高司君はどうやってもモテない リメイク   作:ヘンリー発生

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はい、ストック切れ!
今回は少し長めです。 では、どうぞ。


センケツノキズナ 12

ぺぺさんサイド

 

砂城の嬢ちゃんに声をかけた俺は右手を異空間に突っ込み収納していた愛刀の《夜空》を取り出す。

 

まあこんなのを年がら年中持ち歩いていたら銃刀法違反で捕まっちまうからな。

 

「そうゆうことだ、化け物。ここから選手交代な」

 

俺はリビングデッドにそう声をかけ、右手に《夜空》を構えて左手の指でクイクイと挑発した。

 

それが挑発だと気づいたのだろうリビングデッドは一声鳴くとこちらへ向かって走り出してきた。その速度は並ではない。

 

俺も地面を踏み締めると走り出す。一瞬で高速へと達した俺とリビングデッドの超至近距離での戦闘が始まった。

 

自分で言うのもなんだが今の俺たちはその姿が留まっていないだろう。焦って俺たちの姿を目で追うようにしている砂城の嬢ちゃんが良い例だ。

 

俺は高速戦闘だというのにこちらの攻撃を交わし、いなして反撃してくるリビングデッドに舌を巻く。

 

おいおい、マジかよ。さっきまでと動きが違いすぎだろ。こうなりゃ少し速度を上げるか。

 

次の瞬間、俺は戦闘速度を上げてリビングデッドの後ろに回り込むように移動した。

いきなり消えた俺の姿に虚を突かれたのかリビングデッドはその攻撃の手を止めかけた。

 

「ここだ!」

 

そう叫んだ俺はリビングデッドの上半身を一閃した。

 

俺の一撃をモロに受けたリビングデッドはその姿を真っ二つにして倒れる。

 

「ふぅー、終わりかな」

 

「それじゃダメです!ぺぺさん!」

 

安心しかけた俺の元に嬢ちゃんの鋭い声が飛ぶ。

咄嗟に俺は《夜空》を側面に構えるとそこに重い一撃が飛んできた。衝撃を殺しきれなかった俺の身体が2、3メートルほど飛ばされるが、空中で態勢を立て直し上手く着地した。追い打ちをかけるようにリビングデッドの攻撃が飛んでくる。リビングデッドの繰り出す攻撃をいなしながら嬢ちゃんへと問いかける。

 

「どういうことだ嬢ちゃん?我ながらさっきの一撃は完璧に決まったと思ったんだが?」

 

「ただ倒すだけではダメなんです。これはアスタロトくんの受け売りですけどリビングデッドの弱点は火です。並みのリビングデッドならまだ他に対処法もあったのでしょうけど今あのリビングデッドは特殊な道具で強化されているのが原因なのか強力な火で燃やし尽くすしか対処法がないそうです」

 

「マジか…。けどそれなら嬢ちゃんの魔法で勝てたんじゃないのか?」

 

「いいえ、自分の炎系魔法ではリビングデッドを燃やし尽くすはできないと思います。ですが貴方ならリビングデッドを燃やし尽くすほどの魔法を使えるのでは?」

 

「うーん、まあできないことは無いけど」

 

つまり嬢ちゃんの話を要約すると並みのリビングデッドなら倒せない事もなかったが可笑しな道具のせいで復活、強化されたから炎系魔法で倒すしかないと、しかし嬢ちゃん自身はあまり炎系魔法が得意ではないからリビングデッドを燃やし尽くすほどの火力をもつ魔法をご所望てわけだ。

なんとも難儀な話だな…………。

 

だがまあ話は分かった。詰まるところ押しても引いても奴には通じないってことか。

幸い辺りには燃えやすい素材で溢れているようだ。 

 

「オーケー」

 

リビングデッドを倒す方法を聞き終えた俺は奴の攻撃を全ていなし、カウンターを決め奴と距離をとる。

 

改めてリビングデッドの見るとさっきから傷を付けてもすぐに修復されていく。

俺は縮地で奴との距離をさらにとると《夜空》を正面に構える。

 

説明しよう!縮地とは俺が教会を追放された後、ブライアンさんと出会うまで各地を旅していたとき、南の方の地方の民族から学んだ特殊な移動法を俺が改良を加えた高速移動法である!まあ、詳しい説明はまた今度な!

 

悪い、話がそれたな。まあ気にするな。

 

「比類無き悲嘆をもって天魔に与える断罪を!“雪那”!」

 

詠唱を終えた俺の体内から一気に魔力が無くなると次の瞬間、俺の体内に膨大な魔力が流れ込んできた。

 

これがこの妖刀《夜空》の能力の一つ、“雪那”だ。

 

その能力は、 使用者の魔力を喰らい何倍にも増幅して使用者に還元することで、使用者の戦闘能力を強制的に引き上げるというもの。 まあ、これに耐えられず死んでいく使用者が続出したんだが。

 

「いくぜ、第二ラウンドだ!」

 

俺は縮地でリビングデッドとの距離を詰めながら高速で奴と斬り結んでいく。と、同時に新しい詠唱を始めた。

 

「忌まし忌まし在忌まし、我絶対の魔力をもって煉獄を求めん」

 

詠唱を始めた途端、俺の周囲から取り留めとなく白い炎が現れ出す。

 

いきなり現れた炎に驚いたのか、リビングデッドとしての本能がそうさせるのかは知らないが奴は俺と距離をとろう後ろに下がり始めた。だが、

 

そう簡単に逃がすわけないだろ。

 

開いた距離を縮地で埋めながら俺は連続でリビングデッドに斬りかかる。こちとらまだまだ魔力が有り余ってんだよ。

 

そして、俺は詠唱の完成へと取りかかる。

 

「顕現せよ〈迦具鎚〉!」

 

詠唱を終えた途端、俺の周囲を取り留めなく漂っていた炎が一瞬消え、次の瞬間白い炎で出来た龍が現れた。

 

これが俺が使える炎系魔法では最大レベルの魔法〈迦具鎚〉だ。

 

この魔法は発現に多くの魔力を必要とする代わりに迦具鎚の炎を受けた者は燃え尽きるか魔法の使用者が命令を出すまで白い炎がその身を焦がす魔法。

 

「行け迦具鎚、燃やし尽くせ。」

 

俺の命令を受けた迦具鎚は身を狂わせリビングデッドへと襲いかかる。

 

その過程で周囲の木々に炎が燃え移りちょっとした火災現場みたいになっている。

 

迦具鎚を喰らったリビングデッドは周囲の木々を巻き込み盛大に燃え上がっている。

 

ゴオオオオオオ!

 

パチパチパチ・・・・・・

 

数分後、リビングデッドのいた場所には塵一つ残ってなかった。我ながら少々やり過ぎたかなーと思ってる。まあ、反省はするが後悔はしない!

 

こうして、俺とリビングデッドの戦いは終わった。

 

 

高司サイド

 

砂城さんにリビングデッドを任せ俺はエンドが出した木ですでに上空へと来ていた。

 

「あら、あの方を1人で置いてきて宜しかったのですか?」

 

プリムが口元に手を当てて言ってくる。うっわームカツクー。

 

「人の心配する前に自分の心配をしたらどうだ?」

 

負けじとボンノーが言い返してる。

 

「あら、ご心配どうも。しかし、その口振り、もしかして貴方達如きが私に勝てるとでも?」

 

「うっせーよ!」

 

「なっ!」

 

俺が返した言葉でプリムは固まった。

 

妙な感覚だ。死ぬかもしれない戦いの前なのに落ち着いてる。

 

「気づいたか相棒。」

 

俺の思考を感じ取ったのかボンノーが声をかけてくる。

 

「ボンノーお前、何か知ってんのか?」

 

「うむ、先程多くの欲望を吸収したであろう。あれをキッカケに我の戦いの記憶が相棒に流れ込んだのだろう。」

 

感慨深そうな声でボンノーが答えた。

 

「そういやボンノー、滅茶苦茶強い魔剣だったけ。そりゃずっと戦ってりゃ耐性もつくってもんか。」

 

俺とボンノーが話していると幾つかの棘状の物体が飛んできた。

 

「いつまで話しているつもりですか。」

 

どうやら耐えかねたプリムが飛ばしてきたらしい。

 

「行くぞ、相棒。どうやら向こうも戦況が動いたらしいしな。」

 

言われてみるとどうやらぺぺさんが助っ人に来てくれたらしい。リビングデッドとぺぺさんが戦っている。

 

賢者タイムの力を使ってやっと見えるレベルと戦闘速度でだが……。

 

俺はプリムの方へ向き直るとボンノーに話しかけた。

 

「なあ、ボンノー俺たち勝てると思うか?」

 

「なんだ怖いのか相棒?先程カリエルと戦ったときの威勢はどうした?」

 

「だからこそだよ。賢者タイムを全力で使ってもカリエルには勝てなかっただろう?」

 

「うむ、いいか相棒。出来る出来ないではない、やるんだよ!」

 

弱気の俺にボンノーの言葉が響いた。

 

「……………そうだな、エンド、アシスト頼んだ!」

 

「キュウンー!」

 

エンドに声をかけた俺はプリムへと斬りかかった。

 

ちなみにぺぺさんや砂城さんたちがいた場所の近くが火災現場みたいになってるんだがなんで?

 

まぁいいか、何か魔法でも使ったんだろう。今はこいつとの戦いに集中せねば!

 

「うおおお!」

 

ガサガサガサ

 

木の枝から枝へ飛び回りながら俺はプリムとの距離を詰めた。そして奴に飛びかかろうと足を踏み込んだとき足の裏に違和感を感じた。見ると足場の枝が棘になっていて、俺の足を刺していた。

 

「ぐあああ」

 

だが、その痛みを我慢して俺は奴に飛びかかった。

 

「本当に馬鹿なんですわね」

 

俺は右手が使いづらいので左手でボンノーをもち、振りかざそうとしたが柄が棘となっており俺の左手は赤く染まっていた。

 

「うぐ!」

 

いてぇ、けど今は我慢だ!

 

ブン!

 

当然のごとくその斬撃は避けられ、俺は勢いのまま下に落ちていった。

 

「死になさい、ですわ」

 

しかしプリムが追い討ちをかけ、俺が落ちるであろう場所の地面を棘状に変化させた。

 

「畜生!」

 

「オーホッホッホッ、串刺しになるがいいですわー」

 

あと少しで地面に到達する、ボンノーの肥大化を使いたいがこんな手じゃ上手く操作出来ない。死ぬかもしれねぇ、今日何回死にかけるんだよ!畜生!

 

「ギュキィイイ」

 

地面スレスレでエンドが俺を掴んだ。

 

「ちっ汚らわしいトカゲが!」

 

プリムが棘を飛ばしてくる。エンドは俺を安全な所に運び終わるとすぐにその棘をまともに喰らってしまった。

 

「キィイイイ!」

 

「オーホッホッ!死になさい」

 

プリムが特大の棘を精製した。あれを撃たれると、俺も巻き添えを喰らって死ぬ。

 

「ギュイ」

 

エンドが最後の力を振り絞り、俺の足と手を治癒した。逃げろってか?

 

「エンド・・・」

 

「高司君!逃げるんだ!」

 

向こうからペペさんの声が聞こえた、どうやら地面の棘が邪魔をしてこっちにこれないようだ。

 

「喰らいなさい」

 

プリムの魔法が放たれる!やられる!

 

「エンドォォオ!」

 

俺は、逃げずにエンドの方へ走った。こんな身でも助けたいと思ったからだ。馬鹿なことをした。

 

「な!まて、高司くん!」

 

 

 

ドーーーーン!!

 

 

 

棘をまともに喰らったのに何も感じてない、つまり俺は死んだんだな。嗚呼、結局女神の呪いに振り回されただけの人生だったなぁ。そう思うや否や、

 

「いや違うぞ相棒、お主は生きている」

 

「へぁ?」

 

ボンノーが話しかけてくれた。目を開けると、俺の目の前には5~6メートルはある大きさのドラゴンが立っていた。

 

「ト、モダチ、マモ、ル」

 

エンド?

 

「相棒よ、どうやらエンドは成長したのだ。言葉もある程度使えているようだ」

「へぇ?」

 

よく見てみると、俺と成長したエンドの前には日本に生えるはずもないバオバブの木が生えており、棘を見事に受け止めていた。

「オマ、エ、ユルサ、ナイ、タカシ、イ、ジメタ」

 

片言でエンドがそう言うと、プリムの方へ飛び立った。

 

「くっ何なんですの!?」

 

プリムが棘をエンドに向けて何発も撃つ。

 

ズドドドドドドドドドドド

 

「キカ、ナイ」

 

エンドは風を操り、その棘を吹き飛ばした。

 

「うっ!」

 

動揺し、すかさずエンドから逃げるプリム、どうやら俺達がやったように森のなかに身を潜めるそうだ。

 

だが、

 

「そうはさせるかよ、肥大化ァ!」

 

俺はボンノーを超肥大化させ、プリムが森に入った場所であろう所へ思いっきり振りかざした!的が小さいなら矢をでかくすりゃ当たるからな。

 

「くらええええ!!」

 

「キャーーーーー!!!」

 

ズドオオオーーーン!

 

暫く、土の煙が舞った後に光る煙が出てきた、それはつまり

 

「ざまぁ見やがれってんだ」

 

俺はそう決め台詞を言うと、安心してそのまま体の力を抜いた。あーもう無理、もう動かねー。

 

ドサッ

 

俺が地面に倒れると、ボンノーもこれまでの比じゃないくらいにふにゃふにゃになってしまった。

 

「ふぁふぇふぁふぉーふふぃへはふゅ(我はもう無理である)」

 

「タ、カシ、ア、リガトウ」




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