ゲストキャラが出たりしていますが、あくまでチョイ役。
本編に絡むことはないです。
それではどうぞ!!
あれから少したった。
なのははあれからもずっと訓練と一緒に魔法の特訓を行っていた。
そして・・・父親、士郎が退院した。
通院も終わり怪我は完全に完治したのだ。
高町家はそれからさらにかつての明るさを取り戻していた。
毎日の朝食の会話ですら、すでに違うのだ。
「すまなかったな。お前達にも迷惑をかけた」
「いや、大事に至らなかっただけでも良かったよ」
謝る士郎に対して恭也はそう言い返す。
命より大切なものなど基本的に存在しない。
助かっただけでも御の字だと。
「本当だよね。あのときはどうなるかと思ったよ」
「そうだよ。お父さん。わたしかなり心配したんだから!!」
美由希となのはもまた笑みを浮かべながらそう話しかけた。
「ごめんな。なのは・・・家に一人にしてしまって・・・」
「ううん、平気・・・といったらお父さんがかわいそうかな?」
「ふふふ、大丈夫よ。心配かけた分は迷惑かけてもいいわよ」
「お母さん!」
他愛もない会話だが、一年前まではこんな会話さえできなかったのだ。
明るい家族間の会話・・・取り戻せたことがなのはは嬉しかった。
「でも、これで仕事は引退だな・・・」
「大丈夫だよ、お父さん。まだ家には翠屋という切り札が・・・」
「なのは・・・どこで覚えたんだそんな言い方?」
「図書館かな」
といっても本ではなく周りの会話を着て覚えたのだが
「なるほど」
「うん、さてとごちそうさまでした!」
「お粗末さまでした。これからどこかへ行くの?」
「うん、公園に行こうかと思ってる」
「そう、気をつけなさいよなのは」
「もちろん」
なのははそう返事をするとお気に入りのジャージに着替えて玄関を飛び出る。
向かうはあの公園・・・あの本と出合うきっかけになった場所だ。
「すーはーすーはー」
公園についたなのははまず始めに深呼吸をする。
ランニングに体が大分慣れて、息が乱れにくくはなったものの
この距離を全力で走るとなるとまだなのはは息を乱してしまうのだ。
やがて息を整えたなのはは周りを見渡す。
今日はまだ誰も居ない・・・時間が時間だし、
そもそもそういう時間帯をわざと選んだのだ。
なのはは最終確認をすると指先に力を送って光の球を出す。
「ふふ、さってと・・・今日はもう少し遊んでみようかな」
そう思ったなのははその光の球を操作し始める。
そこへ近くのゴミ箱から拾った空き缶を投げつけた。
カコンッ!
そういう甲高い、どこか心地の良い音が鳴り響き缶は宙を舞った。
「ふふふ、まだまだ。これからだよ」
そう言うとなのはは光の球を操作して空き缶に当て続ける。
落とさないように壊さないように・・・力を加減しながら
空き缶を弾く。頭が時々痛く感じるもののやっていてとても楽しかった。
しかし・・・楽しい時間は些細なことで去っていくのだった・・・
「さてっと・・・あとはこれをゴミ箱に・・・」
入れるだけ・・・そう言おうとしたなのはの胸に突然
「グッ・・・!!」
ズキンッと一瞬・・・ほんの一瞬だったが激痛が襲った。
そしてそれが命取りとなった。
なのはの操作を外れた光の球は空き缶には当たらずそのまま進み
なのはの近くにあった大きな樹木の幹に直撃した。
グワンッと大きな音を立ててなのはに向けて倒れてくる木・・・
「ひっ・・・がぁ・・・」
なのはの幼い体では避けきることができず
ズシンッと倒れこんだ木の枝が顔の頬と上半身に直撃した。
「がっ!」
そのときなのはは一瞬何が起こったか理解できなかった。
もっとも、その後遅れてきた激痛のせいでどちらにしろ思考能力は正常に稼動しなかった。
体には太い木の枝が乗っかり、体に更なる苦痛を与えていた。
「ゲホッゴホッガハ・・・ヒューヒュー、ヒュー」
呼吸もうまくいかない。幼い体には木の枝すら重量があり肺を圧迫していた。
枝が切りつけた上半身からは血があふれ、もともと赤かったお気に入りのジャージも
鮮血に染まり、やがて酸化によって深紅色に染まっていた。
漏れ出した血は体を伝わり地面を紅く染め上げる。
手にもべっとりと血糊が付き、倒れてきた木も噴出した血によって紅に彩られる。
なのははこのとき走馬灯のようにこの6年間を思い浮かべていた。
幼いながらすでに死を覚悟していたのだ。
(こんなので・・・終わり・・・? いや・・・いやだ・・・
こんなのいやぁ・・・まだ・・・まだ、死にたくない・・・
いっぱいしたいことがある・・・のに・・・)
それでも死にたくないのものは死にたくない。
出血多量で意識はだんだんと朦朧としていた。
そのとき・・・なのはは近づいてくる人影を見つけた。
(た・・・すけて・・・たすけ・・て・・・よ・・・)
「こ・・・は!・・・大丈・・・か!!・・・くっ救急・・・呼・・・ないと」
もはや何を言っているのかすらわからなかったが、
人影を見て安心したなのははその意識を手放した・・・
「先生!!なのはは!!なのはは無事なんですか!!??」
知らせを聞きつけ、高町家は急いで病院へと駆けつけた。
恭也と美由希も学校を休んで駆けつけた。
自分の妹が生死を彷徨うほどの大怪我をしたと伝えられては
落ち着いて学校に行くことなど不可能だった。
「落ち着いてください。娘さんはご無事です。
あと数時間ここにくるのが遅れていたらわかりませんでしたが
発見が早かったため一命を取り留めました。
もっとも顔はともかく、体には傷跡が残るかもしれませんが」
「それでも・・・生きていてくれて・・・本当に良かった・・・」
怪我が残ることは女の子として残念だとは思ったものの
生きていてくれただけで本当に良かったと・・・
そこへ一人の男性が駆けつける。
「あっ、もしかしてご家族の方ですか?」
「そうですが、あなたは・・・?」
「あぁ、高町さん。こちらは娘さんの第一発見者の・・・」
「九十九彩斗です」
男性は四人に向けて会釈をする。
「高町士郎です。あなたが病院に連絡を?」
「はい、そうで・・・」「もしかして先輩ですか?」
突然話に割り込んできた恭也。
「もしかして・・・恭也か・・・?一年の?」
「はい、そうです。あの・・・妹をありがとうございました」
「こちらからもお礼を言わせて貰う。ありがとう」
「「ありがとうございます」」
高町家全員からお礼を言われ、少し照れる彩斗。
「いえいえ、こちらこそ前に娘さんに世話になったんですよ」
「なのはに?」
「なのはちゃんと言うんですよね。かわいい名前です。
一年程くらい前になのはちゃんが僕が公園で忘れ物をしたときに
交番まで届けてくれていたんです。
あれには結構重要な書類が入っていて・・・本当に助かりました。
そのときお礼に自分が持っていた本をプレゼントした・・・仲ですね」
「あぁ、あの本は先輩が渡したんですか。
なのはよろこんでいましたよ。あの本を持ってから
なのはに笑顔が戻ってました」
「それなら良かった。あんな小難しい本貰って嬉しいのかな?と思って」
「私が入院していて、家族がギクシャクしていたときだからな。
なのははとてもいい子だ・・・だから精神的に参っていたかもしれない・・・
今回のことも含めて、本当にありがとう」
「いえいえ、そうだ。恭也くん?今から学校に行かないか?
今なら遅刻と言うことで授業に参加できるだろ」
「えっ、は、はい。そうですね」
「言って来い。美由希もな」
「うん、わかった」
そう言うと三人は荷物を取りに向かっていった。
士郎と桃子は時間ギリギリまで、病室のなのはのもとに居てあげた。
二週間後、なのはは目覚めた。
最初に言った言葉は「あれっ、生きてる・・・」だった。
後々、顔の頬に付いている傷や何針か縫った体の傷を見て
「お嫁にいけるかな・・・」などと口走りながら、悲しんでいたものの。
助けてくれた人が、あの本をくれた人だと知ってとても嬉しい気持ちになった。
「あの人が・・・くれた力・・・とは違うけれど・・・
あの人のおかげで手に入れた力を・・・こんなことに使っちゃった・・・」
手に力を入れて、光の球を出そうとするものの
手が震えてしまってできなかった。拒否反応だ。
今回のことで精神的にダメージを負ったなのはは
光の球を出すことと、空に浮くことができなくなっていた。
所謂トラウマ・・・恐怖心が力を使うことを拒否しているのだ。
今使える力はせいぜい、その力を周りに散布することくらいだ。
エネルギーを散布・・・そして反射したエネルギーを分析することで
頭の中に周りの状況をソナーのように理解したデータで作り上げる。
これくらいのことしか・・・なのははできなくなっていた・・・
「・・・この力は・・・こんなにも・・・こわいものだったんだ」
なのは・・・ただそれだけを理解していた・・・
※九十九彩斗はにじファンで書いていたなのは二次小説の主人公です。