インフィニット・ストラトス 虹の彼方は無限の成層圏(一時凍結)   作:タオモン3

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なんかガトー少佐でなくなってきたwwwww
第九話です。



第九話  再開の盃

ユウヤサイド

 

「…………朝か」

 

カーテンの隙間から差す日の光は、目に差すような痛みに近い感覚を与え、俺は目覚めた。

重たい瞼を擦りながらベッド代わりにしたソファーから起き上がる。

ああ……頭が重い。

昨日は遅くまでガトーと話しをしてしまったからか……いや、酒のせいか。

 

 

 

 

「わたしはこの世界は後世だと感じている。ユウヤ、君はいつ死んだのだ?」

「あれから十年後だ。死んだ、というより時を超えた……詳しくはわからないんだ。許してくれ」

「いやいい。良ければここまでの経緯を教えてくれないか? わたしも星の屑完遂後の事を知りたかったところだ」

 

最初、俺は話すか迷ったが、

 

「少し長くなるぞ」

 

ガトーなら受けとめられる。友の屈強な精神を信じることにした。

 

「構わないさ。時間ならいくらでもある。どうせならわたしの部屋でしよう。あの時酌み交わさせなかった盃を片手にゆっくりと語ってくれ」

「いいのか? 学園内で」

「無論、飲酒は教員であろうと厳罰ものだ」

 

見つかったらの話だがな、とガトーは微笑した。

念のため俺は、ユウキにはISのプライベート・チャンネルで連絡をした。

 

『実機試験は明日かもしれないんだからほどほどにね』

『わかった』

『念を押すようだけど……ほどほどにね』

『ああ、わかっている』

 

通信を終え、小さく息をつく。

いちいちうるさいんだよ、まったく。

それから中庭からガトーの部屋に移動し、盃――ウイスキー――を飲みながら、ガトーが死に、その後どうなったかを知る限り語った。

星の屑作戦は、連邦軍政府にジオン残党軍の脅威を与えた。

しかし、それはジオン残党、スペースノイドとってのさらなる悲劇の幕開けであった。

地球連邦軍特別部隊ティターンズの結成。

連邦軍内部にジオン残党狩りを目的とし、アースノイドを中心とした少数精鋭の部隊を作り上げた。

ティターンズは日に日に肥大化し、いつしか連邦軍内部を掌握するまで強大な部隊、いや組織となった。

やがてスペースノイドに対する強引な弾圧も開始した。

その最たるものがUC0085・7月31日、サイド1・30バンチコロニーで起きた反連邦運動に対しG3ガスをコロニーに注入し住民を虐殺した事件。

後に30バンチ事件と呼ばれる虐殺劇である。

しかし、この事件によりスペースノイドは反連邦組織エゥーゴに集結。2年後のグリプス戦役への火種となった。

ユウキはデラーズ紛争が終結した時、何も言い残さずにアクシズから脱した。星の屑作戦最終目的のコロニー落としが、ユウキの心の不信感を決定的なものにしたのだろう。

そのさらに1年後、シャア・アズナブルとその時部下であったアンディ、リカルドの両名が共に地球圏へ帰還した。

アクシズの影の指導者ハマーン・カーンはその時、すごくへこんでいた。シャアとも親しかった俺は彼女の機嫌取りを2年間する破目になったのだから堪ったものではなかった。監視も兼ねてだが。

ここまでの事をガトーに話した。

意外、とまではいかなかったが、静かに目をつぶり、

 

「……そうか。星の屑は多くの同胞へを散らす契機にしてしいまったのか…………すまないユウヤ。君には苦汁の日々だっただろう」

 

小さく、消えそうな声音で呟いた。酒が入っていたこともあるのかその時の彼――いや彼女は弱弱しかった。

ジオン再建という義を掲げ、時代を駆け抜けた彼らは狂人として歴史に名を遺したことになる。

だが、俺は知っている。アイツが、アナベル・ガトーの信念は、理想はジオンとスペースノイドの独立の為に起こしたものだ。手段はどうあれ、俺は彼らに称賛の意を贈ろう。汚名を背負い、懸命に戦ってきた英雄の軌跡は誰にも否定することは許されないことなのだから。

 

「いいさ。それはあの世界のことだ、悔いても仕方ない。こうしてまた君に出会えた。さっきも言ったがそれだけで俺はうれしんだガトー。またこうして友と酒を飲む事が出来ることで俺にとって十分な贖罪になっているよ」

「そう言ってもらえると、わたしも楽になる」

 

それにもう終わったことなんだ。今更、悔やんでもしょうがない。

それからさらに酒は進んだ頃、ガトーは唐突に自分の事を語り出した。

 

「生まれ変わり、女になろうとわたしは己の生き方を変える事は出来なかった。少し前までドイツ軍に居たのだ。士官学校に入り、教育期間を終えたわたしはIS部隊に配属された。適正が高かったらしい。MSに似た機動兵器を後世でも扱うことになるとは思っても見なかったよ。わたしはそこで研鑽を重ね、技術を磨き、隊長の座まで上り詰めた」

 

だが、とガトーはグラスの酒を一気に飲み干し、叩き割るかのようにテーブルに荒々しく置いた。頬が薄い朱色に染まっている。

ガトーが酒に飲まれるなんて珍しいな。

 

「ISが登場し10年、世は女尊男卑。悪風のごとく蔓延した女性至高主義は、精明強幹な将官を退職に追い込み、ISが使えるだけで女が率先して優遇されていた。わたしは我慢ならなかった。上官が、同僚が、男だからという一点で雑務与えられ日々苦しみ。女性士官の顔色を窺いながら職務を全うしている。中には苦汁に耐え切れず、自殺する者もいた。分別もつかない輩が我が物顔で私利私欲を貪り、横暴を行う。これが軍人のあるべき姿なのかユウヤ?」

「………………」

 

ここに来た時に出くわしたIS委員会の部隊――エリーゼの顔が頭を過った。

女尊男卑は想像以上に世界に蔓延しているらしい。

 

「わたしは彼女らが連邦の様に見えてしまった。腐敗しきった地球連邦にだ! その時わたしは悟ったのだ。世に蔓延する女尊男卑、女性至高主義を撲滅し、再び平等な世界にしなければならない。これは生まれ変わったわたしに与えられた天命なのだと」

「それがなんでここに居る理由なんだ?」

「……3年前、わたしはドイツ代表の地位を勝ち取り、ⅠSの世界大会――モンド・グロッソに出場した。各国の代表を打ち破り、決勝まで勝ち進んだ。大会に優勝し、世に根付いた過ちを問おうとしたのだ。しかし、決勝の相手……織斑千冬に辛くも敗北を喫してしまった。それから一年後、IS学園から教師をしないかと轡木学園長から勧誘されたのだ。貴女の様な実直で清き精神の人物がいまのIS学園にはほしい、と言われわたしは快く承諾した」

 

ガトーは酔いのせいかうっつらうっつらしながらジャケットを脱ぎ、ブラウスの首元のボタンを外した。

……おいおい。胸元が見えるぞ。

 

「……前世は……デラーズ閣下がわたしを導いてくれた。

だから後世では……わたしが光に……彼の英霊が示してくれた光になれればとその時思い至ったのだ。広くものを見る……いまの世代がダメであったとしても、これからの時代を作る世代の者たちを正しき道に向かわせる。その重責は軍人時代のそれよりも遥かに重い。しかし……やりがいはある。まだ……2年目の若輩ながら教え子を持ち、今では剣でなく教鞭を振るっているという……わけだ」

 

どうだ?と言わんばかりにガトー微笑む。

人は変わっていける。誰が言ったか忘れたが、目の前に居る友を見て確信し、心の片隅に小さな不安が滲み出た。

……俺は変われるのだろか。

 

「……そうだったのか。変わったなガトー。前の君なら、こんな事はしなかった。力でねじ伏せ、目的の為なら手段を択ばない。どんなに自分が汚れようが信念に従い、流星の様に駆けぬけた君が、いまでは人を導く明光だ。俺は君が友であることが誇らしいよ」

 

驚いたように目を見開いたが、次第に穏やかな笑みをした。

 

「ふふふ……そうか。君から見て……わたしは…………そう……みえ…………」

 

事切れたようにガトーはテーブルに崩れた。

 

「おい、ガトー」

「………………」

 

軽く揺するが寝息をするだけで反応がない。

酒に飲まれ寝てしまうアイツ見たのは初めて見た。

やれやれ。友を放って先に寝るやつがあるかよ。まったく。

俺はテーブルに突っ伏すガトーの左腕を上げ、肩を入れて立ち上がらせる。

かるっ?!

いやまあ、女だから当たり前か……

 

「………………」

 

このままベッドに投げ込むのも気が引けるな。

……しょうがないか。

 

「よっと」

 

左手で足に入れ、すくい上げるように持ち上げる。

……俗に言う、お姫様抱っこ。

 

「………………」

「…………う……ん」

 

抱き上げているのが美人ではあるが、記憶の中のガトーといまのガトーを重ねるとなんとも複雑な気分になる中、ベッドまで運ぶ。

途中、はだけたブラウスの間から豊かな胸が……

 

「………………」

 

見なかった。うん。俺はなにも見ていない。

香水のような甘い香りも気のせいだ。

ああ、酔っている。俺も久しぶりに友と酒が飲めたもんで、羽目を外しすぎたんだ。

ガトーもそうだ。

明日は十中八九実機試験だ。早く寝ないと。

ガトーをベッドに寝かせ終えた時、重大な失態に気が付いた。

……部屋どこだろう。

荷物は束のロケットに置いてきしまった。

部屋は確か、千冬が案内してくれはずだった。

時計は11時を回ったところ。

いま部屋を後にしたら確実に不審者だと思われ補導されかねない。

酒も入っているし、なによりガトーに迷惑を掛けるわけにもいかないか。

俺は仕方なく空いていたソファーをベッドにして眠った。

 

 

 

 

「……シャワーでも浴びるか」

 

どうも気分がすぐれない。仕方がなく俺はバスルームに足を運ぶ。

昔からそうだが、俺は朝が弱い。いくつになってもだ。酒が入ると尚更だ。

Тシャツとズボン、下着を脱ぎさる。

 

「………………」

 

バスルームの前に立つと、なにか重要なことを忘れているような気がするが…………いや気のせいだろう。

早く、浴びてしまおう。

扉を開けると――

 

「ん?」

「……あ」

 

一糸纏わぬ、ガトーが目に飛び込んできた。

頭のだるさと眠気が一蹴され、背筋が一気に凍りつく。

そうだ、ここはアイツの部屋じゃないか!

なんで自分の部屋だと思ったんだ!!

 

「……いや……その」

「…………………」

 

お互い石になったかのように固まり動かない。

その間ガトーの裸体をもろに直視してしまった。

一つに束ねてあった銀髪は解かれ、シャワーの水滴は身体のラインをなぞる様に滑り落ちていく。

運んだ時もそうだが、胸はそれなりにある。

濡れた髪、身体、シャワーの熱湯でなのか薄い朱色になった白磁のような白い肌、シャンプーの香りは俺の思考を停止させ、何よりあまりの美しさに声が出なかった。

 

「……すまんっ!!」

 

我に返り、扉を勢いよく閉めると、急いで脱いだ衣服を着なおした。

 

「………………………………」

 

椅子に座り頭を抱え込む。

……俺が……ガトーに見惚れていた?

……うああああああああっ!!

なに考えているんだ?!

アイツは男だぞ?

あ、いまは女か。

いや、まて……あいつ友で戦友で……同志で…………だから異性としては………。

ああ、頭がごちゃごちゃしてきた。

 

「いや……ちがうんだ……そうじゃない…………ガトーは友で……」

「……何をぶつぶつ言っている」

 

いつの間にかバスルームから出てきたガトー。

俺はまともに顔を見られずに俯いたまま、

 

「その……すまん」

 

謝ることが精一杯であった。

クロエの時もそうだが、なんでこんな時にニュータイプ的な危機感知能力が発動しないのか恨めしい。やはり……能力が低いせいなのか。

 

「……はあ。君とわたしとの仲だ。今更裸体の一つ見られたところで動じはしない。どうせ不注意なのだろう?」

「そうです」

「ならいい。これから気をつければいいことだ。さあ、もう顔を上げろ。男がいつまでも下を向いているな」

 

ゆっくりと顔を上げると、バスタオルを巻き、まだ乾ききっていない髪は水分を含んでいるのか朝日があたりキラキラと輝いていた。

 

「………………」

「……着替えをするから後ろを向いてくれると助かるのだが?」

「あ……すみません」

 

急いで後ろを向いた。

ガトーは動じていないと言っていたが……嘘だなたぶん。

若干、顔が赤くなっていたし。

いや、たぶん熱気で赤くなっていたんだ。うん。そうに違いない。

なんでこんな時だけニュータイプ的なものが働くのだろうか。

 

「ユウヤ……昨夜聞けなかったことがあった。お前といた銀髪の少女に関してだ」

 

着替えながらガトーは訊いてきた。

クロエの事か?

 

「クロエがどうした?」

「いや……ドイツ軍に居た時、彼女に似た部下がいたものだからな。それだけのことだ――もういいぞ」

 

振り返ると、いつものように銀髪を一つに束ね、スーツは昨日のグレーのパンツタイプでなく黒のスカートタイプにガトーは着替えていた。

 

「では、朝食を食べにいこうか」

「……ああ、そうだな」

 

部屋を出て昨晩夕食を食べた食堂に向かう中、まともにガトーの顔を見れなかったのは言うまでもない。

そしてISのプライベート・チャンネルを使えばよかったと、後の後に気が付いた。

 




やっぱり進展具合がグダグダです……
感想、意見、誤字脱字報告など待っています。

追記、アポリーとロベルトを本名のアンディとリカルドに変更しました。
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