幕間2 航空母艦『鳳翔』の始動
航空母艦『鳳翔』艦橋 山野大佐
うん…やはり発艦に問題ありだな…。軍令部の宮様や南郷提督にも言われていたが、思うようにはいかないか。鳳翔さんが一生懸命打ち出している式神方式だと、一機ずつの打ち出しになるから、大量の航空隊を一気に展開させる事は難しいよな…。まぁ、現在の補助戦力としての航空母艦であればこれでも問題ないけど、はるか昔、大洋の女王として君臨した航空母艦の姿にはほど遠いよな…。
式神方式の代わりになる発艦手段も、これまでいろいろと考えてきたけど、どれもパッとしないしな…。ボール状にして投げてもらった時は、初速が足りずに航空機が発艦直後に失速。鳳翔さん自身も翌日は酷い筋肉痛で、俺は南郷提督から大目玉。パチンコ方式の時は、初速の問題はクリアーできたが、方向が上手く定まらず…。あの時は、横で見ていた金剛さんに運悪く衝突して…最近機嫌が悪い金剛さんが更に激怒する事に。拝み倒して許してもらったけど、今度はそれを見ていた鳳翔さんの機嫌が…勘弁して欲しいぜ。
しかし、そろそろ何か有効な手段を考えないとな…。とはいえ、初速があり方向も安定している…意外と難題だな。銃のような物も考えたが、今度は艤装を管理している工廠の方から、弾が小さすぎて航空機を封じられない…だからな。
「鳳翔さん、やはり発艦に課題が残りますね。私の方でもう少し考えてみますので、もう少しだけ待っていてください。」
「申し訳ありません、山野艦長。私が不甲斐ないばかりに…。」
「いえいえ、鳳翔さんの責任ではありません。まぁ、私がなんとかしますので、大船に乗った気で居てください。」
「まぁ。了解いたしました、山野艦長。艦長さんに全てお任せいたしますので、よろしくお願いいたします。」
うんうん、これだよな…この雰囲気。鳳翔さんは、どこかの誰かさんと違って、落ち着いているし、ちゃんとこちらを立ててくれるんだよな。鳳翔さんの艦長職は、本当にやりやすくてありがたいよ。
「山野艦長?ニヤニヤされていますが、何かあっ…そういえば思い出しました。昨夜は随分お帰りが遅かったようですが、また金剛さんのところに行っていたのですが?艦長さんが他の艦娘の所に入り浸るのは如何なものかと…。」
ただ、これがな…。艦長として赴任して気付いたんだが、鳳翔さん結構嫉妬深いんだよな。しかも大騒ぎする訳ではなく、静かに怒っている…というのがな…。一度金剛さん達と外でちょっと遅くまで飲んでいたら、鳳翔さんが迎えに来て…。あの時の鳳翔さんの顔はニコニコしていたけど、本当に怖かったな。なんせあの金剛さんですら、あの時は何も言えなかったくらいだからな。
「いや、鳳翔さん。金剛さんとはいろいろと相談しないといけない事も多いのです。特に…ほら、鳳翔さんも知っているとは思いますが、私は金剛さん姉妹以外の戦艦娘からは睨まれていますので、他の戦艦娘達の事を聞くためにも、金剛さんからの情報は必須ですから。」
「あっ…。申し訳ありません、山野艦長。そういう事情だったのですね。私の早とちりで…。」
ふっ、ちょろいぜ。まぁ、半分は事実だけどな。実際、俺に対する長門を筆頭とする戦艦娘達、そして重巡洋艦娘達からの風当たりは厳しい。何かある毎に、『そうか…さすがは海軍省エリートの山野大佐様だな。今度はこの私を退役させるのか?』だからな。とはいえ、この俺が艦娘達の司令官を目指すには、彼女達の支持も必要になるから、なんとかしないと…。
「いえいえ、誤解が解けたのでしたら、問題ありません。さぁ、それではそろそろ鎮守府に戻りますよ。航海長、進路を横須賀鎮守府へ。」
「了解しました、このスケコマ…ではなく、艦長。おも~か~じ。」
こいつ…。今度の人事異動で、海防艦『敷島』の艦長に推薦してやるぞ。ちくしょう…部下に恵まれないぜ…まったく。
横須賀鎮守府 弓道場 航空母艦『鳳翔』
「お母さん、今日はどうでしたか?山野大佐とは仲良くやれました?」
「赤城さん?お母さんは、今弓道をしているのよ、邪魔をしたら駄目だわ。」
「え~。ですが加賀さんも気にしていましたよね?大佐さんがお母さんとくっ付いてくれたらいいな~って。赤城も、山野大佐とお母さんが一緒になってくれたら良いな…と思っていますよ。だって、大佐はとても気前が良く、赤城にもいろいろ御飯を奢ってくれますから。」
「赤城さん!その話は…。」
この子達は…。実の娘達ではありませんが、私が呉に居た頃から面倒を見ている子達です。実際のところ、本当の娘のように育てていましたので、「お母さん」と呼ばれる事には慣れていますが、この子達もだいぶ成長した訳ですから、そろそろ親離れしてもらいたいものです。それに…帝国海軍は、この子達を正規空母の艦娘とする事に決めたようですし…。この子達のためにも、私が頑張らないといけないようですね。
しかし…山野艦長と一緒に…ですか。この子達が言うように、本当にそうなれば嬉しいのですが、艦長さんには金剛さんが居ますし、なかなか私の方を振り向いてはくれないでしょうね。実際、私の相手をしている時の艦長さんは、どこか他所他所しい部分がありますから…。山野艦長は、私を誤魔化す事に成功していると考えているようですが、私は知っているのです。艦長さんが、金剛さんの事をとても想っていることを。
「貴方達、山野艦長にご迷惑をおかけしたらいけませんよ。山野艦長はとてもお忙しいのです。」
「鳳翔さん。別に構いませんよ。赤城、加賀、横須賀鎮守府の傍に大食いの店が出来たようだから、この後連れて行ってやるぞ。」
山野艦長…またタイミングの悪い時に…。そんな事を言ったら、この子達はこれ幸いに、またオネダリをしますよ。たしか以前、この二人が食べ過ぎて、財布が凄く軽くなってしまったと嘆いていましたよね?まぁ、こういう気さくな部分があるからこそ、赤城さんや加賀さんもそうですが、私も艦長さんの事がとても好きなのですが。そうです…この機会ですから、私も連れて行ってもらいましょう。相手は自分の艦長さんなのですから、これくらいの役得はあっても良いと思うのです。
「山野艦長、あまりこの子達を甘やかしてもらっては困ります。とはいえ…折角なので、私も一緒に行きますので、四人で行きませんか?」
「Hey! なに勝手に話を進めているネ。私も一緒に行くに決まっていマ~ス!Hey! 大佐さん、私も一緒に行くネ。勿論、全部大佐さんの奢りデ~ス!」
はぁ…金剛さんも付いてきていましたか…。折角、金剛さん無しで、艦長さんと一緒にお出かけする機会だと思ったのですが、甘かったですね。
「金剛さん、貴方も来ていたのですか。しかし…他の戦艦娘の方々と一緒に居なくて良いのですか?」
「別に構わないネ。陸に居る間は、大佐さんと一緒に居たいデ~ス。それに…鳳翔の事も少しは気になるデ~ス。」
こういうところが、私も金剛さんの事が嫌いになれない理由なのですよね。なんだかんだと言って、戦艦が中心の横須賀鎮守府内では鼻つまみ者の私の事を気にかけてくれますし、私だけではなく赤城さん達の面倒も見てくれています。三笠様が退役された時は、いろいろと鎮守府内で混乱がありましたが、それが現在、曲がりなりにもきちんと鎮守府が纏まっているのは、金剛さんの力です。三笠様の言葉ではありませんが、地位が人を作った…金剛さんが大きく成長したのでしょうね。
「ありがとうございます、金剛さん。本当にいつも目をかけていただき、ありがとうございます。艦長さん、折角なので今日はみんなで、そのお店に行きましょう。あっ、もう少しだけ待っていてください。あと2本だけ矢を放ちましたら、行けますので。」
「あ…はい。それでは、少しここで待っていますね。金剛さん、貴方も少し出資してくださいよ。今は貴方の方が貰っているのですから。」
「Noネ。奢ってもらう事に価値があるネ。だから今日は諦めるデ~ス。」
フフフ、たしかにこれについては、金剛さんの言葉に私も同意します。私も艦娘とはいえ女性、こういう時は殿方に奢ってもらいたいですから、私も金剛さんを止めませんからね。それと大佐さん、艦長職の職務手当て…結構あること私は知っていますから。まぁ、赤城さんと加賀さんがどれだけ食べるのか、不安があると思いますが、普段は私が艦長さんの食事も作っているのですから…今日くらいは。
さて…艦長さんと金剛さんの漫才は放っておいて、残っている二本の矢を放ちましょうか。赤城さんや加賀さんもそうですが、私も昔から弓道を嗜んでおり、これを行う事で雑念が消えさり、落ち着く事が出来るのです。まぁ、私にとって丁度良いストレス解消なのかもしれませんね。それでは、矢をつがえて振り絞り…。雑念を追い払い、的だけに集中して…。
ヒュン…バスッ!
綺麗に打ち抜けました。理想的な場所に理想どおり矢を打ち込む事が出来ると、本当に嬉しいですね。矢をつがえる時は非常に集中しますので、周りの音が無くなりますが、矢が的に当たった瞬間に再び音のある世界に戻ってくる…この瞬間の心地よさ、私が弓道を好きな理由の一つでもあります。あら?山野艦長、私が弓を射る姿が美しかったですか?私の事を凝視してくれていますね。それでは、最後の矢を放ちましょう。
ヒュン…バスッ!
えぇ、良いですね。山野艦長が見ていた事も理由かもしれませんが、今日の最後の二本は普段以上に理想的に矢を放つ事が出来たと思います。さぁ、それでは艦長さんと一緒に、食事に行きましょうか。…あらっ?艦長さん、どうされたのですか。物凄く難しい表情をしているのですが…。それに、金剛さんが話しかけているようですが、ほとんど相手もしていませんし、赤城さんや加賀さんも、普段の山野艦長の表情ではないため、話しかけ辛いようです。なにかその…物凄く考え込んでいるような…この表情の時は邪魔をしないほうが良さそうですね。
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「鳳翔さん、解決出来ましたよ。弓道です。これで行きましょう。」
「は…はぁ?」
山野艦長の沈黙の時間は2~3分だったと思います。金剛さんも含めて、私達にとっては非常に長い2~3分でしたが、艦長さんの最初の言葉は、私にとっても予想外の物でした。弓道で行きましょう…と言われましても…何のことなのかさっぱり分かりません。
「鳳翔さん、弓道のスタイルで艦載機を放つのです。この矢の大きさであれば、現在式神に封じている艦載機を、数機纏めて封じる事が可能です。これで全て解決ですよ!早速、工廠に行きますよ。金剛さん、貴方も一緒に来てくださいよ、貴方はこの鎮守府の主力艦の最先任艦なのですから。赤城、加賀、お前達も一緒に来なさい。」
どうやら…食事は延期のようですね。赤城さんと加賀さんは少し不満そうな顔をしていますが、こればかりは仕方ありません。それにしても、弓道方式で艦載機を発艦ですか。弓を艦に持ち込む事もそうですが、艦載機を矢に封じて運用…いろいろと課題も多い気がします。とはいえ弓で放つのであれば、投げるよりははるかに初速が稼げますし、決まった方向に確実に放つ事も可能…たしかに発艦の課題は解決出来るかもしれません。流石は、海軍省のエリートであった、山野艦長といったところでしょうか。
横須賀鎮守府 工廠 山野大佐
「ということで、工廠長。この矢に、可能な限り艦載機を封じてください。」
「しかし…山野君。この大きさであれば、たしかに4~5機は封じる事が出来るが…、矢を放った後の艦載機の展開を考えるとな…。」
そんな事は分かっているさ。しかしそこは、工廠側での艦載機の封じ方のノウハウと、艦娘側の錬度で解決可能な筈だ。それに工廠長が言うように、矢の大きさがあれば、4~5機の艦載機を一度に飛ばすことが理論的には可能。これが出来るようになれば、鳳翔さんの重要度は一気に跳ね上がるだろうし、後に続く事になるであろう赤城と加賀への期待も一気に上がる。
それにしても、弓道は盲点だったな。普段、俺は弓道場などには行かなかったから全然考えていなかったが、これは理想的な方法である気がするんだよな。鳳翔さんが矢を放った瞬間…「これだ!」と思ったよ。まぁ、実際にこの方法で運用をするとなると、いろいろなハードルがあるとは思うが…俺のツテでなんとかして、戦力化にこぎつけたいところだぜ。
「工廠長、案ずるより産むがやすしです。艦載機の展開については、艦載機の封じ方、それと艦娘側の錬度でカバー可能な筈。まずはやってみましょう。とりあえず、一般的な方法で良いですから、この矢に艦載機を封じ込めてください。」
「しかしね…山野君。ここまで大掛かりな話となると、横須賀鎮守府だけで解決出来る問題ではないよ。一度、上に正式に提案を上げてだね…。」
「工廠長、正式化の際はおっしゃるとおりですが、試験的な運用については、鎮守府内部の決裁で行っても問題ない筈。そしてこの件については、私が南郷司令官から全権を委任されていますから、よろしくお願いします。それに…いざとなったら、私の方から軍令部次長の宮様や、海軍大臣の佐藤閣下に直接話を通しますので、鎮守府に迷惑はかけません。」
「なるほど…流石は海軍省や軍令部に大きなツテを持っている山野君という事だな。分かった。比叡君の改装の際はお世話になった事だし、今回は私が借りを返す番だな。とりあえず、試しに行ってみるから、少し待っていてくれ。」
「よろしくお願いします、工廠長。」
工廠長に貸しを作っておいて良かったな。金剛さんの妹分である比叡さんを御召艦に改装する際、改装の件も含めて海軍省などへの根回しをやった甲斐があったな。自分が御召艦になれない事に不満をもった金剛さんの説得は大変だったが、流石にあの場面で金剛さんを推薦していたら、俺の立場がもっと拙くなっていたし…比叡さんにも貸しは作れたから、あれはあれで良かったと思うぞ。
「あの…山野艦長?その…比叡さんの件というのは、何かあったのですか?その…山野艦長は鎮守府の戦艦娘達に恨まれていますから、私の艦長さんとして、あまり戦艦娘達の関係に介入してもらいたくはないのですが…。」
「Hey! 鳳翔。この件は、No Problemデ~ス。私の妹の比叡が御召艦に選ばれる時、大佐にいろいろと手伝ってもらっただけネ。」
いや…『いろいろ』のレベルであれを処理したら駄目なような気が…。たしか当初は陸奥さんが選ばれていたところを、海軍省に働きかけて無理やり比叡さんを選ばせたのだからな…。この件もあって、長門達の俺に対する悪感情は増しているが、まずは自分の派閥を固める事が現時点では大事だからな。反対派の切り崩しは、その後だ。
「まぁ…あれを『いろいろ』で片付けて良いのかは微妙だが、結果的に大佐は、私だけではなく、金剛姉妹にも貸しが作れた…という事だわな。山野君、終わったよ。とりあえずやってみた。早速使ってみるか?」
「ありがとうございます、工廠長。ということで、鳳翔さん。比叡さんの件は置いておいて、早速使ってみてください。」
「は…はぁ。あの…あまり変な事に首を突っ込まないでくださいね、山野艦長。それにしても…考えたら直に実行…いえ、それが可能なだけの力を持っているのですね。流石と言いますか…。赤城さん、加賀さん、食事に行けないからといってブスッとしていないで、貴方達の将来にも関わるのですから、よく見ているのですよ。」
「は…はぃ、お母さん!赤城、ちゃんと見ています。」
「私も問題ありません、お母さん。」
赤城と加賀は、鳳翔さんの言う事は素直に聞くよな。まぁ、こんな良い考えが浮かんだら、直に実行してみたくなるし、それが出来るだけの権限とツテはちゃんと持っているさ。昔海軍少尉時代、敷島様から海軍省に行けと言われた理由、今ならよく分かるさ。いろいろな意味であまり顔は合わせたくないが、あの人には頭が上がらないし、足を向けて眠れないよな…。
おっ、鳳翔が工廠長から渡された矢をつがえたな。どうなることか…。まぁ、最初から上手く行くとは思えないが、一度に数機の艦載機の同時発艦、なんとか物になってくれたらな…。
ヒュン…バスッ…グシャ。
ありゃ…流石に一度では駄目か。矢に封じられていた艦載機が具現化した際、端の2機は問題なかったが、真ん中の3機が展開しきれず、空中衝突。しかし…少なくとも5機の同時発艦は可能、しかも方位も一定に発艦可能…これなら行けるな。
「ふむ…やはり最初からという訳にはいかんか…。艦載機の具現化のタイミングを少し弄ってみるか。しかし…山野君、これなら行けるかもしれんぞ。」
「そうですね、工廠長。改良の余地は大いにありますが、方式としては問題なさそうですね。どうですか、鳳翔さん?」
「山野艦長。これなら行けるかもしれません。私の方も、矢を放つ速度の調整が出来れば、もう少し上手くやれそうですし…練習あるのみですね。」
工廠長も、鳳翔さんも、手ごたえありと言った感じだな。赤城と加賀は、工廠の工員から貰ったお菓子を両手にご満悦のようだが、興味を持って鳳翔さんの姿を見ているようだし、多分大丈夫だろう。
「金剛さん、どうやら…南郷提督に良い報告が出来そうです。航空母艦の戦力化…赤城と加賀が着任する頃には、問題なく進められそうですし、新たな艦隊編成…こちらも行けそうですよ。」
「Hmm…流石は大佐さんデ~ス。でも…なんだか複雑な気もするネ。大佐さんが、どんどん私から離れていくような気がしマ~ス。私の乙女心も、少しは理解するネ!」
と言われてもな…俺は鳳翔さんの艦長だし、この後は空母機動部隊の司令官になりそうだからな…。金剛さんとの関係も重要だけど、難し…いや、やりようによっては、金剛さん達をこちらに引き入れる事は可能か…。
「山野艦長、ありがとうございました。空母『鳳翔』、これからは更に艦長さんの力になれると思いますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。」
「Hey! 鳳翔。何さり気なく、大佐さんにくっついているデ~スか!?離れるネ!大佐さんは、私のものネ!大佐さんからも何か言ってやるネ!」
「金剛さん。そう言われましても、大佐さんは私の艦長さんですし。それに…このお顔は、何か考え事をされているようですから、私達の会話は全く聞こえていないと思いますよ。」
「くぅぅぅ…Shit!」
金剛さんをこちらに引き入れる…どうやって南郷提督を説得するかだな。いや…今すぐでは、金剛さんは戦艦娘として強力な戦力。この状態では流石に南郷提督も、金剛さんを手放さないだろう。となるともう少し時間が経過して、金剛さん達が第一線から下がる頃まで待って…だな。
こちらに引き入れてしまえば、後は俺のツテを使って、金剛さん達を改装して速度だけでも上げてしまえば…いや、これはもう少し俺の権限が増えてからだな…。って、俺は今は鳳翔さんの艦長であるし、今後は空母娘との関係が深くなっていく訳で…、少し困ったな…。イテッ!赤城と加賀か。俺の頬を引っ張るなって!
「山野大佐、赤城と加賀を食事に連れて行ってくれる約束はどうなったのですか!赤城はもう待ちくたびれました。」
「そうよ、大佐。さすがの私も、待ちくたびれました。さっきまでは、軍務に関係するお話だから黙っていたけれど、もう終わったのでしょ?早く食事に連れて行って欲しいものだわ。」
こいつらは…。まぁ、そんな赤城と加賀を、鳳翔さんや金剛さんも止めないという事は、自分達も早く食事に行きたかったという事か?いくら大盛りの店とはいえ、赤城と加賀を連れて行くとどれだけ注文される事か…。工廠の工員達が渡したお菓子で、多少はお腹が膨れている事を期待するけど、望み薄のようだな…。
とはいえ、将来的には全て俺の部下になると思えば、ここで断るなんて道はないが…もう少し懐に優しい艦娘はいないのかよ…ちくしょう…。
「艦長さん、赤城さんと加賀さんもせっついていますし、今日はこの辺にして、食事に行きましょうか。勿論…貴方が奢ってくれるのですよね?未来の旦那様?…って、冗談ですよ。」
えっ!?…って、冗談か。鳳翔さんは、普段冗談なんて言わないから、一瞬ドキッとしたぞ。しかし鳳翔さんでもこんな冗談を言う事があるんだな。とはいえ、冗談なんて言い慣れていないのだろうな。冗談と言いながら、恥ずかしそうに俯いているし。こういうところは、本当に可愛いんだよな。
「ほ…鳳翔!何言っているネ!冗談でも、言って良い冗談と、悪い冗談があるデ~ス!大佐さんは、私のものなんだからさ、大人しくしているネ!」
金剛さん…。鳳翔さんも恥ずかしそうに慣れない冗談を言っただけなのだから、そこは笑ってスルーしてあげてくださいよ。というか金剛さんは鳳翔さんと違って、いつも全力投球だな。これはこれで、俺としては可愛いと思うし…これぞ、まさに両手に華!こんな美人を二人も連れて食事に行けるのだから、俺の運も捨てたものじゃないよな。
幕間扱いですが、久しぶりにこちら側の話を進めます。前回の本話の方では、山野大佐は空母鳳翔の艦長となりましたが、この時代は艦娘としての空母の黎明期ですから、未だ発艦方法も定まっていません。そのため鳳翔さんも、他の軽空母達と同様に式神で飛ばしている設定にしました。しかし艦これの世界では、正規空母は全て弓矢で飛ばしていますし、鳳翔さんも軽空母では珍しく弓矢スタイル。そのため正規空母達の発艦方法を、鳳翔さんを使って模索中…といった形にしてみました。
これでようやく山野大佐は、空母の力を発揮させることが出来るようになり、この功績をもって少将への昇進、そして空母機動部隊の司令官への道のりを歩む事になります。おそらく本話の第三章は、鳳翔、赤城、加賀を指揮下にもつ、第一航空戦隊指揮官としての山野『少将』の話になるような。そしてどこかの時点で、長門達や重巡洋艦娘達といった、現主力艦の艦娘と対立しつつ、それを転向させ…ではなく説得し、自身の派閥に組み込んでいく事になるのでしょうね。
金剛さんと鳳翔さんの関係…だんだん鳳翔さん側に天秤が動きつつあります。やはり、艦長として常時傍に居るというのは、非常に強力だと思うのですよね…。それにこの物語の大元となる『鎮守府の片隅で』では、鳳翔さんは非常に家庭的な所がありますから、このように距離が近い位置に居ると、これらの強みが完全な形で発揮される訳で…。現実でも、よくありそうな話になりつつあります。もっとも問題なのは、肝心の山野大佐自身が、まだあまり本気になっていないような…。
第三章…投稿までに結構間隔が空くと思いますが、気長に待っていていただけるとありがたいです。今回も読んでいただきありがとうございました。