Hortensia Saga if story 呪医は魔女に含まれるか?   作:Tiffler

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第四話、出立

私たちエスバットの今後の方針が決まった夜の次の朝にはあたしと爺は旅支度を整え終えていた。

元々長居する気はなかったから予定通りなんだけどね。

あたしたちはアルフレッドから聞いたこの国の状況からして魔女がいる可能性が高そうなとこから回っていくことにしたんだ。

彼によると旧オリヴィエ公国では魔女の迫害が他のとこよりマシらしいので先ずはそこに行ってみようかと思ってる。

彼らにその事を話したらモーリスがアーデルハイドさんとやらに紹介状を書いてくれたんだけど誰なんだろう?

まあ彼の紹介なら信用出来る人だろうからいいんだけどさ、紹介状を渡されたときにモーリスが会ってからのお楽しみとかニヤニヤしながら言ってたから面倒そうな予感がする。

まあ面倒なことになったらあとでモーリスをとっちめるだけなんだけどね。

 

「これ、どうぞ!お弁当です。持ってってください!」

 

そう言ってノンノリアが小綺麗な篭を差し出してきた。

食料は旅において大事だし有り難く頂こう。

昨夜の料理もまあレジーナ程ではないにしろ美味しかったし期待しちゃうな。

でも料理より彼女の動きが気になる。

オーベルの他のやつらは気付いてないみたいだけど、昨夜に比べて動きに伴う音が減ってる。

これはあとで爺を問い詰めないといけないかなと思っちゃったけど仕方ないよね。

 

「これは俺からの餞別だ。受け取れ。」

 

そう言ってモーリスが差し出してきたのは簡単な地図だった。

当然この辺の地理に疎いあたしにとってはノンノリアのお弁当以上の価値がある。

地図を読むことなら冒険者の基本中の基本だから問題ないしね。

 

「なぁ、あんたほんとにもう行っちまうのか?そこの爺さんが凄腕なのは分かるが護衛一人で旅するなんて危ねぇぞ?」

 

そう言ったのはデフロットだった。というかこいつはあたしは弱いとでも思ってるのか?

もしかして見た目で判断されちゃったかな?

 

「ねぇ、君、あたしのこと弱いと思ってるの?」

 

そういえば昨夜は起きる度にふざけたことを抜かして爺に毎回意識を刈られてたし私たちエスバットの過去の話を聞いてなかったのか。

そういえば爺の強さは見てるだろうけどあたしの強さはこいつら皆知らないんだった。

いい機会だから最後にあたしの実力ってやつを見せてあげようじゃないか。

 

「ねぇ、デフロット、あたしと手合わせしてみない?あたしの強さ、見せてあげる。」

 

ただし手加減した状態のね、と内心で付け加えつつ巫剣から真竜の剣を取り外す。

本来のあたしの戦闘スタイルは巫剣という長物に近い得物での前衛や、他に前衛が居るなら巫術によるサポートやに徹したりと色々やる何でも屋、ただ私たちエスバットはあたしと爺しかいないから大抵は前衛を務めている。

まあ前衛なんて言っても形だけなんだけどね。

あっと、それはともかくあたしはハイ・ラガードを根城にしてた冒険者の中では普通の剣の扱いだって巧いって評判だったんだ。

本職のソードマンにだって負けない自信がある。

本来鎗と剣では間合い的に不利だけど、こいつの身のこなしを見た感じ巫剣を持ちだすほどの腕には見えない。

これくらいのハンデでちょうどいい気がするんだ。

まあそんな打算はデフロットの返事であっさりご破算になっちゃったんだけどね。

 

「俺には美女に手を上げる趣味はねぇよ」

 

誰がこんな返しを予想できるんだろ。

というかあたしの容姿を褒める奇特な奴にはここ最近出くわしてなかったな。

この前あたしの容姿について言ってきたのはファフニールの親友とかいうレンジャーだったかな?

それも何ヵ月前のことだったか分からないくらい前なんだよね。

最近はそもそも爺としかまともに話してなかったから仕方のないことだけなんだけどさ。

 

「あら、あなたがあたしの強さに疑いを持ってるみたいだったからこの場であたしの強さを知ってもらおうと思ったのに。残念ね。それならあたしたちはもう行っちゃうね。」

 

そう言ってあたしは巫剣を組み立てなおして杖代わりにしてさっさと歩き始めた。

あたしたちの道と彼らオーベルの騎士たちの道はまたいつか交錯するだろうなという予感を胸に秘めつつ。




忙がしいので一月は更新なしかな……多分……

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