リリカルなのはサーガ   作:DFGNEXT

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SAGA 15「決戦前夜」

 

 

 

 

なのはたちはとりあえずアースラのブリッジに来た。

先ほどの攻撃・・・そしてなのはが感じていたことを、もっと確固たる物にしたかったからだ。

 

中に入るとまず出会ったのはリンディとクロノだったが、

となりで椅子に座っている人は初めてみる・・・となのはは思った。

そんなことを思っていたその時に、その女性から直接挨拶をされる。

 

「私は始めましてだね。アースラ通信主任のエイミィ・リミエッタです」

「初めまして高町なのはです」

「ユーノ・スクライアです」

 

とりあえずは初めて会ったので挨拶し返した。

 

「さて、問題はこれからね。クロノ執務官。

 さきほどの魔力パターン・・・そして魔力光・・・」

「恐らく艦長の考えている通りだと思います。エイミィ、モニターに」

「はいはーい」

 

エイミィがキーボードを操作すると画面が表示され、黒髪をした女性が現れた。

 

「大方予想通りかしら。前に資料を見ていたから・・・」

「はい。僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師、プレシア・テスタロッサ。

 専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら、

 違法研究の事故によって、放逐された人物です」

「登録データと先の攻撃の魔力反応が一致しています。

 なおあのときの反応から・・・フェイトは・・・」

「あの時は母さんって呼んでいたね」

「親子・・・ね・・・」

 

リンディがそう呟いたときになのはは思い出していた。

(あの時フェイトちゃんは怯えていた・・・)

もしも・・・もしもだけど自分が同じ目にあっていたら・・・となのはは考えた。

 

あの歳頃の女の子の反応なら、母親からの攻撃は普通は驚く。

勿論、驚きの感情も少なからずあったのだろうけど。

しかし、恐怖の感情が強かったようになのはは思えた。

 

そしてプレシア・テスタロッサの詳細データを見直したなのはは気づいた。

 

「・・・59歳で・・・フェイトちゃんの母親って・・・なんだかおかしくないですか?」

 

できれば考えていることが当たってほしくはないが、なのはは疑問に思ったことを言った。

そのことを聴いたリンディはすぐさまエイミィに命令する。

 

「エイミィ! プレシア女史について、もう少し詳しいデータを出せる?

 放逐後の足取り、家族関係、その他何でも」

「はい。すぐ探します」

 

といって忙しく指を動かす。

程なくして、エイミィの説明が始まる。

26年前の「ヒュウドラ」の事件。その後の顛末。

かつて実際に起きた悲しい事件の惨劇の様子が思い浮かんでくるようだった。

 

「家族との、行方不明になるまでの行動は?」

「その辺のデータは、綺麗さっぱり抹消されちゃってますね。

 今、本局に問い合わせて調べてもらっていますので・・・」

 

事件の事はともかく、家族関係のデータが消えているというのは

やっぱり・・・・・・・・・となのはは感じた。どうやら予想が当たっていそうで怖かった。

 

「時間はどれくらい?」

「一両日中には」

「そう・・・、とりあえずプレシア女史もフェイトさんも、

 あれだけの魔力を放出した直後ではそうそう動きも取れないでしょう。

 また、こちらとしてもシステムの復旧や足取りを追うことに

 時間を割かなければいけないし・・・やることは山ほど有るわね・・・」

 

リンディは顎に手を置きながら、事態の複雑さに頭を悩ませる。

 

「あの、わたしたちはこの後どうすればいいですか?」

「とりあえずは帰宅して結構よ。民間協力者という立場だから

 アースラの問題に対してあなたたちができることは少ないわ」

「そうですか、わかりました。行こうユーノくん」

「うん、わかった。それではリンディさん。また」

「えぇ、あっでもちょっと待って」

 

そう言って帰ろうとしたなのはたちをリンディは止める。

何事かとなのはが振り向くとリンディが手に何かを持っていた。

それはレイジングハートを青くしたような蒼い宝玉だった

 

「前に頼んでいたでしょう。二日前に完成していたの。

 闇の書戦のときにわたそうかとも思ったけど。今渡すわね」

「ありがとうございます」

 

なのははそう言うとその蒼い宝玉を受け取った。

 

「フレームもちゃんと出来てるわ。後は名前つけてあげてね」

「ありがとうございます。実はもう決めているんです・・・」

 

そういうとなのはは目を瞑ってデバイスを起動させる。

そのデバイスにつけた名は・・・。

 

ブレイズハート(Blades Heart)起動!」

 

なのはが起動を唱えると、蒼い宝玉が消え、代わりに両手に1振りずつの小太刀が現れた。

片方はもう片方の4分の3ほどの長さだ。それと同時に腰の左に二つの鞘も現れる。

 

刀身と鞘と柄の色はすべて白。反りはほんのわずかだ。

(つば)の部分がコアになっている。蒼く輝く平たい円形だ。

 

そして刃の部分には柄から沿って淡い水色のラインがあった。

これに薄く魔力刃を纏わせれば非殺傷、纏わせないで純粋魔力を込めれば殺傷設定となる。

もちろん魔力刃を纏わせたままでも物理的な破壊をしようと思えば可能である。

 

「ブレイズハート(Blaze Heart)? ・・・炎の心かしら?」

「そちらのブレイズじゃなくてブレードの複数形の方です」

 

なのはは意外と拘っていた名前の由来から訂正する。

 

「ああなるほど、二刀流だからね」

 

リンディはリンディでその由来に納得した。

そんな会話をした後、なのはたちは転移魔法を使い海鳴へと帰っていった。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

時の庭園に、海上で貰ったジュエルシードを合わせた計3個のジュエルシードを持ってきた。

そんなフェイトに対して、やはりプレシアは労った。

 

前回の態度を見れば、確かにおかしくは無い。前回も優しい母親だったからだ。

そうされているフェイトはとても笑顔で、それを見ている限りは心が晴れやかだ。

 

しかし、それではあまりにも不自然だ。

あたし達がこの世界に来る前のプレシアは、本当に親とも言えないようなそれは酷い人間だった。

それこそフェイトを物みたいに扱うぐらいに。

 

だから。

 

フェイトが自分の部屋に戻って、寝静まる。

それを見計らって、私はプレシアの部屋へと忍び込んだ。

 

プレシアの部屋の奥の部屋に、あいつは佇んでいた。

 

「たった9つ…これでも次元震は起こせるけど、

 ・・・あの使えないお人形・・・褒めれば回収速度が上がるかと思ったけれど・・・」

 

・・・今、あいつは何て言った?

予想はしていたけれど、勘違いで居てほしかった。気のせいでいてほしかった。

しかし、次にあいつから語られた言葉がそんな考えを吹き飛ばす。

 

「もうあまり時間が無いわ、私には時間が・・・

 ふう、自分で行ったほうが良かったかしら?

 あんな使えない人形よりも早く回収できたでしょうに」

 

その声が聞こえた瞬間、あたしは物影から一気に飛び出した。

 

「うぁぁぁぁぁぁっ!」

 

一気にあいつの胸倉を掴みあげる。

 

「やっぱりそんな考えを持ってたのか!?

 あんたは母親で!あの娘はあんたの娘だろ!

 あんなに頑張ってる子に嘘までついて!

 あの娘に何も思わないのかよ!」

 

そこであたしは気づいた。

プレシアの手が私の腹に添えられていることを

目の前から途方もない魔力を感じ、そこに衝撃が走る。

 

「っ・・・ぁ!」

 

体に力が入らない。声が出ない。

足が震え、口の中に酸っぱいものが混じりはじめた。

顔を上げると、そこにはプレシアが無表情でいた。

 

「あの子は使い魔の作り方が下手ね・・・余分な感情が多すぎる」

「あの娘は…あんたのために必死で・・・っく!」

 

「作業の邪魔よ・・・消えなさい!」

「っ!」

 

咄嗟に転移術式を発動させる。

攻撃が当たる寸前に私はランダム転移をした。

 

ギリギリだったけど、何とか逃げられた。

ごめんフェイト・・・!少しだけ待ってて・・・!

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

その日アリサはリムジンに乗ってピアノの稽古から帰っている所だった。

すると携帯電話が震え、メールの着信を告げた。それは親友からのメールだった。

 

(相談・・・? もしかしてあのことかな。やっと相談してくれるんだ・・)

 

アリサは少し顔をほころばせた。

最近その親友は猛烈に疲労したり、上の空になったりと忙しかった。

大丈夫だよ?とか訓練してるからとは言っていたが、どうにも信用おけなくて

なのはと喧嘩した。すぐに仲直りになったもののいずれ話すということになったのだ。

 

「アリサお嬢様、何かいいことでもおありでしたか?」

 

リムジンのドライバー鮫島がそう言った。

 

「まあね、・・・ん? 鮫島! ちょっと止めて」

 

アリサが何となく外を見ていると、気になることがあったのか、

鮫島に命じると、リムジンは素早く車体を脇に寄せ停車した。

そしてアリサは車を降り、その対象を見る。

そこには血にまみれて横たわっている動物がいた。

 

(やっぱり、大型犬。でもオレンジの毛におでこに宝石があるわね。

 ただの犬ってわけじゃないわよね・・・・・・)

 

アリサはその犬・・・もとい狼・・・のアルフに話しかけようとしたが、

アルフはそこで力尽き、眠ってしまった。

 

「かなり怪我がひどいようですな」

「でもまだ生きてる。鮫島!」

「承知しております、アリサお嬢様」

 

アルフを鮫島がリムジンに運び込み、アリサも後部座席に再び乗り込んだ。

 

「鮫島。超特急よ!」

「はい。久しぶりに腕がなりますなあ!」

 

アルフを治療してもらったあとアリサたちは家へと連れて行った。

家に帰った後、アリサはアルフの世話をした。

 

その後、なのはとすずかに状況を報告してきた。

するとなのはがアルフだということに気づき、家に来ていいかと聞いてきた。

アリサは特別断る理由がないこと、わずかだがそのときのなのはの声に違和感を感じたため、

すずかとなのはを明日家に来るように誘ったのだった。

 

翌日の学校が終わってアリサの家。

なのははすずかと一緒に遊びに来ている。

ユーノは今日はフェレットモードだ。

ついでにアースラに連絡を入れて、通信できるようにしてあった。

 

【アルフさん・・・】

【あんたか】

 

なのはとアルフは念話を使い話す。

 

【とりあえず、何があったの?】

 

なのはが聞いた。そこでユーノが提案する。

 

【なのは、ここは僕が聞いておくよ。久しぶりなんだから、一緒にみんなと楽しんできて】

【そう? じゃあ頼めるかな?】

【うん、まかせて】

 

なのはは頷きながら【よろしくね】と言った後、今度はアルフに向かって言う。

 

【じゃあ、アルフさん。ここはユーノくんに任せるけど、

 困ったことがあるのなら、わたしがきっと力になるよ】

【わたし"達"がでしょ?】

【うん、そうだね。頼んだよユーノくん】

 

なのははそう言ってアリサとすずかと一緒にアリサの家に上がった。

そして、部屋に行き、アリサ達と遊んでいる間にもアルフからの念話が流れてくる。

結局、あの場に残らなくてもあまり変わりはなかったわけだ。

 

そんなことを考えていると、アリサがなのはに向かって爆弾発言をする。

 

「・・・ねぇ、なのは。そろそろ全部話してくれないかしら?」

「・・・まぁ、相談するといったからね・・・でも今?」

「・・・額に宝石をつけたわたしの知らない犬のことを知っていて、

 フェレットのユーノを平気に家の外に置き去りにした・・・。

 前から思っていたんだけど、いい加減秘密があるなら話してほしいの

 というより相談してくれるといったんだから、今日でもいいでしょ?」

「・・・はぁ・・・わかったよ。まぁあのメールを送ったから、話すつもりだったけどね」

 

言い始める前にさすがになのははため息を吐いた。

そしてなのはは二人にすべてを話した。内容は家族にしたのとほぼ同じだった。

 

「・・・やっぱりあの人間のユーノとフェレットのユーノ、関係があったのね。

 さすがに魔法でフェレットになっていた同一人物だとは思わなかったけど・・・

 というかなのはのあの大怪我、魔法が原因だったの!?」

「秘密にしててごめんね。なんだかあまり魔法について話しちゃいけないみたいだったから

 それに・・・あの怪我はトラウマなんだよ・・・自分が情けなくなってくるから」

 

そう、あの怪我は自分の唯一の汚点であり、絶対に忘れてはいけないこと。

力に対する責任を持たずに無邪気に振り回していた自分への戒めだ。

 

「大丈夫だよ。ちゃんとなのはちゃんが今話してくれてるし、

 それに・・・今は魔法・・・ちゃんと使いこなせてるんでしょ」

「まあね。それは保障しておくよ」

 

そう言う会話はしつつもマルチタスクを駆使して、向こうの会話にも参加する。

内容は、まずアルフがフェイトとプレシアのことを説明し、

プレシアにフェイトは逆らえなかったというフェイトのロストロギア強奪についての擁護。

そして最後にフェイトの保護を頼みたいと、アルフは言った。

 

アースラからのモニター通信でクロノやリンディもそれを聞き、

それならばフェイトには情状酌量の余地は十分にあるとアルフに説明し、保護を承諾した。

 

【なのは・・・だったね、今まで散々なことをして、頼めた義理じゃないけど・・・

 でも頼めるかい? フェイトは今本当に一人ぼっちなんだよ】

【うん、任せて。言っていた通りフェイトちゃんは私がなんとかする】

【僕ももちろん手伝うよ】

【あんたもありがとう】

 

アリサの家からの帰り際。なのはが明日行くことを伝えた。

お互いにジュエルシードをかけたフェイトとの最終決戦。

さすがに町に被害は出せないのでアースラに協力することにしたのだ。

するとすずかが寂しそうに、言ってきた。

 

「そっか、また明日行かなくちゃ行けないんだ」

「うん、でも今回は多分すぐだよ」

 

事は1日で済むはずだ。だがその1日は長くて壮絶な1日になるだろう。

お互いのすべてを出し切る文字通りの死闘だ。

 

「そう、大変みたいだけど・・・頑張りなさいよねっ!」

「そうだね、もうひと踏ん張りだよ!」

「うん! また行ってくるよ」

 

そんな会話を繰り広げながら、となのはは家へと帰った。

 

家に帰ったなのははふと思い。

久々にしまってあったあの数学の本を読んだ。

 

内容はもう完璧に理解しているけれど・・・

この本はわたしに勇気を与えてくれる・・・

だからわたしはこの本を読み進めていった。

明日の・・・決戦のために・・・

 

 

 




あの本の役割は素数と同じなのです。

「落ち着け・・・ 心を平静にして考えるんだ・・・こんな時どうするか・・・
2… 3 5… 7… 落ち着くんだ…『あの本』を読んで落ち着くんだ・・・
『あの本』はわたしに勇気を与えてくれる」


なのは曰く

「自然数全体に関する和」と「素数全体に関する積」が等しくなるというオイラーの等式を見入ると落ち着くらしい。

1/1^n + 1/2^n + 1/3^n + ・・・ = 1/(1-2^-n) * 1/(1-3^-n) * 1/(1-5^-n) * 1/(1-7^-n) * ・・・

作者?作者はギヴァーよりもソルヴァーですが、
素数を数えても数式を見ても落ち着けません。
俳句を見たら落ち着けるかなw
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