花をも恥らう白き花 コジマに愛されし黒き騎士 作:人類種の天敵
「………ここ、何処だよ?」
車で何時間も揺らされ、車ごと中型の船に乗せられて、更に波に揺られながらたどり着いたのは、建物に押し潰されぺしゃんこになった残骸の跡地だった
「おい、セレン?此処だよ」
ハイヒールを履いている癖に辺りに散らばっている瓦礫に足を取られずに歩くセレンへ声をかける
「此処は…ベルリオーズ。お前が話せ」
「分かった……此処は旧レイレナード本社、エグザウィル…その跡地だ。ストレイド」
船から出てきたベルリオーズが腕に巻きつけていた縄を船に縛り付けてからそう答えた……いや、その前に…エグザウィル?……
「それってもしかしなくても、アナトリアの傭兵が破壊したやつでしょ?」
「ああ、そうだ」
そう言うベルリオーズは、意味深な風にニヤリと笑うと腰を持ち上げた
「いやいや、そうだって……じゃあなにか?此処に来た意味ってあるわけ?」
「そう急かすな、ストレイド……そうだな……まあ、数年前アナトリアの傭兵に壊されたのは………エグザウィルの表面と思ってくれればいい」
はぁ?怪訝な顔をした俺をベルリオーズはニヤニヤと笑うと、近くにあるいかにも重そうな瓦礫を簡単に退かしてしまった
「……………は?」
瓦礫を退かした先にあったものは……扉?
「さあ、行くぞ。ストレイド」
扉を開いたベルリオーズの後をついていくと、其処は…エレベーター??何で潰れた建物にこんなものが……もしかして、地下施設がある?
「地上のエグザウィルはただの囮だ」
「………え」
ウィィィィン、とエレベーターの扉が閉まり、ボタンを押した後でベルリオーズが口を開いた
「レイレナード本社であるエグザウィル。その実態は他の企業も気づくことのなかった場所にあった……つまり地下だ」
「何で地下なんかに?」
「ふ、まずあれほどの独特な形状をしている本社の何処でネクストや自律型の実験ができると思う?……あとは、あれだけ目立つ建物なら、オーメルの奴らも簡単に騙せると思ったからだ。くく、思いの外効果的だったが……」
優秀なリンクス、研究者、その他諸々が集った技術水準の非常に高い企業、オーメル・サイエンス・テクノロジー。ローゼンタールの傘下企業でありながらリンクス戦争を影から操っていたと言っても差し支えのない企業
リンクス戦争では秘蔵っ子のセロやミドを投入。ミドは旧ピースシティでベルリオーズ率いるレイレナードの強襲部隊とぶつけ。ノーマルモードではアナトリアの傭兵と共に戦い。運が良い奴orタイマン環境を作った奴orミドたんハアハアの奴なら“羽“を全く使わない役立たずのレオハルト共に生存していて、ハードだと死んでるのか、もしくは戦闘不能になったかで既に戦線からリタイアしている。前者のセロについては、何やら薄汚い事をやってのけてアナトリアの傭兵の戦友であるジョシュアを嗾けてコロニーアナトリアを襲撃。高密度のコジマ汚染でアナトリアを使えなくさせ、アナトリアの傭兵さえも葬ろうとした……あまつさえジョシュアとアナトリアの傭兵。両方を殺すために天才坊やを放り込むもんだからな……そんな奴らを騙せたのが嬉しいのかね?ベルリオーズは
「今話した通りだが、レイレナード本社エグザウィルは地下にある」
「だけどさ、オーメルがエグザウィルを探索する可能性もあったんじゃないか?なんで地下の本社がバレてない?」
「ブフッー!ククク!!ハハハハハハハハハハ!!!」
突如腹を抱え笑い出したベルリオーズ。どうした?あんた笑わされる事を強いられてんのか?
「煩いぞ……ベルリオーズ!」
ドスッッッッッッ!!!!
「ゴフッ……!!!」
しゃがんだベルリオーズの腹を足蹴し、よろめきながら立ち上がった所を腹パン。その威力……ヤバすぎる
「グッ……カハッ……ゲホゲホ……」
「このエレベーターは広いわけではないんだ……あまり私の機嫌を悪くさせるなよ」
ボソッと呟いたセレンの言葉にゾクリと背筋が凍りつく、ベルリオーズもコクコクと頷いていた
「こほん、さっきの疑問だが……アナトリアの傭兵が表のハリボテを壊した所でレイレナードはある粒子を一体にばら撒いた」
「ある、粒子?」
「ああ、コジマ粒子に非常に似ているが……害のない粒子……それをばら撒いた途端アナトリアの傭兵は撤退し、オーメルの連中もここへ寄り付かなくなった…他の企業達もな」
「なるほど……そんなものが…あったのか」
「コジマ粒子のようにネクストを動かすエネルギーにも使えない上に非常に似ていて紛らわしいからな、それは便宜上ゴシマ粒子と呼ばれている」
コジマ→ゴシマ?コ、と、ジの濁点が入れ替わってるだけかよ
「だから未だに他所の奴らは寄り付かない。私たちは悠々と此処を秘密のアジトにしているわけだ」
「秘密のアジト……」
エレベーターの扉が開いて目の前の景色が見えた時、確かに此処は秘密のアジトだな、と思った。そこは、だだっ広い格納庫のような場所で、AC…この場合はノーマルACか…それが辺り一面に所狭しと並んであった。しかも地上へ送ることもできるのか、エヴァンゲリオンに出てくるカタパルトのようなものもあった
「セレンさん!それにベルリオーズ大尉もっ!お疲れ様です」
声をした方を向くと、髪を肩より上ぐらいで切りそろえたショートヘアの女の子がピシッと敬礼をした
「あ!そうだっ、セレンさん!今からシュミレーションで動きを見てもらってくれませんか!!」
「悪いがこれからコイツのAMS適性があるかどうか調べる……その後でな、マリナ」
「っ!はいっ!」
マリナと呼ばれた少女が嬉しそうな顔で走り去っていった。そして……その後ろ姿をセレンはとても哀しそうな顔で見送っていた
「……ストレイド。今からお前のAMS適性を調べる場所に行くぞ、セレン。それで良いだろう」
「………ああ、そうだな」
………?ちょっと、展開について行けません。あの娘誰ですか?紹介しろや
「…ううむ、まあ、いいか」
とりあえずAMS適性がある事を祈ろう。なかったら捨てられない事を祈ろう。有ったらボロ雑巾にされない事を祈ろう
「お!ベルリオーズの旦那!もう帰って来たんで?何か戦利品はありやしたか?……ほう、その小僧ですか…イキはありそうですが……」
「セレン、今月の収入と支出…赤字は無いが研究室の奴ら、使いすぎるぞ。オービエとアンシールを今回使ったんだろう?さほどパーツを消耗してなければいいがな……整備の方にも気を遣わないと折角のネクストもクソだぞ?」
「やあ、セレン。それにベルリオーズも、今度農場ファームの方へ来なよ。果物が丁度いい具合で熟れてるからさ。魚も上等のが育ってるしね」
「あ!ベルリオーズ大尉!お疲れ様であります!!私たちですか?レッドイェーガー中隊はこれよりアリーナの方で連携強化の模擬戦闘をブラックドレイク隊と行う所であります!それではっ!」
セレンとベルリオーズと歩いていると、度々声をかけられる。制服姿の職員だとか、ツナギ姿の整備員だとか、麦わら帽子を被った青年だとか、軍服姿の将校だとか
「中々に賑わってるな」
「リンクス戦争から、もう数年が経ったと言うべきか、それともまだ数年しか経ってないというべきか。かつての本社の人員はすでに超えただろう。それでも未だに拡大して続けているぞ」
すげえな…何気に
「そういえば…さっきの…マリナ?って娘、なんなの?シュミレーションがどうたら言ってたけど…」
「ああ、あれは「着いたぞ、ストレイド」
最初に出会った女の子の事を聞こうとすると、セレンが勝手に話を切り上げた
「お前に適性があるか調べるんだ。他の事に気を取られるなよ」
ギロッという擬音が聞こえる目の圧に首を竦ませながら苦笑い
「P・ダムはいるか?」
部屋の中へ入ったベルリオーズが、辺りを見回しながら一人のリンクス名を言った
P・ダム
リンクスNo.21の変態企業所属のリンクスでコジマライフルの武器腕とか言う変態武器を使ってなたなあ……変態めっ!
最初期のコジマ兵装で強いとか言われてたらしいし、高い戦闘力を持つらしいけど……当たらなくてはどうという事はない!!てか乗機のヒラリエスが軽くブースター吹かせただけで死ぬからな!動かねえ的だろ!
旧ピースシティでの戦闘じゃ錯乱してはなかったけど、コジマ汚染で結構神経が不安定で作戦中の妨げにもなってたらしい
「……いないのか?」
「いや、いるはずだが…少し待て」
中へ入っていったベルリオーズが部屋の電気をつける、何処にでもあるような事務室みたいだ………前言撤回。何処にでもある事務室に「月刊トーラス」だとか「週刊汚染コジマ」なんて書かれてる明らかにコジマの溢れ出す雑誌は置いてねえぇ
「おい!…ダムは何処にもいないのか?」
「まて、奥の部屋を見て来る」
ちっ、とセレンが舌打ちし、ベルリオーズが奥にあれ部屋へと入っていく
「それにしても週刊汚染コジマか……ひっでえ名前……」
掲載漫画は……ええと?
…汚染!汚染!汚染!コジマのヒーローアクアビットマン 作者アクアビットマン
・トーラス長老から世界の平和を守るためにコジマ汚染を巡る戦いの旅に出たアクアビットマン!しかしそんな彼の前に盟友レイレナードマンと戦うダンボールがいて………
…コジマの守護神トーラスマン 作者銀爺
・アクアビットマンから後のことを託されたトーラスマン(正体は長老)は、日頃は陽の当たる縁側でコジマ猫を膝に乗せて眠る日常を続けていたが、コジマの平和を脅かすダンボールとかダンボールとかダンボールとかが現れた!ならば容赦はしない!コジマに溺れて死ねえええええええええええ!!!
…AMIDA研究。如月研究所の憂鬱 作者如月
・今日も今日とてAMIDAを使って実験だ☆あ、ヤベっ☆ミスってAMIDAを外に出しちゃった♪こんな時はレイヴンを雇うしかないよネ☆しくよろレイヴン♪
…万能オペ娘☆フィオナ・イェルネフェルト作者アナトリアの傭兵
・この作品は万能オペ娘であるフィオナ・イェルネフェルトの日常を記した全世界の傭兵たちに届ける俺の嫁の物語である!!全てのオペ娘共よ!刮目せよ!!俺の嫁を!!
…俺の愛がラブな ふぃおな日記 作者アナトリアの傭兵
・これは俺が生涯愛する嫁へのポエムや彼女との日々を描いた日記だ。たまに戦闘もある。最近うちにちょっかい出し始めた糞ガキがうざい
…チェック・メイト 作者メルツェル
・今日も一局チェスの話をしようか。世界がコジマに汚染されなければ…人が過ちを犯さなければチェスボードを叩いて生きていたはずの男の話を………
まだまだイケるぜええええ!!メルツェェェェル!!! 作者ヴァオー
・うおー!!まだまだイケるぜええええ!!メルツェェェェル!!!
「か、カオスすぎる………乗せてる漫画も、タイトルも、あらすじさえも!!なんだこれ……」
とんでもなくカオスな内容にまたも苦笑い
「チェック・メイトとアナトリアの傭兵の漫画は見てみたいかも……」
雑誌を取ってソファに手をつきながら座ろうとする
むにゅっ♪
「ん……」
「あれ?なんか聞こえた?それにやたら柔らかいぞ?このソファ……」
むにゅむにゅ♪
「ん……ぅ…」
「おい、お前は何を揉んでいるんだ……(怒)」
セレンから背筋にゾクっと来る説教を食らって、はてなマークをつけながらソファーに眼を向けると
「うわ!?誰!?」
ソファーに女性が眠っていて、俺はその人の胸をしきり揉んでいた。もみもみ
「……んん……ん、ふぅ…」
「さっさとやめないかっ!」
ドスッッッッッ!!!
「グブッ!!」
鳩尾にセレンの拳が突き刺さった。ぐはっ!?これがツンデレババアのパンチか!
(ストレイド……もうあいつの1発を食らったのか……可哀想に)
「ふんっ!」
「ゲホッゲホッ……ガハッ……!?くふぅっ……グバァ……」
あまりの威力に膝をついて固まる。これは……確かにベルリオーズも恐れるぐらいだわ……
「んふ……ぅ?………帰って来たのか…?」
眼をゴシゴシと擦りながら起き上がった女性が「んっ」と伸びをする
「お前はまた寝ていたのか、P・ダム」
「ふふ、そんなに睨むなセレン。お前も知ってるだろう…私の症状を」
陰りのある微笑みを浮かべるP・ダム。もしかしてコジマ汚染で……
「ああ、コジマ汚染症状を治療した代わりに四六時中眠気でいっぱいなニート病だろう」
「ピースシティーでの戦闘の代償がこれとはな…笑わせる」
「おい(怒)」
「そんなに怒るな。それよりもベルリオーズ、彼の紹介を」
キレ気味のセレンを軽々と流して俺に視線を向ける
「こいつはストレイド。AMS適性を持っているかもしれない男だ」
「……そうか、これからよろしくと言っておこう」
そう言って俺に握手を求めてきたので、その手を握り返した
「……やはり適性があったか」
「?」
どういう事だ?
「おぉい!セレン!飯はまだかよ!?」
「チッ、今回の出撃だが、やっぱアリーヤの狙撃強化型カスタムじゃあレッドキャップレベルの精度が見込めねえ…おい!ババア、何とかしろよクソが」
「誰がババアかっ!まずは死ねっ!!!」
バギャッ!!!!ベギャッ!!!!
「「ゴブフゥゥ!!!!??」」
扉を豪快に開け放って入ってきた男二人の顔面をセレンは回し蹴り、後ろ回し蹴りをしてノックダウンさせた。南無
「……それで、ダム。適正ランクはどれぐらいだ」
セレンが視線を投げかけると、本を読んでいたP・ダムが読んでいたページに栞を挟んで本をパタンと閉じた
「ああ、大戦時の最高ランク、セロ以上に視える。セロを超える適性を持つ者は視た事がないから。リンクスの中で最も適性の高いリンクスだな」
「視える……か、その眼も難儀だな。P・ダム」
壁に寄りかかり、腕組みをしていたベルリオーズが口を開いた
「そう悪くない。持ってる奴が色鮮やかに見えるのは綺麗だ……」
眼を細めて呟いたP・ダムはベルリオーズやセレン、床に伏した男二人を見つめた後で俺を見た
「ストレイド、お前はこの中で一際鮮やかだ、まるで何かの幻のよう……」
「???だからそれ、どういう」
「お前ならアレサも難なく使える筈だ。あの災厄どころか、物置にひっそりと佇むあのアリーヤですらさえも」
「……………アレ…か。まあ、お前がそう言うんなら。そうなんだろうな」
「???」
うんうんと意味深に頷くベルリオーズとセレン
「セレン。ストレイドに適性があるのは分かっただろう?次は慣れさせよう。マリナもいる事だしな」
「…………そうだな」
慣れさせる????
「行くぞストレイド。お前には使い物になってもらわなければならないのだからな」
「私はこいつらを部屋に連れて行く。セレンの後を追え、ストレイド」
カツカツと廊下を歩いていくセレン。床に伏した男を解放するベルリオーズ
「………生きろよ、ストレイド」
「………ん?」
ボソッと聞こえた声に振り向くと、ソファに座ったP・ダムが、表情をのぞかせない表情で俺をジッと見ているようでぼーっと見つめていた
「私たちに出来なかった事を、お前なら」
「………???まあ、頑張るよ」
呟いたっきり、眼を伏したP・ダムへ言葉をかける。ん?何だか服がモゾモゾと……
「アミーー!!」
「うおっ!!?」
服の中から飛び出たAMIDAがコジマ色の羽を動かしてP・ダムの頭に着陸した
「………(あそこが気に入ったのか?)」
P・ダムを見てると、何処か達観しているような雰囲気がある。悟ってる?コジマ汚染の影響か?何か視えるとか言ってたし
「ぶふぉぅ!」
「………」
無表情な顔で俺を見つめるP・ダムを見てたら凄いことに気づいた。あの方上はシャツだけでした何も履いてねえ。パンティー見えてる
「おい!ストレイド!!何をやってる!殴られたいかっ!!」
「うげ、や、やべ、早く行っとこ……」
ずっと見ていたかったけどセレンの声が廊下を響き渡ったので慌ててセレンの後を駆け出した
はーい、はい。という訳でアジトは旧レイレナード本社のエグザウィルでした。パチパチ。ぶっちゃけ本社にあの形状はないわあとドン引いた。さすが変態企業を盟友に持つ企業。考える事が野心的すぎて挑戦しすぎ。いいぞもっとやれアリーヤの後継機も作ってしまえ。軽量膝カックンライールがアリーヤの後継機も だなんて俺は信じないぞ