鎮守府への道   作:ariel

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季節は夏に移り、山野少尉も横須賀鎮守府の生活に慣れてきたようですが、いろいろとやらかしているようで…


第四話 夏の嵐

横須賀鎮守府 山野少尉

 

 

「坊や、何を抵抗しているんだぃ!坊やは賭けに負けたのだから、今日はしっかりあたしをエスコートしな!金剛、お前はお留守番だよ!」

 

「Noネ、三笠様!今回は私がhelpしたから、三笠様は少尉さんに賭けに勝ったですネ!私も今回、少尉さんにエスコートしてもらう権利がありマ~ス!」

 

くそ…グルだったのかよ…。道理で今回のポーカー、俺だけ役が来ない訳だ。まさかディーラー役の金剛さんがイカサマしていたとはな…。それにしても三笠様…イカサマした上で、俺に奢らせるってどういう事だよ。たしかに今回のポーカーで負けた方が昼飯を奢る事になっていたけど、イカサマはノーカウントだろ!

 

「いや…三笠様?流石にイカサマしておいて勝ったはないと思うのですが…。」

 

「坊や、甘いよ。イカサマが見抜けなかった坊やが悪いさね。それに今回は…まぁ、罰みたいなもんだ。さぁ、いいから早く外出するよ。今日は何を食べようかね…久しぶりにあのレストランでビーフシチューもいいし…迷うところだね…。」

 

罰ってなんだよ。俺は何も悪い事してないぞ…たぶん。それにあんな高いレストランで奢らせるなよ。しかもこのままいけば、三笠様だけじゃなくて、金剛さんまでついて来るんだろ?これじゃ、折角この間、小堀からポーカーで巻き上げた金が全部なくなりそうだよ…。クソッ…ついてねぇ。

 

 

 

横須賀市内 レストラン  山野少尉

 

 

「いらっしゃいませ、いつもありがとうございます。今日も三人ですね、三笠様。」

 

「ん?三笠じゃないか。三笠も今日はここで昼か?それに金剛と少尉もか。少尉、筋肉痛は治ったか?ハハハハ」

 

「あら三笠…それに金剛に…少尉まで。相変わらず仲が良いようですね。」

 

ゲッ…なんで朝日様と敷島様が居るんだよ。いや…三笠様も露骨に嫌そうな顔してるし、金剛さんに至っては『Nooo…敷島のBBAがいま~す』なんて言ってるけど…俺だって勘弁して欲しいよ。ただでさえ、昨日の訓練でも朝日様にしごかれて筋肉痛になっているってのに、こんな所で朝日様に会うなんて本当に今日は厄日だよ…。

 

それに敷島様もかよ…。首席の小堀でさえ、敷島様に細かく指摘されまくって最近辟易としているし、俺に至ってはどれだけ厭味を言われている事やら…。ただでさえ今日は昼食を奢らされる事になって気分がどんよりしているってのに、一番会いたくない二人に会うなんて、本当についてねぇ。

 

「敷島姉さんに、朝日姉さんまで…今日は厄日だよ…。爺さん、あたし達は個室で食べさせてもらうよ。」

 

「申し訳ありません、三笠様。生憎今日は個室が満員でして…。その…敷島様とご相席でしたら、直にご案内出来ますが…。」

 

よっしゃ!運が向いてきたぞ。三笠様の事だ、敷島様と相席しかないと言われれば、この店での食事を諦めるぞ。とりあえず俺の懐に優しい『安い店』に連れて行くか。

 

「三笠様、今日はこの店諦めて、違う店に行きませんか?近くに『安い店』を知っていますので、そこで今日は…。」

 

「三笠、それに金剛に少尉、私は相席でも構いませんから、どうぞ。」

 

「嫌なこったぃ!敷島姉さんが構わなくても、あたしが構うんだよっ!折角今日は、坊やに奢ってもらう筈がこんな事に…。」

 

いいぞ~、この調子なら間違いなく安い店に移動だ。助かった…。

 

「ん?なんだ?少尉が三笠と金剛に奢る事になってるのか?しかもこんな高い店でか?…どうせ、三笠と金剛が何かズルして少尉に奢らせる事になったんだろ?全く三笠も困った奴だな。少尉?ここで食べるなら、あたいが出してやってもいいぞ。」

 

なにっ!朝日様、どういう風の吹きまわし…って、朝日様は意外にいつも気前がいいんだよな。朝日様を指導艦としていない俺にも、朝日様担当の訓練終了後に結構色々奢ってくれたりするし。さぁ…どうする。敷島様+朝日様と相席で俺の懐に負担のかからない昼食にするか、厭味は言われなくても多少俺の懐に負担のかかる食事にするか…究極の選択だな…。いや、ここは俺の懐具合を守る方に…。

 

「三笠様、ここで食事にしましょう。神様、仏様、朝日様。ご馳走様です。地獄で仏とはまさにこの事、本当に感謝します。さ、さ、三笠様、金剛さん行きましょう。」

 

「坊や…これからは、男の甲斐性という物を教えないといけないようだね…。ついでにプライドという言葉もね…。」

 

「少尉さん…悪魔に魂売ったネ…。」

 

いやいや、薄給の俺にこんな高い店で奢らせようとする方が、どうかと…。三笠様は不本意そうな顔で、金剛さんはため息つきながら席に座った…のは良いんだけど、敷島様の正面だけ空けて座るなよ…。どう考えても、俺に対する嫌がらせ以外の何物でもないだろう。…ただでさえ、俺は敷島様には睨まれているというのに…。

 

「少尉、いつまで立っているのですか。早く空いている席に座りなさい。私の対面に座ることがそれ程嫌なのですか?それは、女性に対してとても無作法だと思いますよ。あなたが無作法な行動をすれば、指導艦である三笠が恥をかくという事を、少し考えた方が良いですね。」

 

さぁ…早速厭味が飛んできましたよ。いくら朝日様が代金を出してくれるとはいえ、今回の選択は失敗したかもしれんな…。しかし俺の懐を守るためにも、ここは耐えるしかない…。まぁ、三笠様も金剛さんも道連れという事だし…多少は敷島様の厭味も俺以外に分散するだろからな…。仕方ない…座るか。

 

 

 

横須賀市内 レストラン  戦艦敷島

 

 

それにしても…三笠には本当に困ったものです。本来、私達指導艦は、新任少尉の訓練など任務に関わる事について指導はしますが、休暇中の人間まで拘束し連れ歩くような事はしません。私も、まだまだ経験が必要とはいえ、自分が指導している首席の小堀という少尉は気に入っていますが、流石に休暇中は自由にさせています。しかし三笠は、休暇中でも少尉を傍に置いているようですね。それだけこの少尉の事を気に入っているのでしょうが、来年の春には新任地への異動があるのですよ…その事を分かっているのでしょうか。

 

そして…この少尉が横須賀鎮守府に着任して以来、鎮守府の風紀が乱れている気がします。先日も鎮守府内に大量の猥褻な本が持ち込まれたという事案がありました。そして間違いなくその首謀者はこの目の前の少尉だと私は考えています。私も、現在指導している金剛の妹の比叡と共に、鎮守府の風紀粛清を行っているのですが、この少尉には色々と裏をかかれているようでなかなか尻尾が掴めません。確たる証拠がなく、私の巡回に引っかかったのは別人ばかりのため、この少尉を直接叱ることが出来ませんが、間違いなくこの少尉が絡んでいる事は確か…。今日は折角の機会ですから、三笠の前とはいえ、この少尉に厭味の一つでも言ってやらなくてはいけませんね。それに…この少尉は更に悪質な違反を起こしています。

 

「少尉、最近、鎮守府内に大量の猥褻な本が持ち込まれるなど、鎮守府の風紀が乱れていますが、少尉はその事についてどう考えていますか。どうも…少尉もそれに関わっているような気がするのですが…。また先日も、消灯時間後であるにも関わらず、戦艦寮で少尉に似た男性士官の姿を見かけた…などという話もあるようですが…。」

 

「Oh…少尉さん。少尉さんも男だから分かるけどサ~、私で我慢しておくネ。」

 

朝日が、自分が指導している霧島からそれとなく話を聞いたそうですが、先日この少尉は、あろうことか金剛の私室に消灯後に訪れたようです。この事は又聞きですし、霧島も普段の会話中に笑い話として朝日に話しただですから、これについても少尉を追い詰める事が出来るだけの確たる証拠はありません。しかし、私がこの事件を知っているという事を少尉に伝えるだけでも、抑止効果はあるはずです。

 

「金剛さん、それは敷島様の誤解ですよ。敷島様。それは由々しき事ですね。帝国海軍の根拠地でもあるこの横須賀鎮守府の風紀が乱れるなど、あってはならない事です。それに…敷島様の巡回にも引っかからないとなりますと、敷島様まで出し抜かれている訳ですから、私のような非才な身ではとても…。それと…たしか戦艦寮は、当直がいらっしゃると思いますので、そこに忍び込むような士官は居ないと思うのですが…。失礼ながら、戦艦寮の件についても敷島様の勘違いではないでしょうか。」

 

…この私が無能なため風紀が乱れている…と言いたい訳ですか。なかなかどうして…この少尉は喧嘩を高値で売りつける才能があるようですね。ここまで言われては、私も引き下がる訳にはいきません。三笠…少尉の発言に何やら凄く嬉しそうな顔をしていますが、分かっているのですか?貴方も一応こちら側…鎮守府の風紀を守る側なのですよ。

 

「私の巡回で、何人かの不心得者の新任少尉を見つけ、その場で厳重指導をしているのですが、最近その手口がどんどん巧妙化しているのです。不心得者達に少々脅しをかけましたら、山野少尉…貴方の名前が首謀者として出ているのですが。これについて身に覚えはありませんか?」

 

「まったくありません。敷島様。」

 

「おっ、少尉なかなかやるね。あたいとの訓練の時よりも、敷島の姉貴との戦いの方が活き活きしているんじゃないか?」

 

朝日、変な混ぜ返しは必要ありません。それにしても少尉…ここまで平然とシラを切るとは、大した度胸ですね。大方、私が直接的な証拠を握っていないと踏んで、強気に出ていますね。たしかに、私が指導している小堀に事情を聞いても『知らぬ、存ぜぬ』ですし、注意した少尉達から山野少尉の名前は出ましたが、証言に一部矛盾もありますし、これだけでは流石に証拠とは言えません。

 

「まぁ、この話はお互いに泥仕合になりそうですから、置いておきますが…戦艦寮への不心得者の侵入は非常に問題です。こちらは、きちんとした形で調査する予定ですから…少尉、覚悟しておく事です。」

 

「敷島様…何故私にそのような事を言うのか、私には全く分かりませんが…。それに戦艦寮の当直は、その日は何をしていたのでしょうか?」

 

…痛いところをついて来ましたね…。その日の当直は、最先任の富士さんでした。流石の私でも、富士さんに強く出る事は出来ませんし、それとなく富士さんに事情は伺ったのですが、『私は何も気付きませんでしたが、そのような事があったのですか?申し訳ありませんでしたね、敷島』などと、完全にはぐらかされてしまいました。おそらく、この少尉が何らかの方法で、富士さんに協力してもらったのだと思いますが…今のままでは証拠不十分ですね…。

 

それに、朝日が霧島から話を聞いたというのは間違いないのですが、その霧島も直接現場を見た訳ではなく、金剛から惚気話を聞かされた…程度の事です。以前の金剛であれば、簡単に口を割らせる事も出来たのですが、この少尉と一緒に三笠の訓練を受けるようになってから、金剛も手強くなっています。間違っても、簡単に尻尾は出さないでしょうね…。

 

「その日の当直は、最先任の富士さんですから、そのような事はなかった…と私も信じたいところですね。ところで少尉、最近その富士さんの所にもちょくちょくお邪魔しているようですが?」

 

「いえ、富士様の経験に基づく教えを請うために、足しげく通っているだけですから、他意はありませんよ、敷島様?やはりこのような事は、最先任の方にお話を伺うのが、もっとも良いと考えただけですので。それよりも食事が冷めそうなので、食べてもよろしいでしょうか?」

 

…時間切れのようですね。完全に私の攻撃をよんでいたようで、上手に逃げられてしまったようです。ここで少尉の食事の邪魔をしてまで追求をすると、流石に少尉の指導艦の三笠が黙っていないですし、先程から三笠は、私と少尉の会話に介入する機会を伺っています。ここは残念ながら撤退するしかありませんね。

 

「少尉、食べても良いですよ。…いずれにせよ少尉、気をつける事です。初任地から考課表にいらぬ事を書き込まれたくないのであれば…。」

 

「敷島様、ありがたいご助言感謝いたします。」

 

…まったく。指導される士官は、指導艦の影響を強く受けると言われていますが、三笠のふてぶてしさが乗り移っていますね…。いえ、この少尉の場合は最初からその才能があったのかもしれませんが。

 

「敷島の姉貴も大変だな~。あたいだったら、有無を言わさず少尉の頭に拳骨落として終わりだぜ。まったく…敷島の姉貴も少尉も小細工が過ぎるぜ、お互いにな。」

 

朝日…貴方にとっては、単純明快で良いのかもしれませんが、こういう事はしっかり証拠を集めなくては罪には問えないのですよ。あなたのように、何もかも直感的に判断して、力で解決…というのは、横須賀鎮守府の秘書艦としては出来ないのです。もっとも…こういう少尉相手には私のやり方は分が悪いですから、時々…あなたのようなやり方で解決したい…と思うことはあるのですが。

 

 

 

横須賀市内 レストラン  山野少尉

 

 

なんとか時間切れまで持ち込めたか…。ヒヤヒヤものだな…。敷島様の性格からして、完全に証拠を固めない限り有罪と判断してこないというのは分かっていたけど、どこまで敷島様が証拠を持っているのか分からなかったから、ヒヤヒヤしながらの博打だったな…。それにしても、まさか金剛さんの所に夜行った事がバレていたとは思わなかった。あの夜の当直の富士様は虎屋の羊羹で買収していたし、途中で誰かに見つかったとも思えないんだけどな。

 

ひょっとして金剛さんが、妹達に話した…可能性はあるな。金剛さんには、もう少し注意してもらわないと…。それに敷島様は、よからぬ想像をしてそうだけど、あの時はただ単に、金剛さんの所に洋菓子を持って行って、二人でナイトティーを楽しんで話をしていただけだから、何もヤマシイ事はしていないぞ。三笠様に黙っていたというのは、ちょっと後ろめたいけどな…って、そういえばさっきから三笠様、ニヤニヤして黙っているよな。いつもだったら、例え証拠不十分だとしても『なんであたしに内緒で、坊やと小娘だけで楽しんでいるんだぃ!』くらいの事は言ってきそうなんだけどな…。

 

それと敷島様…一つだけ訂正があるよ。あの猥褻本の鎮守府持込の首謀者は小堀だよ。俺はそれを少し手伝っただけだ。敷島様…いくら小堀を気に入っているからといって、自分のお膝元にあの事件の首謀者が居るなんて、まったく考えていないんだろうな…。まぁ、この件については小堀が一枚上手だったという事か。どさくさに紛れて、俺に罪をかぶせようとしている訳だしな。でもな小堀、貴様と俺は友人だから、真相は黙っていてやるよ。一応貸しだからな。

 

「坊や、食事前になかなか楽しい余興を見せてもらったよ。なかなかどうして、坊やと敷島姉さんの戦いは見ごたえがあったね。坊や、これはその見物料だよ。中に面白い物が入っているから、見てみるといいさ。金剛、お前も見てみると楽しいと思うよ…ククク」

 

ん?三笠様が何か大きな封筒を渡してきたが、なんなんだこれ?とりあえず開けてみるか。ゲッ…なんで三笠様こんなの持ってるんだよ。というか、いつのまに撮影してたんだよ。俺が富士様に羊羹を渡している姿に、俺が金剛さんの部屋に入ろうとしている姿…って特に後者は悪意を感じるような構図で撮影してるし…。大体なんでこんな物を三笠様、持ち歩いているんだ?…あぁ、そういう事か。たしかここに来る前に『罰みたいなもんだ』と言っていたけど、そういう事かよ。元々ここで奢らせるのが罰で、その時にこの写真を使って俺を追い詰めるつもりだったんだな…。

 

「三笠様!なんでこんな写真を三笠様が持ってるネ!」

 

「フンッ、小娘だけ楽しむからこうなったんだぃ!坊やも坊やだよ。あたしに内緒で、こんな楽しい事をして許されるとでも思っているのかぃ?さて…坊やの返答次第では、この封筒が敷島姉さんの手に渡るかもしれないね…。」

 

「少尉、今三笠の渡した封筒を見せなさい。命令です。」

 

「敷島姉さん、それは駄目だね。この封筒はあたしが個人的に坊やにあげたプレゼントだ。いくら姉さんと言えども、それを取り上げさせるわけにはいかないね~。さて坊や、敷島姉さんはその封筒の中身がとても気になるようだが…あたしはこの後、何か甘い物でも食べたいね。今回の昼食は朝日姉さんが出してくれるようだから、坊やの懐には余裕があるんだろう?」

 

クソッ…ここで断ったら、敷島様の手元に証拠が行く可能性があるし、場合によっては富士様にまで迷惑をかける事に…。この封筒の中身は三笠様にとっても諸刃の剣だから、そう簡単に敷島様に渡せない事は想像出来るけど、三笠様はこれまでも時々、とんでもない事を平気でやってきたからな…。

 

金剛さんも敷島様に証拠が渡った時の事を考えて青ざめているし…金剛さんのためにも、ここは涙を飲んで三笠様の言うとおりにするしか…やられた…。しかし全て三笠様の言いなりになるのは…ここはこちらの被害が少し大きくなってでも、三笠様に反撃しておくか。俺の懐は大破炎上だよ…。

 

「三笠様?よろしければ、この後に甘い物でも…。勿論私がご馳走させて頂きます。…それと、ここで会ったのも縁ですし、敷島様や朝日様も一緒にいかがですか?」

 

「ほぉ、少尉。あたいにまで奢ってくれるとは、なかなか男前じゃないか!ここは少尉の顔を立てて、あたいもご馳走になろうかね。ま、昼食を奢ってやった礼ってとこか?ハハハ。」

 

「少尉…どうやら決定的な証拠が出てきたようですね…。とはいえ、三笠はそれを私に渡さないようですし、現時点では真相は闇の中という事ですか…。まぁ、いいでしょう。結果的ではありますが、少尉は三笠から罰を受ける事になったようですからね。指導艦が直接罰を与えた以上、私からは不問という形をとりましょう。しかし…次はありませんよ?少尉。それと三笠、少尉の指導艦であるあなたには、秘書艦としてではなく、姉として色々言いたい事があります。少尉がその舞台を整えてくれるようですし、甘い物でも食べながらゆっくり話を聞いてもらいましょうか。」

 

「坊や…庇ってやった恩を忘れるとはどういう事さね!今からこの封筒を敷島姉さんに渡してもいいんだよっ!朝日姉さんはともかく、なんで敷島姉さんまでついてくるんだぃ!折角の休暇が、研修になっちまったじゃないか!」

 

残念ですね、三笠様。敷島様の中では今回の件、俺は三笠様から罰を受け『た』という事になったようですよ。さしずめ罰金刑という認識なのでしょう。ですから、もうこの封筒の中身は効力を発揮しないのです。それに、もし今からこの封筒を敷島様に渡したとしても、敷島様は弟子の失態は師匠の責任と考えているようですから、今回は三笠様に勝ち目はないと思いますよ。ま、三笠様もそれを分かっているからこそ、露骨に嫌そうな顔をしているようだけどな。

 

「少尉さ~ん!楽しい事になったネ!三笠様が心底嫌そうな顔しているデ~ス。それと私には奢ってくれないデスカ?少尉さんと私の仲ネ、私にも奢って欲しいデ~ス!」

 

いや…これ以上俺の懐に負担を…って、本来なら金剛さんも奢る側だぞ。とはいえ、こんな可愛い金剛さんに頼まれたら、奢らざるを得ないんだよな…。

 

「坊や…鎮守府に戻ったら、色々とお話をしないといけないようだね。それに小娘、お前もだよっ!」

 

こりゃ、帰ってから三笠様をなだめるのも結構大変だな。三笠様のご機嫌を取るためにも、虎屋の羊羹を何処かで入手しておくか…。




敷島様VS山野少尉…どっちもどっちと言いますか、敷島様はかなり性格的に損をしているような気がします。そして三笠様…普段慣れていない小細工を弄した結果、敷島様からお説教をもらうことが決定したようです。結局のところ、今回は金剛さんが一番の勝ち組な気がします。

それにしても山野少尉は、ちゃっかり富士様を買収して金剛さんの所に夜這いに行っているようですが、この事が『鎮守府の片隅で』の時代に、鳳翔さんにばれますと…なかなかの修羅場になる予感が…。

今回も読んでいただきありがとうございました。
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