不可思議な結界が辺りを包む中、彼女達の戦いは続く。
「「はあああああああああッ!!!!」」
フェイトはバルディッシュを、シュテルはルシフェリオンを
ぶつかり合う衝撃が、結界を揺らし大地を揺るがしていた。
フェイトの轟雷とシュテルの劫火が左右を黄金色と深紅色に染め上げる。
甲高い音が響く、どちらも一歩も退かない攻防だ。
接近戦ではまだ勝負はつかないと思ったフェイトはプラズマランサーを数発放ちながら
後方に向けて、高速で避ける。そしてハーケンフォームにしたバルディッシュを振りかぶる。
「ハーケン、セイバー!!」
放たれた雷撃の刃が弧を描きながら、円形の光輪となってシュテルへと向かう。
シュテルも慌てず騒がずに、いたって冷静に対処する。
彼女は自らの周りに数発、炎熱変換された魔力弾を形成し、放った。
「パイロシューター!」
直線的な軌跡を描きながら、シュテルの放ったパイロシューターが
フェイトの放ったハーケンセイバーに直撃し、お互いを相殺する。
「やるね、シュテル!バルディッシュ、カートリッジロード」
《Yes,sir》
フェイトの指示を受けて、バルディッシュが一発カートリッジをロードし、
魔力を増大させたフェイトの周りには10個のフォトンランサーが作られていた。
「ファイヤッ」
《Flash Move》
シュテルは受け取ったなのはの魔法を使いはそれを紙一重でかわす。
フェイトは一瞬だけシュテルを見失うが、すぐにその場を離れた。
その行動にいたった理由は簡単だ。朱色の魔力光が視界の下から見えたからだ。
真下では砲撃の準備が完了したシュテルの姿があった。
シュテルはブラスターヘッドのルシフェリオンをフェイトに向ける。
「ブラストォ、ファイアアア!」
その言葉とともに放たれた朱色の灼熱を持つ砲撃がフェイトを襲う。
「くっ!」
《Sonic Move》
その攻撃に対して、高速移動を使いすぐさまその場から離れるフェイト。
だが、シュテルはまだまだ砲撃の手を休めない。
「まだまだ、行きます。ブラスト、ファイアアアアーッ!!」
再び放たれた、朱色に輝くの太い砲撃がフェイトを襲う。
「まだ、遅いッ!!」
《Sonic Move》
一瞬のうちに加速し、紙一重にかわす。
動きは最小限に、そうしながらフェイトはスタミナを温存しつつ戦う。
大幅な動きのほうが疲れないのだが、隙が大きいし動きが読まれやすい。
彼女は一番戦術的に有効で疲れにくい避け方を編み出していた。
「くっ、当たりませんか・・・ならば!」
そう言うとシュテルはホーミングミサイルのような軌道を描くを魔力弾を4つ放つ。
放たれた魔力弾はそれぞれ個別に緩急を付けながら4方向からフェイトに迫る。
彼女は砲撃による一撃必殺から、己が理の力を駆使してフェイトを追い詰める作戦に切り替える。
フェイトの高速移動の終着点・・・その一瞬を狙ったそれは、的確にフェイトを追い詰める。
だが、突然フェイトの肩にかかっているマントが金属のような硬さを持って板状に固まる。
そしてそれは戦闘機のスポイラーのように風を受けて、フェイトの速度を急激に下げた。
最初の2つの魔力弾がタイミングが合わずにフェイトの目の前を空しくも抜けていく。
そしてフェイトはそれを一瞬だけ見た後、バルディッシュをハーケンモードにし、
光り輝く魔力刃を生み出して振り向きざまに残りの魔力弾を・・・斬る。
「ハーケンセイバー!」
魔力弾を両断した後、続けざまに振り抜いた大鎌から、雷撃の刃が回転しながら放たれた。
シュテルがこの技を見るのは二回目、対処方法もわかっている。
もう一度魔力弾を生成し、それを粉砕しようとしたのだが・・・
「はあぁぁああああああッ!!」
「ちぃっ」
一気に距離を詰めて、滑るようにシュテルの後ろに回りこんだフェイトが、
振りかぶったバルディッシュをシュテルの体目掛けて、振り下ろす。
シュテルはすかさず防御魔法を展開し、フェイトの一撃を受け止める。
フェイトの攻撃によって巻き起こされた爆煙の中から、最初に飛び出したのはシュテルだった。
彼女の戦闘衣服である
己の炎熱による炎の影響はないが、シールドの間さをすり抜けた雷撃による被害だ。
魔力変換資質の雷撃が込められた一撃は、それだけ強力だったのだ。
「くっ、これほどとは・・・なっ!?」
「ふふ、ライトニングバインド・・・」
シュテルの四肢を襲ったのは、雷撃を纏った小さいリング状のバインドだった。
しまった、そう思いながらシュテルはバインドを解除しようと演算を開始する。
だが、フェイトはわざわざ作ったこのチャンスを逃さない。
フェイトは大技の詠唱を始める・・・
「アルカス・クルタス・エイギアス・・・・・・!」
この魔法を使うのに詠唱は本来はもういらない。
だが、詠唱したほうがコントロールに余裕ができ、さらに威力は上がる。
だから彼女は久々に唱えていく・・・かつて師から教えてもらった詠唱を
「疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」
46基ものフォトンスフィアが少女の周囲に展開され、無数の魔法陣と雷撃が明滅する。
「フォトンランサー・ファランクスシフト。撃ち砕け、ファイアー!」
雷撃の魔力弾が次々とシュテルを襲い、その体は爆煙に包まれていく。
合計で1064発のフォトンランサーがシュテルの体に追撃を加える。
そし勿論、それだけでは終わらない。
フェイトは腕を上にかかげ、70発ほどのフォトンランサーを束ねていく。
やがてそれは身の丈の3倍はある金色の槍と化した。フェイトはそれを容赦なく投擲する。
「・・・スパァァアアアアアク・・・エンドォォオッ!!!」
フェイトの声とともにシュテルに巨大な雷撃の槍が直撃し爆ぜる。
刹那、大爆発が起こり、シュテルはおろか離れていたフェイトがいる場所まで爆煙が来た。
(これで決まっていれば・・・)
そう思って煙が漂う場所を見るが、突然フェイトはその場から左へ高速で移動する。
そしてさきほどまでフェイトがいた場所を朱色の脈打つ砲撃が通り過ぎていった。
フェイトは未だに煙漂う先を見据える。やがて煙が晴れて現れたのは無傷のシュテルだ。
見ると彼女の目の前に炎燃え盛る障壁が出現していて、彼女を守っていた。
「危ないところでした。あとコンマ数秒遅れていたら直撃でした」
「スターライト・シェード・・・なのはの防御魔法だね・・・」
「はい、あなたのその攻撃を防ぐ手段は私にはそれしかありませんから」
確かに一度フェイトのこのファランクスシフトとスパークエンドを防いだのは
なのはが使用したこの集束防御魔法「スターライト・シェード」だけだ。
もっと言えば闇の書の闇の内部フレームもだが、それはまた別物だろう。
「まったく・・・炎熱変換能力持ちで、これほどの集束技能もあるなんて珍しいね」
「はい、それが私の個性ですから」
ため息を吐きながら言ったフェイトの言葉にシュテルは笑って切り返す。
フェイトの言うとおり、炎熱変換持ちにこれほどの集束技能持ちなんて魔導師はかなり珍しい。
フェイトが知る限り、知り合いには一人も存在していなかった。
まだ、なのはの希少技能「魔力散布」の使い手のほうが探すのが簡単そうだ。
使用した残骸魔法の魔力の集束技能自体は上級者なら珍しくもないが、
なのはやシュテル並みに集束できる人はかなり珍しいのだ。
「ここからです。まだまだ戦いを終わらせるわけには行きません」
「残念、私としては仕事柄速く終わらせないとね」
お互いに言い放った後、二人は距離を離し、再び己のデバイスを構える。
距離は約200mといったところか、お互いに目を見ながら相手の行動を予測する。
先に動いたのはシュテルだ。
「パイロシューターッ!」
今度は4つの炎熱を帯びた魔力弾を上に向けて二つ、斜め下から左右二方向に一つずつ放つ。
フェイトは上の二つはバルディッシュで切り裂き、残りの二つは完全に無視して突き進む。
ライトニングフォームの最高速度までフェイトは飛ばしながら、一気にシュテルとの距離を詰める。
(これでサイズスラッシュをすれば・・・)
シュテルはその場から動こうともしない。チャンスと見たフェイトはそのまま突っ込もうとして・・・
ピンッ
「!!!!」
突然耳の奥に聞こえた、甲高い音。
それを聞いたフェイトはとっさに急ブレーキをかけた。
車は急には止まれないというが、ことフェイトに関しては
急ブレーキを使えば停止距離は6mに抑えることができる。
ほんの一瞬、とっさの判断だが動きを止めたフェイトの1cmにも満たない目の前で、
ガキンッ
「・・・!!?バインドッ!!??」
赤色の光の輪が現れて、誰もいない虚空の空気を拘束した。
それを見たシュテルは舌打ちをしながら、呟いた。
「ルベライト・・・よく見破りましたね。目視確認はできないはずですが・・・」
設置型タイプのルベライトをフェイトと自分の間に設置。
パイロシューターの挑発と自分がこの場を動かないことにより
フェイトがこちらに向けて真っ直ぐ向かってきたときに発動するようにしたのだが、
目視確認できないはずのそれをフェイトは見破ったかのように回避した。
しかし、フェイトはそんなことを考えてはいなかった。
別に見破っていたわけではない。よくわからない音が聞こえたのでとっさに止まっただけだ。
偶然をそう褒められても対応ができない・・・そう考えていた。
彼女はまだ知らない・・・これが彼女に与えられし力の一端だと言う事を・・・
そのころそんな事情を知らない――――
ルベライトに嵌める作戦が失敗してしまったシュテルは別の作戦を立案していた。
(ブラストファイアーは彼女にはおそらく当たらないでしょう・・・
しかし魔力弾であるパイロシューターは威力には乏しいです・・・。
と、なると・・・ルベライトに嵌める作戦が失敗した、今・・・使えるのは・・・)
(この子にはソニックフォームは通じない・・・ライトニングフォームの加速性能だから
今の罠に嵌らずに済んだ・・・ソニックフォームだったら抜け出せばいいとも思うけど、
あのころのなのはの設置型バインドよりも速度も強度が高い・・・
抜け出せなかったら・・・たぶん砲撃を喰らえば一撃で落とされる・・・
ってことになると・・・私らしくないけどここは・・・)
またフェイトも同じく作戦を考えていた。
シュテルの仕掛けた罠は本来の目的は達成できなかったものの、
フェイトの戦略の幅を狭めたと言う意味では役に立っていた。
お互いに作戦を考えていたのはわずか数秒・・・
そして運命の先導者と星光の殲滅者は同時に結論を出す!
((ブレイカーで撃破(焼滅)する!!))
ここからは騙し合いだ。先に撃ったほうが勝利する。
シュテルはまずは牽制のパイロシューターをフェイトに向けて5発放つ。
フェイトの対処の仕方は先ほどとそう変わらない。
向かってくる三発はプラズマランサーで相殺。
残った二発はハーケンセイバーで消し去った上でシュテルに向けて放つ。
「こんなもの! ブラストファイアーッ!」
シュテルはルシフェリオンをブラスターヘッドに変えた上で砲撃を放つ。
放たれた深紅に染まる光の束はフェイトのハーケンセイバーを完全に消し去り、
フェイトへと向かって突き進んでいく。
「バルディッシュ!!」
《Sonic Move》
フェイトはまたも高速移動魔法を使い、砲撃を避ける。
そしてそのまま、上空へと向かった彼女はプラズマスフィアを並べて構えた。
「!!まさか同じ考えだったとは」
「バルディッシュ、これで決めるよ。カートリッジロード!」
《Yes,sir.》
その言葉と共にバルディッシュはカートリッジを三発ロード。
バルディッシュ・アサルトの姿は変わり、ザンバーフォームとなる。
さらにバルディッシュは自身に残されたカートリッジをフルロード。
雷撃の変わりにプラズマスフィアを使い、
そのエネルギーをザンバーフォームの刀身に蓄積させる。
「ならば、力と力のぶつけ合いです!!」
シュテルもまたルシフェリオンをディザスターヘッドにしてカートリッジをロードする。
「疾れ、
ディザスターヘッドの先端に炎熱に染まった魔力が集束し溜まっていく・・・。
そしてフェイトは放つ。雷光を伴った強力な砲撃を・・・
シュテルは迎え撃つ、劫火を纏いし滅砕の砲撃を・・・
「雷光一閃・・・プラズマザンバー・・・ッ!」
「轟熱滅砕・・・真・ルシフェリオン・・・ッ!」
そしてその二つの砲撃は・・・放たれた!
「「ブレイカァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」」
ぶつかり合う金色と朱色の太い光の束。
その威力はお互いに互角!拮抗しあう二つの砲撃の着弾点では膨大な光が発生している。
衝撃で周辺一帯に爆煙と稲妻が散った。地を揺るがすような轟音が鳴り響く。
勝負は引き分けか・・・観客がいればそう思う中で・・・
「・・・・・・ガハッ・・・! 私の・・・負けですか・・・」
力なく倒れ、地へと堕ちていくのはシュテル・・・
そしてその後ろにいたのはソニックフォームのフェイト!
砲撃が拮抗する最中、ジャケットをパージしたフェイトはシュテルの後ろに回りこみ
己に残された魔力のすべてを使ったサイズスラッシュを放ったのだ。
「・・・まさ、か・・・そのような・・・いえ、負けは負けです」
「まだまだ・・・本気で使えないけどね・・・私の、勝ちだよ・・・」
シュテルはフェイトがしたあることに気づく。
だが、それを確認している暇はない。徐々に自分の体が消えていくのがわかる。
勝負にフェイトは勝った。約束は守らなければならない。
「・・・ナノ、ハの行き先・・・でしたね・・・」
「うん、なのははどこに・・・行ったの・・・?」
フェイトの静かな問いにシュテルは瞳を閉じ、そして答える。
「・・・『始まりの園』・・・あそこはそう呼ばれています」
「始まりの・・・園・・・? それは一体どこに?」
「わかり・・・ません・・・あくまでも私の知識にあったもの・・・
ナノハの望むものは確かにそこにあります・・・。しかし、場所までは・・・」
知らない・・・シュテルの答えは実質それだった。
しかしシュテルが約束を破ったわけでもない。
あくまでもシュテルは行き先を知っているから勝ったら教えるといっただけだ。
フェイトはそれを聞いて、一つ頷いて答える。
「そう・・・ありがとう、教えてくれて」
「すみ・・・ません・・・・・・それと・・・一つお願いしてもよろしいでしょうか・・・?」
「何?」
体が消えぬく中、シュテルはお願い事があると言った。
フェイトはその願いを聞くことにする。
「・・・マテリアル・・・は・・・私のほかに・・・あと二人・・・います・・・
王の『ディアーチェ』・・・水色の・・・『レヴィ』・・・・・・」
「ディアーチェ・・・レヴィ・・・」
「・・・二人も・・・・・・おそらく・・・私同様、闇の書に操られているでしょう・・・
もしそうであれば・・・助けてあげてほしいのです・・・・・・」
残された二人のマテリアルを闇の書の闇の呪縛から助けてほしい。
それが消え行くシュテルが最後に残した願いだった。
フェイトはそれを聞いて迷わずに頷く。
「わかった。私が・・・いや、私『達』が必ず二人を助け出す! 安心して待っていて・・・」
そんなフェイトの決意を聞き届けたシュテルは満足げな表情を上げながら消えていく。
身体が光の粒になり、体の輪郭はほとんどぼやけていった。
「あ・・・りがとう・・・ございま・・・す・・・」
ありがとう・・・お礼の言葉と共に、彼女は一人、先に闇の中へと帰っていった。
フェイトはそれを最後まで見届けていた。
後に二人が奇妙な友情のもとに、再び戦うことになることを・・・まだ誰も知らない。
フェイトは無言で・・・しかし、力強くバルディッシュの柄を握ると
残された強い反応のする闇の結界の方へと飛び立っていった。
約束は守らなければならない・・・そう強く決意をしながら・・・
なのはさんの影響が見えるフェイトさん・・・