インフィニット・ストラトス 虹の彼方は無限の成層圏(一時凍結) 作:タオモン3
ちょっとぐだってきたな~
ユウヤサイド
「いったん整理する。俺たち二人は森の奥に倒れていたMSの中にいた。ユウキが貴女の家族の一夏とクロエに助けられ、俺もMSの中から此処に運ばれた」
「そんな感じだね」
「再度確認だが……今は西暦なんだよな」
「それ何度目?いい加減にしてくれない?ほらこれ見る!」
篠ノ之束は何処からともなくキーボードとディスプレイを空中に投影した。
無数に開かれたディスプレイに俺が言った事を検索に掛けるが、どれひとつ当たることはなかった。
「ほら、これで分かった?君の言う、アクシズもネオ・ジオンって軍隊もどこにもないの!存在そのものがね!!」
強い口調でそう言われた。
俺だって信じたくなくてこんな事を言っている訳ではない。
あまりにも現実味がなさすぎる。
目が覚めたら、MSごと過去か異世界に飛ばされました、なんて誰が信じるんだよ。
「………そうか、すまん」
「……私こそごめんね。ちょっと言い過ぎた」
落胆した俺を見かねてか、篠ノ之束は優しく語りかけた。
「ね、君たちの事を話してくれる?ここまで話が食い違うと、私もいろいろと混乱してるから」
「ああ、わかった」
俺は記憶してあることをすべて話した。自分の世界のこと、従軍した一年戦争から始まり5度の戦乱のことを知っている限り。無論、自分がニュータイプであることも。
「じゃ、君たちは小惑星アクシズの落下を止めるために、ええっとMSっていう機動兵器で、敵軍同士で戦って、結局は同じように止めに行って、気が付いたらこの森にMSごといた」
「ああ、そうなる」
「なるほどね……宇宙世紀にコロニー、人類の革新ニュータイプ……作り話にしては面白いかな。まあ、そのMSを見れば私も信じるかもね」
ま、妥当だ。話してなんだが、俺でも信じないだろう。
「でも、人は宇宙に行っても、争ってばかりなんだ」
「………」
なぜだか、呟いたそのときの彼女は、寂しさと、どこか納得がいった顔をしていた。
「なら今からMSを見に行くか?場所はわかるんだろ?」
「う~ん、そうしたいけど朝ごはん先に食べてから、みんなで行こうか。その方が楽だしね」
「わかった。そうしよう、篠ノ之束」
「私の事は親しみを込めて束さんと呼んでほしいな、ユー君」
「………ユー君?」
「ユウヤだからユー君。私は親しくする人にはあだ名で呼ぶんだよ」
「ユウキはどうする?」
「ユーちゃんでしょ?」
屈託の笑みで束はそう言った。
「……わかった。改めてよろしく束」
「こちらこそ♪よし、それじゃ、食卓にレッツゴー♪」
鼻歌を歌う束と一緒に食卓まで歩いていく。
俺はつくづく、このタイプの女性は苦手だと認識した。
食卓に着くと既に朝ごはんが準備されていた。
俺たちの分も含めて、5人分が食卓に並べられていた。
目玉焼きを乗せたトーストに色鮮やかなサラダ。
どれもおいしそうだ。
「あ、おはようございます。もう、お加減はいいんですか」
かわいらしいエプロンをした小柄な少女がキッチンから顔を出した。
「ああ、君たちには感謝している。えっと……」
「一夏です」
「一夏、改めて礼を言うよ。俺たちを助けてくれてありがとう」
そう言うと「大したことじゃないです」と恥ずかしそうに顔を逸らした。
「恥ずかしがる一夏ちゃんもカワイイね、兄さん」
「そう……だ……な……」
エプロンを着たユウキが、スープを両手に持ってキッチンから出てきた。パイロットスーツを半分まで下して、両袖を腰のあたりに縛っていた。
何やってだよ……
「なんで、そんな所に居るんだ?」
「いや~だって、一晩とはいってもここでお世話になったし、なにかお返しをと思ってね。はい、これが兄さんの分ね。後、クロエちゃん呼んできてくれる?」
「……一夏がいけば」
「一夏ちゃんも僕も手が空いてないし…」
じゃあ、束…と言おうとしたら、即に朝ごはんを食べていた。
どうやら俺しかいないようだ。
「分かった。彼女の部屋は?」
「この先の突き当りの部屋です。お願いします」
「了解した」
何となく嫌な予感がしたが、俺はクロエの部屋へ歩き始めた。
クロエサイド
「しまった」
目を覚ましたわたしは、時計を目にして急いで布団を退けて、体を起こした。
いつもなら朝ごはんの支度を一夏様と一緒にしなければいけないのに、寝過ごしてしまったからだ。
わたしは急いで寝間着を脱いだ。
まさか、昨夜に運んだことの疲れがでたのだろうか?
いや、それよりも今は急いで支度しなければいけないと、服を着ようとした。
ガチャ――扉がいきなり開いた。
「………………あ」
「………………え」
昨夜、わたしが運んだ人がそこに居た。
え?え?えええええええ?!なんで部屋に来たのこの人?!!
しかもわたし………いま………
体温がぐんっと上がっていった。
「あ、いや………」
「きゃああああああっ!!」
自分でも驚くほどの悲鳴を上げて、直ぐそこにあった目覚まし時計を投げた。
「うおっ!」
彼は目覚まし時計を寸でのところでよけた。
今度は枕を投げようとして言った。
「は、早く閉めてください!!」
「すまんっ!!」
彼はすぐに扉を閉めた。
わたしは枕を手放すと、力なく座り込んでしまった。
なんでこんなに心臓の鼓動が速いの?体が熱いの?
今まで異性に裸を見られても、こんなことはなかったのに、これはなに?
考えても考えても、その時のわたしにはよく分からなかった。
一夏サイド
「…………」
「…………」
「……え~っと…なんかごめんね、クロエちゃん」
ユウキさんが苦笑いしてクロエさんに謝った。
今、朝ごはんを食べていますが、空気が冷たい。
冬だから、と言うわけじゃないなくて、すごく気まずい空気ということです。
特にクロエさんとユウキさんのお兄さん――ユウヤさんの二人。
ユウヤさんがクロエさんの部屋を訪ねたら、運悪く着替え中だったらしい。ノックしない人が悪いよね。
それにしても悲鳴を上げた、というかあんなクロエさんは初めて見た。
本人には悪いけど……なんか新鮮でかわいかった。
「今日も今日でいっちゃんの作ったご飯はおいしいね」
「うん、ありがとう」
束さんはそんなこと気にせずにスープを口に運ぶ。
今日の朝ごはん作ったのはユウキさんだけど内緒にしておくことにしよう。
ユウキサイド
「おお~これがMS?すごいすごい!!こんなのものは、はじめてみたよ!!」
朝ごはんを食べ終えた後に、僕たち5人は助けてもらった場所へと来ていた。
束ちゃんは興奮気味にΖガンダムとサイコ・ドーガ(兄さんから聞いた)をあちらこちら見ながら、行ったり来たりしている。
僕としては束ちゃんが作り出したⅠSの方がよっぽどすごいと思った。
ここに来る前に、束ちゃんが一夏ちゃんのために造っているISのデータを見せてもらった。3、4メートルサイズのパワードスーツでMSと同じか、それ以上の性能を出してしまうんだから、技術屋として久しぶりに驚いた。難点は男には起動しないことだけどね。
それを置いても、僕はISに興味が出てしまった。
心躍るってまさにこのことだね。
「ねね、これ動く?」
「う~ん、コックピット周りは大丈夫そうだけど、駆動系が老朽化しているから難しいね」
横たわる二機に目を細めた。
Ζガンダムもサイコ・ドーガも謎の老朽化で、動かすどころ、起動することすら困難の状態になっていた。
なぜだろうか?
サイコ・フレームの影響?
思い当たることはそれしかない。
「なら、束さんがもらってもいいかな?」
「それは……」
「もちろん、可能な範囲でだけど、特に装甲の材質。今まで見たことがないか合金を使ってるからね」
僕は横目で兄さんを見た。
「いいんじゃないか。でも、こんなスクラップ、なにに使うんだ?」
「フフフ、それはね………」
束ちゃんはこれでもかって、くらいな笑顔で言った。いや叫んだ。
「君たち二人のISを作る為だよ!」
ユウヤサイド
今、束はなんて言った。
俺たちの……ISを作る?
「どうしてそんなことを?」
「それは……まあ、私の個人的なことだけどね」
ユウキの疑問に、浮かれていた表情が真剣なものに変わった。
「君たち二人にお願いがあるんだ…………この世界を、今の世の中を壊してほしい」
束の言ったことが分からない。
世の中を……壊す?
「どういう意味かな?」
「今の世界情勢は話したよね?」
「ああ」
「うん」
「私が作り出したISのせいで、女尊男卑なんて訳の分からない世界になって、私の夢……ⅠSは本来の役割、宇宙へ行くための翼になっていない。人を傷つけるだけの兵器に成り下がっている。だから……変えて欲しんだ」
「なんで俺たちなんだ?そもそもⅠSは男に反応しないんじゃないのか?」
「そうだね。世界中にばら撒いたヤツはそうなってる。私も馬鹿じゃないからね、そういう風にしたんだよ。設計も私しか知らないし。そうしなかったら今頃、戦争やってるよ」
おいおい、それは勘弁してほしい冗談だ。
もう戦争をするのはこりごりだし、そもそも異世界のいざこざに介入するほど、お人よしでも馬鹿でもない。
俺は断ろうとしたが、
「いいよ」
何事もなくユウキは答えていた。
「ほんとう?!」
俺は耳を疑った。
「ユウキ?なに言っているんだ!」
「ただしISは僕と一緒に作ることが条件かな」
「ユウキ!!」
「兄さん、僕たちは彼女たちに助けられたんだよ、恩返しと思えばいいじゃない。それに僕たちが此処に居る理由がこれかもしれないって思うんだ」
「世界を変えることがか?」
「……たぶん、この世界はこのままいけば、僕たちの世界みたいになるかもって思う」
「どういう意味だ?」
「束ちゃんは……あの人みたいな危なさがある」
「っ!!」
何故か心当たりがあった。
まさか…………
「それに、僕は信じてみたいんだ。この世界の、人の可能性をね」
「それは……わかった――束、俺も受けよう」
可能性の力。
俺はあの時、それ気づかせてくれた人の想いの力を信じることにした。
「ユー君もユーちゃんもありがとう!!」
そう言うと束はユウキと俺を一片に抱きしめた。
でもなぜか胸騒ぎがしてならなかった。
世界を変える。
そんな事が出来るのだろうか。
なにも救えない俺は……本当にできるのだろうか?
次はようやくオリジナルISの登場です。
お楽しみに