それではどうぞ!!
なのはさん・・・えげつなくしすぎたかなぁ・・・
午後3時・・・着替えなどを持ってなのはは八神家へと向かっていた。
なのはの手にははやての9歳のバースデイケーキ(1ロール)がある。
件の特殊な箱に包まれ、かつ花柄物の紙袋に入っていた。
今日ははやての誕生日前日祝い兼、闇の書対策のための打ち合わせだ。
なのはの予想が正しければ年をひとつ重ねる今日、闇の書が起動する。
おそらくなので確証はないが、それで駄目でも起動するのは今年だということはまず間違いない。
闇の書が主本人を起動前に殺すとはとても思えなかった。
無論・・・バグの塊である闇の書が計算どおりに行くかはまた別問題だが・・・
そんなことを考えているうちになのはは八神家の前へとたどり着いた。
なのはは玄関のインターホンを押す。
『は~い』
聞こえてきたのは八神はやての声だ。
なのはは久々に利く親友の声を聴き、うれしくなりながら言った。
「はーい、はやてちゃん。私だよ。高町なのは」
『あぁなのはちゃん。今開けるわぁ』
そして少したった後、はやては車椅子に乗り玄関から出てきた。
「久しぶりなのはちゃん」
「こっちも久しぶり、元気にしてた?」
「まぁまぁや。取りあえず家に入ろか?」
「うん、そうだね。お邪魔しまーす」
その言葉とともになのはは八神家へとお邪魔する。
「元気そうで良かったよ。まぁ、はやてちゃんのことだから
我慢している可能性も否定しないけどね・・・」
「あはは、大丈夫や。最近はホンマ調子良くてなぁ」
「そうなんだ。なら信じるよ。そういえば管理局の人が
説明しに来たんだよね。なんか言われた?」
今回なのはが来る数日前に管理局員が数名、八神家に来ていた。
理由は闇の書の主が今まで管理局に対して非協力的だったためであり、
はやてが協力的かどうか確認するために来たようなものだった。
もっとも対談の結果、ここにきた管理局員ははやてを認め、
はやては彼らから、今後行う作戦の説明を受けていた。
「まぁ、前になのはちゃんから聞いたとおりや。
やっぱり最悪自分が死ぬ作戦は聴いてて楽しくなかったけど」
「それはごめんなさい」
「なのはちゃんに謝られても困るんやけど・・・」
「まぁ、まぁ。わたしも言ったわけだし」
「まあ、ええけど・・・」
「そんなことよりも明日誕生日だからね。
去年はわたしがやってもらったから、今回は盛り上げるよぉ!」
「はは、お手柔らかに・・・」
そして二人はまた世間話を始めた。
なのはは学校でのこと、はやては日常でのこと・・・
会う機会が最近なかった二人はそんな会話をずっと続けていた。
午後7時になったころ。
時間的には夕食の時間だった。
「そろそろ夕飯の時間だね」
「そうやな。今日はなのはちゃんが来るって言ってたから
二人で突けるようにトマト鍋や。ええよね?」
「うん、いいね。わたしも手伝うよ」
「ほんまありがとうな、でも実は来るって聞いてたから
もうとっくに作って冷蔵庫に入れてあるんよ」
「それじゃあわたしがレンジで温めてくるよ」
「ありがとうな」
その言葉の後になのはは立ち上がり、台所へと向かった。
はやてはそれを見ながら心に暖かいものを感じていた。
なのはとは一年の付き合いになるが、やはり記念日を祝ってもらうのはうれしいのだった。
「「いただきます」」
そう言うと二人はトマト鍋を食べ始めた。
最近流行のメーカーの素は二人には甘すぎるので、
はやてオリジナルのさっぱりとしたトマトがおいしい鍋だ。
はやてがこの一年間で試行錯誤してなのは好みにしてるので
わりと料理に辛口ななのはにも高評価だ。
「うん!とってもおいしいよ。はやてちゃん。やっぱり料理上手だね」
「ありがとうな。私としてもなのはちゃんに満足してもらってとってもうれしいわぁ」
二人はそんな話をしながら盛り上がっていたのだった。
これが・・・二人の絆の姿なのだった。
午後9時すぎ・・・お風呂に入り終わった二人は食事の片付けも終わり
あとは明日の誕生日のために寝るだけだった。
「それじゃあ、なのはちゃん。一緒に寝よか?」
「えっいいの?はやてちゃん」
「もちろんや。なのはちゃんは部屋に居ないと駄目やろうし、
だったら一緒に寝たほうがええやろ?」
「うん、そうだね。はやてちゃんと一緒に寝るのは初めてだね。」
この一年間、お互いの家に泊まったりすることはなかった。
アリサ、すずかに誘われてお泊りするときも大抵はやての通院の日とかぶってしまい、
はやてとなのはが同じ寝床に寝るのも初めてだった。
そして二人は寝るためにベッドの中に二人で入っていった。
「・・・今日はほんまありがとうな、なのはちゃん」
「こちらこそ、楽しかったよはやてちゃん。でもお楽しみは明日でしょ?」
個人的には誕生日前日で満足してもらっても困る。
そんなことを考えていたなのはだったが、次のはやての言葉で考えを改める。
「・・・私な・・・親が死んでから、ずっと一人やった・・・
お父さんの知り合いだって言うグレアムおじさんも忙しいから
会えてなかったし・・・なのはちゃんと遊んだりするのは楽しかったよ。
でも・・・やっぱりこういう日を祝ってもらえるのは・・・初めてやから・・・」
はやての目にはそれを話すたびに涙がたまっていた。
なのはとの出会いはなのは自身だけでなく、はやての心の隙間も埋めていた。
だが、やはり記念日というものを祝ってもらえるのは違うのだ。
涙が少しづつ溜まっていくはやてをなのははそっと抱きしめてあげる。
はやてはその腕と胸に感じるなのはの暖かさにいろいろな感情を抱いていた。
「あっ」
「ふふ、大丈夫だよ。はやてちゃんはもう一人じゃないよ。
明日・・・誕生日を祝えたら・・・きっとその涙も乾くよ・・・」
「・・・なのはちゃん・・・本当はな、ずっと今まで怖かったんや・・・
日に日に悪くなっていく足・・・それに孤独やったから・・・
明日死ぬんやないか、なんてことも思ったわ・・・
せっかくなのはちゃんに会えたのに・・・皆に会えたのに・・・
無くしてしまうんが・・・本当に怖かったんやぁ・・・」
はやてはやがてダムが崩壊したかのように眼から涙を流す。
彼女もまた・・・孤独とともに生きていたのだ・・・
「・・・そうだったんだ・・・大丈夫。わたしがさせない・・・
はやてちゃんをここで亡くすなんて・・・絶対にさせない!」
なのはの決意をこめた宣言・・・それを聞いたはやては頷きながら呟いた。
「・・・ありがとうな・・・なのはちゃん・・・」
そういいながらはやてはもう一度思いっきり泣いた。
今までためていたものをすべて吐き出すように・・・
「・・・どういたしまして」
なのはは明るくそうはやてに返した。
まだ言われる立場ではない。お礼を言いたいのは自分自身・・・
そう言う思いもあったが、今はただはやてのために尽した・・・
《・・・・・・会話に入ることができません・・・》
・・・自身の存在意義をそろそろ見失いそうなレイジングハートであった・・・
主が万能すぎるのも考え物である・・・
午後11時58分・・・予定では後数十秒で闇の書は起動するはずだ。
「いよいよだね」
「そうやな・・・これで何もなかったらそれはそれで面白いけど・・・」
「それは・・・なんだろう・・・いろいろと悲しくなってくるよ・・・」
《悲しいのは私のほうです》
「あれっ?レイジングハートおったん!?」
《・・・最初から居ました・・・》
そんなことを話しながら、机の上においてある鎖に閉ざされた闇の書を二人は眺める。
あと・・・十五秒・・・
十
九
八
七
六
五
四
三
二
一
・・・・・・・・・・・・
カチカチと秒針が動きちょうど12時を指した時、
異変が起こる。本棚にしまってあった一冊の本が急に光出し動き出す。
【封印を解除します】
その本から声が聞こえる。なのははは何が起こっても大丈夫なように
はやてを抱きかかえ臨戦態勢を取った。
【起動】
その言葉が聞こえた後、光はいっそう強める。
視界が白一色になり、はやてとなのはは目を瞑る。
その光が晴れてようやく目が開けられるようになると、
魔法陣が展開した。そしてそこから現れたのは3人の女性と一人の男性
「闇の書の起動を確認しました。」
「我ら闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士でございます。」
「夜天の下に集いし雲」
「ヴォルケンリッター、なんなりとご命令を」
一人一人が口上のように述べ跪く。
はやては目の前に起こった事が聞いていたとはいえ、現実味が少し感じなかった。
その腕はなのはの服をしっかりと掴んでいた
一人この状況を冷静に判断したなのはは守護騎士に言葉を掛ける
「貴女達が闇の書の守護騎士なんですか?」
「誰だ貴様!!」
桃色の髪をした女性がなのはに食ってかかる。
自分達の主を抱えていたので警戒したのだろう。
他の守護騎士も臨戦態勢に入った。
なのはが状況を説明しようとする。
「落ち着いてくだ・・・」
ガキーンッ
「くっ!」
話をしようとした瞬間にシグナムはレヴァンティンを起動してなのはに切りかかる。
なのははとっさにブレイズハートを起動し受け止めたのだが・・・
バキンッ
「!!!!」
威力を受け止めて、なんとかなのは自身へのダメージは抑えたが、
レヴァンティンの直撃を受けたブレイズハートはその威力をすべて吸収し砕け散った。
アームドデバイスとストレージデバイス・・・フレームの強度という面で
ブレイズハートはレヴァンティンに全く及ばなかったのだ。
「ちょ、何やってんや!」
「落ち着いてください。わたしはお話しに来たんですよ!」
なのはがそう言うが、赤い髪をした少女が言った。
「あのさ・・・ベルカの諺にこういうのがあるんだよ、和平の使者なら槍は持たない・・・」
「・・・それは諺ではなく小噺の落ちだ・・・」
「う、うっせぇ・・・」
自分ではかっこいい台詞を言ったつもりなのだろうが、
中途半端に間違えたせいで微妙な空気になる・・・もっともなのはには関係ないのだが・・・
「はは、面白い話もあるんだね・・・じゃあ、こっちも教えてあげるよ。
はやてちゃんから教わったんだけど・・・日本にはこういう諺があるんだ・・・
『備えあれば憂いなし』ってね!!」
「あん・・・? なっ!!?」
赤い髪をした少女は最初なのはが何を言っているのかがわからなかったが、周りを見て驚いた。
「・・・いつのまに・・・」
「我々に気づかれないようにこれを・・・」
闇の書のヴォルケンリッター・・・彼女達の周りには
部屋いっぱいにディバインシューターが敷き詰めて配置。
彼女達を目標に向けていた。
「戦力的にはそっちが上だろうけどね。はやてちゃんに教えてもらったんだけど
中国の兵法書に「孫子」ってのがあってこう書かれているらしいんだ・・・
『勝利というのは戦う前に全てすでに決定されている』ってね」
「ちょ、なのはちゃん今ここでそんなこと言いだすん!?」
「貴様、何者だ。なぜ主と共にいる。返答次第では切るぞ!」
桃色の髪をした女性はなのはの力量に驚き、
自身の剣型のデバイス『レヴァンティン』を構える。
「ちょ、ちょい待ちぃ!喧嘩はアカンよ。とりあえず、話しがしたいから皆下のリビングに来てな」
そこへはやてが、この状況に待ったを掛けた。
守護騎士は最初は渋ったが、主に言われては逆らう事はできないので、リビングに向かう。
最初はなのはが連れて行こうとしたが、桃色の髪の女性が納得しなかったので
彼女が連れて行くことになった・・・
・・・こんな最悪の出会いをしながら・・・彼女達は話し合うのだ・・・
なのはの文系知恵袋、それがはやて
ただし学校の勉強に応用できないという致命的な問題が・・・