インフィニット・ストラトス 虹の彼方は無限の成層圏(一時凍結) 作:タオモン3
初投稿なのでよろしくお願いします
第一話 最後の戦争
ユウヤサイド
『少佐、シャア総帥が出撃します。少佐の隊は総帥の護衛と敵MSの排除をお願いします』
「了解した。しかし、総帥に護衛は必要ないかと思うが、ナナイ大尉」
『そうかもしれませんが、もしもの時のためにお願いします少佐』
それだけ言うと、一方的に通信を切られた。
相変わらず、シャア以外は冷たい女だ。
「各機はレウルーラの護衛を継続。総帥には俺が付く、いいな?」
『『『了解!!』』』
部隊の隊員にそう命令し、俺は乗機サイコミュ試験型ギラ・ドーガ――長いからサイコ・ドーガと呼んでいる――のオールビューモニターに旗艦レウルーラを正面に入れた。MSデッキから赤い機体――シャアの乗機サザビーが発艦した。
フットベダルを踏込み、メインスラスターを始動。サザビーの後を追う。
「シャア、俺はナナイに嫌われているのか?」
『なんのことだ?』
「あんたの護衛をしろってさ」
『……ナナイめ、余計なことを』
愚痴るようなシャアの呟きに、俺は肩を竦めた。
前方から無数のミサイルが飛来してくる。
ロンド・ベルの艦隊から放たれた、核ミサイルがその中に混ざっていると瞬時に感じとれた。
「ファンネル!」
サイコ・ドーガの両肩部にある、筒状の突起物――ファンネルを二機射出。
軌道イメージをそのままファンネルに伝達した。
「そこだっ!」
小型のバーニアを輝かせ、俊敏な機動で目標物に接近、内蔵されたビーム砲を噴く。
一際大きな爆発光が、オールビューモニターに映った。
核ミサイルをピンポイントで撃墜したからだ。
「っ!まだくる?!」
爆風の中から現れたミサイルはファンネルを振り切り、アクシズのノズル付近に命中した。
時間差で仕掛けてきたか。
「流石、ブライトだ!」
敵の指揮官に称賛しながら残りの核ミサイルを撃ち落とす。
瞬間、気配を感じサイコ・ドーガをその場から急加速を促した。
シャアのサザビーが後方から一気に追い越していく。
あいつも感じたのか。
「居たっ!」
モニターに二つの機影を捉えた。
照明データがない機体――アムロ・レイの新型ガンダム。
もう一つは白と紫の可変機――MSZ-06-3――Zガンダム三号機。
この感じ……搭乗者はユウキか。
「……そうか。お前も参戦してきたのか」
半球状の操縦桿に力が入る。
今更、後には引けない。お前とは敵同士。この作戦のためなら俺は、家族でも躊躇なく引き金を引くぞ。
友との約束ため!あいつの様な者を生ませないために!
俺は……お前を討つ!!
「ユウキィィイイイッ!!」
Ζガンダムに標準を付け、サイコ・ドーガのビームライフル数発を行先めがけて放った。
当てるのが目的ではない、機動を妨害するための牽制射撃だ。Ζガンダムはビームを避け、MS形体に変形した。
「いけよ!ファンネルッ!!」
残り四機の内、二機のファンネルをΖガンダムに突撃させる。
Ζガンダムは回避機動をしながらもビームライフルとバルカンの多様でファンネルを易々と撃墜した。
「それでこそ………だがッ!」
右手のライフルを捨て、腰にマウントしてあるビーム・ソード・アックスを装備。
スラスターを全開にしてΖガンダムとの距離を一気に詰め、ビーム・ソード・アックスの斬撃を見舞う。
ファンネルに気を取られる中を狙ったが、寸前ところでΖガンダムはライフルを楯に回避した。
だが、ライフルを奪うことはできた。
その時、
『……兄さんなの?』
「………ユウキ」
オープン回線でユウキの声が聞こえた。
ユウキサイド
僕の名前はユウキ。ユウキ・キサラギ。
地球連邦宇宙軍外郭部隊ロンド・ベルに所属の技術大尉。
僕は今、小惑星アクシズの落下阻止のために愛機Ζガンダム三号機でアクシズに接近していた。
その時、殺気を感じて反射的に回避行動をとった。
黄色のビーム光が目の前を横切った。
ΖガンダムをMS形体に変形させた。
閃光が飛来してきた方向からブラックとワインレッドのツートンの機体が接近してきた。ネオ・ジオンのMSギラ・ドーガに類似したそのシルエット。肩部にファンネルを装備しているから、さきほどアムロ大尉が撃墜したニュータイプ機の同型機なの?
そう考察していると案の定、ファンネルが二機向かってきた。
僕のΖガンダム三号機は、5年前のグリプス戦役で開発された機体だが、最新のマグネット・コーティングとコックピットシート、バーニアノズルに換装をしてある。さらにコックピットの周りにサイコ・フレームを内蔵。アムロ大尉のガンダムまではいかないが機体ポテンシャルは相手より上のはず。
ファンネルのビームを回避してからライフルで一つ、回り込もうとしたもう一機を頭部バルカンで撃破した。
「っ!?」
殺気を感じて機体を反転した瞬間、モニターにビームの斧を振りかぶったギラ・ドーガもどきが目前に迫っていた。
回避が間に合わない!
僕は咄嗟にライフルを楯にして斬撃を危うくしのいだ。
さっきのニュータイプ機とMAよりも鋭いプレッシャーを放ってくる。
間違いなく兄さんが乗っている。そう感じた。
僕は相手にオープン回線で呼びかけた。
「……兄さんなの?」
『………ユウキ』
その声は僕の知っている兄さんのものだった。
だからなのか僕は叫ばずにいられなかった。
「兄さん!何やってるんだよ!こんなことして何になるんだよ!!」
『…………』
「なにか言ってよ!!」
『……俺は……今の世界を潰す。邪魔をするなッ!!』
強いプレッシャーを放ちながら兄さんの機体がビーム・アックスで接近戦を仕掛けてくる。
球体型操縦桿を素早く動かして、ビームサーベルを右手に持たせ斬撃を受け止めた。
なんでなんだ兄さん。
ビーム同士がぶつかり激しい閃光の中で僕は思わずにいられなかった。
「こんなことしてもみんなが喜ぶとでも思っているの?いい加減に目を覚ましてよ!!彼女たちが、みんなが願った世界はこんなことをしてまでも、願った世界じゃない!!」
『お前に何が分かる?腐った連邦に属すお前に、あいつ等の痛みや悲しみ、願いが分かるものか!!』
「分かってもらえないから壊すの?今の世界を?」
『違う!宇宙に人々を上げることで、全人類が地球の重力から離れ、ニュータイプになればそんなことは起きない。これは救済だ、ユウキ!』
「そんなの復讐のまちがいだろ!!偉そうに言うな!!」
『……………ッ!』
アムロ大尉のガンダムが兄さんと来た赤いMS――シャアと戦闘しながらアクシズに取りついた。
こんなことをしている内にもアクシズは徐々に地球へ落下していく。
いまは兄さんよりもアクシズを先になんとかしないといけない。
熱くんなる頭を冷やして、操縦桿を押し込んだ。
「このくそっ!」
兄さんの機体を押し返し、Ζガンダムを素早くウェーブライダー形態に変形させた。
『逃がすか!ファンネル!!』
兄さんの機体からファンネルがさらに二機射出された。
ファンネルはしつこく追随して、ビームを斉射してくるが機動性が上がったΖガンダムに当てることはできない。一気にメインスラスターを全開にしてファンネルと兄さんを振り切った。
ユウヤサイド
「……なんて様だ」
笑えてくる。
ユウキのΖガンダムはサイコ・ドーガより性能は上、おまけに殺す覚悟を決めたはずなのに、自分でもわかるほど踏込が甘い。最後のファンネルを感情に任せて使い切ってしまった。
不甲斐なさに拳を叩き付けた。
「くそがぁあ!!」
サイコ・ドーガをアクシズに向かわせる。
何が何でもこの作戦だけは成功させなくてはいけない。
――いい加減目路覚ましてよ!!
うるさい。
――彼女たちが願った世界はこんなことをしてまでも願った世界じゃない!!
うるさい、黙れ。
――そんなの復讐の間違いだろ!!
スラスターを全開にしてアクシズに、いやΖガンダムを追う。
残る武装はシールドのビーム砲とビーム・ソード・アックス2本。
心もとないが必ず、仕留める。
「なんだよこれは……」
しかし、モニターに映る光景に唖然とした。目前でアクシズが中心から2つに割れたからだ。
「ロンド・ベル……ユウキ……」
強張った体の力が抜けていった。
作戦が失敗しての消失感か、家族を手に掛けずに済んだことの安堵なのか分からない。
「だが、あれでは……」
コンピュータで計算してみると後方の半分が地球へ落下することが確定した。分断する爆発が大きすぎたのだ。
これで……作戦は完了する。
なのに、なぜこうも胸が苦しい?頭の中が気持ち悪い?
俺は…本当は……
「あれは……!!」
落下していくアクシズの先端でMSの光が2つ、押し返そうと強い輝きを放っている。
まさか、ユウキお前はそこにいるのか?
「は、ははは……」
無茶だ。あれだけの質量の小惑星をたかが2機のMSでどうとかなるものじゃない。ただの自殺行為だ。
コックピットに警報が鳴り響く。
いつの間にか、機体がアクシズの表面に来ていた。
「くそが……分かってるんだよ、そんなことはさ」
復讐か、そうかもしれない。ただそれでも俺は世界を変えたいと思ったんだよ、ユウキ。そうじゃないと、あいつらが報われないだろう。
サイコ・ドーガを2機がいる先端に向かわせた。
武装もすべて捨てた。オーバーロードで誘爆するなんて御免だ。
しかし、今から往く場所では大して変りないか。
先端には案の定、Ζガンダムとアムロのガンダムがそこには居た。
それどころかロンド・ベルのジェガン、連邦宇宙軍のジムⅢ、同軍のギラ・ドーガまでものが次々と取りついていった。
その中、サイコ・ドーガをΖガンダムの隣に寄せ、両腕をアクシズにぶつけ、スラスターを全開にした。
『兄さん?!』
「やるぞ、ユウキ。俺たちの力で!」
『うん、そうだね!』
何機は摩擦熱で機体がオーバーロードを起こしながら爆散していく。
既に熱を帯び始めた機体が悲鳴を上げるようにコックピットが上下左右と激しく揺れる。
ディスプレイに危険を知らせる表示とアラートが鳴りっぱなしだ。
高度も限界に近い。だが諦めるか!諦めてたまるか!!
「うぉおおおおおお…………っ?!」
その時、アムロのガンダムとユウキのΖガンダムから光が溢れ出た。
そしてサイコ・ドーガからも同じように光が出てくる。
これはサイコ・フレームなのか?
「人の……意思の力……」
そうか……これが俺の求めたものなんだ。
光りに包まれ、意識が薄れていく。なのに、不思議と恐怖は感じない。温かく、安心できる。この温もりが人の可能性なのか。
「いまいくよ……みんな………」
結局の所、俺は死に場所探していたのかもしれない。
この温もりの中で死んでいくなら悔いはない。
そう思い、俺は意識を手放した。
懐かしい声を聴いた気がしたが、もう分からなかった。
ユウキサイド
「退いて!!」
アクシズに着いた僕はメインノズルを破壊する為、アクシズの後方部に向かってΖガンダムを駆けている。途中、防衛のギラ・ドーガをサーベル、バルカンで腕や足、頭部、武装を重点的に狙い無力化する。
パイロットをなるべく殺したくない。
それは僕の弱さかもしれないけど、これが僕のやり方だ。
「あれは…ラー・カイラム?上陸したの?!」
ロンド・ベルの旗艦ラー・カイラムがゆっくりとアクシズから離脱していく。
ブライト艦長たちがアクシズの爆破準備が完了したと感じた僕は、Ζガンダムをウェーブライダーに変形して、アクシズから急ぎ離脱した。
瞬間、アクシズが中心から大爆発、二つに割れた。
衝撃の余波でコックピットが激しく揺すられる。
木の葉のように舞う機体を姿勢制御スラスターで安定させる。
「やった………っ!!」
いや、だめだ。
二つにされたアクシズの後部が爆発でブレーキが掛かって、地球の重力に引かれている。
ダメだったの?
落胆していると一筋の光が後部アクシズの先端に伸びていく。
望遠モードで確認すると、それはアムロ大尉のνガンダムだった。
まさか、アクシズの軌道を変えるの?
「無謀……だけど……」
やらないよりはマシだ!
僕はアムロ大尉の後を追いかけた。
νガンダムはアクシズに両腕部で持ち上げるように押し付け、バーニアを極限までに噴かしている。
ウェーブライダーからMSに変形して同じように両腕部をアクシズに押し付けた。
「アムロ大尉、手伝います!」
『ユウキ!?君まで付き合う必要はない!退くんだ!』
「そういうけど……他はそう思ってないよ」
それを裏付けるようにジェガンやジムⅢ、敵のギラ・ドーガまでもアクシズに取りついてくる。
その中にグレーとワインレッドのサイコミュ搭載のギラ・ドーガ――兄さんの機体もあった。
「兄さん?!」
僕は驚いた。兄さんはΖガンダムの横に機体を付けた。
『やるぞ。ユウキ。俺たちの手で!』
通信を聞いて僕は笑った。
「うん、そうだね!」
嬉しかった。また兄さんの隣に立つことができる。
昔みたいに二人の力で……いくよ、Ζガンダム!兄さんと共に!!
しかし、十数機のMSバーニア出力をもってしてもアクシズは、徐々に地球に落下していく。
数機が摩擦熱とオーバーロードで爆散していった。
「あきらめてたまるかぁああっ!!」
その時、Ζガンダムとνガンダムから虹にも似た光が溢れ出た。
これはサイコ・フレームなの?
兄さんの機体からも光が出ている。
人の意思が、思いが集まっている。
そうか、これが……可能性の力なんだ!!
「いっけぇええええっ!!」
僕は叫んだ。光は意思を持ったかのようにアクシズと包みこみ、前部のアクシズに光の道を繋いだ。
そして、取りついているMSを、僕と兄さん、アムロ、シャア・アズナブル以外のすべてを弾き飛ばした。
そうだね……僕たちだけでいいよね………
「にい………さ…………ん」
意識が徐々に光の中に溶けていく。温かい光。
僕は心地いいなかで目を閉じた。
――タスケテ……ダレカ…
子供の声が……幼い少女の声が聞こえた。
君は……だれ?
――ワタシハ……………
良く聞こえなかった。
それが最後に、僕の意識は完全に光の中に消えた。