鎮守府への道   作:ariel

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前話で、ついに三笠様を指導艦として選ぶ事に成功した山野少尉ですが、それと引き換えに敷島様の怒りを買うことに…。」


第三話 横槍

横須賀鎮守府 食堂  山野少尉

 

 

「おい、山野。貴様どうしたんだ。着任挨拶の際に居なかったから心配したが、何かあったのか?無事に南郷提督には着任挨拶出来たのか?」

 

「あ、小堀か。すまん心配をかけたようだ。ちょっとトラブルがあったんだが、大丈夫だ。無事着任したよ。」

 

すまんな小堀。心配をかけたようだ。だが…今回の話は、小堀に言っても信用してもらえんだろうな…。運に恵まれたとはいえ、この俺の指導艦が三笠様になったんだからな…。あの後、金剛さんと一緒にこっぴどく三笠様には説教されたけど、今考えても幸運以外の何物でもないよな…。

 

「そういえば、山野。貴様、指導艦は決まったのか?俺は敷島様が指導艦になったぞ。貴様は誰になったんだ?」

 

「それがな…小堀。三笠様になったよ。」

 

「なにっ!おぃ、山野やるじゃないか!貴様、三笠様が指導艦になるなら、将来の司令官職は固いぞ!やったな!」

 

小堀、お前は本当にいい奴だよ。兵学校時代もそうだったが、本当に俺の幸せを喜んでくれているからな…。俺も良い友人をもったもんだな。ま、周りの他の恩賜組の奴等は、小堀と違って、俺の事を睨みつけているが。

 

「Hey! 少尉さん。ここに居たで~すか。三笠様がお呼びネ。直にくるネ!」

 

三笠様…一応今は食事の時間なんだけどな…。あれ?小堀の奴どうしたんだ?何か固まってるけど…。あぁ、そうか。金剛さんは俺と一緒だったから、小堀の着任挨拶の時に居なかったのか。仕方ない、紹介してやるか…。

 

「お…おぃ、山野。この可愛い子は知り合いなのか?おぃ、紹介しろよ!貴様と俺の仲だろっ!」

 

小堀…お前と言う奴は…。金剛さんもびっくりしているじゃないか。いや…可愛いと言われて喜んでいるのか…。

 

「あ…あぁ、小堀。この人は、金剛さんだよ。最新鋭艦の金剛姉妹の長女だよ。」

 

「Oh…こっちの少尉さんも、頭が良さそうな少尉さんネ!少尉さん、私は英国で生まれた帰国子女の金剛デ~ス!よろしくお願いしま~す!」

 

「おぃ!なんでお前が、金剛さんと知り合いなんだよっ!ずるいぞ、山野!こ…こちらこそよろしくお願いします、金剛さん。自分は小堀と言いまして、そこに居る山野の親友です。今度是非お茶でも…」

 

…おぃおぃ、いくら金剛さんが可愛いからと言って、いきなり口説きにかかるなよ…まったく。そんな事より、三笠様に呼ばれているんだから、急いでいかないと…また怒られるじゃないか。

 

「小堀、そんな事は後だ。金剛さん、三笠様が呼んでいるんですよね?急いで行きましょう。小堀、また後でな!」

 

「山野…お前、自分だけ美味しい思いしやがって…覚えていろよ!」

 

 

「Hey! 少尉さん。少尉さんのお友達もfunnyな人ですネ!」

 

「あ~…金剛さん。小堀は俺の知り合いで…ああ見えて、なかなかいい奴ですから、今度話を聞いてやってくださいよ。」

 

「OKネ。あの少尉さんは、私とteaを飲みたいと言っていましたネ。今度私達姉妹のtea timeに招待してあげま~す。」

 

小堀…俺に感謝しろよ。お前、金剛姉妹のお茶会に招待してもらえるようだぞ。これは貸しだからな。まあ、敷島様が指導艦になっているお前にそんな時間があれば…の話だけどな。

 

 

 

戦艦寮 三笠私室  山野少尉

 

 

「失礼します、三笠様。あれ?食事中でしたか。また後で出直したほうが良かったですか?」

 

三笠様が呼んでいるという事で急いで来たが、三笠様は食事中か。しかし…当たり前とはいえ、俺達少尉の食事とは段違いの豪華な食事だよな…。しかも凄い量じゃないか…こんなに食べるのか?

 

「あぁ坊や、やっと来たかぃ。とりあえずそこに座って、食事に付き合いな。」

 

「え?いや…その…三笠様、私は既に士官食堂で夕食を食べていまして…」

 

「坊や…坊やは時々礼儀がなっていないね…。女性に食事を誘われたんだ。無理してでも付き合うのが紳士というものさね。それに…士官食堂の食事では美味しくないだろうから、このあたしが気を利かせて、坊やを呼んでやったんだ!ありがたく食べていきな!」

 

なんて迷惑な事を…。いや、たしかに三笠様や金剛さんと一緒に食事が出来るのは嬉しいし、こんな豪華な食事が食べられるのは嬉しいけど…こっちは丁度夕食食べたばかりだよ…。とはいえ、ここまで言われて断る訳にもいかんか…仕方ない。少し無理してでも食べるか。なるべく肉類は止めて…

 

「坊や…まだ若いのに、肉を食べないでどうするんだぃ!しっかり食べないと駄目だよ。」

 

三笠様…絶対に分かってやっているよな…。わざわざローストビーフの塊を俺の皿に置きやがった…。くそ…こうなったら食べてやるよ。

 

「三笠様、あまり苛めていたら、少尉さんに逃げられますネ…。敷島のBBAの所に逃げられたらどうするですか…。それと、早く用件を少尉さんに話すデ~ス。」

 

「フンッ、多少はさっきの仕返しをしなきゃ、このあたしの気が治まらないってもんだ!まぁいい。坊や、食事が終わったら、他の艦娘の所に挨拶周りをするから準備しな。とりあえず、坊やの所有権はあたしにあるという事を、少なくとも他の戦艦娘達に教えておかないとね!まぁ、あの司令部での宣言で分かっているとは思うが、念のためだよ。」

 

いや…あれだけ南郷提督の前で大騒動になったんだから、今更挨拶しなくても問題ないだろうに…。まぁ、きちんとした形で挨拶をするというのは重要だと思うが、三笠様の言い様では、とてもそんな感じには聞こえないのがな…。

 

「三笠様…要は手に入れた若い少尉さんを、他の艦娘に見せびらかしたいだけデ~スネ。そんな事しなくてもサ~、誰も三笠様のものに手は出さないネ…。」

 

「う…うるさいよ、小娘が。こういうのは、きちんとしておかないと、後から大変な事になるんだ!」

 

おぃおぃ…どうなっているんだよ。まさか自分が指導する事になった俺を見せびらかせるためだけに、俺は呼ばれたのか?…って、流石にそれはないな。三笠様は冗談ぽく言っているが、本当は俺の事を他の艦娘に正式に紹介して、俺の顔を売る事が目的か…。たしかに横須賀鎮守府の艦娘は現在の帝国海軍の主力組。その主力組の面子に顔を売るという事は、いろいろな意味で重要だからな…。三笠様が俺の指導艦になったのは、まだ今日のことだが、流石に動きが早い。

 

「三笠様…ご配慮感謝いたします。どうぞよろしくお願いします。」

 

「フンッ、流石に坊やは、小娘とは違ってよくこの事の意味が分かっているじゃないか。金剛、お前もこの坊やくらいには賢くなるんだね。そうじゃないと、この坊やが司令官になった時に、使ってもらえなくなるよ?」

 

「私はもう十分賢いデ~ス!少尉さんが司令官になったら、必ず少尉さんは、私を少尉さんの鎮守府に連れて行ってくれるネ!期待してるネ、少尉さん!」

 

ま…本当に将来俺が鎮守府の司令官になれたら…金剛さんは是非連れて行きたいよな。なんせ、俺が一番最初に会った艦娘でもあるし…。

 

 

 

戦艦寮 富士私室  山野少尉

 

 

「さぁ坊や、準備は出来ているね。それじゃ、最初は富士さんの所から挨拶に行くよ!富士さんは、この鎮守府の最先任さね…礼儀には気をつけるんだよ。」

 

富士様か…たしか三笠様と同じ、前大戦の英雄だよな…。今は戦艦から海防艦に変更されたとはいえ、未だに戦艦寮に居るという事は、扱いは戦艦と全く変わらず…って事か。さっき南郷提督の所で見た感じでは、すごくおっとりした感じの方だったけど…この鎮守府の最先任という事は、三笠様でも気を使わなくてはいけない艦娘…。俺も気をつけたほうが良さそうだ。

 

「富士さん、三笠だよ。ちょっといいかい?」

 

「入りなさい、三笠。…おや三笠、お気に入りの少尉さんを、私に見せびらかしに来たのですか?別に私は、三笠のお気に入りの子を取ろうとは思っていないですから、安心していいですよ…フフフ。それにしても、三笠にもようやく、指導艦として指導したいと思える子が来てくれたようで、安心しましたよ。少尉さん?こう見えても三笠は、とても面倒見の良い子です。しっかり指導を受けるのですよ。」

 

「はっ、富士様。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」

 

流石は横須賀鎮守府の最先任の富士様だよな…。三笠様とは違って物静かだけど、迫力は三笠様と同じか…。なんと言うか、逆らったら拙い…というのが雰囲気だけでも分かるんだから、海防艦になったとはいえ、やっぱり大した方だよな…。

 

「富士さん、あまりからかわないで欲しいね…まったく。坊やが迷惑かけるかもしれないけど、しばらくの間よろしく頼むよ。」

 

「はいはい、分かりましたよ、三笠。それと三笠?あまり少尉さんを苛めていると、敷島だけではなく、そこの金剛にも少尉さんを取られてしまいますよ。気をつける事です。」

 

「フンッ。このあたしが、そんなヘマするもんかぃ。さぁ、坊や次に行くよ。」

 

 

はぁ…挨拶周りもようやく終わり…いや、まだ一人残っているよな…。しかし、流石は英雄艦揃いの横須賀鎮守府。どの戦艦娘も、面白そうな…というか、一癖も二癖もありそうな方ばかりだよな。それに、金剛さんの妹達もみんな美人ばかりだし…特にまだ進水だけで就役していないみたいだけど、物静かな榛名さんは美人だったよな…

 

ガツッ

 

いてっ…金剛さん、蹴飛ばすなよ…。

 

「な~に惚けた顔してるネ!my sister達を紹介してから、少尉さんの顔はずっとだらしないネ!少尉さんには、私がついていま~す!浮気は駄目ネ!」

 

「小娘が何を言ってるんだぃ、まったく。それに坊やも坊やだよ。とりあえず、そのだらしない顔を少しは引き締めな。最後は敷島姉さんの所に挨拶にいくんだよ。そんな惚けた顔してたら、敷島姉さんに何言われるか分かったもんじゃない…。」

 

 

 

戦艦寮 敷島私室  戦艦三笠

 

 

最後は敷島姉さんのところかぃ…一番やっかいなところが最後になっちまったね…。まったく…敷島姉さんは変に真面目なところがあるから、本当にやっかいだよ。あたしも今回の騒動の後、敷島姉さんには嫌味を言われるし…あぁ、思い出したらまた腹がたってきたよ。それもこれも、全てこの坊やと金剛の小娘が悪いんだ!はぁ…行きたかないけど、ここまで来たんだ、入るしかないさね…。

 

「敷島姉さん、三笠だよ。入るよ。」

 

「三笠…もう少し早く少尉を連れて挨拶に来ると思っていましたが、遅かったですね。私の所は最後ですか?」

 

まったく…やり難いったらありゃしない。しかし敷島姉さん、坊やに対しても睨みつけるような表情をしているようだが、もう坊やと何かやりあったのかね?あの司令室での後、坊やと敷島姉さんに接点はないと思うんだがね…。

 

「敷島様、この度三笠様に指導を受ける事になりました山野磯郎です。今後ともよろしくお願いします。」

 

「山野少尉、三笠を最初から指導艦として選ぶつもりだったのならば、素直に最初から三笠を指名すれば良かったのです。当て馬として私が使われるのは、少々不愉快でしたね…申し開きはありますか?」

 

なるほどねぇ。たしかにあの場で、坊やの方からあたしを指名していたら、あたしは間違いなくごねていただろうね。それで敷島姉さんを当て馬に使って、あたしから指名させたという事かぃ。坊やもなかなか策士だね…ますます気に入ったよ。さて坊や、敷島姉さんは御怒りだよ?どうするんだぃ?

 

「敷島様、不愉快な思いをさせてしまい、大変申しわけありませんでした。申し開きはございません。」

 

「山野少尉、素直に謝罪をしているようですから、謝罪は受け入れますが…以後気を付けるように。それと…少尉はとても優秀な成績で兵学校を卒業されたようですね。勝手ながら少し調べさせてもらいましたよ。いえ…他意はないのですが、この三笠が気に入ったようですから、私も少し興味をもちましてね。将来の目標は…艦娘を指揮する鎮守府の司令官職ですか…。」

 

ほぉ、素直に頭を下げたかぃ。たしかに敷島姉さん相手なら、余計な小細工はしない方が得というもんさ。撤退のタイミングはわきまえているって事かぃ。しかし…少しやっかいな事になったね、坊や。完全に敷島姉さんからマークされちまってるよ。しかし敷島姉さんも流石に動きが早い。もう坊やの事を調べたのかぃ。

 

「敷島様、私は恩賜組ではないのですが。」

 

「たしかに…表面的に見ればそのようですね。しかし…少尉、どうも成績に大きな偏りがあるようですが…。兵術、軍政学、統率学、軍隊教育学そして精神科学、どれも素晴らしい成績です。その反面、航海術、水雷術のような現場指揮官に望まれる学問は並より少し上…砲術はよろしいようですが…。なかなか面白い適正をお持ちのようですね。」

 

…そういう事かぃ。道理であたしの直感にピンと来た筈だよ。南郷の爺と同じじゃないかぃ。実際に艦娘と共に戦うとなると話は別だが、現場であれ艦娘全体を指揮するのであれば、直接大砲を撃ったり魚雷を放つ必要はないからね。そういう意味では、坊やの適正なら、艦娘を指揮するにはうってつけじゃないか。あたしの眼力もなかなかのものさね。

 

「山野少尉、先程の不愉快な件は水に流しましょう。そしてその上で提案です。私を指導艦として改めて希望を出しなさい。今ならばまだ秘書艦の権限で指導艦の変更は可能です。三笠の指導を受けるよりも、私の指導を受けた方が少尉の将来には有益になりますし、将来の地位固めの力にもなるでしょう。」

 

「敷島姉さん、何言ってるんだぃ。この坊やはあたしのもんだよ。第一敷島姉さんに、この坊やは育てられないよ!」

 

敷島姉さん、いきなり何言い出すんだぃ!あたしが指導艦になるともう決定しているんだ。いくら姉さんでも、邪魔はさせないよ。

 

「三笠、私は山野少尉に直接尋ねているのです。あなたは黙っていなさい。」

 

冗談じゃないよ!こんな事を言われて、黙っていられる訳ないじゃないか。坊や、坊やからも敷島姉さんに、『三笠の方がいい』とガツンと言ってやるんだ。

 

「敷島様、一つ伺いますが…この場で私が敷島様を選ばなかった場合、私の身にどのような事が起こるのでしょうか…。」

 

「…そうですね。あくまでも仮定の話になりますが…私はこう見えて嫉妬深い女ですから…その私の誘いが断られたとなりますと、私はこの事をずっと覚えているでしょうね。そして…山野少尉が将来、艦娘の司令官になるかもしれない時、全力で阻止をするでしょうね…。これでも、私も艦娘の司令官を決定する際の会議では一票を持っていますし…それに、それなりに私も顔は利くのですよ?」

 

クソッ…ここまで敷島姉さんが強硬に追いつめてくるとは予想外だよ。いくら将来の事とはいえ、ここで敷島姉さんの票が反対に回るとかなり拙い事になるね…。将来、坊やを司令官にする際の会議で敷島姉さんの票が反対に回れば、自動的に朝日姉さんも反対、そしてそれに連動する形で他の票も反対に回る恐れがある。だからと言って、ここで坊やの指導権を放棄なんかしたくないし…これは少し困った事になったよ…。

 

「そうですか…敷島様。それでは…私はそのまま三笠様を指導艦として選びます。」

 

「山野少尉、自分が言っている事の意味は理解していますか?」

 

「えぇ、これ以上ない程正確に理解しているつもりです…敷島様。」

 

「そうですか…。それでは、残念な事ですが、私から言う事はこれ以上何もありません。さがりなさい、少尉。」

 

坊や、よく言い切ったよ!流石のあたしも、今回は坊やの物言いに少しスカッとしたさね。金剛の小娘は敷島姉さんの圧力に怯えていたが、坊やは流石にあたしが見込んだだけの事はあるね。とはいえ…坊や、今回あたしを選んだ事で、間違いなく司令官職を得るためには不利になると思うんだが、その事は考えているのかね…。

 

 

 

戦艦寮 三笠私室  戦艦三笠

 

 

「坊や、今回は褒めてやるよ。あの敷島姉さんに、新任早々よくあれだけ喧嘩を売ったもんさね。…しかし、今後の事はちゃんと考えているのかぃ?」

 

「えぇ、三笠様。一応将来の事も考えた上での判断です。問題ありません。」

 

一応考えた上で、敷島姉さんの誘いを断ったという事かぃ。まぁ、この坊やが『考えた上で』と言っている以上、勝算は実際にあるのだろうが…本当に分かっているのかね…敷島姉さんの力を…。

 

「坊や、考えたというのは分かったが、敷島姉さんの力を本当に理解しているのかぃ?坊やが考えているより敷島姉さんの影響力は大きいんだよ?…そうさね、おそらく敷島姉さんが反対すれば、間違いなくそれだけで半数の票は反対に回るよ?」

 

「そうネ、少尉さん。敷島のBBAは、影響力だけは大きいネ!But, あそこまでperfectに少尉さんが敷島のBBAに喧嘩を売った事には、私も気分がいいネ~!」

 

「金剛さん大丈夫ですよ。それに三笠様ともあろう方が、何を言っているのですか。半分が反対に回るのであれば…切り崩し甲斐があるという物ですよ。それに…私がそこまで駒を進める事になるのは、まだもう少し先になりますし、敷島様程の大物になれば、少なくともそれまでは、少々の嫌がらせはしてきたとしても、本格的に私の邪魔をしてこないでしょう。そして私が最後の階段をあがろうとする頃…、敷島様の影響力が今と同じだけ残っている…とは、あまり考えられませんね…。」

 

ククク…坊や、本当に大したもんだよ。切り崩し甲斐があると来たかぃ。それに…たしかに坊やが言う通り、坊やが司令官候補になる頃には、敷島姉さんの力も今ほどはないと考えるべきだろう。逆に言えば、あたしの影響力も衰えていると見るべきなんだろうが…。とはいえ、その頃にはこの小娘だって、それなりに影響力を持っているだろうし…坊やは、この小娘の姉妹達の四票は確保出来ると算盤を弾いている可能性もあるね。ま、敷島姉さんもその辺りの事は理解した上で脅しをかけてきたと見るべきだろうが…敷島姉さん、賭けに失敗したね。慣れない事はするもんじゃないよ。

 

 

 

戦艦寮 敷島私室  戦艦敷島

 

 

どうやら…賭けに失敗したようですね。やはり慣れない事はするものではありません…。新任少尉が相手ですから、私の脅しでも七割程の勝率はあると踏んでいたのですが、なかなかどうして、あの少尉は手強かったですね。やはり三笠が見込んだだけの事はある…という事ですか。まだ完全に諦めるつもりはありませんが、現時点であの少尉を自分の影響下に置くチャンスに失敗した以上、三笠に全てを持って行かれる可能性が高いですね。三笠があそこまで贔屓している以上、間違いなくあの少尉は将来、艦娘の司令官候補になるでしょうから…。

 

しかしあの場面で、あそこまで明確に拒否をしてくるとは思いませんでした。自分の将来を賭金にしているのですから、もう少し慎重に動くと考えたのですが…。そういえば、兵学校の報告書には『賭博癖アリ』とありましたか。賭けに慣れているあの少尉と、賭けに慣れていない私では、最初から勝負は決まっていたのかもしれません。

 

とはいえ…、自分の夢や将来を掛金としている以上、あの少尉は全力で私の影響力を削ぎにかかる事は間違いありませんね。それに、あの少尉が何もしないとしても、あの少尉が最後の階段を上る頃、私の影響力が今ほど残っている事はないでしょう。おそらくそこまで読み切っての判断だと思います。しかし…それでも私は、あの少尉の壁として最後まで立ちはだかり、次世代の司令官がそれを乗り越えていく姿を見守らなくてはいけません。それが、南郷提督の秘書艦として…そして…旧世代の代表としての私の最後の任務になるのでしょうから。流石にこのような役目を三笠に押し付けるわけにもいきませんし…。

 

南郷提督ではありませんが、自分の鎮守府を持つという事は、そこに居る全ての艦娘に対して責任を持つ事…。初瀬が沈んだ時の南郷提督の様子をすぐ側で見ていた私は、その事を誰よりもよく分かっています。ですから、私程度の壁が越えられないようでは、鎮守府の司令官としての能力などある筈がありません。少尉…あなたがどのように私を超えていくのか、楽しみに待っていますよ。

 




史実の敷島は、敷島型一番艦として三笠と共に日露戦争で活躍していますし、一時的とはいえ連合艦隊の旗艦も勤めていますので、この話では三笠ではなく、姉の敷島に南郷提督の秘書艦役をしてもらいました。そしてそれに伴い、敷島の性格もこのように決まりました。とはいえ…間違いなく損をする性格です^^;。

そして今回の話の最終部分でもありましたように、この物語の敷島様は、内心では山野少尉のよき理解者であり途中まではサポートするのでしょうが、最後は山野少尉が超えなくてはならない壁として行動する事を決意したようです。とはいえ、この第一章は山野少尉も一介の少尉ですから、敷島様もこの時点では何も手は出さないでしょうし、ギャグ要員になりそうな気も…w

これは私自身の性格でもあるのですが…やはり敷島様のような主人公のある意味敵役を書いている時が一番楽しい時間でもありまして…w。今後も敷島様には活躍してもらわなくては…と強く思っていますw

今回も読んでいただきありがとうございました。
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