鎮守府への道   作:ariel

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第三章の第二話は、いよいよ山野提督と南郷提督の戦いになります。第一航空艦隊が演習に参加する機会は、今回が初めて。いよいよ山野提督が鍛えた航空艦隊の力が発揮される事になります。そしてこの航空攻撃が、南郷提督達に時代が変わりつつある事を認識させる事に…。


第十六話 第一航空艦隊の力

太平洋上 鳳翔艦橋  山野少将

 

 

「提督、演習開始のお時間です。ご指示を」

 

いよいよ演習開始か。南郷提督の白軍の起点は横須賀沖、そして俺の青軍は串本沖から開始か…。俺の青軍が白軍に勝っている点は、艦隊速度と航空機が使用出来る点。だとしたら、なるべく邪魔する物がない海域で戦う方が有利だよな…。それに…。

 

「鳳翔、ありがとう。艦長、進路東南東、艦隊を青ヶ島方面へ。彼我の距離と艦隊速度を考えると、しばらく白軍との接触はないだろう。4時間後に索敵機を出すが、赤城から7機、加賀から6機を準備するように、両艦の艦長に連絡。今回は二段索敵をかける。それと白軍が見つかり次第、次の索敵機を出すぞ。」

 

「提督、13機も索敵に使用するのですか?索敵の重要性は私も理解していますが…13機も出してしまっては、攻撃隊の編成に影響が出ると思うのですが…。それに索敵でしたら、金剛さんや榛名さん達に搭載している水偵でも事足りると思います。」

 

たしかに鳳翔の言いたい事は分かる。しかし俺達青軍の有利な点は機動力。敵の位置を正確に認識出来れば、かなり有利な戦いになる以上、索敵にはそれなりの力を投入しなくては駄目だ。それと…。

 

「いや、それは違うぞ、鳳翔。今回は、相手の正確な位置を確実に掴む事が必要。そのためには、多少問題があったとしても、索敵に手を抜くべきではないだろう。それと龍驤に、6時間後に上空直掩のため、戦闘機小隊を一つあげるように連絡してくれ。白軍の水偵が来たら、直に撃墜判定を出すように…と。」

 

水偵が落とされれば、俺達の居る大体の方角は判明してしまうが、それでも正確な位置を知らせないため、そして常時俺達の位置を監視させないために、この措置は絶対に必要だ。南郷提督の艦隊と正面からやりあっても、こちらが負ける以上、相手が見えない場所からジャブを打ち込んでいくしかないからな…。流石に龍驤の戦闘機隊も、鳳翔のものと同様にベテラン揃い。間違っても、水偵相手に遅れはとらないだろう。

 

「分かりました、龍驤と赤城さんや加賀さんに連絡します。」

 

 

「提督、加賀さんの出した5番機から通信。神津島沖40km付近を南西に向って進む白軍艦隊を発見。これより接触を続ける…との事です。既に残りの索敵機には帰還命令を出していますし、交代用の索敵機を新たに出しました。」

 

神津島沖を南西に向っているのか…まっすぐこちらに来ているという事は、時間的に夜間接触による夜戦を南郷提督は狙っているという事だよな。しかし、今の段階ではこちらの正確な位置は南郷提督には知られていない筈。先程、龍驤の艦載機が、白軍の水偵に撃墜判定を出しているから、おおよその方向は分かっていても、まだ正確な位置はつかめていないだろう。おそらく南郷提督の予想している場所よりも南に、俺達の艦隊が居る筈だからな。まずは…こちらから予定どおり仕掛けてみるか。今なら奇襲になるかもしれんからな。

 

「鳳翔。第一次攻撃隊を出すぞ。第一次攻撃隊は、鳳翔と龍驤の艦載機の全力出撃。目標は長門と陸奥の足を止める事。撃沈までは望まないが、中破以上を期待する。直ちに準備するように。赤城と加賀には、一時間後に第二次攻撃隊を出してもらう。こちらの目的は比叡と霧島の撃沈。そして余力があれば重巡洋艦に攻撃をしてもらう。」

 

「は…はぃ!提督。ですが、私と龍驤の攻撃隊では、私の艦戦が6機に艦爆が9機、そして龍驤の直掩隊を除いた艦戦が9機と艦爆が16機、そして艦攻が8機…赤城さん達を第一次攻撃隊に回したほうが良いと思うのですが…。」

 

そんな事は分かっているさ。だが…第一航空艦隊の演習参加はこれが初めて。そしてこの第一次攻撃隊は、文字通り長門達が初めて経験する本格的な空襲の筈。奇襲効果を考えれば、例え数は少なくても、一番錬度の高い航空隊を投入する方が効果は大きいだろう。

 

「鳳翔、言いたい事は分かるが、今回は相手も初めて経験する空襲のため、奇襲効果が最大限発揮できる。そこで…今回の攻撃は始めに上空からの艦爆隊による急降下爆撃攻撃で一気に決めてもらう。そしてそのショックから立ち直れない間に、龍驤の艦攻による両翼からの魚雷攻撃で長門と陸奥を同時に仕留める。つまり今回の第一次攻撃隊は、奇襲的な要素が強いから、数ではなく質が重要だ。鳳翔達の艦載機隊は我が航空艦隊一のベテラン揃いだ。必ず戦果を上げてくれる事を期待しているぞ。」

 

「…分かりました。そこまで信用していただけるのでしたら、やり遂げて見せます。私の艦爆隊は長門さんを、龍驤の艦爆隊は陸奥さんを狙います。そして…龍驤の艦攻隊がとどめを刺す訳ですね…。飛行長さん…よろしくお願いしますね。」

 

「おぉ、鳳翔さん、任せてくれや。それに提督、先陣は俺達が見事に努めてやるから、大船に乗った気で待っていてくれや。たとえ南郷提督とはいえ、確実に仕留めてきてやるからよ!」

 

この一撃が決まれば、一気にこちらが楽にはなるから賭けに出る価値はあるな。…色々と不安はあるが、ここは将として部下の働きを信じて待つしかないよな…。それと…この一撃で、南郷提督に時代が変わりつつある事を、嫌でも認めさせてやる。

 

「飛行長、よろしく頼む。それと…攻撃隊は南から回り込むような進路で白軍の艦隊に接触してくれ!」

 

 

 

神津島沖 70 km  長門艦橋  統裁官 敷島

 

 

「ふむ…流石に一筋縄ではいかんな…。伊勢と日向に通信、新たな水偵を出し南東を中心に索敵を実施するように。それと扶桑と山城にも水偵を出させて、艦隊の前方で哨戒活動にあたるように伝えよ。」

 

南郷提督と山野提督の演習ですか…。今の所、位置が完全に知られている私達が若干不利と言ったところでしょうか。いえ…戦力比を考えれば、この程度では不利とは言えないかもしれません。それに…おそらく南郷提督は、先に山野提督に攻撃させて、航空機の力を見る…いえ、航空機を対空戦により消耗させる腹のようですね。前方に哨戒機を送ったのも、対空戦闘の準備をするためだと思います。

 

「提督、私がこう言うのも変かもしれないが、これ程の戦力差がある状態で演習などしても、あまり意味はないのではないか?それに奴が小細工をしようとしても、この戦力差では何も出来ないと思うのだが…。」

 

ふむ…長門は未だ、山野提督の実力を理解していないようですね。いえ…流石に油断しているとは言いませんし、実際にこの戦力差です。長門が言っている事に間違いはありません。

 

「長門…お前が小僧をどう思って居るかは、わしの与り知らんところだが、あの小僧の実力を甘く見ていると足元を掬われるぞ?それと…お前が小僧を恨むのは筋違いという物。あれは小僧の責任ではあるまい。いい加減に許してやったらどうなのだ?」

 

「…提督の言いたい事は理解している。たしかに、緒先輩方が強制的に退役させられた件、奴が画策したのだろうが、奴の本意で無い事も理解している。だが…この私の感情が未だ奴を許せない。…すまない、提督。」

 

たしかに、こればかりは時間が解決してくれる事を待つしかなさそうですね…。長門にとって河内姉妹達のような先輩の戦艦娘は、文字通り色々と教えを授かった偉大なる先輩であったのでしょう。その彼女達を退役に追い込んだ山野少将のことは、あの当時の帝国の実情を考えれば仕方なかったと頭では理解していても、なかなか認められないのでしょうね。

 

「か…艦橋! 敵機直上、急降下!」

 

「何!急速回頭!面舵一杯!」

 

「敵急降下爆撃機、9機!全て本艦に向ってくる!」

 

い…いつのまに。南郷提督は艦隊の進路方向、青軍が居ると思われる方位に対して、哨戒線となる水偵を放っていました。撃墜を示す判定も出ていない以上、哨戒線は有効に機能していた筈です。一体どこから…。それにしても…見事なものですね。おそらく鳳翔の艦載機だと思われますが、文字通り一直線になって、こちらに急降下してきています。あの速さで接近する航空機を撃墜する事は難しそうですね。

 

…どうやら私は、時代が変わる瞬間に居合わせているのでしょうね。これからは三笠が選んだあの少尉が、この帝国海軍を支えていく事になりそうです。…南郷提督も私と同じように感じて居るのだと思います。悔しそうな顔はしていますが、どことなく嬉しそうな表情があります。おそらく私と同じように、時代が変わる瞬間を認識して、山野少将が自分の後継者になると判断したのでしょうね。さて…攻撃が終わったようですね。少々悔しい思いはありますが、統裁官として被害判定を出さなくてはなりません。

 

「青軍の艦上爆撃機からの急降下爆撃、本艦への命中7、また陸奥への命中8。統裁官殿、判定を!」

 

「判定、長門は主砲以外の上部兵装は全て喪失、艦速は10ノットまで低下。陸奥も主砲以外の全兵装を喪失、艦速は9ノットまで低下。両艦ともに中破の判定です。機関長、長門の艦速を10ノットまで低下させるように!」

 

あっという間の出来事でしたが、確かに青軍の艦上爆撃機からの模擬弾は本艦に7発命中しています。また陸奥には、長門への攻撃に倍する艦上爆撃機からの攻撃を受けていますが、命中は8。やはり鳳翔の攻撃隊の錬度はずば抜けている…という事ですね。模擬弾は25番(250 kg)相当ですから、本当の戦ならば長門も陸奥も上部甲板は火の海になっている筈です。

 

「敷島様!私はまだ戦える!戦艦である私が25番程度で中破とは、納得いかない!」

 

「おだまりなさい長門!あれだけの爆撃を受けた貴方は本来ならば火達磨になっています。例え主砲塔を含む重要部分が貫通してなかったとしても、その他の兵装が全喪失しているという私の判断に間違いはありません。」

 

「しかし!あのような奇襲攻撃は…卑怯だ!」

 

「長門、落ち着け!これは演習とはいえ、わしと山野の真剣勝負だ。戦に卑怯も何もない。知略を尽くして相手を叩く!それが戦だ。今回は…あの小僧にしてやられたという事だな。それに…演習はまだ終わっておらん!周辺確認はどうなっておる!」

 

…長門の若さが出ましたね。自分の思い通りにならない事、戦ではよくある事です。私のように先の大戦で実際に戦闘に参加した者であれば、戦には相手がいる事を骨の髄まで理解していますが、これまで戦を経験していない…そして南郷提督の許で自軍に有利な演習しか参加してこなかった長門には、強烈な一撃になったようです。…ふむ…やはり山野少将は手を抜かないようですね。長門にとって、今回の演習はいい経験になりそうです。

 

「艦橋!う…右舷より青軍の雷撃機急速接近!…魚雷投下!雷数4。全て本艦への衝突コースですっ!」

 

「く…くそっ…こんなバカな事があるかっ!私はまだ一発も主砲を撃っていないのだぞ!しかも敵の姿すら見ていない!や…山野の奴…。」

 

どうやら長門はここで脱落ですね…そして僚艦の陸奥も脱落のようです。山野少将…初手で徹底的に長門と陸奥を狙ってきたという事ですか。今回の攻撃、他の艦には目もくれずに、長門と陸奥のみを脱落させに来ましたね…やはり最大戦力から削り取る算段のようです。…となると、次に狙われるのは伊勢と日向でしょうね…。

 

「判定、長門の右舷に魚雷命中4、陸奥の左舷に魚雷命中3。長門・陸奥いずれも大破と判定します。提督、この両艦は戦力外のため今回の演習からは除外する事になります。次の座乗艦をお選びください。」

 

「長門、今回の失策は私の失策だ。お前の失策ではないから、気にするな。陸奥と共に先に横須賀に戻っているように。」

 

「すまなかった…提督。この私が不甲斐無いばかりに。次は必ず提督の期待に応えられる様に成長する事を約束する。それと…私は山野提督を甘くみていたのだな…今回の事で、さすがに私も目が覚めたよ…。」

 

どうやら自分が演習から除外された事で、ようやく少し冷静になったようですね。そして、ここまで見事にしてやられてしまっては、山野提督を認めざるを得ないのでしょう。そういう意味では今回の演習、長門にとっても丁度良い成長の糧になってくれそうです。

 

「敷島、次の座乗艦だが…扶桑にしようと思う。長門、陸奥が脱落した今、おそらく小僧の次の攻撃目標は伊勢か日向になるだろう。伊勢・日向を中心とした輪形陣を作り、伊勢と日向を狙ってくるであろう小僧の攻撃隊を少しでも削る事にしよう。そのためには、狙われている艦に居るよりは、対空戦闘を中心になって行う扶桑に乗艦して居た方が、都合が良いであろう。」

 

「たしかに…そうですね。おそらく次の攻撃で、伊勢と日向の艦橋は修羅場になるでしょう。提督には、全ての戦闘を冷静に見て貰った方が良いと思いますから、次回の攻撃目標の確率の低い扶桑に乗艦する事は正しいかと、私も愚考します。」

 

輪形陣は対航空戦のための艦列ですが、演習で使用する事も初めてのため、その効果も未確認。となると、それらの効果を総合的に判断するためには、目標艦ではない艦に南郷提督が座上して居る方が良いと私も思います。あら…私は統裁官だった筈ですが…いつのまにやら普段どおりの秘書艦になっている気がしますね…。おそらく南郷提督にとっても、それだけ今回の攻撃がショックだったのだと思います。

 

 

 

扶桑艦橋 南郷大将

 

 

「提督、お待ちしておりました。私を旗艦に選んでいただき…ありがとうございます。既に提督の指示による輪形陣への艦列の変更は進んでおります。ご確認をお願いします。」

 

「扶桑、ご苦労だった。すまんが、わしの座乗艦として頼むぞ。それと…輪形陣への艦列変更、よくやった。なんとか、小僧の第二次攻撃には間に合ったという事か。」

 

まさか初手で、長門と陸奥を失う事になるとは思わなんだな…。しかもワシが計画した哨戒線の裏をかいてくるとは、小僧も必死という事か。それに航空攻撃が、あそこまで凄まじい物であるという事が分かったことは行幸と言うべきかな。

 

いや…今回はこちらの油断があったため、ほとんど航空機に被害は出なかっただろうが、今回のように輪形陣を作っている艦隊に航空機が突っ込む場合は、流石に攻撃側の被害も大きかろう。となると、航空機の使用タイミングはかなり限られるという事。だからこそ、あの小僧も金剛と榛名を自分の艦隊に引き込んだという事か…。とはいえ、これからは戦艦娘と空母娘、ある程度バランスよく増強して行く事になりそうだ。まぁ、その役割を果たすのは…小僧になるのだろうがな。

 

「閣下、扶桑からの報告のとおり、既に艦隊は輪形陣を敷いています。中心に、おそらく次の航空攻撃で目標となるであろう伊勢と日向を置き、その周りを山城、扶桑、霧島、比叡で固めた内側の円、そして第四・第五戦隊と第一水雷戦隊からなる艦により構成した外部円。この二重の円で中央の伊勢と日向を確実に守る形になっています。」

 

「了解した敷島。この輪形陣で小僧の航空攻撃をどの程度まで防げるのか…初めての実戦でもあるし、よい研究になるであろう。」

 

む…いかんな。敷島は統裁官としての参加だった筈。いつのまにか普段どおり秘書艦として扱ってしまっておるな。ワシも…先程の攻撃でそれだけ焦ったという事か。まぁいい。勝負はまだまだこれから。小僧には、この貸しをしっかり返さなければな。

 

 

「青軍の攻撃隊、南方より我が艦隊に接近中。数…数およそ100。大編隊です!」

 

どうやら、この第二次攻撃が小僧の本命という事か。流石にこれだけの数の艦載機に集中攻撃を受ければ、伊勢や日向と言えども無傷という訳にはいくまい。少しでも多くの山野の艦載機に撃墜判定を出し、山野の航空戦力を枯渇させる事が出来れば…戦艦の数も重巡の数も圧倒しているこちらが、負ける事はあるまい。

 

「全艦、対空戦闘はじめ!」

 

「青軍攻撃機、上空で突撃陣形をとりつつあり!攻撃目標は…えっ?…攻撃目標は伊勢と日向ではありません。後方の比叡と霧島に向いつつあります!」

 

小僧…どこまでも、こちらの裏をかくつもりか。中心部の伊勢と日向では被害が大きいと見て、比叡と霧島に攻撃目標を変更したという事…いや、違うな。これだけ躊躇なく攻撃してきたという事は、最初から攻撃隊にそのような指示が出ていたという事。しかし何故、現在の白軍の最有力艦である伊勢と日向を狙わんのだ…。

 

「提督!比叡に4発、霧島に3発の命中弾を確認。残念ですが…統裁官として、両艦には中破判定を出させていただきます。また、外周円を固める第四戦隊及び、第五戦隊にも被害があるようです。こちらは集計待ちですが、重巡洋艦にも被害判定が出るでしょう。」

 

「敷島、未だ小僧の艦載機群の第二波攻撃は終了しておらぬが…、何故、伊勢や日向ではなく、戦力的には優先度が低いと思われる、比叡や霧島、重巡洋艦群に攻撃を集中したと考える?」

 

「…提督、これはあくまでも私の推測になりますが、山野提督にとっては、伊勢や日向よりも、比叡や霧島の方が戦力的に大きいと判断していたのではないでしょうか?理由は…理解できませんが…。」

 

ふむ…伊勢や日向よりも、比叡や霧島が戦力的に上…か。となると、比叡や霧島の方が、伊勢や日向に比べて優れている点を、あの小僧は脅威として受け止めたという事か…。…なるほど、速力か。たしかに、伊勢や日向に比べて、比叡や霧島は砲戦能力で劣るものの、艦速は優速。そして外周円の重巡洋艦達にも被害が出ているという事は…機動力に優れた艦娘を狙ってきたという事だな。

 

…あやつ…砲戦には持ち込ませないつもり…という事だな。砲戦に持ち込まれる前に、自軍の優速を生かして、逃げ回る…か。なるほど、これが小僧の考えた航空艦隊の戦いという事なのだな。…いいだろう。そこまでやるのであれば、このワシも付き合ってやろう。だが小僧、その戦い方を嫌がる艦娘は多いぞ。そのような艦娘を、どのように抑えるのか…見物ではあるな。特に、第二水雷戦隊を率いる神通辺りは、煩かろうて。

 

…ふむ、どうやら山野の第二波攻撃が終了したようだな。こちらの対空攻撃による模擬弾の命中もかなりあったようで、山野の攻撃隊にそれなりに損傷は与えたようだが…こちらも被害は甚大のようだな。比叡と霧島は、その後の魚雷攻撃による命中も鑑みれば、間違いなく撃沈判定が出るだろう。それに…外周円の第四戦隊と第五戦隊も、ここから見ていた限りでは、半数…いや、5艦は脱落といったところか。

 

「敷島、判定は?」

 

「はっ、南郷提督。青軍の航空攻撃により、比叡、霧島は撃沈。第四戦隊の高雄と摩耶が撃沈、鳥海が大破。また第五戦隊の那智と羽黒が共に大破と判定します。」

 

「青軍攻撃隊の被害はどうだ?こちらは概算で構わん。」

 

「攻撃隊第二波のおよそ3割に撃墜判定、そして更に3割に撃破判定かと…」

 

相手の6割に損害と言ったところか。これで山野が使える航空攻撃は実質、残り一度。そして時間も考えれば、次の攻撃が今日最後の攻撃になろう。ワシは次の攻撃を最小被害で乗り切り、夜戦に賭ける形になるな。いくら相手の艦隊が優速とはいえ、夜戦であれば遭遇戦。完全に避け切る事は難しかろうて。それに第二水雷戦隊をはじめとした小僧の戦力は、積極的に夜戦を戦いたかろう。遭遇戦になった場合、小僧の力で静止出来るとは…少し考え難いわな。

 

「扶桑、少し数は少なくなってはおるが、砲雷撃戦に持ち込めば、未だこちらの勝ちは間違いなかろう。このワシが直接指揮を執る以上、小僧如きに遅れは取らんからな。とはいえ、今日中にあと一度は、先ほどのような航空隊による攻撃があろう。ご苦労だが、残存艦を纏めて、今一度輪形陣を編成してくれ。扶桑…この度の戦、お前には臨時旗艦として苦労をかけることになるが、最後までよろしく頼む。」

 

「南郷提督、了解いたしました。直ぐにとりかからせていただきます。提督の許で戦える事、扶桑はとても嬉しく思います。」

 

…未だ我が艦隊の士気は旺盛。例え時代が変わりつつあると言えども…小僧…そう簡単に楽はさせぬぞ。




ついに第一航空艦隊が、その圧倒的戦力を南郷提督に叩き付けました。この物語上では演習とはいえ、初めての航空機による戦艦への攻撃になります。そのため歴戦の南郷提督とはいえ、奇襲を許してしまう結果となりました。しかし流石は南郷提督。直に輪形陣に切り替えて、対航空戦の陣形をとったわけです。とはいえ、山野提督も負けておらず、完全に南郷提督の裏をかく形で、比叡と霧島を狙ってきた訳でして…。

山野提督は航空母艦の指揮官、そして南郷提督は戦艦の指揮官のため、お互いの価値観が違ったために起った出来事ではありますが、結果的に山野提督のラッキーパンチとなりました。しかし…未だ、南郷提督の艦隊の方が優勢です。ここからどうするのでしょうか…。
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