やはり俺の日常はまちがっている。   作:黒甜郷裡

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番外編 きっと比企谷小町はいつまでたっても寂しがり屋である

 

起きるとお兄ちゃんに包まれていると錯覚するほどにお兄ちゃんの匂いがした。どうやらここはお兄ちゃんの部屋らしい。そういえばいつもみたいにお兄ちゃんに気絶させられたんだった。ちゃんと小町をベッドに寝かせてくれるのはポイント高いけど小町を選んでくれないのは小町的に超ポイント低いよ。小町ポイント大暴落だよ。

 

 

小町は実の兄のことが大好きです。それはもう兄妹の関係では収まりきらず、お兄ちゃんと結婚したいと思うぐらいに。

あーあ。小町とお兄ちゃんも作品の都合上義理の兄妹になったりしないのかなぁ。千葉の兄妹なんだからそれくらい許してくれてもいいのに…。

やっぱり監禁しちゃうしかないのかなぁ。小町的にはお兄ちゃんの意思で選んでもらいたいけど、うかうかしてると他の女にお兄ちゃんを取られちゃいそうだしなぁ。

 

 

そういえば、いつから小町はこんなにお兄ちゃんのことが好きなんだろうと考える。そりゃあ兄妹なんだから昔から仲は良かったけど普通は兄妹を異性として好きになることはないみたいだし。

 

うーん………、あ、そうだ。あの時だ。あの時から小町はこんなにもお兄ちゃんが大切で、愛しくって、愛されたいと、ずっとずっと一緒にいたい存在だってづいたんだ。

 

 

*****

 

 

その知らせは突然だった。お兄ちゃんが交通事故に遭ったとお母さんから電話があったのだ。小町は学校が終わるとすぐにお兄ちゃんのいる病院へと向かった。早くお兄ちゃんのところへ行かないと…。その頃の感情は、きっとまだ純粋に兄妹として、妹としてお兄ちゃんを心配しているだけだったと思う。

 

 

病院に着くと受付にいる女の人からお兄ちゃんの病室を聞く。どうやら四階の個室にいるみたい。個室にするには結構なお金がかかると以前どこかで聞いたような気がした小町は不思議に思ってしまう。小町を溺愛している両親がお兄ちゃんにそこまでするとは思えなかったから。

 

 

病室に入るとお兄ちゃんは眠っていた。やっぱり寝てるとお兄ちゃんはイケメンさんだね。普段のお兄ちゃんとは違って見えるよ。あ、今の小町的にポイント高い!

そのままお兄ちゃんの方へ歩いていくと突然ノックの音がした。きっとお母さんだ。お父さんはわざわざここまで来ないだろうし、お兄ちゃん友達いないし。…なんか小町まで悲しくなってきたよ。

 

「どうぞー。」

 

小町が扉に向かってそう言うと、し、失礼しまーす。と言って可愛らしい女の子が入ってきた。高校生ぐらいだろうか?もしかしたらお兄ちゃんのお嫁さん候補になるかもしれない!

 

「あの…。お兄ちゃんとはどういう関係でしょうか?」

 

お兄ちゃんと違ってコミュ力のある小町はキョドることなく話しかける。

 

「あの…。あたし、由比ヶ浜結衣って言います。総武高校の生徒で…。その…比企谷君にサブレ…、うちの犬を助けてもらって…。」

 

由比ヶ浜さんの話を聞くにどうやらお兄ちゃんはこの人の飼い犬を庇って事故にあったらしい。ほんっとにこのお兄ちゃんは…。小町は嬉しさと悲しさの入り混じったような気持ちだった。

 

「そうなんですね。わざわざありがとうございます。うちのお兄ちゃん友達とかいないんで由比ヶ浜さんみたいな可愛い人が来てくれたって知ったら泣いて喜ぶと思いますよ。」

 

「そうかなぁ。……そうだといいんだけどなぁ。」

 

おお、これは脈アリかな?お兄ちゃんにもついに春が来たんだね。小町的にもこれはポイント……。…高いのかな…?高いはずなんだけどなあ…。なんなんだろうこの気持ちは…。

 

その時に感じた胸の痛みと寂しさが何なのか、小町にはまだ分からなかった。

 

 

*****

 

 

由比ヶ浜さんが帰った後、お兄ちゃんと適当な会話をしてから家に帰ってきた。ただいまと言っても返事はない。お父さんとお母さんはまだ会社から帰ってきていなくて家にはカーくんと小町しかいなかった。

 

ご飯を食べ終わるとテレビを見ながらカーくんとじゃれていた。しばらくすると飽きてしまったのかカーくんは部屋から出ていってしまった。

リビングには小町だけになった。

すると不意に寂しさを感じてリビングを見渡してしまう。

 

…この家ってこんなに広かったっけ…?

 

普段は馬鹿なことを馬鹿みたいに言ってくるお兄ちゃんがいないだけで、小町は寂しくてたまらなかった。

そういえば小さい頃も1人で家にいるのが寂しくて家出をしたことがあったなぁと思い出す。

小町を見つけてくれたお兄ちゃんはそれから毎日小町よりも先に家に帰ってきてくれるようになった。あの時からずっとお兄ちゃんは小町が寂しくないようにしてくれてたんだ。

 

部屋に戻っても寂しさは消えなかった。普段1人で使っているはずの部屋でも家の中で1人ぼっちだと思うと不安な気持ちになってしまう。

人肌が恋しくなった小町はお兄ちゃんの部屋に入ってベッドに潜りこむ。お兄ちゃんの香りに包まれているととても安心する…。なんか小町変態さんみたいだなぁと思いながらもやめられない。そのまましばらくお兄ちゃんのベッドにくるまっていた。

さすがにお父さん達が帰ってくるまでここにいたらきっと心配をかけてしまう。そう思って慌てて自分の部屋に戻る。部屋に戻るなりベッドに潜り込むが寂しさは消えなかった。それどころかどんどん悲しい気持ちが溢れてきて、気づけば涙が溢れていた。

 

「うっ…う……。おっ…にいちゃん……。…こまち……さみしいよぉ…。」

 

1度涙が流れ出すともう止めることはできなかった。

こんなにもお兄ちゃんの優しさに小町は救われていたんだ。お兄ちゃんはいつだって小町に優しいからそれはいつだって小町の周りにあって当たり前のものだと思っていた。お兄ちゃんがいなくなっただけでこんなにも泣き虫になってしまうなんて。今更ながらにお兄ちゃんが小町の心のこんなにも大部分を覆っていたことに気づいたんだ。

 

 

*****

 

 

「ん…」

 

どうやら泣き疲れて寝ちゃってたみたいだ。寂しくて泣いちゃうなんて小さい子みたいで恥ずかしいなぁ。それに、きっと今は酷い顔になっちゃってるんだろうなぁ。…顔洗ってこないと。

 

洗面台で顔を見ると思った通り目元が赤くなっていた。顔を洗ったついでにそのままお風呂に入る。

いつもなら念入りに洗う髪も今はそんな風に洗う気にもなれなくて適当に髪と体を洗うと浴槽に浸かる。

 

「お兄ちゃん…。」

 

無意識のうちに声が漏れてしまった。お兄ちゃんによくシスコンって言ってるけど小町もそんなこと言えないなぁ。そう思うと自然に口元が緩んじゃう。きっと小町はまだまだお兄ちゃん離れなんてできないなぁ。…したくないなぁ。

 

 

お風呂から出るとパジャマに着替えてベッドに倒れこむ。さっき寝てしまっていたせいかお風呂に入っていたせいなのかなかなか寝つけない。

眠れないでいるとまたお兄ちゃんのことを考えてしまう。

不意に病室で出会った女の子のことを思い出した。……名前なんて言ってたっけ…。

多分あの人はお兄ちゃんのことが好きなんだと思う。そしたらお兄ちゃんとあの子が付き合うなんてこともあり得る。…あのお兄ちゃんに彼女ができるとは思えないけど。

 

…お兄ちゃんは彼女ができても小町のことを今みたいに大切にしてくれるのかな……。あのシスコンのお兄ちゃんのことだから小町のことを適当に扱ったりはしないと思いけど、やっぱり彼女の方を優先しちゃうよね。

それは……なんかやだな。 お兄ちゃんの1番は小町がいい。ううん、小町じゃないと嫌だ。

でも…どうしたらいいんだろう。どう頑張っても小町は妹だからお兄ちゃんと結婚することはできない。そうするといずれお兄ちゃんは誰かと結婚して、その人を1番に愛するだろう。結婚できるかどうかは置いといてね。捻くれてるけど優しいお兄ちゃんだから、それはきっと間違いない。なら、お兄ちゃんの1番になるには……どうし……いい…………。

 

 

*****

 

 

その後小町はお兄ちゃんが退院するまで頻繁にお兄ちゃんのベッドに潜り込んでいた。お父さんたちが帰ってこれない日はお兄ちゃんのベッドで寝ていた。それでも日に日に薄れていく匂いに小町は耐え切れなくなっていた。

毎日病室で話しているといっても家に帰ると1人ぼっちなのは変わらない。お兄ちゃんに心配をかけたくない小町は病室では必死でいつも通りを演じてた。お兄ちゃんの様子を見るときっとうまく騙せてたと思う。

その頃にはカーくんとじゃれあう気も起きなくなっていた。

 

 

*****

 

 

今日でお兄ちゃんは退院だ。お兄ちゃんが帰ってくる。それだけで小町の気持ちは最高潮に達していた。早く会いたい。お兄ちゃんに抱きしめてほしい。いっぱい構ってほしい。そんなことを考えながら学校からの帰り道を走って帰った。

 

家に帰ると靴も適当に脱いでリビングへ向かう。扉を開けるといつものように目を腐らせながら本を読んでいるお兄ちゃんがいた。

 

「お兄ちゃん…。おかえりなさい。」

 

 

「今帰ってきたのはお前だろ…。…まあ、なんだ……、その…ただいま。んでもっておかえり、小町。」

 

「うん…。お兄ちゃん、ただいま‼︎」

 

そう言うとお兄ちゃんに抱きつく。お兄ちゃんの匂いだ…。無意識のうちに匂いを嗅いでしまっていたが小町は変態さんじゃない。これはお兄ちゃんの匂いがいい匂いなだけだから。…だめだ。理由になってない…。

 

「小町を心配させた罰としてこれからいっぱい構ってもらうからね。覚悟しといてよ。」

 

「怖えよ。何する気だよ。まあ俺からしたら小町を構うのは罰ってよりご褒美だし、何より俺はお兄ちゃんだからな。いくらでも構ってやるよ。」

 

このお兄ちゃんは…。どこまで小町のことを喜ばせたいんだろう。そんなこと言われたら小町抑えきれなくなっちゃうよ。嬉しくて、それでいてちょっと恥ずかしい。……顔赤くなってないかな…。

 

 

*****

 

 

そうして小町はお兄ちゃんとの時間を1年間堪能していた。お兄ちゃんがいるだけであの2週間が嘘のようにように感じられ、満ち足りた気分になった。これが依存っていうものなのかな。でもお兄ちゃんがいない生活なんて今のは小町には耐えられない。

 

いつものように家に帰るとお兄ちゃんに声をかける。でもお兄ちゃんからの返事はなかった。

 

「ちょっとー!小町からのただいまを無視するなんて小町的に超ポイント低いよー?」

 

そう言いながら扉を開くと返事が帰ってこないわけに気づく。

誰もいなかった。もちろんカーくんはいたけど心を満たしてくれたお兄ちゃんの姿はどこにも見えなかった。

 

しばらくしてお兄ちゃんが帰ってきた。これはいっぱい文句を言ってやろう。そんなことを考えているうちにお兄ちゃんはリビングに入ってきた。

 

「お兄ちゃん。どこ行ってたの?小町心配したんだよ?」

 

「ああ、悪いな。連絡の一つぐらいすればよかったな。」

 

特に気にした様子もなく小町の隣に座り小町の頭を撫でるお兄ちゃん。これは……小町的にポイント複雑…。

 

「んで?なんで今日はこんなに遅かったの?お兄ちゃん友達いないし遅くなる理由なんてないでしょ?」

 

言っておいてなんだけどなかなか酷いことを言ってるなぁ。まあ事実なんだからしょうがないよね。

 

「そのキラーパスはお兄ちゃんちょっと受け取れないな…。学校の先生に捕まってな。奉仕部ってところに強制入部させられた。」

 

お兄ちゃんが部活に入った。それは本来なら喜ぶところなんだろう。あのぼっちのお兄ちゃんが部活に入るなんて…。でも…。

 

「ふーん。よかったね、お兄ちゃん。んで?他の部員はどんな人なの?」

 

「なんでちょっと不機嫌なんだよ。おこなの?…国際教養科の雪ノ下ってやつだ。見た目は良くて本人曰く美少女だ。でも内面が終わってんな、あれは。」

 

「ふーん…。女の人なんだ…。へー…よかったね…。」

 

「なんだよ…。まあ、悪い奴ではないんだろうけどな。俺はああいう裏表ないやつはけっこう好きだぞ。」

 

「っ…。」

 

「おい、小町?どこ行くんだよ。」

 

お兄ちゃんの口から知らない女の子に対しての好きという言葉が出たことに耐え切れず、お兄ちゃんの前から逃げ出してしまった。そんな意味じゃないと分かっていても耐えられなかった。お兄ちゃんの声を振り切るように自分の部屋のベッドに飛び込んだ。

 

 

*****

 

 

知らない場所にいた。

そこには小町とお兄ちゃんがいた。2人だけの空間。寂しくない。あったかい時間。小町とお兄ちゃんだけの世界。幸せだ…。ずっとここにいたいよ…。

 

突然そこに病室の女の子がやってきた。顔も知らない女の人もやってきた。2人はお兄ちゃんと何かを話した後、お兄ちゃんを連れて行ってしまった。

私は必死でお兄ちゃんを追いかける。

待って、行かないで、小町を1人にしないで!

その思いも届かないようで3人との距離はどんどん開いていく。お兄ちゃんはその女の子たちに笑いかけている。とても幸せそうだ。

お兄ちゃん!小町を見て!小町にはお兄ちゃんしかいないの‼︎

どれだけ早く走っても少しずつ離されていき、その距離が縮まることはなかった。

 

 

*****

 

 

「お兄ちゃん‼︎」

 

目に映ったのはいつもと変わらない小町の部屋だった。

あれ…じゃあ……今のは夢…?それにしてはリアルな夢だったな…。…本当に夢だよね…?

まだあの映像は小町の目にしっかりと焼きついている。お兄ちゃんがあの女の子たちとどこかへ行ってしまうシーン。どれだけ走っても追いつけない恐怖。

 

嫌だ…。

嫌だ…嫌だ、嫌だ、嫌だ!お兄ちゃんが他の誰かに優しくして小町を見てくれないなんて嫌だ。小町だけを見ていてくれないと嫌だ。小町だけに優しくしてくれないと嫌だ。ずっと一緒にいてくれないと嫌だ。小町にはお兄ちゃんしかいないんだ。小町はお兄ちゃんがいてくれればそれだけでいい。お兄ちゃんが他の人と一緒にいるところなんてもう見たくない!小町は…小町にはお兄ちゃんが必要なんだ。

…でも、お兄ちゃんは小町を必要としてるのかな。

お兄ちゃんは小町に色んな優しさをくれたけど小町は何かをあげれてたのかな…。ごはん作ったりとか掃除したりとかそういうことじゃなくて、比企谷小町として、比企谷小町にしかできないことでお兄ちゃんに、比企谷八幡に何かをあげれていたんだろうか。

そう考えると何も思いつかない。

何も思いつかないことがとても怖くなった。このままじゃいつかお兄ちゃんは小町の元からいなくなってしまう。そんな恐怖が小町を襲ってきた。

それとともに小町はお兄ちゃんがさっきの人たちと愛しあっているところを想像してしまう。お兄ちゃんが他の誰かに触れている。お兄ちゃんが他の誰かを求めている。そんなことが小町は許せなかった。しかも、小町が求めても妹だからお兄ちゃんとはそんな関係にはなれない。その事実が小町をさらに苦しめる。

だったらどうすればいいの……?

 

そうだ…。誰かがお兄ちゃんを盗っちゃう前にお兄ちゃんを小町のものにして、小町をお兄ちゃんのものにしてもらえばいいんだ。

お兄ちゃんにあげられるものがないなら小町をあげればいい。その代わりにお兄ちゃんからもお兄ちゃんの全てをもらうんだ…。そうすれば小町とお兄ちゃんはずっと一緒。

ずっとずっとずっとずっと、死ぬまで一緒にいられるんだ。

その時にはもう自分がどんな風になろうとどうでもよかった。

 

 

お兄ちゃんさえいれば他に何もいらないと心の底からそう思えるようになっていた。

 

 

*****

 

 

回想を終えると空は暗くなっていた。

お兄ちゃんはまだ帰ってきていない。

小町はあの事故をきっかけにこの気持ちに気づけたんだ。お兄ちゃんを傷つけたことは許せないけどその点では結衣さんに感謝しなきゃね。

でもお兄ちゃんは小町のものだから。

結衣さんだろうと雪乃さんだろうとお兄ちゃんは渡さない。

だから雪乃さんを見過ごすなんてのはもってのほかだ。

でもここからじゃちょっと間に合わないかな…。

小町はしぶしぶ陽乃さんに電話をかける。

 

「あ、もしもし陽乃さん。小町ですー。実はー」

 

お兄ちゃん、すぐに助けてあげるからね。

だから………これからもずっと小町だけを見ててね。

 

 

 

 




皆様あけましておめでとうございます。
戸塚だと思った?残念小町でした‼︎まさに外道‼︎
とまあこんなことは置いといて新年1発目は番外編です。
今までで1番の文量ですね。
なんか小町の時だけモチベーションがやばいです。
まじっべーです。
戸塚をお待ちの皆様はもう少しお待ちください。

投稿の頻度は落ちていくと思いますが皆様今年度もよろしくお願いします。
最後に、皆様にとって素敵な1年になりますように…。
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