まさかこいつに憑依するとは   作:Aqua@D

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連日投稿最後となります。


It is what as Fenrir? Ⅱ

 

 

『オオォォォォオオンッ!』

 

何処かおぞましさというか嫌悪感を感じるマーナガルムの咆哮が響き渡った瞬間にロキの仕業であろう拘束は解かれる。

マーナガルムの咆哮と同時に拘束を解除したというロキの行動の真意がわからないが、今はロキの思惑について考えている暇は無い!

 

「咲き誇れッ! 聖魔剣よッ!」

 

真っ先に動いたのは、マーナガルムに一番近い裕斗。聖魔剣をマーナガルムの周囲に幾重にも積み上げて動きを阻害しようとする。

だが、マーナガルムは聖魔剣を気にせずに裕斗へと突っ込む。

標的は裕斗か!

 

「お前達! ロキは私が相手をする! マーナガルムは任せたぞ!」

 

タンニーン様の言葉を背に受けながらマーナガルムへとミョルニルを構えて急接近する。

 

マーナガルムは裕斗へと右爪を振り下ろすが、裕斗は聖魔剣を犠牲にして半歩後ろへと下がる。マーナガルムは気にせずに距離を無理やり詰めて左爪を振り下ろすが……

 

「聖王剣が通じるか、試してみましょう」

 

マーナガルムの追撃はアーサーによって受け止められる。たが、ハティの牙や爪、その肉体を難なく破壊した聖王剣でもマーナガルムの爪は砕けなかった。

アーサーに左爪を防がれ、弾かれて体制を崩すマーナガルムだが裕斗へと突っ込むように噛みつきをしようとする。

 

明らかに異常なまでの固執した攻撃。聖魔剣が身体に当たっても、邪魔が入っても意に介せずに対象のみを滅ぼそうとするのには圧倒されかねない狂気だ。

だが、それを除けば……

 

「隙だらけだッ!」

 

ミョルニルの一撃をマーナガルムの脇腹を右側から掬い上げるように当てる。神雷に焼かれ数メートル吹き飛ぶマーナガルム。

ミョルニルの直撃に気が緩みかけた瞬間にザシュッ! という何かが切り裂かれた音と同時に苦悶の声が上がる。

 

「ぐっ……!」

 

驚く暇なく声の主である裕斗を見ると、マーナガルムらしき生物の爪に切り裂かれていた。

マーナガルムだと確信出来なかったのには理由がある。単純に四足歩行と少しの特徴以外がなくなっていたからである。眼球が有った部分には黒い穴が出来ており、血のような色の身体は体毛が抜け皮膚がしまりなく垂れ下がり黒ずんでいる。だが、こいつは先程ミョルニルによる傷跡が有る為に間違いは無い筈だ。

 

……いや、これはマーナガルムなどではなくただの化物! 恐らくミョルニルは効いていただろうが、肉体を消滅させるまでこいつは襲ってくる!

 

「裕斗!」

 

部長の叫びと共に雷光が化物を飲み込み、次いで部長の滅びの魔力、ロスヴァイセのフルバーストが炸裂する。その隙に一誠が裕斗へと近付きフェニックスの涙を振りかける。

その間に自傷して奴のヘイトを上げると共に辺りを警戒する。

 

後衛の集中砲火が途切れようとした刹那、小さな咆哮と共に目の前に奴が現れて喉笛を狙って喰らいついてきた。

速い……だが、フェンリルの速度を味わった俺にはこの速度には追いつける!

カウンターの勢いで奴の脳天にミョルニルを打ち込んだ。効いたのか小さく唸り声を上げて再度吹き飛ぶ奴へとアーサーが聖王剣にて追撃を行う。

聖王剣の連撃が奴の右腕を襲う。たが、有効打を与えているように見えない。何かに阻まれて攻撃が無力化されているように思えるが……。

 

すると、奴の身体が点滅するかのように歪み始めたかと思うとすぐ目の前に出現し、爪で俺を引き裂こうとしてきた! ミョルニルを打ち込んで直ぐの攻撃に回避を行うも奴は逆の腕で明らかに骨格を無視した攻撃を繰り出す。

回避した体制から回避できる筈はなく、聖剣(エクスカリバー)の能力を使う時間もない。

 

障壁を紙のように引き裂き俺の身体が袈裟懸けに切りつけられる。致命傷に近いダメージだが、ミョルニルを振るって神雷を奴へと当てて牽制すると共にアーサーと裕斗が奴へと斬りかかる。

その隙に、フェニックスの涙を使わずに止血の魔術と増血薬を服用し奴の標的を変えさせないようにする。部長にも小型通信機を仲介してその旨を伝える。そして、部長は悩むながらも了承の言葉を発する。

 

「……誰だ、おまえは!?」

 

突然、一誠が上空に向けて叫ぶ。その間も再度転移? してきた化物の猛攻を俺と裕斗、アーサーで防ぎ切る。

 

ロキが新たに呼び出したミドガルズオルム量産体との戦闘に当たったロスヴァイセ、美猴、黒歌、塔城以外の後衛組は、化物へ有効打を与える為に魔力を練り上げている。ロキに関しては、タンニーン様が一人で当たっている。龍王の吐息は魔術を相殺し、剛腕は障壁を砕く。だが、ロキは縦横無尽に動きながら魔術を放つ為に中々当たらないようだ。

 

そんな中の一誠の奇声。何事かと思いつつも化物との交戦に全霊をかける。そして、一誠はタンニーン様に問いかけた。

 

「お、おっさん!」

「なんだ! また何か起きたのか! また乳なのか!?」

 

ロキも興味が有るのか、魔術を止めている為に受け答えは可能なタンニーン様は一誠の問いかけに次の言葉を促す。

 

「乳神さまって、どこの神話体系の神さまだ!?」

 

一誠の問いに、敵味方全員……化物までもが戦闘を中断させて、一誠に視線を送っていた。

 

かという俺は、その間にミョルニルのレプリカに力を蓄えておく。これならば、あいつといえどそれなりのダメージを与えられるだろう。……一誠の発言に関しては、聞かなかった事にする。多分、胃が持たん。

 

「……リアス嬢ッ! あいつの頭は既に致命傷だッ!」

「イッセー! しっかりして! 幻聴よ!」

 

一誠の声のした方にアーシアの回復の波動を感じる。まさか、一誠の頭に回復の光が届いたのか? と考えてしまった自分が情けない。

だが、そうでなくとも誰もが一誠の正気を失うのは当然の事である。だが、もしも乳神という異世界の神の存在があるならば……

 

『い、いや、皆聞いてくれ。確かに乳の精霊とやらの声が聞こえる。俺の知らない世界の力を感じる。残念な結果だが、こいつは異世界の神を呼び寄せたらしい』

 

すると、ドライグが一誠の言葉を肯定する。しかし、この流れならば……

 

「そんな!? ドライグまでダメージを!?」

『……』

 

案の定、ドライグの正気が疑われたに過ぎなかった。アルビオンがこの場に居なくて良かったな……どうせ後に知ることになるだろうが立ち会うよりはマシだろう。

 

そして、一区切りがついたのを見計らってか化物が動き出す。

俺もミョルニルを構える……が、いきなり何か身体に違和感を覚えると共にミョルニルの重さが戻る。重さを感じているのに持てている事実に訝しみながらもミョルニルから雷を放とうとするが、雷は出る気配すら見せない。

 

「ゼノン!」

 

そんな中で一誠が俺を呼び、近づいてくる。そうしている間の化物の相手は周りがしてくれている。

 

「乳神からゼノンに与えられた力と乳神の力を譲渡したミョルニルの一撃ならあの神喰狼擬きも倒せる!」

 

……確かに、俺と一誠の力は意味不明なくらいに増幅されている。まさか乳神という存在はミョルニルの代わりにこの力で奴を倒せというのか? いや、迷っていても仕方がない。

 

「わかった、行くぞッ!」

 

右手にミョルニル、左手にエクス・デュランダルを構えて化物へと突貫する。同時に一誠の姿を斜め前に映しながら聖剣の能力を解放する。

 

奴は再度俺の喉笛を噛みちぎろうと口を開いたまま飛びかかる。だが、目の前の俺は目の前の光景を眺めたままその場で動こうとしない。

そして、奴の牙が俺の身体を──

 

「ゼノン!?」

 

瞬間、奴の目標である俺は消えてそのすぐ後ろに俺が現われる。タネを明かせば二度目の『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンジー)』を使って姿を消して、偽物の俺を『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』と『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』によって創り出して先行させたというわけだ。

ロキには平常時に二度同じ手は無理だろうし、奴も何で俺だと判断しているか不明だったから上手くいくかは半々だったが……奴が単純で助かった。

 

お礼と言ってはなんだが、そのまま乳神から授かったオーラを凝縮したミョルニルで奴を打ち砕く!

インパクトの直前に一誠はミョルニルに触れる!

 

「喰らいやがれ! 一誠!」

『Transfer‼︎‼︎』

 

そして、更に追加で乳神の力を譲渡する。奴はミョルニルに打たれた瞬間に吹き飛び、空中で圧縮されて呆気なく掻き消えた。

……明らかに白龍皇のような力に疑問を覚えつつも、ミョルニルを持つ手から異常な重量を感じ直様もとの日曜大工のハンマー程度の大きさに戻す。

奴の消滅を確認してから一旦下がり、奴から受けた傷をフェニックスの涙により治療する。シュゥゥゥッと音と煙を上らせながら傷が塞がっていく中で、イリナが此方に近づいてくる。

 

「大丈夫!?」

「ああ、大丈夫だイリナ。……相談がある……」

 

そして俺はロキを討つ為の作戦をイリナと一誠に簡潔に口答で伝えた。他の奴らには小型通信機を介して伝わった筈だ。誰からも反論はなく、イリナは驚くも覚悟を決めたのか直様頷いた。

 

マーナガルム擬きの化物が消滅させられたのと俺たちの作戦会議の様子をロキは屈辱に顔を歪めながらも口を開く。

 

「まさか滅されるとは……仕方ない、我は一時退却する。しかし、三度ここに訪れて混沌を……!?」

 

だが、黒い炎らしきものが地面から巻き起こり、うねりとなって空中のロキを包み込んだ。

 

「この漆黒のオーラは……黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)ヴリトラか!?」

 

その黒炎を見たタンニーン様がそう叫ぶ。

ヴリトラ……という事は匙か? 「神の子を見張る者(グリゴリ)」の事だ、どうにかしてヴリトラの意識を覚醒させたのだろう。

黒い炎に呑まれたロキは驚きの声を発する。

 

「この炎は……動けん上に力が徐々に抜けていく!? 特異な炎を操る龍王がいたと聞いたことがあるが、まさかッ! だが……」

 

匙の姿を確認もしたいが、ここはロキに接近する事を優先させる。恐らくきっかけは赤龍帝…….一誠の血だろうからそれはあいつに任せる。対話くらいなら接近中でも出来るだろう。

 

「一誠! イリナ! 接近するぞ!」

「応!」「ええ!」

 

しかし、途中でロキは黒炎から抜け出すが黒炎がロキを中心に広がっていた為にかなり接近できた。

しかし、黒炎には近づけずにいた為に反対側に出たロキにミョルニルは届かない。ロキは抜け出して口を開く。

 

「この程度ならばまだ……」

 

言葉を遮るように雷光が煌めき、特大の一発がロキを包み込んだ。恐らく、姫島とバラキエルさんによるものだろう……見なくとも分かる。

援護感謝する!

そして、鎚の範囲内まで近寄り大振りに鎚をロキに振り下ろす!

 

「残念だったな! 一度見た上に、三度目などッ!」

 

しかし、それはミドガルズオルムの量産体を盾にすることにより防がれる。ミドガルズオルムの量産体は聖なるオーラ(・・・・・・)の波動を全身に受けて消滅する。

流石に防がれるかだが、それは……読んでいたッ!

 

「イリナッ! 一誠ッ!」

「いっっっけぇぇッ!」

 

ロキが目にしたのは横からミョルニルを振りかぶるイリナの姿だったはずだ。

 

「なんだとッ!?」

 

ロキは俺ではなくイリナがミョルニルを使い、さらに使いこなせていることに驚いて叫び恥も投げ捨てて転移魔法陣を展開しようとする。

 

だが、ゴッ! と再度黒炎がロキだけを包むと共に魔法陣の構成が止まる。

これは恐らく匙とギャスパー! これならば……!

ミョルニルはそんなロキの身体に直撃する! そして、その直後……

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎』

『Transfer‼︎』

 

パワーを譲渡されたミョルニルから特大の雷が発生しロキを呑みこんだ。しかし、ロキは何かを落ちながら呟く。

 

「……聖書に記されし神が、何故禁手や神滅具などとという神格に対抗し、殺せるだけの道具を消さずに残したのか……考えた事はあるか? それは……」

 

そして、ロキは意識を失った。落ちるロキをロスヴァイセが素早く拘束して地面に降ろす。その光景を見て誰に聞かせるわけでもなく呟く。

 

「手札は先に使い切ったほうが負けるんだよ……悪神様」

 

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の力を使わせて貰った。デュランダルによって増幅した能力でミョルニルのレプリカの偽物を創った。結構精巧な作りだったのとロキが追い詰められていたのが幸いして気付かれることは無かった。

 

色々疑問に残るが一先ずは一件落着か……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからどうすれば……!」

 

ロキの戦後処理を終えて、神々の対談も終わりオーディン様も帰られた翌日。学園祭や修学旅行の話しをしているオカルト研究部の部室中央で悲観の声をあげる銀髪の女性がいた……まあ、ロスヴァイセなんだが。何故、このような状況になっているのかと言えば会談を終えたオーディン様に置いてかれてしまったらしい。今頃気付いている筈なのだが、何の連絡もやって来ない。……これは任されたのかね?

 

「これは紛れもないリストラよ! 私、あんなにオーディン様のために頑張ったのに日本に置いていかれるなんて! どうせ私は仕事が出来ない女よ! 彼氏いない歴=年齢よ! ふえぇぇぇんっ!」

 

ロスヴァイセは、完全に自棄になって、泣きじゃくりながら床を叩きまくる。こう見ると、先ほどまでとのギャップというか何かくるものがある。そんな柄でもない事を思いながら彼女へと対処を現実逃避によって放棄していると、部長が悪魔の微笑みを浮かべながらロスヴァイセへと話しかける。

 

「泣かないでロスヴァイセ。この学園で働けるようにしておいたから」

「……ほ、本当に?」

 

泣いていたロスヴァイセは頭を上げて部長を見つめる。

 

「ええ。希望通り、女性教諭って事で良いのよね? 女子生徒ではなくて?」

「勿論です。私、これでも飛び級で祖国の学舎を卒業しているもの。歳は若いけれど、教員として教えられます」

 

北欧で飛び級となると……結構優秀なんだな。まあ、そうでなければオーディン様の付き人になれないか。

 

……ほとんど覚えていないが、ロスヴァイセは666(トライヘキサ)についてを卒業論文に出していたか? 一応説明するとトライヘキサは黙示録で黙示録の龍(グレードレッド)と並んで語られる獣の数字の大元となった生物で、大昔に聖書の神によって封印されている。

だからなんだという話なんだがな。

 

「けど、私、この国でやっていけるかしら? かと言って祖国には戻れないし。うぅっ……せっかく安定した生活が送れそうな職に就けたのに!」

 

再び嘆くロスヴァイセに部長が微笑みを崩さずに書類を取り出し、彼女に手渡す。

 

「今、冥界に来ると、こんな特典が付いてくるわよ?」

 

ロスヴァイセはその書類を手にとってパラパラと斜め読みをすると、驚きの声を上げる。

 

「う、嘘……保険金がこんなに!? こっちのは掛け捨てじゃない!」

「更にこんなサービスやシステムもついてお得だと思わない?」

 

追撃とばかりに部長は次々と見慣れた書類を出し始めた。……数か月前に俺が眷属入りした時にもあの書類は配られた。慈愛に満ちたグレモリーということもあって眷属や関係者となった者には相応以上のケアが施される。

他の所がどうなのかは知らんが、黒歌の時と比べると大きな差がある。

 

「す、凄いです! 悪魔ってこんなに貰えるんですか? どれも好条件ばかりです!」

 

それを聞いたロスヴァイセはさっきまで落ち込んでいた様子が嘘のように消え、表情が明るくなった。そして、部長はポケットから紅い駒……「悪魔の駒(イービル・ピース)」を取り出す。

 

「そんな訳で、冥界で一仕事するためにも私の眷属にならない? あなたのその魔術、「戦車(ルーク)」として得る事で動ける魔術砲台要員になれると思うの。……ただ駒の消費が一つで済めば良いのだけれど」

 

俺を除く全員が部長の申し出に驚くのも無理はない。しかし、「戦車(ルーク)」か……残る駒がそれしか無いのが惜しいな。ヴァルキリーってのは、基本はウィザードタイプだが、オールマイティでもあるんだよな。そう考えると、「兵士(ポーン)」か特化して「僧侶(ビショップ)」が良かったな。

まあ、無いものを強請っても意味無いがな。

 

「どこか運命を感じます。私の勝手な空想ですけど、それでも冥界の病院であなた達に出会った時から、こうなるのが決まっていたかもしれませんね」

 

ロスヴァイセがそう言いながら「戦車(ルーク)」の駒を受け取ると、背中から悪魔の翼が生えた。

 

「皆さん、悪魔に転生しました。元ヴァルキリーのロスヴァイセです。グレモリーさんの財政面も含め、将来の安心度もあるので悪魔になってみました。どうぞ、これからもよろしくお願い致します」

「……と言う訳で、皆。私、リアス・グレモリーの最後の「戦車(ルーク)」は彼女、ロスヴァイセとなりました」

 

部長が笑顔で改めて紹介し、全員が快く迎え入れた。全員を見渡して俺は呟く。

 

「これで、部長の駒は全て埋まったか。……戦術の幅が広がるな」

 

といっても、ゴリ押しに拍車がかかりそうな気もして来たが……。

 

「そうなるわね。新しいフォーメーションも考えないといけないわね」

 

すると、そう言って考える様子を見せる部長。そんな中でロスヴァイセが呟く。

 

「そういえば、住む場所はどうしましょうか……」

「……住む当てが無いなら、黒歌と同じくあのマンションで良いんじゃないか?」

 

ロスヴァイセの呟きに思わずそう返す。俺の言うマンションは俺やイリナ、裕斗にギャスパーの住んでいる所だ。黒歌が俺の部屋に同棲すると言い出した時はイリナも参戦しようとしてどうしようかと思ったが……勿論、あいつらとは別室だ。

ちなみに黒歌は保険医として駒王学園で働く事になっていてロスヴァイセさん同様に、生徒ではない。

今は、はぐれ悪魔の件の処理で冥界にいる。魔王領内かつグレイフィア様がついてくれる様だから心配しなくて良いだろう。

 

「そうね、ロスヴァイセさえ良ければ……」

「ほ、本当ですか? あ、ありがとうございます!」

 

そんな事もあって新たにロスヴァイセが仲間になり、益々賑やかになりそうだ。

次は京都への修学旅行……何も起きずに済めば良いが……。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

───「禍の団(カオス・ブリゲード)」英雄派アジト

 

日本の何処かで数名の男女が集まっていた。その人物らは最後に部屋に入ってきた一人のアジア系の青年へと視線を向けていた。そして、ある一人の金髪の女性が彼に口を開く。

 

「曹操、首尾は?」

「ああ、龍喰者(・・・)の交渉は済んだ。ハーデスの頭を縦に振らせるのも苦労したよ。あとは、京都でグレードレッドを呼び出すだけさ」

 

曹操と呼ばれた先程の青年は軽く笑みを浮かべながらそう返した。すると、一人の大柄な男性が曹操に問いかける。

 

「でもよ、京都でやる必要はないんじゃねぇか? 霊脈なら他の地にも有るし、わざわざあいつらの修学旅行とやらに合わせる必要はないんじゃねぇか? まっ、闘えるんなら構わねえけどな」

 

大柄な男性が問いかけていながら、自己完結した事に曹操はやれやれと肩を竦めてからメンバー全員に話しかける。

 

「今回のロキの件は予想外の連続だったが、何方にせよ赤龍帝を含むグレモリー眷属の実力は実際に見ておいて損は無いだろう……丁度、実力を測りたいメンバーは修学旅行だかに参加するからな。リスクは其れなりに有るがな」

 

そのリスクというのは、余計な者まで呼び寄せる可能性が高くなるということ。だが、それを差し引いても赤龍帝らの名は大きくなっている為に情報を得るのは大切であると曹操は判断した。

 

「情報によれば……赤龍帝、デュランダル使い、聖魔剣、ヴァルキリー……ぐらいかしら?」

 

と確認をするのは、最初に開口した金髪の女性。この中に回復要員であるアーシア・アルジェントの名が無いのは、戦闘要員では無い為と単純な理由であって決して驕っているわけではない。また、エクスカリバーの使い手に選ばれた紫藤イリナに関しては未だその情報が外部に届いていないからというのもあるが、彼女がグレモリー眷属ではないからが第一である。同様の理由で匙元士郎も除外されている。

 

「そのようだな。といっても、彼には彼女が当たるようだからな」

 

と苦笑いを浮かべながら言葉を返す曹操にある一人の男が反応する。

 

「……正直、彼を知っている僕からすれば引き抜きは不可能だと思う」

 

その男は病的なまでに白髪が特徴的で、彼は苦々しく呟く。それを聞いた曹操は表情を先程のもの(苦笑い)から変えずに彼に声をかける。

 

「だが、あの彼女が提案した事だ……何か策があるんじゃないか? 邪魔されない場所で殺り合うためかも知れないがね」

 

「そっちの可能性の方が高いけど、彼方にはゲオルクの監視も付くし、大事には至らないんじゃない?」

 

それについで、またもや金髪の女性……名はジャンヌと言う……が発言する。ゲオルクの監視が付くともあって納得しようとする白髪の青年だが、表情は険しいまま言葉を返す。

 

「それならば、いいが……」

「兎に角、此方は期待通りの結果を待つのみだ。旧魔王派が壊滅した今、派閥内での動きはヴァーリチームという懸念もあるが、我々が指揮をしている……変な横槍は出ないだろう」

 

曹操は懸念材料であるヴァーリには伝言を伝えて有り、フェンリルを従えた事には既にヴァーリが生きて戻ってきている事から知っている。だが、想定の範囲内であった為かそこまで警戒はしていない。

すると、またもやジャンヌが曹操の意見に同調する。

 

「はぐれ魔法使いの集団はリーダーたちが此方に属する以上は変に動けないからね」

「まあ、それは二条城の時にするらしい。顔見せの際にでも剣を交わらせたらどうだい? ジークフリート?」

「……そうするよ」

 




七巻終了。
九巻開始は……不明ですが、一月毎に進行状況を書いていく予定です。とりあえず色々混沌になるかも。
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