インフィニット・ストラトス 虹の彼方は無限の成層圏(一時凍結)   作:タオモン3

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ようやく一夏とクロエ……
ヒロインなのに影が薄い……少佐が濃すぎるのかな?
後遅くなって申し訳ありませんでした


第十三話  試験三戦目 一夏VS麻耶?

ユウヤサイド

 

「大丈夫か?」

「うぅ~……まだ頭がグワングワンしてるよ」

 

アリーナからガトーにピットへ運ばれたユウキはISを解除して更衣室のベンチに腰かけて項垂れている。頭に落とされたブレードの一撃は《アサルト・ゼータ》に傷はつけれなくとも操縦者の意識を刈り取る威力はあった。本当に恐ろしいものだよ。

 

「わたしも年甲斐なく熱くなっていたようだ。はははははっ!」

 

対照的にガトーの表情は清々しかった。ああ、悪いと思ってないなこれは。

 

「…………その顔、絶対に悪いって思ってないですよね?」

 

恨めしい眼差しでユウキはガトーを睨む。

 

「勝負ごとに関して手は一切抜かぬことが相手にとっての礼儀だ。その過程でケガがあることは必然、謝るようなことがあるかユウキ?」

「程度ってものがあるでしょう? やりすぎなんですよ! こっちはほんとに死ぬかと思ったんですからねっ!」

「なら安心しろ。ISはMSと違い絶対防御で守られている。場合によっては重度のケガをするが、起動中あの程度で死ぬことは皆無だ」

「それでもですよっ!」

 

ユウキはぎゃあぎゃあと喚くがガトーの言っていることもまた正論だ。

真剣勝負に手を抜かれては後々の遺恨を生むだけ、ISは安全面に関してはMSより優秀なのも確かだ。

 

「それまでにしろって。負けた俺らが何言ったって虚しいだけだぞ」

「むぅ~……」

 

ムスッとするユウキ。

 

「わかってるけど愚痴ぐらいは言わせてよ。だいたい――」

「ユウキお姉ちゃんっ!!」

 

通路側の扉から顔を青くした一夏が飛び込んできた。ユウキを見るなり脱兎のごとく勢いで抱き着く。

 

「い、一夏ちゃんっ?! どうしたの?」

 

突然のことで俺たちは驚く。

一夏は顔をユウキの胸に押し付け小さく震えていた。

 

「……モニターに映る…………ユウキお姉ちゃん…………動かなくなって…………運ばれて…………心配で…………怖くなって…………」

 

ポツリポツリと一夏は言う。模擬戦で気絶したユウキがよほど心配だったのか、涙声になっている。

 

「そっか。ごめんね心配かけて

 

ユウキは震える一夏を抱きしめ、優しく頭を撫でた。

 

「でも、僕はこの通り大丈夫だよ」

「……うん」

 

顔を上げた一夏の目元の涙を服の袖で拭った。

 

「しかし、一人でよくこの場所が分かったな織斑」

「………………」

 

親の仇を見ような冷たい眼差しで一夏はガトーを見据えた。

 

「こっちだと思ったから…………それだけ」

「……むう」

 

そう言い顔を逸らした。思ったからって。あとガトー、そっけないからってむっとするな。

 

「クロエはどうしたんだ? お前の傍を離れ――」

「居ますが?」

 

見ると隣にクロエが居た。

うぉっ?! 居たのかよ!

 

「いつからそこに居た?」

「一夏様が入ってすぐに」

「え?」

 

気付かなかった。気配の欠片もなかったぞ。

 

「……影が薄いからでしょうか」

 

クロエは小さく呟いた。表情の機微が乏しいがはどこか悲しげに見えた。

 

「いや、すまん」

 

この世界に来てから俺は謝ってばかりだとしみじみ思う。なんでだろうな。

 

「いいんです」

 

クロエもいつも通りに答えた。よくわからん。

 

「ああ……やっと……追い付いたっ!」

 

息を乱しながら入ってきた山田先生は足が縺れて前に倒れ込むのを寸前で受け止める。

 

「大丈夫ですか?」

「は、はいぃっ! ごめんなさいっ!」

 

顔を覗くと頬を赤くしながらそそくさと離れた。今更だけど、山田先生もけっこう大きいな。何処とは言わないが。

 

「………………」

「………………」

「………………」

 

ガトー以外の視線が冷たい。なぜだ?

 

「あ、ガトー先生お疲れ様でした」

「うむ。では山田先生あとは頼みます」

「はいっ! 任せてください!」

 

どこか嬉しそうに山田先生はにかんだ。

 

 

一夏サイド

 

管制室のモニターに倒れて動かなくなったユウキお姉ちゃんを見て、わたしは頭が真っ白になって、いつの間にか飛び出していた。更衣室の位置はわからなかったけど、あの日なにかに導かれるように森の中を進んだ時と同じに、気が付けばわたしはたどり着けていた。ユウキお姉ちゃんが大丈夫だったことにホッとして涙を流した。ガトー先生にどうやってこれたかを訊かれたときは、思ったからと答えた。けど自分でもよくわかってはいない。

 

「では実機試験を始めます。二人とも準備はいいですか?」

「……はい」

「問題ありません」

「それじゃあ……織斑さんとクロニクルさんどちらが先に行いますか?」

 

ユウヤさんとユウキお姉ちゃんみたいにうまく動かすことなんて、正直できる自信はない。けど……

 

「わたしから行きます」

 

わたしは一歩前に出た。

 

「わかりました。織斑さんはISを起動してください」

「はい!」

 

気合を入れるように強く答え、《白零姫》を呼び出す。

左手のガントレットが光輝き、手足に純白の装甲が纏っていく。背中に翼を模したような大型ウィングスラスターが展開。一角獣のような角があるティアラ型のハイパーセンサーが頭に装着された。

 

「大丈夫なのですか一夏様?」

「うん、大丈夫。ありがとう」

 

心配そうなクロエさんにしっかりと頷く。《白零姫》に乗ったのは二回目だけど不思議と大丈夫な感じがする。この気持ちならやれる。

 

「ちょっと待っていてくださいね。わたしもISに乗り込みますから」

 

そう言い山田先生も展開待機状態のISに乗り込むんでいく。《白零姫》は山田先生が乗り込んだISを《ラファール・リヴァイヴ》と識別したデータを表示した。

 

「それじゃあ、アリーナに入ります。慌てずにゆっくりと自分のペースで来てくださいね」

 

《ラファール・リヴァイヴを》カタパルトに乗せ、山田先生は飛び立った。

 

「すぅ~…………よし」

 

小さく息を吸い込んで、一歩ずつ前に進む。

戻ってきたカタパルトに《白零姫》の足を乗せる。意外と操作は簡単かな。

 

「一夏様、お気をつけて」

「うん。いってきますクロエさん――」

 

瞬間、高速で流れるカタパルトで体がのけぞりそうになり、打ち出されたらと思ったらそこはもうアリーナの中だった。

 

「……っ!」

 

体が重力に従って地面に落ちていくが《白零姫》のPICを起動しているからふわりとした感じにゆっくりと降りれた。山田先生は降りたところから五メートル先に居た。

 

「織斑さん、大丈夫ですか?」

「……大丈夫です」

 

カタパルトの加速は驚いたけど、それ以外は問題なし。

……けど、正直不安。

あの日、束さんは《白零姫》ことを説明していたけど、嬉しくてほとんど頭に入っていない。

 

「武器はなにがあるの?」

 

呟きじみた問いに《白零姫》は拡張領域(バススロット)内の装備一覧を表示した。

 

「……雪片」

 

一覧の中に知っている名のものにわたしは目を細めた。

――雪片。それは世界大会で千冬姉さんが使っていたISが振るった刀の銘。千冬姉さんはそれだけで世界大会二冠を成し遂げさせ、千冬姉さんを変えた物。それが雪片。

惨型と書いてあるからその発展型なんだと思う。

 

「雪片惨型――展開」

 

そう言うと右手から光の粒子が溢れ、形を成していく。1・6メートルの片刃のブレードが右手の中に現れた。

 

「…………」

 

これで千冬姉さんは世界最強の地位と名誉を手にした。この刀にはそれだけの力がある。それでも代価もある。千冬姉さんが手にした代価――それが私だ。

管制室を見る。ISのハイパーセンサーを通しているから数百メートル離れたここからでも千冬姉さんの顔が見える。…………悲しい顔をしていた。

 

「準備はいいですか? 不安でしたらもう少し――」

「大丈夫です。始めてください」

 

山田先生に視線を戻して雪片を構える。なんでそんな顔をするの? まるで私がISを使うことが嫌なような。……わからない。管制室で助言したとき、あんな態度だったから? 

わからない。けど、いまは目の前のことに集中しよう。

 

ビーッ!!

 

「それでは……行きます!」

 

開始と同時に山田先生は勢いよく飛び出して、向かってくる。あまりにも一直線すぎるから横に飛び躱し、着地と同時に、地面を強く踏み込んで跳躍。振り返り様の山田先生に袈裟斬りをするが踏み込みが浅く避けられる。

 

「わ、わわわっ!」

「……え?」

 

なぜか避けたはずの山田先生のほうが慌てていた。さっきまで落ち着いてとか、大丈夫とか言っていた人じゃないみたい。

でも、こっちにとっては好都合。

 

「他に使えるものは?」

 

問いに答え《白零姫》は使用可能な装備の一覧を表示。

多機能武装腕――麗月を解放(アンロック)。射撃モード、エネルギー充填(チャージ)――敵ISをロックオン!

 

(こう使うんだね)

 

左腕を山田先生に突き出す。表示された標準に合わせて高密度圧縮された蒼白のビームを放った。

 

「ふぇええええええ?! なんですかそれぇえええ?!」

 

叫びながらもビームを危なげなく回避する。

 

ドゴォオオオオオンッ!!

 

避けられたビームはアリーナのシールドを穿ち、観覧席を吹き飛ばして大穴を開けた。

 

「…………え」

 

山田先生が後ろに振り返って唖然。わたしも驚いて《白零姫》の左腕と穴が開いたシールドを交互に見た。

……威力……やばい。

 

 

『アリーナ防御シールドが破損しました。ただちに模擬戦を終了してください。繰り返します――』

 

すぐさまアリーナに警告が鳴り響いた。

 

 

 

「織斑、何か言うことはないか?」

「……すみません……でした」

 

ピットに戻ってきたわたしを待ち構えていたのはガトー先生。客席に大穴を作ったわたしは頭を深く下げてる。鋭い眼差しと怒気を含んだ声音が丸めた背中に突き刺さる。怖くて顔を上げられない。

 

「そう怒るなガトー。一夏はISを初めて動かしたんだ。右往左往してしまっても……仕方ないと思うのだが?」

 

助け舟を出すユウヤさん。

 

「アリーナの観客席を吹き飛ばしてもか? 今回は無人だからいいものを人が巻き込まれたとき、君は操縦は初めてだから仕方ないというのか?」

「……それはそうだが」

「で、でも今回はほら何もなかったんですし、僕がちゃんと出力の調整をしておきますから……ね、山田先生!」

「え、私ですか?!」

 

全員の視線が山田先生に殺到した。子犬みたいにぷるぷると震えている。

 

「そ、そうですね。織斑さんもまだ初めての操縦ですし……今回は厳重注意でいいんじゃないかなと」

「…………………………………はぁ。わかりました、今回はそうしましょう。しかしっ!」

 

ぎろりと睨まれ、心臓が破裂しそうになる。

 

「次、もしも同じようなことが起きればそれ相応の罰があることを覚えておけ、いいな織斑」

「…………はい」

「ならいい。山田先生とわたしは管制室に居る理事長と学園長、織斑先生に報告しにいくため解散だ」

「あのわたしはどうなるのでしょうか?」

「クロニクルに関しては日を改める……か、アリーナを変えるしかない。確認をするがおそらくは午後になる」

「わかりました」

 

ガトー先生と山田先生はピットを後にした。

 

「ごめんね一夏ちゃん。僕もまさかあそこまで威力があるなんて思わなかったよ。これじゃ整備士失格だね」

 

ユウキお姉ちゃんは謝った。ISのデータの管理をしていたのだから《白零姫》の搭載されてた物はおそらく知っていたんだ。でも使ったのは私なんだから本当に謝らなければいけないの私の方だ。

 

「…………ごめんなさい」

「しょうがないさ。よく分からなくて使えばこうなるっと覚えておけばいいんだ。次から気を付ければな」

 

ユウヤさんに頭を撫でられる。

ユウキお姉ちゃんと違って優しくて安心するようで、頼りになるような力強い感じがした。

 

 

 

 

 




ついでに息抜きに書いていたやつを間違って更新してしまいましたwww

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