理由は、全く話が進んでないので……。
イリナが転校して来て、数日経った放課後の部室。
部長は部員……イリナを含む全員が集まった事を確認すると、記録メディアを取り出した。
因みに、次回のレーティングゲームの相手はディオドラ・アスタロトだ。
もう運命の巡り合わせが良すぎるとしか言いようがないがな。
「若手悪魔の試合を記録したものよ。私達とシトリー眷属のものもあるわ」
そして、眼前に巨大なモニターが用意されると。アザゼルがその前に立って説明をする。
「お前達以外にも若手達はゲームをした。組み合わせは、バアルとグラシャラボラス、アガレスとアスタロトだ。で、今から見せるのは、それを記録した映像だ。ライバルの試合だから、よーく見ておくようにな」
アザゼルの言葉に皆が真剣に頷き、まずはサイラオーグとグラシャラボラス家のゼファードルの勝負を見た。その映像で見たのは……予想通りの結末だった。
最終的に「
「……凶児と呼ばれ、忌み嫌われたグラシャラボラスの新しい次期当主候補がまるで相手になっていない。サイラオーグ・バアルとは、ここまでのものなのか……」
祐斗はあまりの光景に目を細める。
一方的な戦闘に、一誠がゼファドールの強さを訊ねる。そして、部長の説明が説明する。部長曰く、六家限定にしなければ決して弱くはないらしい。
「ん? そういや、データ不明の「
レーティングゲームにすら出ていない……アザゼルなら知っているか?
「ああ、真相はよくわからんが恐らくコントロールしきれてないのかもしれん」
確か「
「次に、能力のグラフを見せてやるよ。まあ、各勢力に配られたものだけどな」
そして、次にアザゼルは、「
グラフはパワー、テクニック、サポート、ウィザード、キングと表示された。
キングは王としての素質なんだろう。一応キングに関しての事前評価はサイラオーグ>アガレス≧シトリー≧部長>>>ゼファドールだな。
サイラオーグのパワーは事前調査と変わらない馬鹿げた数値の為、グラフが極端に伸びていた。
「やっぱ天才なんスかね? このサイラオーグさんも」
すると、グラフを見た一誠がアザゼルに問いかける。
「いや、サイラオーグ・バアルはバアル家始まって以来の才能が無かった純血悪魔だ。バアル家に伝わる特色の一つ、滅びの力を得られなかった。滅びの力を強く手に入れたのは従兄弟のグレモリー兄妹だったのさ。それにサイラオーグは、家の才能を引き継ぐ純血悪魔が本来しないものをして、天才共を追い抜いたのさ」
確か、このことからバアルとグレモリーに亀裂があるとかないとか。まあ、バアル側の嫉妬なんだけどな。
「本来しないもの?」
アザゼルはふと俺を見てから言う。
「凄まじいまでの修業だよ。サイラオーグは尋常じゃない修練の果てに力を得た稀有な純血悪魔だ。あいつには己の体しか無かった。それを愚直なまでに鍛えたのさ」
そういえば、上級悪魔は皆才能に恵まれているよな。サイラオーグだけは魔力の才能に恵まなかったが、アザゼルの言うとおり血の滲むような修業はしたんだろうが、それで成長できるのも才能の一つだと俺は思ってる。ただ、純血悪魔は魔力主義の奴も多いからサイラオーグを能無しとかいう奴は多いらしい。
「奴は生まれた時から何度も何度も打倒され、敗北し続けた。華やかに彩られた上級悪魔、純血種の中で泥臭いまでに血まみれの世界を歩んでる野郎なんだよ」
それに、魔力の才能がなくとも奴には闘気の才能があるからな。闘気の才能に言っちゃ、馬鹿げてるぐらいだ。
その後、サイラオーグとゼファードルの試合の映像が終わった。結果はサイラオーグの圧勝だったが、ゼファドールが最後まで諦めなかった事に俺は兄の言葉が響いたのか? と思った。
そして、アザゼルは静まり返る空気の中で言った。
「先に言っておくがお前ら、ディオドラと戦ったら次はサイラオーグだぞ」
「……ッ! マジっスか!?」
「願ったり叶ったりだな」
少し早いとは思うが……戦えるに越した事はない。
「少し早いのではなくて? サイラオーグの前にグラシャラボラスのゼファードルとやるものだと思っていたわ」
すると、部長がアザゼルに問いかける。
「そうだったんだが、ゼファドールの奴が辞退した。サイラオーグとの戦いで心身に恐怖を刻み込まれた……かと思いきや、自分の未熟さに気付いて一から鍛え直すみたいだぜ。それで、未熟な自分が参加しても他の奴らに迷惑をかける……なんて魔王に直訴したらしいな。今頃はファルビウムの奴に扱かれてるんじゃねぇか? ……部下任せかも知れねぇが」
その言葉に全員が驚いた。色々驚いたぞ。……それだけ兄の一言が影響したか……。
「お前らも充分に気をつけておけ。あいつは対戦者の精神も断つ程の気迫で向かってくる。あいつは本気で魔王になろうとしているからな。そこに一切の妥協も躊躇も無い」
アザゼルの忠告を全員が染み込ませる様に受け止め、部長は深呼吸した後、改めて言う。
「まずは目先の試合ね。今度戦うアスタロトの映像も研究の為にこの後見るわよ。対戦相手の大公家の次期当主シーグヴァイラ・アガレスを倒したって話だもの」
……まじか?
「アガレスが負けた、か……意外だな。まあ、勝負は何が起こるか分かないからな」
しかし、あの
「そうね……私達を苦しめたソーナ達は金星、アガレスを打ち破ったアスタロトは大金星と言う結果ね」
そう言いながら部長が次の記録映像を再生させようとした時……部室の片隅で転移用魔方陣が展開され……部室の片隅に爽やかな笑顔を浮かべるディオドラが現れた。
「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました」
何故、こうもお前は空気を読めないんだよ?
*
部室のテーブルに部長とディオドラ、顧問としてアザゼルも座り、姫島がお茶を淹れて部長の傍らに待機する。
他の皆は部室の片隅で待機。雰囲気は最悪。まあ、俺の態度は外からみたら最悪だがな。
何故なら俺は、ディオドラの死角になるように他の部員の後ろに座り携帯端末のようなもので、見れなかったディオドラとアガレスの試合の動画を見ていた。ちゃっかり、祐斗もみているのはスルーする。アルジェントに会いに来ただけなら早く帰れって話だし、用件があっても録でも無い事だろうしな。
暫くしてディオドラが切り出す。
「リアスさん。単刀直入に言います。「
確か、トレードは「
まあ、ディオドラが十中八九指名するのはアルジェントだろう。そして、部長が断るのも想定済み。変にディオドラがアプローチかけてきたら一誠が動くだろうし、アルジェント的にはそちらの方がいいだろう。アザゼルがいる以上、変な真似はしないだろうがな。
そして、予想通りディオドラはアルジェントを指名し、部長は間髪いれずに断った。その後、やりとりが続くが、勿論トレードは成立しなかった。まあ、部長がいい事を言っていたけども。
「……分かりました。今日はこれで帰ります。けれど、僕は諦めません」
ディオドラは立ち上がりアルジェントの元に近寄る。終盤から見始めて、ちょうど良く試合も終了したので、携帯端末を仕舞ってディオドラの挙動に注意する。
当惑しているアルジェントの前に立つと、その場で跪いて手を取り……
「アーシア。僕は君を愛しているよ。大丈夫、運命は僕達を裏切らない。この世の全てが僕達の間を否定しても僕はそれを乗り越えてみせるよ」
訳の分からない事を抜かしてアルジェントの手の甲に口づけをしようとするディオドラだが……
「何しようとしてんだテメェ……」
一誠が肩を掴んで制止させた。
「離してくれないか? 薄汚いドラゴンに触れられるのはちょっとね」
そのディオドラの言葉に、一誠はキレる寸前だったが、怒りが爆発する前に、アルジェントがディオドラの頬にビンタした。そして、アルジェントは一誠に抱きついて叫ぶ様に言う。
「そんな事を言わないでください!」
ディオドラの頬はビンタで赤くなっていたが、それでも笑みを止めない。
……心中では何考えてんだか。
「なるほど、分かったよ。では、こうしようかな。次のゲーム、僕は赤龍帝の兵藤一誠を倒そう。そうしたら、アーシアは僕の愛に答えて欲し……」
「お前に負ける訳ねぇだろッ!」
一誠はディオドラの言葉を遮って面と向かって言い切る。
その時にアザゼルの携帯が鳴り、数分間の応答の後にアザゼルは告げる。
「リアス、ディオドラ、丁度良い。ゲームの日取りが決まったぞ。五日後だ」
その日はディオドラとの邂逅は終わり、帰っていった。
そして、その後改めてディオドラとアガレスの試合を見たが……色々不自然というか明らかに駄目だろこれ。まあ、蛇を使った相手と戦った事があるからわかるんだがな。
「アザゼル……」
という事で、俺はアザゼルにその事を言った。部屋にはアザゼルと俺の二人のみで、他の部員は既にいない。
「……やっぱり、お前はわかったか……」
「ああ、どうするんだ? 何も考えてないお前じゃないだろ?」
すると、アザゼルが口を開く。
「旧魔王共を燻り出す作戦は考えてある……サーゼクスは説得済みだ」
……なら、口を挟む必要はないか。
「わかった、内容は詳しくは聞かんが……俺たちが囮になるんだろ?」
囮って言っても特に何かするって事は無いがな。
「ああ、お前たちをそういう形で使いたくはなかったんだが……」
「まあ、いいさ……っと、電話?」
……こんな時間帯に電話か。部長? 珍しいな。席を一旦外して電話に出る。
「部長? どうした?」
因みに、電話番号等は既に部員全員分は所持している。
『突然なんだけど、明日取材が入ったわ。冥界のテレビ番組に私たちがでるの。若手悪魔特集で出演よ』
冥界テレビか。「サタンレンジャー」という特撮ものや「魔法少女ミラクル・レヴィアタン」とかいう魔王自らが出演するのも有る。中級悪魔試験の内容に何故か含まれるから、チェックはしている。……流石に視聴はしていないが、中級悪魔試験の参加が出来る様になったら見るかも知れない。
「了解」
そして、一言二言会話したのちに電話を切りアザゼルの元に戻る。
「……で、話は戻るがその件に関しては了解した。とりあえず、何も言わなきゃいいんだろ?」
わざわざ言って皆に余計に警戒させる必要はないだろうからな。
「ああ、悪いな」
*
そして、その帰り道。ある人物に遭遇したので声をかける。
「珍しいな、
そこには筋肉隆々の漢女がいた。……よく通報されないな、あれ。
「おおっ、
「寄るな、暑苦しい。で、どうしたんだ?」
すると、買い物袋を掲げるミルたん。
「買い物の帰りだにょ」
「そうか、飯か」
「そうだにょ、いくら魔法少女になったからといって食べなきゃ生きていけないにょ」
少女……? その発言はスルーして話題をふる。
「そうだな。そういえば、例の魔法は完成したのか?」
例の魔法とは、彼の渾名? の元である「魔法少女ミルキースパイラル」の主人公の使う魔法の事である。流石に威力までも本物だと不味いので、エフェクトが豪華なただの光なんだけどな。
……ただ、「魔法の光」なので成り立ての中級悪魔なら書き消せる威力の光力なのは秘密だ。
「やっぱり、一人じゃ無理だったにょ。だけど、皆で力を合わせたら出来たにょ!」
……出来たのかよ、あれ。まあ、お友達で合わせて出来たなら大丈夫だろう。使う機会もないだろうし。
すると、視界に三人の人影が見える。あれは、一誠に……
「……ヴァーリに美猴?」
すると、二人が此方を振り向く。
「その声はゼノ……!?」
「な……!?」
ヴァーリと美猴が唖然とした声を上げる。……ミルたんを見て。
「にょ」
ミルたんが挨拶をすると、それを見たヴァーリと美猴が……
「頭部から察するに猫又か? ゼノンが声をかけるまで、気づかなかったぞ……仙術か?」
「あれは……トロルの類じゃね? ……猫トロル?」
「……お前ら、失礼だな」
などと、勝手な事を言い出したのでツッコミを入れる。……まあ、初見は驚くわな。すると、一誠が呟く。
「相変わらずだな、ミルたん……」
そういや、ミルたんは昔は一誠のお得意様だったな。まあ、色々あって今では俺のお得意様なんだがな。
そして、ミルたんが去った後にヴァーリたちに問う。
「で、お前らは何しに来たんだ?」
すると、一誠が答える。
「それが、ヴァーリが次のゲームは気をつけろって言ってきた」
次? ……やはり、ディオドラは繋がっているのか。
それを表に出さずにヴァーリたちにさらに問う……答えてくれるはずもないだろうが。
「次か、お前らは何を知っている?」
すると、ヴァーリが予想通りの答えを返す。
「いや、それは言える筈が無いだろ?」
「確かにな……というか、ただ忠告に来ただけか。今ここで……というわけでは無いんだな?」
一応、念の為に聞く。
「そうだ。……それでは、用も済んだ。失礼しよう」
「じゃあな! 赤龍帝にゼノン!」
そして、美猴によって転移したヴァーリたち。
「……帰ったか」
そういや、美猴に話したい事があったが……まあ、いいか。俺に不都合はないし。
そして、俺は兵藤と別れて自分の部屋へと向かった。
*
そして、その翌日。冥界のテレビ番組に出演する事になった俺たち。
魔方陣で冥界の都市部にある大きなビルの地下に転移した。プロデューサーの悪魔に連れられてビルの上層内に着くと、廊下の先から見知った顔が歩いてくる。
「サイラオーグ。あなたも来ていたのね」
部長が声をかけたのは、サイラオーグ。その後ろには金髪のポニーテールの女性……「
「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」
「ええ。サイラオーグはもう終わったの?」
「これからだが、リアス達とは別のスタジオだろう。……そうえば、お互い新人丸出し、素人臭さが抜けない試合だったな」
苦笑するサイラオーグの視線が一誠に移る。
「どんなにパワーが強大でもカタに嵌れば負ける。相手は一瞬の隙を狙って全力で来る訳だからな。とりわけ
サイラオーグは一誠の肩を軽く叩き、去っていった。……最後に俺にのみ闘気を当てて……。なんか以前あった時より格段に強くなってないか?
その後、スタジオらしき場所に案内され、スタッフの悪魔が声をかけてくる。
「ええと、木場祐斗さんにゼノンさん、姫島朱乃さんはいらっしゃいますか?」
俺を含む三人が返事をすると、そのスタッフの悪魔は言う。
「あなた方に質問がそこそこいくと思います。三人とも人気上昇中ですから」
それを聞いて問いかける。
「……二人は兎も角、俺もか?」
「ええ、木場さんとゼノンさんは女性ファンが、姫島さんには男性ファンが増えてきているのですよ」
なんでも、レーティングゲームの結果というのは予想以上に効果を発揮するらしい。そして、スタッフは続ける。
「それから、兵藤一誠さんは……?」
「あ、俺です」
一誠は名指しされて、手を上げるがスタッフは首を傾げていた。しかし、思い出したのかポンッと手を叩いた。
「……ああっ! 貴方が! いやー、鎧姿が印象的でしたので、素の方が解りませんでしたよ」
「ははは……」
一誠……頑張れ。というか、赤龍帝かつ禁手が全身鎧である以上多少は仕方ないだろう。
*
「……流石に歓声は慣れないな……」
収録後、全員が楽屋でぐったりしていた。
祐斗や俺の時は女性陣の黄色い歓声が、姫島の時は男性陣から「朱乃さまー!」などと叫びが上がっていた。
……時々聞こえた、木場×ゼノンやらゼノン×木場は幻聴だとしよう。
また、一誠は子供たちから「おっぱいドラゴン」や「乳龍帝」と呼ばれていた。どうも、シトリー戦の時にそういうイメージが定着したようだが、仕方ないな。
『二天龍と称され、赤龍帝と呼ばれ畏怖された俺が……乳龍帝と呼ばれる事になるなんて……』
それにより、ドライグが精神的に参っていたので、カウンセリングを紹介しようか……と考えた俺だった。
……そして、ディオドラとの対戦日へと日は過ぎていった。
冥界にも腐はいる。
次話は翌日を予定しています。