春
横須賀鎮守府 正門前 山野少尉
いよいよ横須賀鎮守府ともお別れか…。一年間あっという間だったよな。他の同期と同じように中尉には昇進したが、ここからは出世競争が始まるんだよな。次の任地は海軍省軍務局。敷島様は将来の自分の権限維持を狙って、俺と小堀を海軍省の軍務局と経理局にそれぞれ配属させた以上、軍務局で俺を待っている仕事は大変な案件だという事は、容易に想像できるぞ…。なんとか三笠様と金剛さんも説得出来たけど、あんな大変な説得はもう二度とやりたかないさ。
「坊や、いよいよ行くんだね。ま、帝都とこの横須賀は近いんだ。時々あたしの暇つぶしのために遊びにきな。それにしても…坊やも馬鹿さね。あたしの言う事を聞いて、軍令部に配属されていれば、もっと簡単に出世出来るだろうに…。敷島姉さんの籠の中の鳥になっちまって…」
「三笠様、この一年ありがとうございました。大丈夫ですよ。私も三笠様に一年鍛えられましたし、海軍省で頑張ってきますよ。そして…必ず何時か鎮守府の司令官として戻ってくるつもりです。」
「フンッ、それが何時になる事やら…。まぁ、期待しないで待っているよ。それと…女関係には注意するんだね。坊やは脇が甘すぎるよ。だから敷島姉さんに付け込まれるんだ!」
いやいや…それとこれは話が…。それに三笠様?一応私の説明で納得してくれたではないですか。今更蒸し返すのは反則ですよ。いずれにせよ、必ず鎮守府には戻ってきます。それまでお元気で居てくださいよ三笠様?
「Hey! 少尉さ~ん。しばらく離れ離れですけど、私の事忘れたらNoなんだからネ。それと三笠様の世話は私がするから問題ないデ~ス。でも少尉さん?私がBBAになる前に、なるべく早く鎮守府に戻ってくるデ~ス。約束ネ」
「分かっていますよ金剛さん。金剛さんも元気でいてくださいね。それと、時々休暇の時は横須賀に遊びに来ますので、その時は食事でも。」
「坊や…小娘を誘ってデートなんて十年早いさね。それに指導したあたしを放っておいて小娘とデートとはどういう事さね!そんな暇があったら、早く出世して司令官として小娘を迎えに来るんだね。」
「はいはい、三笠様。精一杯努力しますよ。」
やれやれ三笠様は最後まで厳しいよな。といっても、言っている事は至極当然か。なにはともあれ、なるべく早く鎮守府の司令官になれるように頑張ってきます。
「三笠様、それと金剛さん、一年間お世話になりました。山野磯郎少尉、次の任地に向かいます。失礼します。」
鎮守府司令部 南郷提督
「敷島、例の小僧もお前の秘蔵っ子も出立したようだな。お前もしばらく寂しい思いをしそうだな。」
「いえ南郷提督、これでようやく私も落ち着けるというものです。」
「そうか?敷島。だいぶ寂しそうな表情をしていたがな…ハハハ」
三笠もそうだが、敷島もなんだかんだ言って、あの小僧達には目をかけていたからな。それに最近の大人しい兵学校出身者とは違い、あの二人は色々とこの鎮守府でやらかしてくれたし、その後始末で敷島も大変だっただろう。とはいえあの二人、特にあの小僧には大変な運命がこれから待ち受けているか。
敷島は、特に考えずにあの小僧を、海軍省の中心という理由で軍務局に配属させたが…私の知っている情報では、今後軍務局は大荒れに荒れるだろう。いや…頭脳明晰な敷島の事だ、全てを知った上で小僧を軍務局に配属させた可能性もあるか。しかし敷島、小僧が絡むことになる案件、その余波は間違いなくこの横須賀鎮守府にもやってくるぞ。…それだけ小僧の力量に期待しているのかもしれんが。…一つ間違うと大変な事になるぞ。まぁ、海軍省上層部にはこの私もそれなりに伝手があるから、しばらく小僧達の様子を注視しておくか。
この話で第一章は終了です。ここまでは、どちらかと言うと新任少尉らしく鎮守府内での出来事、そしてドタバタ喜劇と山野少尉にとっては楽しい思い出の章になったのではないかな…と思っています。いずれにせよ、ここから海軍省を中心にして出世していき最終的に提督になっていく訳ですが…。ここで楽しく一緒に過ごした三笠様達も含めてどうなっていくのか…この辺りの歴史を知っている人ですとある程度予想がついてしまうのが^^;
この話は、一章分書いてから纏めて投稿するスタイルを取りますので、しばらく投稿は停止します。なるべく早い時期に二章目が投稿出来るようにしたいな…と思っていますが、現時点では投稿時期は未定という事にしてください。(幕間という形で一話投稿するかもしれませんが…。)
ここまで読んでいただきありがとうございました。