横須賀市内 レストラン 戦艦 三笠
「いらっしゃいませ、いつもありがとうございます。先日は、一番上のお姉さんも利用していただきまして…本当に感謝しております。」
「あ~、敷し…姉さんに伝えておくよ。ところで、ちょっと込み入った話があるんだ。悪いけど、個室を用意してくれないかね?」
「かしこまりました。それと、今日はお食事ですか?」
「あぁ、いつものを三人分お願いするよ。…いや…二人分でいい、この小娘には水だけいいさね。」
「BBA!私も食べたいデ~ス!」
ついにこのレストランまで、敷島姉さんに知られちまったかぃ…。ここなら敷島姉さんも知らないから安心して食事を楽しみながらサボる事も出来たが、こりゃ違うレストランを探さなくてはいけないって事かね…難儀な話だよ…まったく。ま、ここは個室もあるし、オーナーの爺さんは口も堅いから、敷島姉さんと入り口で会わないように気をつければ、まだ大丈夫かね…。
横須賀市内 レストラン 山野少尉
一番上のお姉さん…ね。という事は、姉妹が居てしかも二人以上居るという事だよな…。これまでの振る舞いからして、間違いなく戦艦のような大型艦の艦娘。しかも二人以上姉妹が居るって事は…!敷島姉妹かよ…。超大物じゃないか。敷島姉妹の三番目の初瀬様は先の深海棲艦との戦いで沈んでいるから…候補として考えられるのは、敷島様、朝日様…それと三笠様か。
それにさっきの会話で、一番上のお姉さんが…と店の人は言っていたから、今目の前に居る人は敷島様ではない事は確定。となると、朝日様か…。いや…『一番上の』と言っていたから、この人は三女より下。それに今日は我々新任少尉が着任挨拶をする日、間違いなく鎮守府の全艦娘には待機命令が出ている筈。にもかかわらず、命令違反をしてここで遊んでいても問題にならない人となれば…これが三笠様か…。運が良いのか悪いのか知らんが、着任前に三笠様とこうやって食事をする事になるとはな…。という事はもう一人の子は、三笠様が現在訓練している子…最新鋭の金剛姉妹…話方からして純粋な帝国の人間ではない…となると、長女の金剛さんか。
どうやら、ここが俺の正念場という事だな。どうも三笠様の話しぶりからして、今のところ俺の事を気に入ってくれているようだし、このまま上手に三笠様を指導艦として選ぶ事が出来れば…俺の夢である艦娘の司令官職も現実になる可能性があるのか。とはいえ、今はまだ三笠様とは知らないという事にして、これまでと同じように対応しないといかんな…。ここで対応を変えたら、間違いなくこちらが正体に気付いたという事がばれてしまうし、こちらの思惑まで知られる可能性が高い。それにしても…こんな高級店で美女と一緒に旨い物を喰えるはずが…今日は味が分からない昼食になりそうだ。
「ところで坊や、坊やは今日鎮守府に着任予定なんだろ?たしか…あの鎮守府では、新任少尉は最初に、指導してもらう艦娘の希望を出せるようだが、坊やはもう誰を希望するのか決めているのかぃ?」
向こうも、こっちがどれくらい自分の正体を掴んでいるか、探りを入れてきているな。ここで正直に『三笠様を考えている』と言えば、こちらが既に正体を知っているという事がばれる可能性がある…。今の段階では、無難な回答をしておいた方が良さそうだ。
「そうですね…。適うかどうかは分かりませんが、敷島様を希望しようと考えていますよ。兵学校の先輩の話では、敷島様はとても丁寧に指導をしてくれるそうですから。」
「少尉さ~ん、な~に馬鹿な事言っているデ~スか!敷島のB…(ガツッ)…痛いね、BBA!」
「ゴホンッ…あぁ、敷島ね…様ね…。たしかに、重箱の隅をつつくような、素晴らしく細かい指導を受けられるという話だね。坊やには合わないよ、止めておきな。」
どうも三笠様と敷島様は、あまり仲が良くなさそう…。いや、三笠様は敷島様を苦手としている…のかもしれないな。まさか、ここまで露骨に止めておけと言ってくるとは思わなかったな…。しかし場合によっては、三笠様に希望を出すために、敷島様を利用出来る可能性もあるという事か…。
「それでは、朝日様はどうですかね?兵学校の先輩の話では、朝日様は非常に勇敢な艦娘で、我々新任少尉を引っ張っていくような指導をしてもらえるとも聞いていますし…。」
「あ~、坊や。朝日ね…様も止めておきな!あんな『力が全て!』と思っているような艦娘に指導を受けたって、何の役にもたたないさね!…坊や、三笠様に指導を受けようとは思わないのかぃ?三笠様は先の戦いの英雄だし、坊やも英雄にはあこがれた口ではないのかぃ?」
三笠様…いきなり直球か…。ここは返答が難しいぞ。本当なら諸手を挙げて、『三笠様を指導艦として選びたい』とこの場で直接言いたい所だが、今までの三笠様の感じでは、どうも俺との会話を楽しんでいる節がある。となると、ここはまだ目の前の方が三笠様だという事を知らない振りをして…。嫌、待てよ。三笠様は俺との会話を楽しんでいるという事は、こちらから攻撃するという手もあるのか。となると…三笠様に直接攻撃するよりも、金剛さんをつつくという手もあるな…。
「そうですね…たしかに三笠様を希望したいところですが、たぶん無理なので止めておきますよ。先輩方の話では、三笠様は指導艦を引き受けていないようですし、なんでも今は新鋭艦の金剛さんの指導で忙しいと聞いた事があります。以前、兵学校で回覧された資料を見ただけなので、実際の所は知りませんが、金剛さんはとても可愛い子のようですから、おそらく三笠様はその子の指導で手一杯なのではないでしょうかね…。」
「Oh! 少尉さん! よ~くresearchしていますネ!たしかにわた…金剛さんは、very very cuteな艦娘ネ!」
「おだまり小娘!ほぉ…兵学校にはそんな資料が回っているのかぃ…なるほどね…。しかし坊や、三笠様を指導艦に選ぶことが出来れば、出世の糸口になるのではないのかぃ?失礼だが、坊やは恩賜組の将校ではないようだし…出世には強力な後ろ盾が必要になるだろう。駄目元でも、三笠様を希望してみたらどうかね?」
脈あり…ってとこだな。金剛さんの暴走に、三笠様は一瞬『しまった』というような素振りも見せたが、すぐに何食わぬ顔で自分を売り込んできているし…この場では回答を保留しても、実際の場で三笠様を希望すれば、受け入れてもらえる…という事か。小堀…悪いな。お前は敷島様を選ぶのだろうが、俺は三笠様を選ばせてもらうぞ。
「そうですね…実際に希望を出す時まで少し考えます。ご助言ありがとうございます。」
コンコン
「失礼いたします。お食事をお持ちしました。」
「おぉ。来たかぃ、来たかぃ。待っていたよ。」
これは…ビーフシチューか。たしかに三笠様が贔屓している店だけあって、美味そうな…というか、滅茶苦茶苦高そうなビーフシチューだよな。本当にこんなの奢ってもらっていいのか?流石に俺だって躊躇するぞ…。
「坊や、どうしたんだい。食べないのかい?ここのビーフシチューは絶品なんだよ。肉じゃがもいいんだが、やはり偶には本物のビーフシチューも食べたいもんさね。」
「あっ、いただきます。しかしその…恥ずかしい話ですが、こんな高級店は初めてでして、少し驚いていた次第で…。」
「まぁ、坊やには少し早かったかね。とはいえ、坊やも海軍で出世すれば、こういう店を普通に利用する事になるだろうさ。いずれにせよ、今日はあたしの奢りだ。冷めない内に早くお食べ。」
三笠様は、もっと厳しい人だと思っていたんだが、意外に気さくな人なんだな…。まぁ、折角勧められている以上、熱い内にいただくか。たぶん味は分からんだろうけど…それでも良い香りが漂ってきている事は分かるからな…。おっ、こりゃ美味いわ。これだけ緊張していれば、普通は味なんか分からない筈なんだが、それでも美味しいと分かるというのは、それだけこの料理が美味しいという事か…。
肉はフォークがスーッと入っていく程柔らかく煮込まれているし、このブラウンシチューも濃厚な味で全体的にグッと旨味が濃縮されている…素晴らしい味だな。そしてこのブラウンシチューを少し付けて食べる人参やブロッコリーも野菜の味とシチューの味が合わさって絶品。あっ、芋も入ってるのか。この芋をサクッと割って、ブラウンシチューをつけて食べると…これは病み付きになる味と食感だよな…。はぁ…俺の給料じゃ、そう簡単にこんな店には来られないだろうけど、時々来てみたいもんだな。…出来れば、金剛さんのような可愛い子を連れて…。流石に三笠様も一緒じゃ、緊張しちまうからな…。
「どうだい、坊や。なかなか美味いだろう。ただ…坊やはもう少し礼儀を学んだ方が良さそうだね…。いくら美味い料理とはいえ、こんな美女が目の前に居るというのに、食事に集中しちまうのは、あまり感心出来ないってもんだ。」
「BBA!ちょっとは自重するネ。美女は少尉さんの横に座っているだけで、目の前にはBBAしか居ないネ!」
「も…申し訳ありません。いえ…こんなに美味しい料理は初めてだったのでつい…。たしかに貴方のような美しい方を無視して、食事に集中してしまったのは、私の失態でした。お詫びいたします。」
しまった…。たしかに女性と一緒だというのに、会話もせずに食事を楽しんでいたら、これは完全にマナー違反だよな。まぁ、三笠様は笑って許してくれたようだけど。今回は完全に俺の失策だ。それにしても…金剛さんも勇気あるよな…。あの三笠様を婆呼ばわりしているんだからな…。
「ま、分かればいいって事さね。それと、そこの小娘。これが大人の美的感覚ってもんさね。お前のような小娘からしたら、あたしは婆になるかもしれないが、普通に見たらあたしは美女になるんだよ!覚えておきな!まぁ、あたしからしたら坊やもまだ坊やだが、それでもこの小娘とは違って、ちゃんと大人の価値観を持っているって事は、よ~く分かるよ。」
「BBAは、BBAネ!少尉サ~ン、食事が終わったらこんなBBAは放っておいて、私と遊びに行くデ~ス!最初は少し頼りない少尉さんだと思っていま~したけど、結構良い男ネ。私も気に入ったデ~ス!」
「小娘!何勝手な事言ってるんだぃ!あんたが男を連れて歩くなんて、まだ十年早いよ!この坊やはあたしのもんだ。…小娘が坊やにちょっかいを出す前に、今の内に出会い茶屋にでも連れて行って、既成事実でも…」
ブホッ!
何言ってるんですか、三笠様。ひょっとして、三笠様ってとんでもない駄目艦娘の可能性が…。あ~ぁ、隣の金剛さんも俺と一緒で食事中だったから、咽てるよ…。これ以上変な話に巻き込まれる前に、ここで勝負だな…。しかし、三笠様と話していると、こっちの調子まで狂いそうだよ。
「…あなたのような美しい方から、出会い茶屋に誘われるとは非常に光栄ですね…三笠様。」
横須賀市内 レストラン 戦艦 三笠
チッ、やっぱりバレていたかね。まぁ、金剛の小娘のせいでこっちの調子が狂わされたとはいえ、この坊やも優秀だという事のようだね…。どうやら、あたしの人物鑑識眼もまだまだ捨てた物じゃないようだね。
「坊や…いつから分かっていたんだぃ?」
「この店に入る際の、お爺さんの言葉ですね…。」
なる程、駅での小娘との会話であたし達が艦娘だという事を知り、ここのオーナーの爺さんの何気ない言葉から、あたしが敷島姉妹の末っ子だと結論づけたって事だね。それにも関わらず、あたしが三笠だという事を知らない振りをして、会話を楽しんでいたって事かぃ…。フンッ、まったく…可愛気がない程優秀だよ、この坊やは。しかしこんな坊やが恩賜組ではないってのも、変な話だね…本当に最近の兵学校はどうしちまったもんかね…。まぁ、これは鍛えがいのありそうな坊やだよ。
「坊や、さっきの話だが…指導艦の希望はあたしにしておきな。あたしがしっかり指導してやるさ。…ところで坊や?今日は新任少尉の着任挨拶の日ではなかったのかぃ?こんなところで、あたしに油を売っていて大丈夫なのかね?南郷の爺さんは、それはそれは時間には厳しいお方だ。」
「えっ?三笠様か金剛さんが、事情を話してくれるのではないのですか?」
フフフ…どうせそう考えていると思ったよ、坊や。だが、そうは問屋が卸さないよ。柔軟な思考と危機回避は優秀な指揮官の必須能力さね。早速坊やを指導してやるとするかぃ。
「ハンッ!なんであたしが坊やを助けてやらなくてはならんさね?危機回避は指揮官の必須能力だよ。自力でなんとかおし!」
「三笠様…まだ三笠様は少尉さんの指導艦じゃないネ…。厳しすぎますネ…。」
「…分かりました、三笠様。一応作戦はありますので…問題ありません。金剛さん、大丈夫ですよ。まぁ、見ていてください。」
フン、この坊やがどうやってこの危機を乗り切るのか、見物ってもんだよ。坊や…この危機を無事に乗り切ったら、その時はあたしがしっかり坊やを指導して、将来は鎮守府の司令官にでもしてやるさね、頑張るんだね。
横須賀鎮守府 司令室 山野少尉
「申告します!山野磯郎少尉、本日付で横須賀鎮守府に着任いたしました。」
「少尉…だいぶ着任時間が遅いようだが…。少尉の乗っていた列車だけ、何かトラブルでもあったのかね?」
この人が、先の戦いの勝利の立役者、軍神南郷平三郎提督…写真で見るよりも圧倒的な迫力があるな…。それに左右には…何度も写真などで見た事のある艦娘達…最先任の富士様、それに敷島姉妹、春日姉妹、香取姉妹、薩摩姉妹に河内姉妹か…。後ろは金剛姉妹だな…。金剛さん…いくら一番後ろに居るからといって、ここで俺に手を振ってきても、今は応えられないぞ…。どうやら、俺に無言の圧力をかけるために、この場に横須賀鎮守府の主力組を全て集めているようだが…この場をなんとか切り抜けん事には、俺の将来はないからな…ここは一世一代の博打を打つしかないって事か…。
「着任が遅くなり申し訳ありません、南郷提督。その…列車は無事に横須賀駅に到着したのですが、少し横須賀市内でトラブルがありまして…。」
「ほぉ、横須賀市内でトラブルがあったのかね。我が鎮守府のお膝元でそのようなトラブルがあるというのは、見過ごせんな。敷島、これは少尉から詳しく事情を聞かなくてはならんと思うが、どう思う?」
「はっ、提督。たしかに横須賀市内で帝国海軍の将校がトラブルに巻き込まれるとは、由々しき事だと私も判断いたします。少尉、詳しくそのトラブルの内容を話しなさい。」
南郷提督…何故か知らないけど楽しんでいる感があるな。大方、新任少尉が何を言い訳するのかお手並み拝見…と考えているんだろうな。それに流石敷島様、迫力あるわ…。三笠様…間違いなく、俺の対応を楽しんで見ているな…。ですが三笠様?今回のトラブルの原因は間違いなく貴方なのですから…道連れになってもらいますよ?
「その…敷島様…。大変申し上げにくいのですが…そちらに居る三笠様に出会い茶屋に連れ込まれそうになりまして…断るのに苦労した次第で…。あっ、そちらに居る金剛さんが、証人です。」
…ブッ
あっ、南郷提督が噴出した。それに周りの艦娘の皆さんも腹抱えて笑っているし。なんとか助かったか…って、金剛さん笑いすぎだろ。三笠様と敷島様はうつむいて小刻みに震えているけど…大丈夫だよな?
「…少尉、それは…ククク…申し訳ないことをしたようだ…ハハハハ。しかし少尉、三笠に気に入られるとは、余程のことだぞ…ククク。いや、理由はよく分かった。たしかにこれは…その…ククク、非常に難しいトラブルだったようだな…ハハハハ。敷島そうだな?」
「少尉…私の妹が大変申し訳ない事をしました。三笠の姉として、謝罪させていただきます。…その埋め合わせという訳ではありませんが、少尉の指導艦の希望については、私の責任において希望を叶えましょう。どなたを選びますか?丁度ここには全ての主力艦の艦娘が揃っています。この場で決めてください。」
南郷提督も敷島様もこういう対応をとったという事は、俺の遅刻については、不問という事だよな。しかも敷島様は、俺の希望を叶えてやると言ってくれているし、ここは三笠様を選ぶ…いや、ここで俺からお願いしたら、三笠様の事だ。へそを曲げて『嫌だ!』と言いかねんな…。南郷提督の前だから今は何も言ってこないが、さっきから俺を睨みつけているし…。ここは賭けになりそうだが…今日の俺は運が良さそうだから、もう一度賭けてみるか…俺の将来を。
「敷島様、ありがとうございます。それでは…敷島様を希望したいと思います。」
「…私ですか。希望を叶えると言いましたから、少尉の希望を叶えましょう。それでは少尉の指導艦は、」
「坊や、何勝手な事言っているんだぃ!坊やの指導艦はあたしだよ!なに敷島姉さんに媚売っているんだぃ!ほら、早速指導してやるから、さっさと来るんだ。まったく…ここまであたしを虚仮にしてくれた坊やは初めてだ!まずは礼儀作法からキッチリ教えてやるから、覚悟しな!金剛、お前も来るんだよ。これから二人にはたっぷりお説教だよ!爺、これでこの坊やの指導艦の件は終わりだ。いいね!?」
いててて…三笠様、耳引っ張るなよ…。ちょっと悪ふざけが過ぎたかもしれんが、そんなに怒らなくても…。金剛さんも三笠様に首根っこつかまれて、俺と一緒に部屋から引きずり出されそうだし…。指導艦の件は、俺の希望通りの形になったといはいえ、いきなり説教かよ…今回の件は、三笠様が原因なんだからさ…。
「少尉、そういう事だ。三笠が少尉を選んだ以上、少尉の指導艦は三笠で決まりだ。…少尉、横須賀鎮守府にようこそ。明日からしっかり頼むぞ。下がってよし。」
くそ…三笠様が指導艦にはなったけど、これかなり拙いんじゃないのか?…いてぇよ、三笠様、そろそろ耳を引っ張るのは止めてくれよ…。
横須賀鎮守府 司令室 南郷提督
「敷島、お前には悪いが、三笠の希望が最優先だ。残念だが…お前では、あの小僧は育てられんよ…。それにあの小僧…」
あの小僧、最初から三笠を指導艦に選ぼうとしていたな。しかも敷島と三笠の関係を知った上で、敷島を当て馬に使ったか。たしかに、あそこで三笠を小僧の方から選んでいたら、三笠はへそを曲げて色々と条件をつけていただろうが…三笠の方から小僧を選ばなくてはならん状況を作りおったわ。これは将来が楽しみな小僧が来たな…。
それにしても…三笠の眼力未だ衰えず…と言ったところか。あのような面白い小僧を、鎮守府に来る前に自分の手元に確保するとはな。それに、あの小僧は敷島では育てられんだろう…。敷島も優秀な艦娘だが、敷島はルールに沿った最適な行動を取れても、ルールを越える事は出来ん。しかし三笠は…。
「あの少尉、最初から三笠を指導艦にするつもりでしたね…。この私を当て馬に使ってくるとは…いい度胸です。これは私もしっかり目をかけてやらないと…いけませんね…。」
「おぃおぃ、敷島の姉貴…何怖い顔してんだよ。あの三笠が新任少尉を気に入るなんて、珍しい事じゃないか。こりゃ、しばらく楽しめそうだ。」
「朝日…あなたにとっては単純で良いかもしれませんが、あの少尉はなかなか強かですよ。あなたも気をつけなさい。」
ふむ…やはり敷島も気付いていたか。そして…どうやら敷島は、あの小僧の壁になるつもりだな。小僧…敷島の壁は高いぞ。まぁ、あの小僧が私のように鎮守府の司令を目指すのであれば、敷島の壁くらいは越えてもらわなくてはな…。あの小僧がどうやって敷島を越えるのか…楽しみではあるな。これは当分、私も現役に留まらなくてはならんという事か…。
三笠様の、金剛さんの暴走に対してついつい声に出してしまった失言…これを上手に利用して山野少尉は危機回避に成功しました。もっともその後、間違いなく三笠様に『教育的指導』を受けているような気がします。そして金剛さんも一蓮托生で指導を受けている気が…。とはいえ、山野少尉にとっては自分の思い通りに事は進んでいますから、現時点では大幅に黒字になっているような…。
そして流石に南郷提督や秘書艦の敷島様ともなると、山野少尉の小細工如きは簡単に見破ったようで…特に当て馬に使われた敷島様の怒りは…この後どうなるんでしょうかね^^;。また横須賀鎮守府には、日本海海戦の第一艦隊第一戦隊組以外にも、金剛型の前クラスになる香取姉妹、薩摩姉妹、河内姉妹が居る事になっていますので、現時点での最新クラスの戦艦が全て揃っているという事に…やはり華の横須賀鎮守府にふさわしい陣容になっている感じが…。
なんとか三笠様に受け入れてもらえた山野少尉ですが、今後どうなっていくのでしょうか…。これから一年間、間違いなく三笠様と金剛さんに振り回される未来が待っていそうですw
今回も読んでいただきありがとうございました。