リリカルなのはサーガ   作:DFGNEXT

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今回はちょっと分けました。
そのほうがきりが良いと思ったので・・・

実際今回は現状と今後の説明会と次回の導入です。

オリジナル設定全開ですが、どうぞ!


SAGA 32「約束された使命」

 

 

 

「闇の侵攻は相当進んでいるな・・・」

「まったくだ。おかげではやてが闇の書の中を自由に動けるようにするので精一杯だぜ」

 

そのころ吸収された守護騎士たちは当初の予想とは違うできごとに

戸惑いを隠せなかったものの、主であるはやてを守るために

はやてがこれ以上侵食されないよう、闇の侵攻を四人で精一杯押さえ込んでいた。

守護騎士たちで話すことはできるものの、外の様子がわかるだけで

自分達ができることは何もないと言ってよかった。

 

「でも・・・はやてちゃん本当に大丈夫でしょうか・・・」

「主はやては大丈夫だろう。主はとても心の強いお方だ・・・

 だが、高町はどうだろうな・・・あの現実はあいつには重すぎる」

 

戦ったシグナムだからわかる。なのはは自分の魔法、剣術に誇りを持っていた。

その誇りを現実によってすべて砕かれてしまった。

なのはが一人で立ち直る可能性はほとんどゼロに等しかった。

 

「・・・どうやら、なのはのもとにはフェイトも向かったようだな・・・

 だが、本当に現実に戻せるのか? 心を失ったなのはを・・・」

「闇の書の意思ちゃんがなのはちゃんを防衛プログラムから守るために

 闇の書の中に取り込もうとした・・・だけどジュエルシードが

 それを中途半端に防いだから・・・なのはちゃんの心は・・・」

「心の核だけを残し、『なのは』という人格だけが闇の書の中に取り込まれた。

 だから説得するのは、相当難しいだろうな・・・」

「あいつ・・・」

 

シャマルとシグナムの出した答えにヴィータは黙り込むしかなくなってしまう。

ほんの一日だけしか、なのはとはちゃんと話してはいない・・・

だが、彼女の体には今もあのときの温もりが残っていた。

だから、ヴィータは呟いた。届くともわからない自分の願いを・・・

 

「なのは・・・早く帰ってこいよ・・・」

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

そのころ闇の書の意思とジュエルシード・シリアル5の戦いは激化していた。

二人がぶつかり合うたびに小規模だが強力な次元震が発生する。

 

そのためにアースラクルーはおろか、その場に居るユーノとアルフすら

光と闇――二人の遺産の戦いに干渉することすらできていなかった。

 

(・・・くっ、駄目か・・・防衛プログラムめ・・・

 私ごとすべてを巻き込んで破壊するつもりかッ!!?

 どうする・・・どうすればいい・・・?)

 

その攻防の中で、闇の書の意思は自らのタイムリミットを悟る。

彼女が居る真下では大量の炎の柱が海面から吹き上がり、

管理局結界魔導師によって作られた結界が徐々に崩壊していた。

さらにこの場所を襲う風が突然、強くなっていった。

 

次元震が引き起こすものとは違う・・・彼女の現出の限界時間が迫っていた。

 

(一か八かだ・・・あいつに・・・頼むしかない!)

 

「はっはっはっ!!!いいねぇ!いいねぇ!!

 最ッ高!だねぇえッ!!楽しいよぉ、闇の書ォオオオオ!!」

 

そんなことは露知らず、ジュエルシード・シリアル5は攻撃を続ける。

闇の書の意思はその攻撃は防ぎながら、念話を送る。

 

彼女にとって嫌いな人間に分類される者などほとんどいない。

ただそこに高町なのはが関わるだけで決めているのだ。

 

だから、彼らに助けを請うことに躊躇いなど全くなかった。

 

【ユーノ・スクライア!アルフ!聞こえるか】

 

突然響く思念通話。そしてその主が目の前で先ほどまで戦っていた

闇の書の意思からのものとわかり、二人は驚いた。

 

【聞こえるけど、何で君が僕達に念話なんて!?】

【なのはを助けるためだ。お前達に協力してもらいたいことがある】

【はぁ!?何言ってんだい!?あんたはなのはをあんなに

 道具みたいに使いやがって、今更なのはを助けるだって!?】

 

アルフは闇の書の意思の言葉に反感しか起きなかった。

正直言って闇の書の意思の真意をわかるための情報が

あまりにも言葉遊び過ぎて普通にはわからなかった。

 

アルフが多少だが勘違いするのも無理はない。

だが、勘の良いユーノだけは気づいていた。

彼女の言葉が少なくとも嘘ではないことを・・・

 

【・・・いや、アルフ。彼女はなのはを道具にしてはいない。

 確かになのはの心を粉砕直前まで壊したのは彼女だけど・・・

 さっきコントロールを『奪った』って言ってた。

 彼女が防衛プログラム本人ならコントロールを奪う必要性はないよね?】

【だ、だけど・・・】

【他にも・・・防衛プログラムと自分をまるで意図したように分けて話してた。

 彼女はなのはの心を完全に破壊することを良しとしていないとも言っていた。

 だから・・・なのはにしたことを許す気もないけど・・・信用はしてもいいと思う】

【・・・・・・】

【頼む。なのはにさっきしたことは自覚している。許してくれとは言わない。

 だけど・・・こんな私の願いはなのはを助けることなのだ】

 

アルフはユーノと闇の書の意思の言葉を吟味する・・・

しかし、自分に今ほかにできることもないので渋々了承する。

 

【わかったよ・・・だけど、フェイトは返してくれるんだろうな?】

【無論だ。なのはには彼女も必要だ。取り込んだのは完全な事故。

 彼女が望めば夢を見させ続けたし、出たがっているのならば出した。

 だが、彼女が望んだのはなのはとはやての救出・・・

 だったら私には止める理由がないからな・・・】

【・・・だったらいい。気に食わないけど協力してやる】

【ありがとう・・・】

 

アルフは闇の書の意思の言葉を聞き、嘘はないと判断。

彼女に何をすればいいかを聴いた。

 

【やってもらうこと自体は簡単なことだ・・・

 奴の胸にあるレイジングハートを奪い、私に渡してほしい】

【はぁ?なんでレイジングハートを・・・?】

【ユーノ・スクライアは知っているか?知らないなら説明する】

 

「はっはぁあっ!!防戦一方かぁあ!?もっと熱くやれよぉお!!」

 

シリアル5の攻撃を防ぎながら、闇の書の意思がそう問う。

ユーノは念話で詳しいことは何も知らないと伝える。

 

彼が知っているのはレイジングハートもまた立場上はロストロギアになること。

ただし、現在のところまで危険性は『皆無』なので

準ロストロギア級にまで格下げにはなっていること。

 

かつてなのはが手にするまで、自分が仮マスター認証を受けていたことくらいだ。

 

それをすべて聞き入れた闇の書の意思は思念通話でなるほどと言いながら・・・

 

【そこまでわかっていればいい。ここからの説明に苦労はそうしないだろう】

【・・・それで・・・なんでレイジングハートを・・・?】

 

【あれはロストロギア。そしてその目的はマスターに『不屈の心』を授けること。

 レイジングハート自身は自覚はしていないだろうがな・・・】

【不屈の心を授ける?それってどういう意味だい?】

 

いまいち理解できないアルフが聞く。

闇の書の意思は「あぁ」というとその補足説明に入る。

 

【不屈の心・・・文面からでは理解することは難しいだろうが・・・

 ようはこういうことだ。どんな困難に陥ってマスターの心が『壊れた』としても

 レイジングハートに『バックアップをとる』ことで結果的に

 『絶対に砕けない心』を実現すると言うことだ】

【【な、なんだって!?】】

 

二人は驚愕の真実を知り、ただ唖然とするしかない。

闇の書の意思はさらに補足を続ける。

 

曰く、ユーノが仮マスターだったのはユーノの心が一定の強さを持っていたから、

なのはがマスター認証されたのは、その心の脆さを感じたことからで、

さらに闇の書の意思自身が認証させることを促していたと・・

 

なのはの心が弱いわけではない。むしろ強いほうだ。

だが、それは非常に硬く脆い。まるでダイアモンドがハンマーの一撃で

粉々に砕け散るように・・・なのはの心は脆く砕けやすかった。

 

だからレイジングハートのシステムが無意識に彼女をマスターとして認証したのだ。

 

【つまり、レイジングハートの中に・・・】

【・・・いや、それが良くわからないところなんだが・・・

 今、もう一度確認したが、なのはの人格は間違いなく私が取り込んで、

 闇の書の内部にある。現在フェイトとはやてがそちらに向かっている。

 だが、仮にこのまま戻してもなのはの体にこの人格は適合しないんだ。

 戻した瞬間になのはの人格は今度こそ完全に消滅する・・・】

【??どういうことだい?】

 

アルフはその説明で理解できていなかった。

だが、ユーノはまさか、という顔を一瞬。シリアル5に感づかれないよう

ほんの一瞬だけしたあと、闇の書の意思に言う。

 

【・・・もしかして・・・なのはが二重人格・・・ってこと・・・?】

 

二重人格・・・正式には解離性同一性障害という。

 

人間の防衛的適応が慢性的な場合は反作用や後遺症を伴い、複雑な症状を呈し、

それが慢性的であるが故にその状態が恒常化し、何かのきっかけで炸裂して

コントロールを失うことで、苦痛を生じたり、社会生活上の支障まできたす。

 

これが一般的に解離性障害と呼ばれるものなのだが、

解離性同一性障害はそれのもっとも重いものである。

 

基本的によくアニメなどにある完全な別人格ができるわけではなく、

あたかも独立した人格のように見えても、それらはその人の「部分」である。

これを一般に交代人格と呼ぶ。一人をまるで二人以上居るように分けているのだ。

 

つまり、なのはが本人も気づいていないが二重人格者で

もしも人格に当たるものを二つ持っていたとしたら、

片方がレイジングハートに、片方が闇の書に取り込まれている。

 

そして、どちらも揃わないと「なのは」という心が

完全に回復しないのではないかとユーノは考えた。

 

その考えに闇の書の意思は「まぁ、似たようなものだ」といって補足する。

 

【正確に言えば解離性同一障害ほど分かれているわけではない。

 言うなれば、なのはの『人格』が闇の書に・・・そしてなのはの『心の核』が

 レイジングハートの内部に取り込まれているということらしい。

 なぜ、そんな分かれ方をしたのか・・・それは不明だがな】

 

三人はとりあえずそれで納得することにする。

もしもここにヴィータやフェイトがいたらなのはの持つ『二面性』について

話すことができ、真実へと近づけたのだろうが彼女達では無理だった。

 

それに・・・真実を知らなくてもここでは問題ない。

 

【まぁ、理屈はこれぐらいでいい・・・納得したなら協力してくれ!

 私に残された時間はもう10分あれば十分くらいなのだ・・・

 だから・・・頼む・・・一緒になのはを救ってくれ・・・】

 

闇の書の意思の願い。それを聴いたアルフとユーノはもちろんと答える。

ここまで言われたら断る理由もない。自分達だって皆を助けたい。

 

二人はシリアル5が操るなのはのほうを向いた。

・・・これ以上・・・好き勝手させるわけにはいかない・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは暗い闇がはびこる真夜中だった。

鉄骨が武骨い鉄橋の上で、彼女は一人佇んでいた。

真下を見ても何もない、左右を見ても何もない。

ただ鉄橋の上・・・いや、これが本当に鉄橋かもなのはには理解できてはいない。

 

ただ・・・確実にこの世界は夢の中とわかる中・・・

 

たった一人、手すりに両手をつけながら、ぼんやりと目の前の闇を眺めていた。

 

(・・・・・・どうして、こうなっちゃったのかな・・・)

 

そんなことを思いながら、なのはは目の前にディバインスフィアを作る。

いつもはディバインシューター発射と同時に役目を終えて消されるそれを

今のなのははずっと眺めていた。消耗品・・・道具・・・

 

今まで何気なく消費し続けたそれと、今の自分は同じレベルの存在。

そう考えると無性にディバインスフィア単体を見てみたくなったのだ。

 

もっとも・・・ここは夢の中、目の前にあるのは現実味がなく

本当にディバインスフィアが見えるのかすらわからない。だから色がない。

だけど、なのははただ目を細め、小さく笑っていた。

 

(・・・本当の自分、よくそんなこと言われたけど・・・本当ってなんだろう・・・?

 わたしにとっての本当・・・ただの道具の、わたしの本当・・・)

 

わからない、それがなのはが先ほどから出すしかない答えであり、

結局のところそれが正解なんだろうと思ってしまう。

 

決意を固め、戦った・・・だから砕け散った心・・・

 

闇の書に、ジュエルシードによって縛られた過去・・・

なのはにとってもはや過去の決意すら、他人事のように感じてしまう。

 

わたしはただの道具・・・なのははそう思いつつも、どこか未練があった。

 

いつも優しく微笑みかけてくれる少女・・・いつも強い眼差しで進む少女

そして、こんな自分を頼ってくれた眩しすぎる少年・・・

 

彼女達と過ごした日々はとても楽しくて・・・暖かくて・・・

でも今の自分にはもう手にする資格がないと感じる。

 

鉄橋の手すりを握る力が強くなる。その手の甲に暖かな雫がたれ落ちる。

それは涙・・・彼女、高町なのは『自身』が出した本当に久しぶりな涙。

 

――助けて・・・

 

「・・・た、すけて・・・」

 

彼女の声が響く、悲しく切ない、ボロボロの呟きはただ闇に消えていく。

何も見えない。暗いくらい闇の中、自分の鏡写しのような闇の中に

 

「・・・だれか・・・たすけ・・・て、よ・・・たすけて・・・あげてよ・・・」

 

ぽたぽたと五月雨のように冷たくなった透明な雫が地面へと落ちていく。

彼女の思いは誰にも伝わらない、届かない。

 

そう思っていたときだった。

 

「こんなところにおったんか・・・?」

 

聴きなれた車輪の音と共に、親友が現れたのは・・・

 

 

 

 

 

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