「特別招集」という形で実践の現場にも参加し、様々な伐刀者能力犯罪組織を壊滅させた実績を持つ優秀な騎士である。
今もその「特別招集」により戦場にその身を置く。
そして、今彼が対峙している組織の名は解放軍《リベリオン》
伐刀者を新人類とし、伐刀者による楽園を創造するために活動するテロ組織。一般的な非伐刀者を下等人類として扱うと言われている一方で、思想に賛同する非伐刀者を名誉市民として扱うなど強かな面もある。
解放軍《リベリオン》の構成員は《信奉者》と呼ばれる銃器などの現代兵器で武装した非伐刀者の兵士と《使徒》と呼ばれる伐刀者の指揮官に分類される。
彼の眼前には黒い法衣を纏った30人の《使徒》がいる。
本来は一人の《使徒》に対して10人以上の《信奉者》が私兵として付き従うものなのだが、《信奉者》の姿は彼の視界には一人も存在していない。
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どうして美しいものは 生よりも死を連想させるんだろう…
《使徒》は不思議と彼を、綺麗だと思った。
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なぜなら
彼が立っていたのは花の上などではなく、300人以上の倒れた《信奉者》達だった。
そもそも解放軍《リベリオン》は作戦行動時一人の《使徒》が指揮を執り《信奉者》を束ねるのが通常である。《使徒》が30人も徒党を組むことなど過去に無かった。
それ程までに今回の作戦が重要ということなのだろうか。
「《IXA_イグザ》」
彼がそう呟くとその右手に漆黒の槍が顕現した。
「《天の逆槍》」
《IXA_イグザ》の《伐刀絶技_ノーブルアーツ》が発動した。槍の矛の部分が消える代わりに無数の矛が地面から『天を衝く』ように突き出る。
そして、《使徒》達の悲鳴と痛みに耐えようとする声が混ざり合い、阿鼻叫喚の地獄が彼の耳朶を埋め尽くす。
しかし、それでもなお彼を殺そうとする者が彼に肉薄する。
その者の両手には3メートル以上の刃渡りの大剣型の霊装が握られ、足裏から自分の全ての魔力を爆発させることによって高い推進力を得ている。時速にして200キロ以上。大剣の重さと合間ってかなりの破壊力が見込まれるであろう。
その暴力は人一人を殺すためにはあまりに大きく、少年一人に向けるにはあまりに惨い。
だが彼が臆することは無く、消えた矛を元に戻し、その漆黒の槍を片手で剣のように振るって己に向かってきた《使徒》の大剣を上方向に打ち払う。
そして、大剣に体制が引っ張られる形で《使徒》の身体は上方に向きを変えられてしまい、自身の全魔力を使った推進力によって吉亜の頭上を滑空する。
その瞬間を逃さず吉亜は敵の心臓目掛けて槍を空に向かって突き上げる
次の瞬間、その心臓は黒き槍に刺し穿たれた。
それを境に吉亜の耳には静寂が流れ始める。もう周囲には彼以外誰も残っていないことを証明するように。
彼は一歩もその場から動かず、右手の動きだけで戦場を蹂躙し尽くした。
もはやこれは力と力のぶつかり合う《戦闘》ではなく《殲滅》と言う方が正しい程に一方的だった。
「ツマンネ」
戦場には似つかわしく無い、と言うか場違いな少年のセリフがこだました。
まるで遊んだゲームが簡単過ぎて退屈になっている子どものような
遅れて彼の監督役でもある大人の魔導騎士達が現場に到着した。
「和修ッ!独断専行をするなとあれ程言っただろうが!!」
最年長の魔導騎士がそう叱る。だが、
「いーじゃないですか、《幻想形態》で霊装使って怪我だってさせてないんだから」
吉亜は自分が心配されているのではなく、学生が《解放軍》を気紛れで痛めつけることによって生じる監督役の責任問題を懸念していると思っていた。
「《霊装_オモチャ》ではしゃぐガキが」
「ガキの方が上手にオモチャで遊ぶってことですよ」
特別功労者 和修吉亜
征討数
《解放軍》
《使徒》ランクB3名 ランクC11名 ランクD16名
《信奉者》323名