この時から空への執着があったという感じですね。
それではどうぞ!
あれから一年。
お父さんの怪我も治り、家にも前の・・・
いや前よりも素晴らしい日々が戻っていた。
家族の皆にはいつも笑顔があり、すがすがしい朝を迎えられていた。
「いってきまーす!!」
「いってらっしゃい」
そんななかでわたしは朝、早起きすると赤いジャージに着替える。
ちなみに家族はみんな早起きなのだ。
お兄ちゃんとお姉ちゃんはわたしよりもっと早く起きる。
家の家族は道場を持っていて、そこで剣術を学んでいるのだ。
その剣術の名前は『御神流』
正式名称は「永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術」
聞いた話を纏めると御神流は、二振りの小太刀をメインとする剣術だ。
しかし
さらには体術なども用いた総合殺人術である。ということを聞いてしまったりする。
ちょっと怖い話だけれど、力の使い方を間違えなければ問題ないとは思う。
わたしも一応触りだけ教えてもらっている。
けれどまだ剣を持つのは早いので、今は早朝ランニングをしたり
筋トレをするだけに抑えている。体を壊しても困るしね。
玄関を抜けて、近くの山までランニングする。
でも・・・このランニングは御神流の訓練のためだけではない。
わたしにはある秘密の特訓があるのだ。
山に着いたわたしは周りに誰も居ないことを確認すると
胸の高鳴りを抑えつつ、呼吸を整える。
そして指先に力を集中する。すると・・・
「ぷっはぁあ!うん、できたできた。光の
指先から力があふれ出し、現れた桜色に輝く美しい球・・・
それは後に『ディバインシューター』と名づけられる魔法の力
わたしはランニングでここに来るたびにいつもこの力を使っていた。
◆◆◆◆
この力を見つけたのはあの本を貰ってから二ヵ月後のことだった。
いつものようにわたしはあの本を机に向かって読んでいた。
本に書いてある数式・・・完全には理解してはいなかったものの
それでも、ある程度は頭の中で理解できていたのだ。
そこでわたしはいろいろな数式を頭で思い浮かべていた。
簡単なものから難しいものまで、はては本にも乗ってないような数式を。
その時・・・わたしは気づいた。何だか、胸の奥がポカポカしていると。
まるで春の息吹を感じたような暖かい感覚だった。
「なんだろう・・・この感覚・・・」
最初は気のせいかな? とも思いつつ、その数式を思い浮かべるたびにその感覚は続いた。
そんな時、ふと思い立ちわたしは試しに掌に力を集めた。すると・・・
「わぁ!」
掌から先ほどの光の球が現れたのだった。
いきなり現れた光にわたしは驚き、椅子から転げ落ちてしまった。
「なのはぁ! どうしたのぉ?」
大きな音を立ててしまったのでお母さんがわたしを心配する声をかけてきた。
わたしはその声に驚きつつもすぐに冷静になって、軽く返した。
「なんでもなーい。転んじゃっただけー」
嘘は言っていない。椅子から転げ落ちたのは事実。
ただ他の事を伝えていないだけだ。
「気をつけなさいよ」
「はぁ~い!」
教えるべきではない・・・そう思ったわたしは家族には黙っておいた。
こんな力が使えるなんて知られたら・・・幼いながらも
わたしはこんな思考ができるくらいには大人びていたのだった。
◆◆◆◆
それからはいろいろ試しながら、この力で遊んでいた。
この光の球は操作できるとわかったときは木の棒を立てて
そこに向かって命中させる、的当てゲームみたいなことをしていた。
またあるときは光の力を体全体に送ってみた。
すると・・・体が一瞬だが、宙に浮いた・・・。
最初は驚いたけれど、それと同時に高揚感がわたしの体の中を流れていた。
空を飛ぶ・・・それは人類がおそらく一度は浮かべる『夢』だと思う。
だからわたしの中には高揚感が溢れていたのだ。
今日は・・・それをさらに推し進める予定だ。
「・・・x=12k・・・3・・・zk・・・」
先日見つけた数式を元に改良に改良を加え、
おそらくは空を自由に飛べるだろう・・・という方程式。
それをわたしはまるで魔法の詠唱のようにぶつぶつと唱える。
目を瞑って、体中に力を巡回させるようなイメージを重ねて。
やがてその幼き小さな体が宙に浮かび始めた。
しかしわたしはここで一喜一憂しない。
最終的な目標は空を飛ぶことだから・・・
やがて、演算は更なる加速を見せていった・・・そして・・・
彼女の体は上空へと向けて加速を始めていった。
「や、やった・・・!!」
わたしの顔には笑顔がこぼれた。
憧れた空をまるで流れる流星のように飛ぶわたし。
「飛んでる・・・! わたしはこの空を・・・飛べるんだ・・・・・・!!」
風と一体化するような感覚・・・
空気を切り裂き、
わたしは手に入れた力を全開で使って、時間目一杯まで楽しんだ。
時間が少し経った後、わたしは先ほどまでいた山に着陸する。
地面に降り立った後、手を握って開き体に異常がないかを確認した。
「わたし・・・飛べた・・・。この空を・・・飛べた!!」
誰かに言いふらしたい。
そんなことまで一瞬考えてしまうほどあの時のわたしは盛り上がっていた。
他の人が絶対に持っていないであろう『異能』
・・・それが幼いわたしの心を急き立てたのだ。
だが・・・しかし・・・力を手に入れたものには
力を手に入れたものの責任があることもまた事実なのだった・・・
ときは流れる・・・