京太郎放浪記   作:偶数

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最初の天和 1-1

 チンチロ部落の常連客に聞いて辿り着いたスナックと書かれた如何わしい店に足を踏み入れる。すると顎が異様に青いいわえるオカマさん達が楽しげにお客さん達と会話とお酒を楽しんでいた。京太郎は顔を引きつらせながら、お凛を探した。

 

「あら、京太郎ちゃんじゃない!」

 

 カウンターで中年の男性に焼酎をお酌していたお凛が嬉しそうに京太郎の名前を呼んだ。

 

「今日はチンチロをしに行かなかったの?」

「いや、チンチロだけじゃあ食べていけないから。割の良い稼ぎ場を知りたくてさ」

 

 お凛は露骨に嫌な顔をして京太郎にこう告げる。

 

「博打打ちが自分の稼ぎ場を安々と教えると思ってるの? 博打打ちはね、自分にだけ甘い汁が舐められるようにする人種。稼ぎ場が知りたいなら他の人を当たってちょうだい!」

 

 京太郎はこうなると最初からわかっていた。でも、この強情な態度を打ち崩す秘策は既に存在している。京太郎はポケットの中から三つのサイコロを取り出し、カウンターに置いてみせる。

 

「サイコロ、チンチロ用に用意したの?」

「お凛さんのサイコロはすぐにハッタリだってバレるからプレゼントとして用意してきたんだよ」

 

 お凛は三つのサイコロを手に取り普通のサイコロとどの辺りが違うのかを確認する。すぐに理解した、このサイコロは信じられない工夫がされている。それも、自分が使っているサイコロの比じゃないくらいの完成度だ。

 通常のサイコロには六つの数字が表示されている。だが、京太郎が用意してきたサイコロには四、五、六の数字しか存在せず、ゾロ目しか出すことの出来ないお凛のグラサイより数倍も優れたグラサイだ。

 

「お凛さん。素人にバレるようなサイコロは使わない方がいい。このサイコロならバレにくいから」

「――流石は京太郎ちゃんね。薄々気付かれてるとは思ってたけど......」

 

 お凛はサイコロを受け取り、何か飲むかと京太郎に優しい声をかける。京太郎はニヤリと笑ってコーラとかありませんかと丁寧口調で尋ねた。すると瓶に入ったコーラを持ってきてくれた。

 

「いくらですか」

「いいわ、ハンサムな男の子にプレゼントを貰ったんだからお姉さんが奮発しちゃうわ!」

 

 お凛さんはキャップを抜いてブクブクと小気味いい音を立てるコーラを京太郎に渡す。

 京太郎は躊躇することなく、ゴクゴクと喉を鳴らしてコーラを飲み干した。すると目の前に住所らしき文字が書かれたメモが置かれていた。

 

「米軍の溜まり場になってるバーのVIP席で色々な賭博がやられているのよ。でも、入場料に二百円かかるから種銭は出来る限り増やして行った方が良いわね。あと、服装がみすぼらしいと入れてもらえないかもしれないから、私の知り合いの貸衣装屋に話しておくわ」

「何から何までありがとうございます」

「良いのよ。私、若い男の子が大好きだからね!」

 

 苦笑いに近い愛想笑いを見せて、スナックから出た。

 

 ◆◇◆◇◆

 

 チンチロ部落で入場料と貸衣装代を稼いだ後にお凛から渡されたメモを頼りに米軍が入り浸っているというバーに足を運んでみた。すると軍服を着た米軍の兵士達が次から次へと店の中に入っていき、店の外からでも英語が聞こえる程である。

 

「まるで洋画みたいだな」

「おまえ、洋画見たことあるのか? 俺は見たことないな」

 

 何故か付いて来ているドサ健を冷たい視線で見つめるが、一応はVIP席に入れるように貸衣装屋でスーツを借りて入場料の二百円も持ってきているらしい。つくづく話さなければよかったと京太郎は後悔した。

 二人は臆すること無くバーの中に足を運び、VIP席があるであろう扉の前に経つガタイの良い日本人に二百円をチラつかせた。

 

「お凛さんからの紹介で来た。入場料はこれで足りるか?」

「はい、大丈夫ですよ」

 

 二人はVIP席に移動して、まず最初に思ったのは自分達と生きている世界が違うということだ。

 ルーレット、

 ポーカー、

 ブラックジャック、

 小さいが映画で見られるような本物の台が置かれており、賭け事の本場の意地を感じさせられる。

 

「ルーレットは幅広く賭けないと儲けが出にくい。ポーカーやブラックジャックは引きが重要だ......」

 

 京太郎は利益が出るであろう賭けを探し、ひとしきりVIP席を歩いた。そして、もう一つ部屋があることに気がつく。不思議に思って近くに居たママにこの部屋はどんな賭け事をしているのかと質問してみるとただ小さく、麻雀だよ。アルシーアル麻雀と。

 

「おお、麻雀があるのか。京太郎、麻雀にしようぜ」

「ごめん、アルシーアル麻雀の符の計算出来ないんだよ」

「なら、私が付いてあげるわ」

 

 ママは京太郎に興味を持ったのか、符の計算が出来ないのであれば自分がしてあげると提案してくれた。京太郎は少しだけ悩んだが、アルシーアル麻雀、それもこの時代の米軍が行っていたアルシーアル麻雀は現在の日本式麻雀に近いし、役は殆ど日本式と同じだ。京太郎は首を縦に振り、部屋の中に入った。

 アメリカ人だらけの卓に座り、山を積み上げて麻雀をはじめる。




 ようやく天鳳様で初段になれました。もし、『偶数』という名前が居たら容赦なく倒しに来てください。
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