インフィニット・ストラトス 虹の彼方は無限の成層圏(一時凍結)   作:タオモン3

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読み返してみては修正していく。
上げる前に見直しはしているのですが……
8話目です。


第八話  親友と戦友

束サイド

 

学園長室を出た私をちーちゃんは呼び止めた。二人だけで話がしたいらしい。ユー君たちには先に食堂に行ってもらい、私たち二人は邪魔が入らない屋上に移動した。

空はもう夕日で黄昏色に染まっていた。

 

「二人っきりでお話なんて……なにかなちーちゃん」

 

手すりに寄り添い、腰を掛けるとちーちゃんをまっすぐと見た。

 

「あの二人の事だ。キサラギ兄妹は何者だ? なぜお前と行動を共にしている? 」

「なんて説明したらいいかな……。ユー君とユーちゃんはいっちゃんとクーちゃんが山の中で助けた未来人かな? 」

「ふざけるな。真面目に答えろ」

 

こっちは大真面目なんだよ。

 

「でも、今のとこ害はないよ。ISを使わせたらちーちゃんでも苦労すると思うけどね。そんなことより本当に訊きたいことがあるんじゃない? 」

 

ふふふ、と悪戯めいて笑うとちーちゃんの表情は一瞬揺らいだ。

相変わらず分かり易いな。

大方いっちゃんの事だと思うけど。

 

「……その……一夏の容体はどうだ?」

 

ほらね。

 

「良くなったよ。三年前よりはね…………まだいっちゃんと話すのは怖い?」

 

「…………わたしは姉として、家族として一夏を守ってやれなかった。今更、どういう顔をして会えばいいんだ? なんて言ってやればいいんだ? 」

「お帰り、ごめんねって言えばいいんじゃない? いっちゃんも三年前の傷を乗り越えて前に進んでるんだよ。私たちが前に進まないんじゃカッコ悪いよ。そうだよね? 」

「……束」

 

そう。前に進まなきゃいけない。困難を避けて通っても絶対に前になんか進むことなんてできない。

六年前の私がそうだったように。ちーちゃんには……親友には絶対にそうなってほしくない!

 

「だから、勇気を持って一歩前に出よ? いっちゃんが進んだようにさ」

「……そうだな。ありがとう束」

「なら早くいっちゃんの所に行こう? 束さんは腹ペコなのだよちーちゃん♪ 」

 

手すりから降りて、ちーちゃんの手を引き二人で屋上を出た。

その時に、ふと考えた。

私はどうなのだろうと。

偉そうに言ってしまったけど、私は……箒ちゃんと家族に謝ることはできるのかな…………。

 

ユウキサイド

 

開いた口がふさがらないってこんな時の事を言うんだよね。

目の前に悠然と佇む女性は……アナベル・ガトーと名乗った。

僕たち兄妹はその人を知っている。

アナベル・ガトー。

宇宙要塞ソロモンを中心とした宙域で活動していた元ジオン公国軍大尉。終戦末期のソロモン戦では撤退する味方のしんがりを務め、追撃した連邦軍部隊に多大な損害を与えたエースパイロットでありその時に「ソロモンの悪夢」と二つ名が付き、後の連邦軍兵士に恐れられた歴戦の戦士。

ア・バオワ・クー戦で一緒に戦ったけど、流れ弾が当たり損傷したゲルググを近くのグワジンに着艦してから会うことはなかった。その三年後のエギーユ・デラーズ大佐――その時は中将――が起こした星の屑作戦でアクシズからせめてもの助力として贈られたMA《ノイエ・ジール》の整備兵として兄さんに随伴した時に再会した。その時階級は少佐になっていた。

《ノイエ・ジール》を受諾し作戦の最終目的、コロニーを地球に落下させるために出撃して戻ってこなかった。

ガトー少佐とは兄さんの方が親しかった。僕はどうもその人は苦手だった。自身の美学に反するものは嫌悪していたし、初め会ったときから……なんか怖いんだよね。執念に憑りつかれたというか、そんな印象だった。

主義は違うけど祖国と独立を願う想いに共感したとか兄さん言ってたっけ。今思うとアクシズに亡命してから月にちょくちょく行っていたのはその為なのかな。

 

「本当に……ガトーなのか? 」

「くどいぞユウヤ。しかし、このような女々しい姿になっていたとあれば疑うほかあるまい。だが、わたしは紛れなく君が知っているアナベル・ガトーで間違いない」

 

兄さんを見つめる瞳は強く、纏っている気迫は紛れもなくアナベル・ガトーその人だと僕は感じた。

ただ……

 

「いや……俺が知っているガトーは男だぞ?!」

 

兄さんはもちろん僕も何度言われようと信じられなかった。だってあの人は男だから。

 

「……ぬう。その一点に関しては――ええい、ここでは人目が付く。ユウキ少尉。しばし兄を借りるぞ」

 

ガトー少佐?の鋭い眼差しが僕に向けられた。

気が付けば僕たちの周りは夕食を食べに来た生徒たちの視線を集めていた。その殆どがガトー少佐と兄さんだと思う。

 

「あ、はい。どうぞ」

「ちょ……おまっ!」

「妹の許可は得た。いくぞユウヤ」

 

困惑する兄さんを引っ張ってガトー少佐?は食堂を出て行った。

あんな怖い形相で言いわれたら断ることなんてできないよ。

 

「結局あの人誰なの?」

「う~ん……兄さんの戦友かな」

 

ユウヤサイド

 

「ここならいいだろう」

 

アナベル・ガトーと名乗る女は俺を人気のない中庭まで強引に連れてきた。辺りはすっかり暗く、設置されたライトがうっすらと中庭を照らしている。

あらためてガトーと名乗る女に目を馳せた。

見た目は二十代前半。長い銀髪を一つに束ねているところまでは記憶のガトーと一致する、が………190くらいあった背は170ぐらいまでなり、適度に鍛え上げられた身体は、スラリとしていて美しいボディラインを描いている。

目つきは変わらず、鋭く威圧的だが顔は整い確実に美人の部類に入るだろう。

そして何より、胸の膨らみがある。たぶん、ユウキよりあるな。

俺が知っているアイツは男のはず……なのになぜ、こんなにも懐かしと感じるんだ?

 

「……本当にガトーなのか?」

 

何度目になるか分からない質問を問いかける。

正直同姓同名の他人か、アイツに妹が居ればこんな女性だろうと思うほど、俺は半ば疑っていた。

 

「疑うのも無理はない。大破した《ノイエ・ジール》と残存部隊で連邦艦隊に特攻し、サラミス級宇宙巡洋艦に体当たりをしたところでわたしの記憶は途切れ、気が付けばドイツのベルリンに女子として生まれ、今まで育ってきた」

「………………」

 

どことなく悲しみを帯びながらガトーは続けた。

 

「世界には地球連邦がなく、コロニーもなく、人類は宇宙に往かず、地球の恩恵を得て生活をしている。コロニーで生まれ育ったわたしに想像もつかない裕福な暮らしをした。初めは夢かと思った。しかし、多くの戦友が、同志が、あの宇宙に散っていったことの事実は夢幻でなく、現実の出来事であったはずだ。姿が変わろうとわたしはジオン公国軍軍人アナベル・ガトーだ! それだけは信じてもらいたい」

 

気迫に満ち溢れたその双眸は、紛れもなく本人であることを語っている。だからなのだろう、身体が怒りで震えていた。

 

「お前が……友の……アナベル・ガトーなら答えてくれ。なぜ、戻ってこなかった……なぜ……生きて帰ってこなかった。言ったよな? 勝利の盃を酌み交わそうって……答えろ! アナベル・ガトーッ!!」

 

激情にまかせ叫んだ。十年前に俺はアクシズ先遣艦隊旗艦グワンザンでガトーの帰還を待った。コロニーは地球に落ち、星の屑作戦は成就した。なのに、収容できた人数の中にガトーは居なかった。アイツの部下であるカリウスは、なぜガトーが戻らなかったのかを語ることはしなかった。だからこそ答えてほしいんだ。

俺との約束を捨て、成したかったものは何かを。

 

「……一人の軍人として、武人として、男として、決着をつけなければならない相手が居たのだ……許してほしいとは思わない。君が望むなら、できる限りの贖罪をしよう」

「……後悔はしているのか? 」

「無論ありはしない。わたしは終始一貫、あの日の事を後悔したことは微塵もない」

 

その声音に虚偽はない。

悠然とした姿は、俺の知る一人の武人であり、戦友であり、友である人物のもの。

ああ、間違いなくアナベル・ガトーだ。

 

「なら……いい。後悔してないならなにも言うことはない。君に再び出会えた運命に俺は感謝する。また会えて嬉しいよガトー」

「わたしもだ。ユウヤ」

 

ガトーは喜色満面の表情で笑い、俺の顔も同じように笑った。

十年間の柵が無くなり、すっと心が楽になった。

 

アウトサイド

 

カシャッカシャッ。

ユウヤとガトー、二人の戦士が感動の再開をした中、茂みから自前のカメラを構え一心にシャッターを切る者が居た。

IS学園一年生黛薫子。

部活で新聞部副部長を務める整備課のエースでガトーが担当するクラスの生徒でもある。

 

「はぁ~……まさかと思って後をつけたけど、ガトー先生にね……これは学園最大のスクープ! 見出しは『モンド・グロッソの悪夢と呼ばれた人にまさかの恋人!?』うん。これにしよう!」

 

そうと決まれば長居は無用。

気づかれぬように茂みから退散する薫子2年生。

しかし、後日ガトー先生からこっ酷く指導されたことは言うまでもない。発行された学園新聞は予備のデータも含め全て跡形もなく処分され、1週間の部活動停止処分を言い渡された。

しかし、この時に盗撮された写真は一枚だけ、後にガトーの部屋に飾られていたとか。

 




ガトーさんの言葉遣いが難しい。
こいつはガトーじゃないっと思っても温かい目をしてくださいwww
さて、お次は実機試験にいきます。
本編までの道のりが長いですがご了承ください。
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