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広大な神殿の中を進み、新しい神殿を目指す。それを何度か繰り返していると、前方からフードを深く被ったローブ姿の小柄な人影が八人現れた。
『やー、リアス・グレモリーとその眷属の皆』
神殿の中にディオドラの声が響くがが姿は見えない……高みの見物といった所か? 一誠は辺りを見回している。
『無駄だよ赤龍帝。僕は最奥の神殿にいる。それまで暇だから、少し遊ぼう。中止になったレーティングゲームの代わりだ』
そして、ディオドラがルールを説明する。……正式にルールと呼べるものかはわからないが。
『お互いの駒を出し合って試合をしていくんだ。一度使った駒は僕達の所へ来るまで使えないのがルール。後は好きにして良いんじゃないかな。第一試合は「
「……良いわ。あなた達の戯れ事に付き合ってあげる。私の眷属がどれ程のものか、刻み込んであげるわ」
「ぶ、部長、相手の提案を呑んで大丈夫なん……」
『まあ、だけどそこまで僕も鬼じゃない。特別ルールを出してあげるよ』
部長がディオドラの提案に快諾する。一誠がそれに対して不安げに告げると、ディオドラが割り込んできた。
「特別ルール?」
怪訝な顔で聞き返す部長。
『そう。これを満たせば君たちは勝敗が決まる前に、次に進んでいい事にしてあげるよ。アーシアを救いたい君たちには時間が惜しいだろうしね』
ディオドラの声色が良くなった事から録でもないルールだとわかる。……何をさせるつもりだ?
「……聞くだけ聞いてあげるわ、言いなさい」
『今回の試合はそこの糞聖剣使い一人のみ選出して貰えればいい。……ああ、それと僕を傷つけた聖剣は使用禁止だからね』
「なんですって……!?」
その理不尽なルールに部長が驚きよりも怒りの声を上げる。
糞呼ばわりに、デュランダルの制限か。とても根に持っているな。
まあ、思惑通りなんだが。
『別に、特別ルールを受けなくても構わないよ……別にね』
「……貴方……! 」
部長が怒りに震える。そりゃ、普通に考えれば“俺を差し出さないと先に進めない”と言ってんだからな。部長が怒るのは無理もない、指示に従わなきゃアルジェントに何されるかわからないし、俺を見捨てるわけにもいかないんだろうな。……まあ、それは普通に考えればの話だけどな。
「部長、先に行って下さい」
「ゼノン!?」
部長は驚く。
「……部長、先に行きましょう」
すると、祐斗が助け舟を出した。……これは、信用されてると踏んで良いのかね。
「祐斗!? ……そうね、私が信じなきゃいけないわね。ゼノン、必ず勝って来なさい! 皆、行くわよ!」
「ええ、我が剣に誓って必ず勝ちます……」
ちょいと、臭い台詞を吐く。まあ、自分の手札と、相手のレベルからして負ける要素はほぼないがな。
そして、部長に続いてこの場を後にする他の部員たち。
「ゼノン! 負けんじゃねぇぞ!」
「ゼノンくん、頑張って下さい」
「……ゼノン先輩、無茶はしないで下さい」
上から一誠、姫島、塔城が去り際に声をかけてくる。そして、最後に……
「心配無用だ。……祐斗! デュランダルは何時でも使っていいぞ!」
「使うまでもないさ……そっちこそ、聖魔剣を渡そうか?」
「言うようになったな、お前も。さっさと行け……」
と、祐斗と言葉を交わす。
皆の姿が見えなくなり、残りがディオドラの「
『さて……他の眷属がいなくなったけど、どんな気持ちだい?』
「……」
『……恐ろしくて声も出せないのかな? それじゃ、試合スタートだ!』
その言葉とともにローブを捨て去り、此方に向かってくる相手に静かに声をかける。
「……一つ、お前たちに言っておく」
「「「「「「「「……?」」」」」」」」」」
全員が愚かにも足を止める。不意打ちして下さいといっているようなものだが、今回はその為に声をかけた訳ではないので、言葉を続ける。
「今から一分間だけ考え直す時間をやる。大人しく投降すれば、命だけは助けてやるが……」
『ふはははは! 今更何を言ってるんだい? そんなあからさまな命乞いは無駄だよ! ……お前たち! 「蛇」を使って血祭りに上げろ!』
しかし、それはディオドラによって遮られた。そして、オーフィスの「蛇」によっと相手の「
先程のディオドラの所為もあってもう此方の聞く耳を持たないだろう。
まあ、仕方ないか……。
咸掛法により肉体強化をすると共にカウントをスタートさせる。
相手は八名だが、愚かにも特に連携も取らずに襲いかかってきた。
……やはり「蛇」は欠陥があるのか。それとも、自分のキャパシティーを越える力の増幅に冷静な思考が出来なくなっている?
「喰らいなさいッ!」
その内の一人の拳が自分に襲いかかる。それを片腕で逸らし、次々と迫り来る相手の攻撃を最低限の動きで対処する。
「……」
……とは言っても、蛇による力の増幅は目を見張るもので、傍から見れば押されているように感じたのか。
『ははは! いい気味だ! 僕にあんな事をした報いだよ!』
と、上機嫌なディオドラの声が聞こえる。まあ、それも……
「………だ」
『は? 何を言って……』
「時間だ……
ゴッ! っと魔力が流出して周りの「
「キャ……!」
自身を纏う
「禁手『
さて、懺悔の準備は出来たか?」
そして、俺の周りに光の槍を無数に展開する。ディオドラの反応が無いのは、
まあ、何にせよ。
「終りだ……」
そして、轟音と共に光の槍による数の暴力がディオドラ眷属に襲いかかる。
煙が晴れると、そこには何も残ってはいなかった。
「……アーメン」
せめてもの情けに、消し去った彼女たちがいた場所に向かって十字を切る。
さて、早ければ参加は不可能だが、その次の試合くらいに間に合う筈。急ぐか……。
神殿の奥へと足を進めた……。
*
神殿を幾つか潜ると、そこにある人物……いや、なにかがいた。
「……フリードか……生きてるのか?」
原型はほぼ皆無だが、残る上半身で分かる。これは……
「ひひひ、その声はゼノンくんですかぃ? どうよ、俺のこの無様な姿。折角、オリヴィエの姉さんに素敵にして貰ったのに、お前さん所の金髪騎士に切り刻まれて、そのまま放置されたんだぜ? あの野郎“最期はゼノンに任せるさ”とか言ってくれちゃったんだぜ? どんだけ、お前が信頼されてんだって話だよ」
その話を聞いて、少なくとも部長たちがここを難なく突破したことを知り、安堵すると共に祐斗の気遣いに感謝する。……こいつとは、仕事では接点は然程なかったがな。
「……そうだな、いい友を持ったよ。それと、お前のその姿は貴様の末路にはピッタリだ」
力に溺れたものの末路……少なくとも、俺にもあり得た結末。
「ふへへ、そこまで言いますかい。まあ、でもそれなりに楽しかったぜ、俺はよ。……ただ、お前さんに、一度くらい純粋に勝ってみたかった……って、なんだ? その馬鹿みたいな顔はよ。似合ってるぜ?」
「そりゃ、お前の口からそんな台詞が出てくりゃな。最期まで狂ったまま死ぬかと思ってたよ」
こいつとは、はぐれに堕ちるまでは
「そりゃ、どうも。それじゃ、トドメさせよ。このまま野垂れ死ぬくらいならお前に殺される方がマシだ」
トドメは祐斗に譲られたか。まあ、一応フリードとの関係は話してたからな。……気を使わせたか?
「そうか……じゃあな、フリード」
デュランダルを取り出す。
「またな、地獄で待ってんぜ?」
「抜かせ。……デュランダル」
そして、フリードに突き刺し聖なるオーラを解放させて消滅させた。
そして、もう一度十字を切る。
「……アーメン」
*
俺が一誠たちのいる最奥の神殿についた途端、神殿が大きく揺り出した。
場を確認すると、一誠が床に拳を叩きつけて巨大なクレーターを作っていた。また、前方に巨大な円形型に彼方此方に宝玉が埋め込まれ、怪しげな紋様と文字が刻まれている装置を見つけた。……
その装置の中央にはアルジェントが張り付けられており、他の部長を含む部員はその周りで一誠とディオドラの戦いを見つめていた。
しかし、ディオドラは血塗れで左腕と右足が折れており、歯を頻りに鳴らしていた。無様と言えばそれまでだが、一誠の奴、ブチ切れてないか? 原因はディオドラに間違いはないだろうが。
そして、一誠はディオドラの胸ぐらを掴み、素顔を晒して睨み付ける。
「二度とアーシアに近づくなッ! 次に俺達の元に姿を現したら、本当に消し飛ばしてやるッ!」
『相棒、そいつの心はもう終わった。そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者だ』
「……終わってたか」
すると、俺の声に気づいたのか、全員がこちらを見る。
「ゼノン!」
「無事だったようだね」
此方に近づこうとしているメンバーを手で制すと、口を開く。
「今は、このアルジェントを拘束している奴を如何にかしないとだろ?」
と、もう一度アルジェントを拘束している装置を見てから、ディオドラに向かって話しかける。
「おい、ディオドラ。これは神滅具……このフィールドと同じ『
すると、ディオドラが震えながらも答える。
「そ、その通りさ。それは『
良し、流石に知っているな。……こいつが首謀者かは不明だが、少なくとも知らない訳は無いと踏んで質問したが、あっていて良かった。
さらに、質問を続ける。
「発動の条件、この結界の能力は何だ?」
「……発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。結界の能力は枷に繋いだ者、つまりアーシアの
「効果範囲は……?」
「……このフィールドと、観戦室にいる者達だよ」
成る程……よく考えたな。
「狙いはこれによる、各勢力のTOP陣の壊滅か……大胆だが、有効的な作戦だな」
俺の言葉に全員が青ざめた。しかし……
「となると、シトリーの一戦でそんな作戦が思い付かれたのか? それとも……」
「君の予想通りだよ。反転自体の可能性は、随分前から出ていたようで、シトリーの者がそれを実際に行った事で計画は現実味を帯びたそうだ……」
それを聞いた部長が怒りで顔を歪める。
「ソーナも利用されていたと言うの……!? それに、そのデータが利用されるなんて……!」
しかし、随分と『
「とりあえず、この枷を破壊するなりして、無力化しなくてはならないが……ドライグ、現状でこの枷を破壊出来る術はあるか?」
一応、
すると、少し時間を空いた後にこう言う。
『無謀だ、方法無いと言うわけでは無いが……』
それを聞いて、核心に迫る。
「
『……コントロール出来れば、が前提になる。今の宿主では不可能に近い。例え、コントロール出来ても大して持たない上、死ぬまで解けないかもしれん』
『
「……そうか、部長たちは何か試したか?」
すると、結果は惨敗。
滅びの魔力や雷光、仙術に聖魔剣でも歯が立たなかったようだ。
それを聞いて、頭を高速で回転させて策をたてる。
「……俺の考える限りで二つ、思いついた策がある」
「言って頂戴。たとえ無茶でも今は貴方の策に賭けるしかないのだから……」
部長から許可を得たので、それを言っていく。
「一つは一誠、お前が要……というか、お前次第だ」
本当に一誠任せだが……可能性は一番高い気がする。
「お、俺か? でも、どうやって……?」
「ああ、お前の
そういうと、一誠含む全員が納得すると共に一つの結論に達し微妙な表情を見せる。
「問題点は年頃の女性の柔肌をそう簡単に晒していいものか、という道徳的な面と、これ以上ドライグの精神にダメージを与えていいのか……」
「大丈夫です、イッセーさんになら、何をされても構いません……。皆さんに見られても、我慢します!」
アルジェントの問題は大丈夫か……まあ、見る気はないが。
で、それよりも……
「ドライグは?」
『……』
黙るドライグ。というか、喋れない程に病んでいる訳ではない……よな?
「無言は肯定とする……どうする一誠?」
「……俺は、アーシアに悲しい思いをさせないって誓ったんだ! やって見せる!」
「そうか、なら頼む。無理だった場合のみ、残りの手を話す」
因みに残りの一つは、再度俺のコカビエルを消滅させた、あの技を使ってみる事だ。問題点はリスクが高過ぎるから、本当に奥の手なんだけどな。
そして、一誠は決意したのか枷に触れて叫ぶ。
「高まれ、俺の性欲! 俺の煩悩! 『
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼‼』
一誠の鎧の宝玉が赤く輝き、枷に触れている手に流れ込んでいく……鼻血を噴き出しながらという謎の構図だが。その間に姫島にアルジェントの服を魔力で創るように告げると祐斗とギャスパーと共に背を向けた。
「いくぜッ! 『
アルジェントの両手両足を捕らえていた枷が木っ端微塵に砕ける音……とアルジェントの服が消し飛んだ音が響いた。
「や、やった!」
一誠の成功を告げる声が聞こえた後に、塔城からもう服が出来たと言われて振り向く。すると、アルジェントが一誠に抱きついていた。
「信じてました……。イッセーさんがきっと助けに来てくれるって」
「当然だ……でも、ゴメンな。辛い事、聞いてしまったんだろう?」
辛い事……? ディオドラ絡みなのは確かだが、後で聞いておくか。
「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」
笑顔でこんな事をいうアルジェント。俺がもし一誠だったら惚れ直してると思う。まあ、もしもの話だが。
「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために……」
「アーシア。そろそろ私の事を家で部長と呼ぶのは止めても良いのよ? 私を姉と思ってくれて良いのだから」
「……ッ! はい! リアスお姉さま!」
今度は部長とアルジェントが抱き合う。ギャスパーは大泣きし、塔城が頭を撫でる。俺と祐斗はそれを見て笑みを浮かべ、緊張を解いた。
「さて、アーシア。帰ろうぜ」
「はい! その前にお祈りを……」
アルジェントは天に向かって何かを祈る。流石、元聖職者だな、様になってる。え? 俺? 形だけはしっかりしてる……と言われたな。
「何を祈ったんだ?」
「えへへ、内緒です」
笑顔で一誠のもとへ走り寄るアルジェントだったが、突如、まばゆい光の柱が発生する。
光の柱が消え去ると……
「……アーシア?」
そこにはアルジェントの姿がなかった。
次回
覇龍
○龍帝爆誕
動き出す異端者
の三本でお送りします。